占領神話の崩壊 西鋭夫

遠田大亮 @DaisukeEnta

田中の情報提供と捜査によって居場所を突き止められた里見甫は、一九四六(昭和二十一) 年三月一日(金曜日)に逮捕され、巣鴨プリズンに移送された。 占領神話の崩壊西鋭夫

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巣鴨プリズンで里見がどのような生活を送っていたのか不明だが、一九四六(昭和二十一)年六月二十八日(金曜日)付の 「宣誓口述書」が記録として残っている(註・里見の「宣誓口述書」は史料として後述)。 占領神話の崩壊西鋭夫

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里見甫は支那派遣日本軍司令部の特務部から依頼され、ペルシャ産阿片売買に関与しだす。 ペルシャ阿片は、一九三八年の春に上海に到着し、埠頭の倉庫に保管され、兵士によって警備されていた。 占領神話の崩壊西鋭夫

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阿片業者から注文がくると、まず特務部に部下を遣わす。そして、特務部が阿片業者に引き渡す分量を決めて、その分量を里見らが倉庫から引き出す。 占領神話の崩壊西鋭夫

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あらかじめ、阿片を取引する時間と場所を決めて、その場で阿片を商人に手渡し、現金を受け取った。里見は、この利益を自分の名義で台湾銀行に預金。月に一〜二回、陸軍特務部の楠本実隆(一八九〇〜一九七九年・陸軍中将・関東軍司令部付满洲国軍政部最高顧問)にご報告。 占領神話の崩壊西鋭夫

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特務部の指令により、阿片の原価を三 井物産株式会社に支払い、諸経費は手許に残し、利益は特務部に回した。宏済善堂がペルシャ阿片で約二〇〇〇万ドル(註・現在の日本円で一二〇〇億円)もの莫大な利益を稼ぎ、その利益 は特務部に払われ、特務部が解散した後、興亜院に支払った。 占領神話の崩壊西鋭夫

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里見の供述は続き、一九三九(昭和十四)年末になると、宏済善堂は「蒙古阿片」も売りさばいた。一九三九年に南モンゴルに日本軍の主導のもと「蒙古聯合自治政府」が樹立されたからである。 占領神話の崩壊西鋭夫

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蒙古政府の利益が大きくなるよう宏済善堂が蒙古阿片を取り仕切った。蒙古阿片は、蒙古(内モンゴルの熱河(ねっか)特別区・察哈爾(チャハル)特別区·綏遠(すいえん)特別区)から鉄道・飛行機・船舶によって運ばれたが、その大部分は中華航空株式会社の飛行機で運搬されたと、里見は証言する。 占領神話の崩壊西鋭夫

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中国では、阿片の使用は積極的に禁止されていなかった。戒煙総局も宏済善堂も監視隊を組織したが、その目的はもぐり阿片密輸入を取り締ることだ。阿片は大量に消費されていたので、宏済善堂の阿片供給は足りない状態だった。 占領神話の崩壊西鋭夫

遠田大亮 @DaisukeEnta

一九四一(昭和十六)年に宏済善堂が販売した阿片の量は、過去最高を記録。里見は、どれほど取引したか正確に記憶していないが、ペルシャ阿片を約四〇〇〇〇箱、蒙古阿片を約一〇〇〇万両は販売したと陳述する。 占領神話の崩壊西鋭夫

遠田大亮 @DaisukeEnta

しかし、一九四三(昭和十八)年の末になると中国の学生や知識人の阿片反対運動が活発化した。里見は、これを契機に、宏済善堂の副理事長を辞める頃合いだと考え、辞職した。以上が、里見甫の「宣誓口述書」の概略だ(江口圭一編『資料 日中戦争期阿片政策』岩波書店・一九八五年)。 占領神話の崩壊西鋭夫

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「宣誓口述書」が完成してから約二ヵ月後の一九四六年九月四日(水曜日)、里見甫が東京裁判の法廷に検察側の証人として出廷した。 ハメル検察官: あなたは里見甫以外の名前に依って知られて居りますか。 里見証人: 或る時は李鳴、或は李始吾と云ふ名前を使って居ります。(・・・・・・略....) 占領神話の崩壊西鋭夫

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ハメル検察官:一九三七年より一九四五年に至る間、上海に於て如何なる商売に従事して居られましたか。 里見証人:昭和十二年以来上海に於きましては、阿片に関する仕事に従事して居りました ――いや昭和十三年からです。(......略......) ハメル検察官: 宏済善堂総裁は誰でしたか。 占領神話の崩壊西鋭夫

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里見証人:一番初めは正理事長はありませぬ、副理事長である私がやって居りました。 ハメル検察官:如何なる種類の阿片をあなたは売りましたか。 里見証人:一番最初は「ペルシャ」から輸入された「ペルシャ」阿片、それから其の次は蒙疆政府、蒙古の方から出ます蒙古阿片、斯う云ふものであります。 占領神話の崩壊西鋭夫

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ハメル検察官: あなたの御売りになりました「ペルシャ」阿片の量は幾らでしたか。 里見証人: 第一回に来ましたのが二千箱と記憶します、それから第二回に亦二千箱来たと、 斯う云ふ風に記憶して居ます。(............) 占領神話の崩壊西鋭夫

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ハメル検察官:蒙古阿片の量を如何程御売りになりましたか。 里見証人:私が扱って居ました約六年間の間に、概数ですけれども千萬両と云ふ数字じゃないかと思ひます(註・両は重さで、一両は約三八グラムなので、天文学的なおよそ三八〇 トン)。(.....…略………) 占領神話の崩壊西鋭夫

遠田大亮 @DaisukeEnta

ハメル検察官: 此の阿片を販売することに依って利益がありましたでしょうか。若しありましたとすれば、どの位でありましたか。 里見証人: 此の利益の算定方法は、上海は「インフレーション」のお陰で非常に物が高くなりまして、的確な数字を私ははっきり申上げることは出来ませぬけれども、先ず当初初めの時期に於て、千箱の阿片で二千萬「ドル」、是位の見当じゃないかと思ひます。 占領神話の崩壊西鋭夫

遠田大亮 @DaisukeEnta

ハメル検察官:此の二千萬「ドル」をあなたはどう云ふ工合に処理致しましたか。 里見証人:此の千箱の数字を今私は申上げましたが、是は大体特務部或は興亜院が直接扱って居たと云ふような時代の数量だと私は記憶致します、是は特務部芝に興亜院の方に入ったと思ひます(極東国際軍事裁判所編『極東國際軍事裁判速記録』雄松堂書店,一九 六八年)。 占領神話の崩壊西鋭夫

遠田大亮 @DaisukeEnta

里見は、東京裁判の法廷で阿片取引の実態を暴露。里見が副理事長をしていた宏済善堂が阿片を取り扱い、その利益が特務部・興亜院に納められていたことを白日の下に晒した。阿片で稼いだ暴利が、日本の政府機関に入っていたことを裏付けたことになる。 占領神話の崩壊西鋭夫

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この後、反対尋問が行われ、里見甫は法廷から退席を命ぜられる。闇につつまれていた阿片の実態を公然と証言した里見は、その日のうちに無条件で巣鴨プリズンから釈放された。東京裁判で検察側の証人として表舞台に上がり、阿片売買の実態を証言することが保釈の条件だった。 占領神話の崩壊西鋭夫

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表舞台から姿を消した里見は、一九六五(昭和四○)年三月二十一日(日曜日)に心臓発作 に襲われ、自宅で亡くなる。享年六十九。 里見甫の墓は、千葉県市川市の里見公園(里見八景園の跡地)を見下ろす安国山総寧寺にある。 占領神話の崩壊西鋭夫

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この墓石の「里見家之墓」という五文字は、岸信介の書いたものである。なぜ、「満洲の参スケ」の岸が里見の墓碑を執筆するのか。 占領神話の崩壊西鋭夫

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岸信介は、一九四二(昭和十七)年四月の翼賛選挙で、当時の資金で五〇〇万円を里見に依頼していたほど、二人は公私にわたり親密な関係だったからだ (伊達宗嗣「里見甫のこと」「続・ 現代史資料(12)阿片問題』)。 占領神話の崩壊西鋭夫

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15 ナチス・ドイツと麻薬貿易 ナチス・ドイツでは、国民の間でも麻薬が大流行。麻薬は、あたかも常備薬。ドイツには、麻薬が広がる下地があった。それは、第一次世界大戦の敗戦のショックが大きく、惨敗の深い傷を負った国民を奮い立たせる薬物が求められていた。 占領神話の崩壊西鋭夫 pic.twitter.com/HS6EMqg9H6

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しかも、植民地を失ったドイツは、国 内で人工的に製造する製薬産業しか残っていない。 ヒトラーをはじめドイツ国民が麻薬中毒者であったように、鎮痛・鎮静剤のモルヒネの原料である阿片は、戦場で大奮戦する時の必需品だ。 占領神話の崩壊西鋭夫

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ナチス・ドイツは、戦時物資を東アジアから輸入しており、満洲から阿片を買い付けていた。 一九四四(昭和十九)年六月十七日(土曜日)に調印された「第四次満独通商協定」では、満洲国が阿片と粗製モルヒネをドイツへ輸出すると約束。 占領神話の崩壊西鋭夫

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シベリア鉄道は敵国ソ連の手中にあり、海上は封鎖されていたが、それでもなお、ナチス・ドイツは東アジアから約二十四万トンもの戦時物資をUボート (潜水艦)と封鎖突破戦で海上輸送し、その半数はドイツに届けられた。 占領神話の崩壊西鋭夫

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日本からは、阿片・生ゴム・タングステン・錫・雲母・工業用油脂など八万四〇〇〇トン の貨物がドイツに届けられた(熊野直樹 「ナチ阿片・交易営団・GHQ」「法政研究」第八一卷三 号・二〇一四年)。 占領神話の崩壊西鋭夫

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遡ることドイツと満洲の貿易協定が結ばれたのは、一九三六(昭和十一)年四月三〇日(木 曜日)。ナチス・ドイツが満洲を正式な「国」と承認したのは、一九三八(昭和十三)年二月二〇日(日曜日)。いったい何時から満洲国の阿片がナチス・ドイツに輸出されたのか。 占領神話の崩壊西鋭夫

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終戦時、関東軍の保有していた阿片を隠蔽するために奔走した古海忠之が貴重な証言をしている。古海はシベリアで過酷な拘留生活を過ごし、一九五〇(昭和二十五)年に中国の撫順、戦犯管理所に収容された。 占領神話の崩壊西鋭夫

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撫順は、日本人捕虜に対して組織的な思想改造を強制した収容所として悪名が高い。 占領神話の崩壊西鋭夫

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一九五四(昭和二十九)年五月七日付の古海忠之の供述書によると、「一九四一年十月末、満洲国と独乙国間の貿易協定に基く満洲側借款七百万マルクの(一部)決済として、独乙側の 要求に基き阿片七噸(価格一両三〇円)を売渡した」と記されている(古海忠之「満洲国亜片政策に関する陳述」荒井利男、藤原彰編『侵略の証言』岩波書店・一九九九年)。 占領神話の崩壊西鋭夫

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ナチス・ドイツと満洲国の蜜月は「阿片貿易」だけに留まらない。日本の「コカ」もナチス・ドイツに輸出されていた。ナチス・ドイツは、ジャワ産のコカの葉を輸入していたが、大戦が始まると海上封鎖の影響を受けたので、日本からコカの葉を調達した。 占領神話の崩壊西鋭夫

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コカの葉は、読者の方々に馴染みがないかもしれないが、一九〇三年まで清涼飲料水「コ カ・コーラ」に含まれており、健康飲料品として売られていた。 占領神話の崩壊西鋭夫

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植物のコラノキの種子(コー ラ・ナッツ)も含まれていた。現在でもコカ・コーラのレシピの全貌は公表されていないが、薬剤師ジョン・S・ペンバートン (John S. Pemberton·一八三一~一八八八年)が開発し、一八八六年から神経衰弱や胃酸過多などの病気に効くと謳ってコカ・コーラを販売した。 占領神話の崩壊西鋭夫

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コカ・コ ーラは健康食品。病気になってから薬を飲むのではなく、普段から薬のような効果を発揮する健康食品を口にすべきだと宣伝した。安全な水を確保する健康食品を口にすべきだと宣伝した。 占領神話の崩壊西鋭夫

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安全な水を確保することに苦労してきた欧米諸国にとって、コカ・コーラは水の代用品となり、裕福な白人層に瞬く間に広まった(鈴木透『食の実験場アメリカ』中公新書・二〇一九年・ジャック・アタリ『食の歴史』プレジデント社・二〇二〇年)。 占領神話の崩壊西鋭夫

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南米大陸ではコカの葉は「聖なる植物」である。とくに、インカ帝国では宗教儀式や医療で用いられた。酸素の薄い高地アンデス山脈で重労働となる農作業を行うときや、疲労感や空腹を抑える強壮剤としてコカの葉は必需品。コカの葉を噛んで唾液を飲む、を繰り返す。 占領神話の崩壊西鋭夫

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貪欲なヨーロッパの貿易商人は、コカの葉をヨーロッパに持ち込む。一八八五年にドイツ人 科学者フリードリヒ・ゲードケ (Friedrich Gaedcke·一八二八~一八九〇年)がコカの葉から薬理作用のある成分を抽出することに成功。 占領神話の崩壊西鋭夫

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その四年後、同僚のアルベルト・ニーマン (AlbertNiemann,一八三四~一八六一年)により純粋な活性成分の分離に成功し、コカインが誕生した。 占領神話の崩壊西鋭夫

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コカインは万能薬と持て囃され、瞬く間に大流行。精神分析学の学祖ジークムント・フロイ (Sigmund Freud.一八五六~一九三九年)は、コカインに心酔する。中毒になった。フロイ トは「コカについて」(Uber coca)という論文を発表し、コカインを神経衰弱、心気症、ヒステリー症状の患者に対して用いた。 占領神話の崩壊西鋭夫

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ワイン文化のヨーロッパでは、コカの葉入りのワインまで製造される。一八六三年、コルシカ島出身の実業家で化学者のアンジェロ・マリアーニ (Angelo Mariani·一八三八~一九一四年)が「コカワイン」(Vino Coca Mariani) を 「長寿と若返りの秘薬」として売り出したところ、バカ売れ。 占領神話の崩壊西鋭夫

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発明王トーマス・エジソン (Thomas Edison一人四七、一九三一年)や娯楽作家の G・ウェルズ (H.G. Wells、一八六六~一九四六年)までもが愛用した。 占領神話の崩壊西鋭夫

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ローマ教皇(レオ十三 ·一八一〇一九〇三年)は、マリアーニの偉業を称えゴールド・メダルを贈呈した。 ニのコカワインを模倣したのがコカ・コーラだ(宮西照夫、清水義的「古代文化と幻覚剤」 川島書店,一九九五年)。 占領神話の崩壊西鋭夫

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だが、万能薬と思われたコカインは、人間を廃人にした。阿片とおなじく、コカは世界中で禁制品となる。 占領神話の崩壊西鋭夫

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禁制品のコカを日本帝国はこっそり生産していた。一九三〇(昭和五)年、世界に出回るコカインの四分の一は、メイド・イン・ジャパン。ヘロインの全世界生産量の半分は、日本が占めていた(倉橋編 「二反長音蔵・アヘン関係資料」)。 占領神話の崩壊西鋭夫

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GHQの公衆衛生福祉局麻薬取締課の統計によると、一九四二(昭和十七)年に一万五〇〇〇キログラム、一九四四年に二 万キログラムもの膨大な量のコカインが日本からドイツへ輸送されている。 占領神話の崩壊西鋭夫

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日本のどこでコカの葉が生産されていたのか。 小笠原諸島の南東にある「硫黄島」だ。日本は、硫黄島だけでなく、沖縄本島や台湾でもコカの葉を栽培していた。 占領神話の崩壊西鋭夫

遠田大亮 @DaisukeEnta

「硫黄島」と聞くと、私たちは反射的に「硫黄島の悲劇」を思い浮かべる。日本が劣勢に立たされた太平洋戦争で、米軍は圧倒的な進攻を続け、三十六日間の壮絶な戦いの末、一九四五 (昭和二〇)年三月二十六日(月曜日)、硫黄島を陥とす。日本兵、一万九〇〇〇人、玉砕。米兵、六八〇〇名、戰死。 占領神話の崩壊西鋭夫

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米海兵隊が英雄扱いされる転機になったほどの激戦だった。アメリカ・アーリントン国立墓地の北側に、硫黄島の「摺鉢山」を日本兵から戦いとった直後(二月二十三日)、アメリカの国旗「星条旗」を雄々しく打ち立てた海兵隊員を称え、慰霊するためのブロンズ製の記念碑が建っている。大英雄として祀られている。 占領神話の崩壊西鋭夫