抜粋①『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション~人種、ジェンダー、性的指向 : マイノリティに向けられる無意識の差別』デラルド・ウィン・スー著、マイクロアグレッション研究会訳、明石書店、2020.12.18.
平等な利用の権利を否定するという、副次的なしかし破壊的な影響を持っている。一見ごくわずかなものであっても、マイクロアグレッションは組織的な、そしてマクロなレベルに対して有害な影響を与える。リチャードソン教授のクラスの有色人種の学生たちは、自分たちを敵視し、無価値化する教育環境に
2021-01-12 14:10:27置かれていた。学生たちは自民族中心的な観点から作られた教材を与えられ、自分たちのものではない歴史について学ぶ、という状況に置かれた。学生たちは、カリキュラムにおいて自分たちにとっては不公平な真実(そしてしばしば真実でないもの)を受け入れ従うか、自分たちの集団の本当の姿をカリキュラム
2021-01-12 14:18:32の中で示すよう闘わねばならなかった。しかしもしそのような闘いを始めれば、学生たちはトラブルメーカーと決めつけられ、成績も低くつけられるだろう。またかりに、教材が妥当なものであったとしても、有色人種の学生たちは学習に没頭するエネルギーを削がれているかもしれない。
2021-01-12 14:22:41またもし、かりに学生たちが教授の信奉するリアリティを受け入れることを決意したならば、学生たちはおそらく自分たちのことを「魂を売った( sold out )」と感じるだろう。つまり有色人種の学生たちはどんな行動に出ようとも、教育的に不利な状況に置かれることになるのだ。
2021-01-12 14:27:31(p.52) 証券会社の面接官が、意識レベルにおいては、最も適した人物を採用するつもりでいたとしても、彼のマイクロアグレッションに満ちた行動は無意識のジェンダーバイアスを強く反映していた。だからこそ、彼は後ろめたさを持たずに男性を採用できると同時に、自分は偏見などに基づかないで採用した
2021-01-12 14:31:56のだ、という自身の無邪気な信念を維持することができたのだ。女性や有色人種の従業員が直面させられる高い失業率や、「#ガラスの天井 」というものが、悪意のない同僚や上司による多くのマイクロアグレッションの反映だと気づいている雇い主はほとんどいない。(Sue, Lin, & Rivera, 2009)
2021-01-12 14:36:40職場や教育における不平等は、明白なレイシズムや、性差別主義や、偏狭な考えの産物というよりも、周縁化された集団に向けられる意図的でない、分かりにくい、目に見えないマイクロアグレッションの産物だといえる。皮肉なことに、ヘイトクライムは違法でも、マイクロアグレッションはそうではないのだ
2021-01-12 14:41:19その次の一歩へ 「見えないもの」を見えるように 2009年7月16日、アフリカ系アメリカ人の有名な学者であるハーバード大ヘンリー・ルイス・ゲイツ・ジュニア教授は、ケンブリッジの自宅のドアが開かないのでこじ開けていたところ逮捕された。この事件は警察が黒人男性を犯罪者プロファイリングしている
2021-01-12 14:48:11例として、瞬く間に全国で大きく報道された。オバマ大統領は記者会見でゲイツ教授の逮捕について「愚かな行為だ」と述べた。するとこの発言に対し、主に警察を擁護する白人市民からの大きな抗議が起きた。結局、大統領は抗議を受け、発言をもっと慎重に「調整」すべきだったと表明するに至った。
2021-01-12 14:53:07(p.54) 人種的なバイアスを先祖から受け継いでしまうのを免れることは、誰にもできない。クローリー巡査部長が無意識にマイクロアグレッションを行ったと断定はできないものの、ゲイツ教授の逮捕は、(自宅の前で侵入者として疑われ)警官に立ちはだかれる黒人男性の気持ちに対して無感覚であったことを
2021-01-12 14:58:53明白に示してしまったといえる。ゲイツ教授が、その家の正式な住人であることを証明する何種類もの身分証明書を提示した後でさえ、クローリー巡査部長は教授に、玄関に出てくるようしつこく要求し続けた。 ここに第二のポイントがある。それは、両者がそれぞれ異なる人種的リアリティに基づいて
2021-01-12 15:04:17行動しているというものだ。ゲイツ教授の場合、自宅にいながら犯罪者と間違われることは、最大の屈辱である。一方、クローリー巡査部長はおそらく、自分の行動は法的なガイドラインの範囲内であり、人種的なバイアスは含まれず、人種に基づくプロファイリングはしていないと信じていただろう。
2021-01-12 15:10:07クローリー巡査部長の人種的なリアリティと、有色人種のの人々のそれを理解できないことが、人種間の調和を阻む主要なバリアとなっている。 この事件は、学びのための好機である。我々はどうすれば、他者の人種的なリアリティに対する理解を始められるだろうか? 白人のアメリカ人の中に、自らの
2021-01-12 15:14:17世界観と有色人種の人々の世界観とのギャップを埋められない人が多いという事実は、我々の社会にとって大きな挑戦を突きつけている。この事件は、国全体として人種についての対話に取り組むことが必要不可欠だと暗に示している。しかし、それは恐れや、抗弁、敵意などをあまりにも多く起こさせるため、
2021-01-12 15:18:24オバマ大統領でさえこの問題を取り上げることをやめたほどである。 マイクロアグレッションが隠れて、目に見えず、口に出されず、害の小さな悪気ない侮辱として見逃され続ける限り、我々は今後も周縁化されたグループを攻撃し、おとしめ、遠ざけ、抑圧し続けるだろう。
2021-01-12 15:22:55(p.56) 白人の学生たちや教授たちは、レイシストとして見られることへの恐れから、人種に関するやりとりを明らかにする事に対し、ひどく「情緒不安定」になる。 しっかり意識化して自覚しない限り、また緊張感に満ちたやりとりの意味を明確にすることを恐れる限り、そしてこのようなダイナミクスを
2021-01-12 15:27:03理解しようとすることを避けようとする限り、攻撃が目に見えるようになることはない。実際、人種に関する話題を避けることは「暗黙の申し合わせ」のようなものであった。 「見えないもの」を見えるようにすることは、無意識で悪気のないレイシズム、性差別主義、異性愛主義、その他の形の偏見と
2021-01-12 15:30:57闘うための第一歩である。 ✔️マイクロアグレッションを描き出し可視化すること ✔️加害者と被害者の間のダイナミックな心理的相互作用を描き出すこと ✔️マイクロアグレッションが個人と社会にもたらす影響を描き出すこと
2021-01-12 15:34:57✔️マイクロアグレッションがどのようにして大きな害を生み出すのか、明らかにすること ✔️この国において周縁化されたグループに向けられる危害を改善するために、個人、組織、社会がとるべき戦略を提案すること
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