
視界もようやく鮮明になった所で書類を渡されちゃあ、と思いながらも、灰田は黙読し、内容を把握する。 「せっかくチームとして始まるってのに、早々休めとは、上もどうかしてるぜ」
2020-07-30 19:50:22
書類には「数か月程の謹慎」と書かれていたが、この機関内における月日は無いも同然、それを解ってこんな事を書く上もどうかしているが…。 おおよそ、あの長が回復するまでの期間を意味しているのだろうとは容易に解る事だが、何故、長らは何故あんな機関者を必要とするのか、理解し難いモノである。
2020-07-30 19:57:56
ついつい考える癖が板についてしまったか、黙っていた様子を見た追野に声をかけられた灰田は遅れて反応した。 「私的には……、その……灰田さんは、少し動き過ぎじゃないのかな~と思っていて…、これはあくまで私が見た印象なので灰田さん自身はそうでなかったら、否定しても大丈夫な話でして…!」
2020-07-30 19:59:39
慌てた追野はファイルで顔を隠すが、半透明の代物を盾代わり使っても効果はないも同然だぞ、と言いそうになった代わりに、灰田はその様子を見て思わず笑みをこぼす。 「もぉ!笑わないで下さい…!!」 「スマンスマン、つい、な!」
2020-07-30 20:02:15
泣きそうな声を出す追野だったが、灰田に釣られ軽く笑い合った後、改まった声で言った。 「灰田さん、何事も一人で抱え込まないで下さい、ね」 「追野…」
2020-07-30 20:05:52
「機関者は独りで行動することはムカシも現在も、きっとこの先も変わらないと思います。…でも、灰田さんがそれを変えた事は、広い目で見たら小さい一歩でも、私達から見れば大きな一歩に値します。勿論、その事で悩んだ、誰かを…信頼できる方に頼ってもいいんじゃないかなと、私は思うんです」
2020-07-30 20:11:05
震える声ながらも追野自身の言葉を聞いた時、灰田の眼には何かが流れて頬を伝わり、自身の腕で拭う。 「…あれ、おかしいな、なんだろうな、コレ…?俺の眼から流れてんだけどさ……、なぁ追野、コレなんだかわかるか?」
2020-07-30 20:16:31
追野は既に知っていた、けれど、それは自身がよく流す感情のモノではない事だと気づき「それは、熱のこもった涙ですよ」と、返答したのであった。
2020-07-30 20:21:12
あくる日の277機関、屋上にて。 晴天の下で、灰田は気分転換と自身の回復の為に、自らの洗濯物を干していた。 「灰田君、もう、身体は大丈夫かい?」 聞き覚えのある声に振り向くと、松葉杖をついて歩く機関者がシーツ越しに居たが、灰田はあえて、そのままの状況で返答する。#Rhapsody277
2020-07-30 21:41:39
「あぁ、お前こそ、大丈夫なのかよ」 「ちょっと…無理しちゃったからね、その代償だと、僕は思ってるから」 「成程な」 風が強く吹いた途端、洗濯ばさみをつけ忘れたシーツが飛ばされそうになり、逃がすまいと思いながら手を伸ばすと、向こうが灰田よりも先に手を伸ばし、シーツを取り上げた。
2020-07-30 21:45:07
「はい、コレ」 礼を言いながら受け取った灰田だが「何が代償だって?」と言いながら見れば、松葉杖なしで普通に立つ姿がそこにある。 「まぁ、僕らからすれば……必要ない代物だけどね」 「だろうな」
2020-07-30 21:48:42
近くにあったベンチに座る二人は、敢えて互いの顔を見ず、空を見上げて会話をし始めた。 「そういや、アイツはどうなったんだ?」 「無事にわかれたけど、あの長はなんやかんやで必要とされてる機関者だからね。新たに造った依り代身に宿すらしい」 「正に、無の存在が故に出来る事、だな」
2020-07-30 21:52:07
「僕らも同じじゃないか、機関者なんだから」 「でも、俺はあんな風にはなりたくないね」 「…言うと思ったよ」 はぁー…と、ため息をつく灰田は続けて言う。 「前よりも長らに厳しい目をつけられるなんて思うと、この先が思いやられるぜ」
2020-07-30 21:54:23
「でも、灰田君はそういう状況でこそ燃えるタイプでしょうに」 「よくぞお分かりで」 プッと笑いのキッカケが出来、二人は顔を合わせて声を出して笑うものの、先に大人しくなったのは灰田の方だった。 「なぁ、お前、俺の所に来ねぇか?」
2020-07-30 21:56:52
突然の誘いに対し、動揺を隠せない表情を浮かべたが「それ、今すぐに答えなきゃダメかな?」と聞かれ「いいや、何時でも待ってんぜ。ココには、時間という概念は殆ど無いんだからよ」と灰田は笑みを浮かべながら返答した。
2020-07-30 21:58:33
結局のところ、アイツは俺の誘いを丁寧な言葉を連ねた手紙を添えて断った、その理由としては「青木さんと一緒に自分らと同じような機関者が居たら、共に歩んで行く為の導きをする」という事だ。 「まじか」と独り言を呟いてしまった俺だが、アイツがしそうな事だと納得している所もある。#Rhapsody277
2020-07-31 20:10:40
そして、追記の方で「今度から、僕は空と名乗る事にしました」と、自ら名乗るようにしたという文章を読んだ時、安堵の一息をついた直後、賑わっている方に呼ばれた俺は、デスクの引き出しにその手紙を仕舞い、その方に向かって行った。 【Rhapsody277 かつての灰田と現在編 完】
2020-07-31 20:16:41
#Rhapsody277 次回予告的コーナー… 灰田「なんか、今回は凄かったな」 空「それは何時もな気もするけど…、いきなり僕が出てきてよかったのかな…」 灰田「なーに問題ねぇよ、そもそもココは数が多すぎるんだ、今更一人や二人来たって大丈夫だろうさ」 空(そういうものかな…)
2020-07-31 20:20:38
灰田「っていうよりも、三点リーダーついてんのが気になるんだが…これって要はアレだろ?」 空「まぁ…、毎度お馴染みのって感じがするよね」 灰田「ったくな~、…まぁ、これだけは言わせてもらおうか。俺達は何時だって、あの街にやってくるからな、覚悟しとけよ?」
2020-07-31 20:23:46
空「灰田君、顔、怖いよ」 灰田「おっと、こりゃ失礼したな。でもまぁ、あの街で悪いことはしないに限るぜ」 空「それは灰田君の言う通りだね」 追野「灰田さぁ~~ん!次のお仕事がぁ~!!」 灰田「おっと、じゃあ俺はここらで失礼するぜ!」 空「灰田君、頑張ってね」 灰田「おうよ!」
2020-07-31 20:25:43
#Rhapsody277 改め、277機関の日々は続いて行く…。 pic.twitter.com/QFz9TNF4Hw
2020-07-31 20:27:00

ここまで執筆期間が長くなるとは、私自身でも予想していませんでした(汗) 改めまして、どうも伍条月斗です。 歴代最長期間で執筆をしていました『Rhapsody277』ですが…、今作は「277機関もとい、灰田チームはいかにして結成されたのか?」というお話をお送りしていました。
2020-07-31 20:32:21
当初は「灰田メンツだけを書こう」と思っていたのですが、本編を書いてゆく内に「あの機関者達も気になるな…書いちゃおう!」という勢いで書いていく内に、去年の10月から始まり、気が付いたら半年以上経っていました。
2020-07-31 20:35:09
ただでさえ「灰田メンツだけでも色とりどり過ぎるのに、他の機関者達も色とりどり個性満載過ぎて、これからどうしたらいいんだか?!」と思う所ではありますが…、彼らは変わらずに活躍するでしょう。 なお、今回のED絵で描かれた機関者はほんの一部に過ぎないので、今後判明次第描きたいと思います。
2020-07-31 20:44:27
思う所は沢山あるのですが、長すぎてもアレなので、ココらで締めの一言を…。 改めまして『Rhapsody277』を読んでくれた方へ、本当にありがとうございます。 機関者達はまだまだ活躍するので、これからもそっと見守って頂ければ幸いです。 それでは次に会えたらば Snow Production 2020.07.31
2020-07-31 20:49:23
追記:今回のED絵の名前表記版を載せておきます…!!! pic.twitter.com/gM7AjHUdoh
2020-07-31 20:50:38

本日のお絵かき:仕事モード3秒前 pic.twitter.com/kQ63OHGJF5
2018-09-26 20:02:34