家業でもある酪農をしつつ、上北地区のカゲの自警団の団長を務めている平田 明。 そんな彼に、お見合いの話が舞い込んで来た。 以前から、お見合いは幾つかしてきたものの、中々に事が進まず、本人はもとより両親も密かに心配していたのである。 一方で【カゲ】を崇拝する宗教団体「幻影教」も、密かに動き出そうとしているが……。 (※執筆当時のまま収録しているので、誤字脱字などがあったりします。ご了承下さい)
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伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

牛舎での仕事が一通り終わる頃になると、辺りはすっかりと暗くなり、空を見上げれば、沢山の星々が輝いている。 ――今日も無事に、一日が終わったなぁ…。 そんなことを思いつつも、明は家の方へ向かい、歩いていった。 #平田明のお見合い話

2022-05-21 19:56:10

4.現代における「幻影教」

伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

大半は夜に現れ、ヒトの心のスキマを見つけて喰らう。 それが、壱ノ笠に生息する【カゲ】という異界な存在だ。 カゲ法師をはじめとする、自警団や殺し屋達によって滅される存在ではあるが、その一方では、神のように【カゲ】を信仰する者達もいるのである。 #平田明のお見合い話

2022-05-22 19:16:50
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「見えぬ存在に願って何になると言う、我々の目に見える存在を信じてこその幻影教」 それが【カゲを信仰する者達】――幻影教の合言葉である。

2022-05-22 19:16:51
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

幻影教の教祖サマは語る。 「私たちの足元には、常に【カゲ】様たちがいらっしゃいます。そして、私達を良き方へ導いて下さるのです」 教祖サマの背後に見える大きな影は、自らの意思で動き出したのを見た信者たちは感嘆の声をあげている。 #平田明のお見合い話

2022-05-23 19:54:30
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「さぁ、アナタ達も【カゲ】様によって導かれましょう。良き方へ――」 信者たちの足元に伸びる影が【カゲ】へと変わりゆく、それはすなわち、餌にありつく存在へと変化したという事になるのだ――。

2022-05-23 19:54:31
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

東の空は朝日が昇り始めている――。 その様子を窓から眺めているのは、先程まで教壇の前で【カゲ】について説いていた教祖サマ。 ノックする音に気づき「どちら様で?」と聞く。 「私です」 声の主が分かったようで、教祖サマは「入れ」と声をかけた。 #平田明のお見合い話

2022-05-24 20:48:18
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「失礼します」 ゆっくりと扉を開けると、自分らと同じく真っ黒な格好をした一人の女性が部屋の中に入ってきた。 「どう思ったね?私が教祖というモノになっていた時というのは」 「はい、とても完璧だと、私は思います」 「そうか」

2022-05-24 20:48:18
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

女性は教祖サマを真っ直ぐと見ながらに、言葉をかける。 「これからも、私は……アナタと共に居ますから」 「中々の心構えだな、君は――」

2022-05-24 20:48:19

5.【カゲ】に追われる者

伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

何時もより早い時間に目を覚ました平田 明は、ベットの近くに置いてある目覚まし時計の時刻を見て(まだ、寝てても大丈夫だ)と思いながら瞼を閉ざした時に夢を見た。 #平田明のお見合い話

2022-05-25 20:43:14
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

その内容は、自警団として見回りをしている際に【カゲ】から一人の女性を助け出す――というものだった。

2022-05-25 20:43:15
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

あまりにもリアリティのある夢だったもので、明は次に目を覚ました時(あれは一体、どういうことなのだろうか…)と思いつつ、身体を起こし、ベットから抜け出し、部屋着から仕事着に着替え始めるのだった。

2022-05-25 20:43:15
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

午前の仕事を終えた明は家に上がるや自室に入り、自警団としての服を手に取り、シャワーを浴びた。 シャワーを浴び終える頃を見計らったかのように、祖母は昼食を用意し、脱衣所から出て来た明に「ごはん、出来てるわよ」と声をかけてくる。 「ありがとう、今行くよ!」 #平田明のお見合い話

2022-05-26 20:34:24
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

小走りになりながらも、明は台所に向かい、昼食が用意されている席に座った。 何時ものように両手を合わせながら「頂きます」と言い、明は昼食を食べ始めるのだった。

2022-05-26 20:34:25
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

家を出て、軽トラックを運転し、上北区市街に入る手前だった、腕時計と車内に置いてある【カゲ】を見つける為の探知機が一斉に反応を示したのを目視した明はエンジンを止め、静かに辺りを見渡す。 #平田明のお見合い話

2022-05-27 19:14:35
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――こんな真昼間からカゲの反応があるだなんて…、一体、どこにいるんだ? 探知機は反応しているものの、探知する反応音が鳴っている訳ではない。 明はその事を気にしつつも、再び軽トラックに乗り込み、辺りを警戒するようにエンジンをかけ、先程よりも遅めのスピードを出しつつ、運転をする。

2022-05-27 19:15:33
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

その女性は【カゲ】に後をつけられている事に、今の所気づいていない。 それは【カゲ】自体も気づいている。 というよりも、気付かれてスキマに入るのもいいが、この【カゲ】は不意打ちそのものを楽しんでいる。 #平田明のお見合い話

2022-05-28 19:29:08
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――さぁて、いつ喰ってやろうかね。 そんな風に考えながら後をつけていた矢先、女性は何かの気配を感じたのか、急に辺りを見渡し始めた様子を見た【カゲ】は、別の影の中に入り身を潜める。 ――まさか、気づかれたか?

2022-05-28 19:29:09
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

先程よりも探知機の反応を見て聞いた明は、他の車が通れるように脇道に軽トラックを止め、車内の探知機を止め、助手席に置いてあるカゲ滅しの武器を手に持ち、外へ出る。 ――この近くに居るのは、間違いない…。 #平田明のお見合い話

2022-05-29 20:33:05
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

一歩、また一歩と進みつつ、腕時計型の探知機の反応を見つつ、進んでいた時だった。 「……ッ!」 誰かの声が耳に入った時、明はその方へ向かって行った。

2022-05-29 20:33:05
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

得体の知れぬ存在に後をつけられている、女性は確かに思い、途中から走り出す。 しかし、その存在もまた、女性を追うように迫りくる。 ――だれか…! 「…たすけて!!」 その思いが口に出た時、目の前に、一人の男がコチラに駆け寄ってくる。 #平田明のお見合い話

2022-05-30 19:15:18
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「大丈夫ですか?!」 「はい…、でも、どうして…」 二人の会話を遮るように、黒い何かが女性の顔を掠め通ったのを見た男性は言った。 「後で話は聞かせてもらいますが…、今は、一刻の猶予もないので…」

2022-05-30 19:15:19
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

目の前に居る黒い存在、それが【カゲ】だ。 何度も見ているし、自らの手で滅しているけども、いざ目の前にしてみると、明の中で緊張という糸が張りついてくる。 『そこのニイちゃん、どうした?オレを見た途端に顔が強張ってんじゃねぇか』 #平田明のお見合い話

2022-05-31 19:52:35
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

平田 明は思う。 いくら、ここに向かう前に他の自警団員やカゲ法師に連絡をしたとはいえ、助けが来るまで、自分一人で対峙出来るのか?――そういう事を思うから、不安という気持ちが募り、緊張の糸も張ってくる。

2022-05-31 19:52:35
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

『まぁ、オレは……ニイちゃんってよりかは、そこに居るネェちゃんを喰らいたい所なんだ。逃げるなら、今の内だぜ』 「…逃げはしない」 『ほほぅ?』

2022-05-31 19:52:36
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

明は、右手に持っているカゲ滅しの武器でもある鎖を力強く握りしめながらに言った。 「僕は、カゲの自警団だ。仮に、君を滅する事は出来なくても、弱らせることは出来る」

2022-05-31 19:52:36
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

【カゲ】の動きは人間や他の生物以上に早いうえに、他の影の中に入ってしまったら、相手から現れたり、こちらが地上から引きずり出さなければ、好機はないも同然だ。 ――少しでもいい、この鎖に【カゲ】が触れれば…。 #平田明のお見合い話

2022-06-01 19:32:32
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

明が助けた女性を余程喰いたいのか、相手からこちらに近づいてくる。 その度に、明は女性を守りつつも、右手腕に巻いている鎖で【カゲ】に触れてゆく。 『なぁんでぇ、アイツらの真似事にしちゃあ、随分とよわっちぃ攻撃じゃあねぇーか!』

2022-06-01 19:32:32
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

確かに、【カゲ】の言う通りだ。 けども、例えそれが一見地味な攻撃だったとしても、【カゲ】に対するダメージが加算されれば、勝機はこちらにやって来る――。

2022-06-01 19:32:33
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

平田 明の連絡を受け、彼の居る場所から最も近い所に居た管崎響子は急いで現場に急行する。 ――いくら何でも、明さんが自警団長とはいえ、一人で【カゲ】と対等に渡り合い、各々の武器で【カゲ】を弱める事は出来ても、滅する事は余程のことが無いと出来ない…。 #平田明のお見合い話

2022-06-02 20:24:37
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

その思いが頭に浮かびつつも、響子は頭を左右に振り、思いを改める。 ――自警団のお陰で、カゲ法師は確実にカゲを滅する事が出来ているのだから、私がする事はただ一つ。 「目の前のカゲを滅するのみ…!」

2022-06-02 20:24:38
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

現場に着いた響子は近くの建物に身を隠しつつも、明の様子を見る。 ――女性を守りながら、腕に巻いている鎖で【カゲ】に触れている…。【カゲ】の動きを鈍らせる為にしているという事になるわね。 #平田明のお見合い話

2022-06-03 20:04:31
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

以前、見回りの際に明が使う【カゲ】を弱らせる為の武器を見せてもらった事がある。 本人曰く、牛を落ち着かせる為に使う道具に似ているから選んだと言っていた。

2022-06-03 20:04:32
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

その事を思い出しつつも、響子はこの場で【カゲ】を滅するかを考える。 ――声を出さずに、相手に自分がいる事を伝えるには……。 何気なく上着のポケットに手を突っ込んだ時、何かが入っている事に気づき、それを手に取った。 ――やってみるしか、ないわね…!

2022-06-03 20:04:32
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

明が守る女性を喰らいたいだけなのに、守られている上に、鎖を巻いている腕を伸ばして触れられる度に自分が弱くなってくるような気がしている【カゲ】は明を睨みながら声を荒げる。 『こっざかしい、ニイちゃんだなァ!!いーかげん、そのネェちゃんを喰わせろってんだ!』 #平田明のお見合い話

2022-06-04 20:55:50
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「誰が喰わすものか!」 対抗するように、明も大きな声で言い返す姿を見た【カゲ】は『めんどくせェ!お前も一緒に喰らってやるわ!』と大口開けて二人を喰らおうとした直後、【カゲ】の視界に眩い光が真っ直ぐに入り、【カゲ】は後退する。

2022-06-04 20:55:50
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

一体何が?――と思いながら、その光の先を見ようとした明だったが「身を低く!」と、聞き覚えのある大きな声を耳にした時、明は女性を庇いつつ、身を低くした体勢をとった。

2022-06-04 20:55:51
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

管崎響子がポケットから取り出したのは手鏡だった、それを陽に当て【カゲ】の視線に合わせた途端、相手が後退したのを見て直ぐに明に声をかけた。 続いて、滅し道具でもある弓を取り出し、息を整えながら弓を構え、相手の動きがさらに鈍くなった所で矢を放った。 #平田明のお見合い話

2022-06-05 21:07:02
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

放たれた矢は真っ直ぐに【カゲ】を貫き、その場で滅されてゆく。 響子は明たちが居る所に駆け寄り「大丈夫でしたか?」と声をかける。 「はい、ありがとうございます」 明もまた、庇った女性に声をかけると「はい、大丈夫です」と、小さな声で返答した。

2022-06-05 21:07:02
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

足元に居る【カゲ】は言う。 『アイツに近づいたぞ』 その言葉を聞いた男は少しだけ口角をあげながらも、直ぐに表情を戻し、視線を一瞬だけ下に移し、足元に居る【カゲ】に言った。 「引き続き、監視をお願い出来ますか?」 #平田明のお見合い話

2022-06-06 19:29:40
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

『あぁ、勿論だとも。教祖サマ』 「感謝致します」 【カゲ】から影に戻った時だった「ナオザネさん、ちょっといいですか?!」と、誰かに声をかけられる。 「はい、なんでしょうか?」 男は顔を視線をあげるや、直ぐにその方へ向かって行った。

2022-06-06 19:29:41
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

カゲの自警団上北地区の団長こと平田明と、カゲ法師の管崎響子、そして、【カゲ】に襲われそうになった所を明に助けられた女性の三人は、現場から少し離れた所にある公園へ移動し、「飲み物を買ってきますね」と、明は言って園内にある自動販売機へ向かって行った。 #平田明のお見合い話

2022-06-07 20:32:59
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

その姿を見ながらも、響子は女性に「もう、大丈夫ですから」と声をかける。 「はい、ありがとうございます…」 俯きながらも、小さな声で返答する女性の姿を見て(得体の知れぬ…【カゲ】という異界な存在に狙われた事が怖かったんだわ)と思いつつ、響子は近くのベンチに座るかと女性に聞いた。

2022-06-07 20:32:59
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「はい、そうさせて頂きます」 ゆっくりとベンチに座る頃に、明は二人分の飲み物を渡し、互いの気が落ち着いた時、響子は女性に向かって話し始める。 「アナタを襲ったモノは【カゲ】といいます」 「かげ、ですか?」

2022-06-07 20:33:00
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「はい、見た目は私たちがよく見る影と殆ど変わりありません。しかし【カゲ】というのは、この街…壱ノ笠では異界な存在として生息しているのです」

2022-06-07 20:33:00
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「【カゲ】は、心のスキマに入り、その者に成り代わる存在でもあります。そうなる前に、私達カゲ法師が【カゲ】を滅したり、平田さん達カゲの自警団の皆さんが街をパトロールしているのです」 「だから、私は【カゲ】に狙われたんですね…」 #平田明のお見合い話

2022-06-08 19:36:02
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「早い話で言うならばそうなります、しかし…【カゲ】というのは、日が昇っている今の時間帯は活発的ではない事が多い筈なのですが…」 考え込む様に思い詰める響子を見つつも「でも、響子さんが近くに居てくれて本当に助かりました」と、明は言葉をかける。

2022-06-08 19:36:03
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「いいえ、平田さんが見回りに出ていたこそですよ」 「いやぁ、僕は父さんから団長を任されて間もないですから、まだまだ、新人ですよ」

2022-06-08 19:36:03
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

鞄の中に入れていた携帯電話に着信音が鳴るや、女性は急ぎ気味に「今日は本当にありがとうございました、それでは」と礼を言い、二人から距離をとるようにその場から去って行った。 #平田明のお見合い話

2022-06-09 20:57:00
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まとめたひと
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

基本は自分が考えた創作ッ子達の事を呟いたり、絵を上げたり、お話も書いたりします。偶に違う話等もしておりますが……ようは気まぐれだが基本は創作用アカウントです。(※食べても美味しくない鶏野郎で無言フォローをしたり、時として話すとアツくもなりますがそれでもよろしければです)御用の方はDMまで。