秋山事務所に届いた一通の手紙、それは季刊誌カルチャーワン夏号の懸賞商品の一つ「ユウランドペアチケット」だった。
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伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――長身のことだ、流石に手加減しないで回すことはないだろう…。 そう思いながら、愁治は「あぁ、それでもいいぜ」と返答した。

2021-09-17 19:09:10
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

自分は上司で相手は部下という関係なのだから、コーヒーカップにおける手加減はするだろうと思っていた愁治だったが、いざ乗ってみると最初の方は控えめにハンドルを回していたのだが、徐々に回す量が増していったのだ。 #事務所物語

2021-09-18 19:07:45
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

遊具の動きが止まり、本人は至って楽しそうな表情を浮かべていたが、愁治からしてみれば酔った上に足元がおぼつかなりそうになったのは言うまでもない。 「す、すみません!」 コーヒーカップに降りた紗南は直ぐ様、近くのベンチに座った愁治に向かって頭を下げて謝った。

2021-09-18 19:07:46
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「長身が楽しみにしてた気持ちは十分にわかった、が……少しはしゃぎすぎじゃあないのかねぇ?」 「はい…」 「まぁ、次からは気を付けてくれよな」

2021-09-18 19:07:46
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

紗南がコーヒーカップのハンドルを回しすぎた後、愁治の体力が回復したのはお昼の時間になろうとした頃だった。 ユウランドの園内中央に位置する食事スペースに移動し、未だにノビ気味の愁治の様子を見た紗南は聞いた。 #事務所物語

2021-09-19 20:22:42
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「しょ、所長!お昼、…何がいいですかね?」 「ん、あぁ……そうだなぁ」少し遠くにある屋台を見ながらに「軽めのモノ、頼んでもいいか?」と返答する。 「了解しましたッ!」

2021-09-19 20:22:43
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

紗南が昼食を買って行く姿を見ながらに、愁治は考えてしまう。 ――今更だがこれ、俗にいうアレなのでは?! 一つの答えに行きついた途端、愁治は急に自分が恥ずかしくなり、思わずテーブルに突っ伏すと、近くに居た子供が「かーさん、あの人なにしてるのー?」と指さして聞いている。 #事務所物語

2021-09-20 19:03:05
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「さぁ……ってよりも、何をみてるのよ!」 そう言って母親は子供をその場から離した数分後、屋台で買ってきた昼食を愁治の居るテーブルまで持っていった。 「所長、大丈夫ですか?」 未だに突っ伏したままの愁治の姿を見て、思わず心配した声で聞くと「…あぁ、多分」愁治は、ようやく顔を上げた。

2021-09-20 19:03:05
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

昼食を食べ終えた二人は、次にどの遊具に乗ろうかという事で、テーブルに園内マップを広げていた。 ――さっきの調子でやられたら、今度こそ俺がダウンしかねんな…。 秋山愁治が黙ったまま考えている一方、朝松紗南は「しょ、所長……だいじょうぶ、ですか?」と改めて聞く。 #事務所物語

2021-09-21 19:19:18
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「何がだ?」 「だって、その……私のせいで、所長、身体をこわしたんじゃあないかと、思いまして…」 「確かに、長身のあの回しっぷりは流石にヤバかった所もあるが…今はもう大丈夫だ、安心しろ」 「なら、いいんですけども」

2021-09-21 19:19:19
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

すると、近くのスピーカーから園内アナウンスのチャイムが鳴ったかと思えば『この後、中央広場にてヒーローショーが開かれます!ぜひ、応援に来てくださいね!』 というアナウンスが流れ、先程までの何処か低かった愁治は意気揚々と言い放った。 「まずはヒーローショーだ!」

2021-09-21 19:19:19
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

秋山事務所の所長こと、秋山愁治は特撮をはじめとしたヒーローものが好きな男なのだ。 故に、遊園地でヒーローショーを行うとなれば、昼食を手っ取り早く済ませ真っ先に向かったものの、既に親子連れによって席が埋まっていた。 #事務所物語

2021-09-22 20:26:51
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

近くに座れそうな所を探してはみるが、何処も埋まってしまっている。 ――仕方がない、今日は後ろの方で見るか…。 そう思いながら、愁治はイソイソと下がり、立ち見でヒーローショーを観覧した。

2021-09-22 20:26:51
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――ヒーローとか好きなのは知ってたけど…、目の色変えて行くんだから、ちょっと困る所かも…。 そう思いながらも、紗南は愁治が居るであろう中央広場に向かったものの、観覧客が多いというのもあり、中々に見つからない。 #事務所物語

2021-09-23 18:59:01
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――本当に、困ったなぁ…。 姿を見つけようと更に人をかき分けて探そうとした矢先、服の下を掴まれたのに気づき、その方を向いた。 「まま…じゃ、ない…」 自分の腰辺りくらいの身長の男の子が掴んでいたのだから、紗南は目線を合わすようにしゃがみ「お母さん、探してるの?」と聞いた。

2021-09-23 18:59:01
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

男の子に「迷子」かと聞いたら、向こうは声に出さず頭を縦に頷かせた。 ――所長を探さなきゃいけないのも確かだけど、ここでこの子をほっぽといておくのもいかないし……後でちゃんと説明したら解ってくれるよね…。 今にも泣きそうな表情を見た紗南は、考えた末の解を口に言った。 #事務所物語

2021-09-24 20:12:15
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「頼りないかもしれないけど、お母さんを探すの手伝ってあげるよ!」 「ほんと?」 「もちろん!」

2021-09-24 20:12:16
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

秋山愁治が立ち見でヒーローショーを見ていた時だった、着物の袖を引っ張られるような感覚がし、その方を見ると自分よりも背の小さい女の子がこちらをずっと見つめている。 #事務所物語

2021-09-25 20:20:20
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

不思議そうにこちらを見ている視線が気になり、愁治は勝手に気まずい空気を感じつつも、ヒーローショーを見ていたが、やはり近くの視線が気になって内容が入らない。 心の中で一息つき、女の子の背に合わすようにしゃがみ「お嬢ちゃん、どうかしたのか?」と聞いた。

2021-09-25 20:20:21
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「あのね、そのね……おとーさんと、はぐれちゃって…、さがしてるんだけど、みつからなくて……」 ――迷子か…。 色々考え、右手で頭を掻きつつも、愁治は女の子の方を見ながらに返答した。 「成程、俺も一緒に君のお父さん探してやんよ」 「ほんと?」 「あぁ、勿論だとも」

2021-09-25 20:20:21
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

紗南と迷子の少年は人混みから少し離れたベンチに移動し、まずは少年の母親の見た目と格好がどういうものかと尋ねた。 「おねーちゃんと、にた、かんじ…」 「なるほど…」 ――これは、探すのが大変だぞ…。 #事務所物語

2021-09-26 20:45:31
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

思わず不安な気持ちが湧くものの、気をとりなおして少年に聞いた。 「お母さんと一緒に居た時の場所って、覚えてるかな?」 「んーとね…、たしか……あっち。お化け屋敷にはいったんだ」

2021-09-26 20:45:32
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

その一方、秋山愁治と迷子になった女の子もヒーローショーが行われている会場から少し離れたベンチに移動し、父親と離れ離れになった経緯を聞いた。 「つまり、あっちの黒い……いや、今の所で言えばダークサイドの所ではぐれたって所か?」 「うん、そうなの」 #事務所物語

2021-09-27 13:18:26
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「あっちは確か、主に身長制限とかあって乗れる遊具も限れてるんじゃあないのか?」 「でもね、私でも行ける場所あるよ!」 「何処だい、それは?」 女の子は勢いよくさして「お化け屋敷!」と言い放ったのだ。

2021-09-27 13:18:27
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

お化け屋敷に行く直前、紗南はユウランドの受付カウンター近くにある迷子センターに行き、少年の母親をアナウンスで呼んでほしいと頼んでいた。 係の人がすぐに対応し、アナウンスをしたものの、直ぐに母親は来ない。 #事務所物語

2021-09-28 19:20:14
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

時をして同じく、愁治も(まずは迷子センター的な所で呼ばせるのが一番だろう)と思い、少女を連れて行かせたのだ。 迷子センターに入る直前、見覚えのある後ろ姿を見た愁治は、中に入るや「長身、なーにしてんだこんなところで」と聞いた。

2021-09-28 19:20:15
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「所長!」 「まさか、俺が迷子にでもなったとか思ったんじゃねーだろうな?」 「違いますよ!迷子の男の子がいたので、まずはコチラに呼びかけを頼もうかと思いまして!」 紗南の話を聞いた愁治は「なんだ、長身も迷子を連れて来たのか」と言い返した。

2021-09-28 19:20:15
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

ユウランド、ダークサイド側お化け屋敷付近――。 服も髪も何もかも深緑色の男が何かを探し、辺りを見渡すものの、中々に見つからず舌打ちを打った。 「ヤツらめ、一体どこに居ると言うんだ」 「ロッグス様!」 ロッグスと呼ばれた男はその声に反応し「見つかったのか?」と聞いた。 #事務所物語

2021-09-29 19:57:11
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「はい、他の者が例の子供達を何者かによって迷子センターに連れて行ったのを見かけたと…」 「そうか、ならば…話は早いな」

2021-09-29 19:57:11
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

迷子センターに来ていくらか時間が過ぎていたが、未だに互いの親はやってこない。 しびれを切らした秋山愁治は「俺が探しに行く」と言いながら立ち上がる。 「でも所長、もし、二人の親御さんとすれ違ったらどうするんですか?」 「そん時はそん時だ、どうにでもなる!」 #事務所物語

2021-09-30 19:08:59
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

どこからそういう自信が来るんですか――と返そうとした時だった、心配そうな表情を浮かべて迷子センターに大人が二人入ってきた。 「あの、うちの子は…」 「もしかして、この子達のお父さんと、お母さんですか?」 「えぇ、その通りです」

2021-09-30 19:08:59
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

迷子二人と互いの親のやりとりを黙って見ている愁治に対し、紗南は「よかったね!お母さんとお父さん来てくれて!」と声をかけたが、二人は何処か浮かない表情を浮かべつつも「うん」と「ありがとう、お姉ちゃん」と返した。 #事務所物語

2021-10-01 19:45:06
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「それじゃあ、今度は迷子になるんじゃあありませんよ」 互いの子を引き連れて迷子センターを出ようとした途端、愁治は立ち上がり「ちょっと待て」と二組の親子を引き留めた。

2021-10-01 19:45:06
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

少年と少女の親を引き留めた秋山愁治、少女の父親は「なんですか?」と言いこちらを振り返った。 「お前ら、本当にこの子達の父親と母親なのか?」 その問いかけに対し、父親は少女の手を引きながらに言う。 「何を言っているんですか、この子は私の娘ですよ」 #事務所物語

2021-10-02 19:46:44
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「そうよ、この子は私の息子よ」 続けて少年の母親も言い返しながら、少年の手を引くが、双方の反応はどうも鈍い上に、力強く手を掴まれたせいか、二人は痛そうな表情を浮かべのを見逃さず、愁治は二人の親に向かって言い返す。 「おいおい、自分の子を力づけて引っ張る親が何処に居るってんだよ」

2021-10-02 19:46:44
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

迷子センターに向かわせた部下の帰りが遅いと思ったロッグスは、自らそこまで向かい、近くまで行ってみた所、何者かによって足止めをくらっている様子が建物の窓ガラスから見えていた。 #事務所物語

2021-10-02 19:54:17
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――やれやれ、こんなことになろうとはな…。面倒だが、少々手荒い手段で強行するしかないようだな。 そう思いながらに、ロッグスは近くに居た部下に「例のブツはあるか」と聞いた。 「こちらに用意してございます」 頭を下げ、手に持っていたアタッシュケースを渡した。

2021-10-02 19:54:18
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「それを起動させておけ、起動中して隙が出来次第、あの子供らを攫うぞ」 「了解致しました」

2021-10-02 19:54:18
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「正直に言うならば、俺はこの子らの両親の顔を知らないのは事実だ。それこそ、普通のヤツならお前らが親だと言うならばそのまま鵜呑みするだろう。だが、俺の目には誤魔化しは無用だぜ」 「どういうことなのです?」 「なに、この子らの胸の内を読み取っただけさ」 #事務所物語

2021-10-03 20:39:48
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

秋山愁治の能力は、人の思ったことを読み取る事が可能なのだ。部下の朝松紗南はこの能力で自身が思ったことを何度読み取られたが覚えちゃいない。 だが愁治自身、それを悪いように使わない事は知っていたし、解ってもいた。 「所長、だとしたら…この人たちは……?」

2021-10-03 20:39:49
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「おそらく、偽物だ。君達、そうだろう?」 少年と少女が愁治の問いかけに対して頷こうとした途端「さっきからゴチャゴチャとうるさいのよ!」と言いながら各々の手を力強く握った。 「この人に構ってられるものか!さぁ、行くぞ!」 「いたい!」 「はなしてよ!」

2021-10-03 20:39:49
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

その姿を見た愁治は二人の下に駆け寄ろうとした時だった、紗南は窓に見えた別の誰かが何かを置いたの姿が目に入り「所長!」と言い叫んだ時だった。 扉が開いた途端、白い煙が充満し、時間が経たないうちに二人の意識は遠のいていってしまうのだった。

2021-10-03 20:39:50
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

突然現れた白い煙には特に驚きもせず、二人は少年と少女を抱えながら外に出ると、自分らの上司でもある男に頭を下げた。 「ロッグス様!」 「随分と時間が掛かったようだが……?」 「お待たせして、本当に申し訳ございません」 「ですが、ようやく、連れ出すことが出来ました」 #事務所物語

2021-10-04 18:57:10
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

フロライン・ロッグスは二人の部下が抱えている子を確かめ、ようやく労いの言葉をかけた。 「ご苦労だった、では、引き下がるぞ」 「「はっ!」」

2021-10-04 18:57:11
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

フロライン・ロッグスという男は、壱ノ笠を侵略せんとする悪の軍団こと「シズリス団」に所属する幹部の一人だ。 侵略作戦を決行する度に秘密基地を作るようで、今回で言うならばユウランドのお化け屋敷の建物の一つに秘密基地を作った程である。 #事務所物語

2021-10-05 20:25:22
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

果たして、親と離れ離れになった少年と少女を攫う侵略作戦とは、一体どんな作戦なのだろうか?

2021-10-05 20:25:23
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

ユウランドに辿り着いた一人の青年、辺りの様子を伺うが、今の所は至って平和な時間が流れている。 青年と一緒に歩く少女が「どう?ヤツらの気配、感じる?」と聞いてくる。 「いや、今の所はないな…」 #事務所物語

2021-10-06 20:34:28
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「うっそだー、私が独自のルートで得た筋のある情報なんだよ!」 「んなぁこと言われてもだな…」 「兎も角、ココにヤツら…シズリス団のアジトがあるんだって話……」

2021-10-06 20:34:29
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

少女が続きの言葉を言おうとした時だった、少し離れた所で何かが起きたのを察知した青年は「あっちの方から気配があった、行くぞ!」と声をかけて直ぐに走って向かったものだから「ちょ、待ってよ!蓮ってば!」と、少女は青年の名前を言い叫び、同じ方へ向かって行った。

2021-10-06 20:34:29
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

白い煙が漂う中で秋山愁治は目を覚まし、頭を掻きながらに思う。 ――一体、なにが起きたってんだ…。 辺りを見渡すが、迷子になった少年と少女の姿はない。 ――もしかして、あの二人が攫いやがったのか…? #事務所物語

2021-10-07 20:38:45
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まとめたひと
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

基本は自分が考えた創作ッ子達の事を呟いたり、絵を上げたり、お話も書いたりします。偶に違う話等もしておりますが……ようは気まぐれだが基本は創作用アカウントです。(※食べても美味しくない鶏野郎で無言フォローをしたり、時として話すとアツくもなりますがそれでもよろしければです)御用の方はDMまで。