語る者のポジショナリティの問題について。 セクシャルハラスメント裁判例にみる環状島の生成過程。
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『環状島=トラウマの地政学』宮地尚子著、みすず書房、2018.7.5. 語る者のポジショナリティの問題。 (p.4) 語るにつれ唇寒くなり防衛的になれば、それはトラウマそのものの忘却につながる。生き延びた者、語る能力をもつ者、支援者や関心を持つ者、研究者や専門家が口をつぐんでしまうということは、 pic.twitter.com/E579wrvGiC

2021-01-04 04:52:47
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出来事が不可視化され、当事者の存在が沈黙の中に埋もれていく流れを加速化する。トラウマの記憶を社会から抹消してしまうことを容易にする。それではトラウマをもたらした者たち、そのトラウマをなかったことにしたい者たちの思うつぼである。

2021-01-04 04:59:18
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(p.5) 歴史認識はどうやって成立していくのか。そこでの「証言」の役割はどのようなものか、集合的記憶はどのように作られていくのか。 (p.8) ポジショナリティとは、立ち位置のことであり、支援者がサバイブし続けられずに消滅すれば、それは当事者のサバイバルの可能性の消滅に直結する。

2021-01-04 05:08:17
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加害者が傍観者にのぞむのは、何もしないということだけなのだから。 (p.9) トラウマが語られる、表象される空間は中空構造である。見えないもの、聞こえないものがあることに気づけば、そこから逆に、たくさんのことが見え、聞こえてくる。

2021-01-04 05:14:47
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(p.14) 発言権や証言者としての正統性 ( Legitimacy ) は、中心に近づくにつれ高まるが、被害が大きすぎた人は死んでしまって、発言をする機会をもたない。また生き延びたとしても、発言するためにはある種の条件、能力や資源が必要となる。資源としてはまず、話したり、書こうとする気力、体力、 pic.twitter.com/VZybhxOe9S

2021-01-04 07:01:20
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発話を可能にする身体機能が必要である。時間的余裕も必要である。「誰かが聞いてくれるかもしれない」という他者への信頼感や希望、「自分が声を出してもいい」と思える最低限の Self-esteem (自尊心)も欠かせない。話したり書くことへの慣れや練習の機会、発話が望ましいとされる環境、少なくとも

2021-01-04 07:11:32
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抑圧・禁止されないような環境も必要である。中心から近い位置にいる者ほど逆に語ることは困難になる。 (p.15) Postcolonialism は、発話者の Positionality を深く問う契機を促した。けれどもそこからは、本来目指す方向とは逆に、「当事者でなければ喋ってはいけない」といった誤解も生み出された。

2021-01-04 07:26:19
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「代弁者が当事者の声を奪ってしまう」のは、時に事実だが、そのために支援者や代弁者が萎縮し口をつぐんでしまったり、その場を立ち去って、傍観者になってしまうとしたら、それもまた別の形で当事者が声を発する機会を奪ってしまうことになりかねない。

2021-01-04 07:35:16
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中空構造を直視し、「この問題に巻き込まれながらも、発言しない・できないでいる人たちがいるのではないか」「この人は環状島の他の場所にいる人たちの存在に、どれくらい気づいているか」といった問いを立てることに、可能性が見いだせはしないだろうか。

2021-01-04 07:42:33
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(p.17) 被害者の声が言葉になるかならないかという領域、つまり〈内海〉の〈波打ち際〉で起きていることが重要であり、支援のもつ意義の一つは、〈内海〉から証言者を〈陸地〉に引き上げることにある。 ✴️ トラウマの核心に触れえず、その周りをまわるしかない、というジレンマは必然性をもつ。

2021-01-04 07:54:51
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✴️ 非当事者にしかできないこと、非当事者だからこそできることがある ✴️ 核心の「ずっと手前」でたんたんと仕事をすることには大きな意義がある ✴️〈内海〉や〈外海〉の〈水位〉は社会のあり方によって大きく変わり、〈水位〉が下がれば〈波打ち際〉は〈陸地〉となり、その問題について語ることの

2021-01-04 08:01:44
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できる者が増える。逆に〈水位〉が上がれば、発話者が減り、島全体が海に呑まれ、その問題は忘却に追いやられてしまう。 (p.22) 法のシステムに届くほどの声を発することができず、〈内海〉に沈む被害者たちが多くいる。

2021-01-04 08:10:51
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(p.27) 環状島に働く力…〈重力〉と〈風〉 〈重力〉とはトラウマがもつ持続的な影響力、被害を受けた個人にもたらされる長期的なトラウマ反応や症状そのものである。PTSDの主症状とされるトラウマ記憶の侵入(再体験)症状、回避や麻痺症状、過覚醒症状。それらにともなう心身の疲労、身体の不調、

2021-01-04 16:23:48
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身体疾患への罹患、解離症状や無意識の再演行動。被害者に埋め込まれる自己価値観の低下や自責の念、それらから逃れるための嗜癖行為、自傷行為や自殺企図。さらには混乱、錯乱、狂気。いずれにせよ悪化すればその先は沈黙、そして死である。

2021-01-04 16:32:54
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(p.28) 〈外斜面〉にいる者にも〈重力〉は働く。トラウマを受けた人と接し、トラウマについて深く考えることは、似たような症状(代理外傷)をもたらす。まだ軽いうちにさっさと逃げ出すか、さもなければ〈尾根〉を越えて〈内斜面〉にさまよい込んでしまう。

2021-01-04 16:40:02
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一方、〈風〉とは、トラウマを受けた人と周囲との間で巻き起こる対人関係の混乱や葛藤などの力動のことである。環状島の上空にはいつも強い〈風〉が吹き荒れている。内向きの〈風〉と外向きの〈風〉が吹き乱れ合い、〈内斜面〉も〈外斜面〉も同じ場所に留まり続けるのはたやすくない。

2021-01-04 16:47:39
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〈風〉にはたとえば被害者同士の間の、障碍や症状やトラウマの「重さ比べ」がある。 (p.29) 自分より被害や症状が重く、生き延びることができなかったり殺されてしまった者たちへの Survivor's guilt ( 生存者罪悪感 ) は、対人関係という意味では〈風〉に分類できるが、相手はすでにそこに存在しない

2021-01-04 16:59:08
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こと、および、被害者個人の心に刻み込まれる深さを考えると、対人レベルを越えたトラウマの普遍的反応であり、〈重力〉ととらえたほうがいいようにも思う。いっそのこと、〈風〉とも〈重力〉とも別の、中心のブラックホールに向かう求心力、というメタファーを用いたほうがふさわしいのかもしれない。

2021-01-04 17:05:34
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被害者と支援者の間には、転移や逆転移という強い〈風〉が起こる。安定した対人関係を保つこと自体が困難になりうる。被害者は外部の人に対して不信感をもつと同時に、近寄ってきてほしい、助けてほしいという切実な思いをもつ。そういったアンビバレンスから、相手を試すという行為にでることもある。

2021-01-04 17:14:16
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逃げたくても逃げられない自分と、その場から去ろうと思えば去ることが可能な支援者。裏切られる恐怖の裏返しとして、「当事者でもないくせに」「わかっていないくせに」とわざと悪態をついて、反応を見ることもある。いったん信じられると思えば、理想化したり、依存してしまいがちになる。

2021-01-04 17:19:33
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けれども少し想定外の行動をとられただけで、裏切られたように感じ、深く傷ついてしまいやすい。 (p.30) 一方、支援者は、良心的であろうとすればするほど、被害者の感情の波に振り回されたり、距離を失ってしまうかもしれない。被害者に同一化してしまったり、自分の未解決の問題や過去の人間関係を

2021-01-04 17:26:46
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被害者に投影させたり、自己の不全感を満たそうと被害者を支配しようとすることもある。被害者の回復の道のりの長さに「共感疲労」( compassion fatigue ) が起きたり、燃え尽きてしまうこともある。虐待被害者の精神分析的治療の中で、クライアントと治療者が「被害者と加害者」「被害者と救済者」

2021-01-04 17:34:05
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「加害者と被害者」「被害者と傍観者」といった虐待的関係性を気づかずに再演してしまう。[ そういう関係性を演じずにすむようになること自体が治療の進展であるように思う。] (p.31) 支援者同士の間では「共感競争」つまり誰が被害者をいちばん理解しているかという心理的競争が起きることがある。

2021-01-04 17:42:14
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一方、治療チームが被害者に対して同情的なグループと批判的なグループに二分化してしまうような「スプリッティング」( 分裂 ) 現象が起こることもある。  被害者に対しては、外からの疑いの視線もある。語る権利があるかないか、真実を語っているのかどうか、詐病などによって補償を得ようとしている

2021-01-04 17:48:38
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のではないかといった傍観者による疑いの視線である。同様の傍観者の視線は支援者に対しても降り注ぐ。「被害者を扇動している」「被害者を操って自分の社会運動に利用している偽善者にすぎない」といった「偽善者批難」がそこでは起きやすい。

2021-01-04 17:54:33
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環状島では、どんな組み合わせの対人関係にも〈風〉は吹きつける。 (p.32) 環状島の特徴…〈水位〉 〈重力〉と〈風〉に加えて、もう一つ環状島の上に立ち続けられるかどうかを左右するものに〈水位〉がある。これは、トラウマに対する社会の否認や無理解の程度を意味する。被害者が声をあげやすく、

2021-01-04 18:04:08
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責められたり疑われたりせず耳を傾けてもらえる、きちんと受け止めてもらったり支援してもらえる場合は、〈水位〉が低いといえる。〈水位〉が低ければ、〈内海〉は狭くなるし、〈斜面〉の裾野も広くなる。  〈水位〉に影響するのは、社会のエトス、周りの人たちの感受能力、応答能力である。

2021-01-04 18:10:27
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人生にはいつどんな不幸や災厄が襲いかかるかわからないという認識や、人は誰も災厄に深く傷つくものだという理解が共有されている社会、他者の痛みへの感受性や優しさに高い価値が置かれている社会であれば、〈水位〉は低くなるだろう。ジェンダーや民族、階級に関する平等思想も〈水位〉を下げる。

2021-01-04 18:17:37
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逆に、競争が重視され、弱肉強食や「自己責任」の思想が強い社会、残虐さに人々が慣れている社会、人を序列化し、階層化する社会であれば、〈水位〉は上がってしまう。  文化の豊かさも〈水位〉に作用する。論理的な言語だけでなく、断片的な叫びや詩的な表現を受け止める能力。言語だけでなく踊りや

2021-01-04 18:24:00
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歌や絵画など芸術による表現の伝統。表現されたものだけでなく、沈黙や不在からも意味を見出す感受性の尊重や儀式の存在、見えているものだけがすべてではないという世界観などは、〈内海〉の〈波打ち際〉における声を聞き分けるためにも不可欠なものであり、〈水位〉を下げることにつながる。

2021-01-04 18:29:09
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(p.33) 〈水位〉は専門領域などによっても変わる。心理療法と法では〈水位〉がまったく違う。PTSDが法にもたらした混乱は、こういった領域間の〈水位〉の差からくるところも多い。テクノロジーやメディアも〈水位〉に影響する。「障碍学」の誕生もテクノロジー抜きには語れないが、テクノロジーに

2021-01-04 18:35:07
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アクセスできない者、ついていけない者は当然そこから排除される。その人達にとっては〈水位〉が上がるわけである。また現代テクノロジーの視聴覚への偏重は、触覚、嗅覚、味覚などへの感受性、見えないもの聞こえないものへの感受性の鈍麻につながる。

2021-01-04 18:41:19
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(p.34) 〈重力〉に抗し、〈風〉に抗し、〈水位〉を下げる。マイノリティの権利運動や、被害者・弱者のための社会運動の意義も、環状島のメタファーによって整理できそうだ。運動においていちばん重要なことは、〈重力〉や〈風〉といった内向き外向きの力に抗して、当事者や非当事者が島の上に立ち続け

2021-01-04 18:45:45
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発言し続けることである。そして、そういう人たちを増やすことである。発言し続けるためには、〈重力〉や〈風〉に抗してその場所に踏ん張り続けるタフさが要る。他者からの批判や自己批判にとらわれ過ぎたり、自滅しない「いいかげんさ」も必要だ。何よりも〈重力〉の苛烈さを認識しておくこと。

2021-01-04 18:52:31
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〈風〉の複雑な動きを察知しておくことは、「転落」の予防になる。トラウマをめぐる emotional literacy とでもいおうか。  声をあげられなかった人たちが声をあげられるようになるためには、いろいろなプロセスが考えられる。軽いノリのイベントで社会全体の問題関心を高めたり、文化的な活動の中で

2021-01-04 18:59:01
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当事者が発話や表現できる場を開拓するといったことは、〈水位〉を下げ、〈斜面〉の裾野を広げ、〈尾根〉や島全体を高くするのに役立つだろう。〈内海〉に耳を澄ませ、声なき声から言葉を聞き取ること、つまり死者との対話や弔いも貴重な営みである。

2021-01-04 19:05:05
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(p.36) 〈水位〉が下がると、礁と礁の間がつながっていく。ある現象が社会問題として可視化されていくことをイシュー化というが、これはイシュー化の描写そのものである。セクシャル・ハラスメントやドメスティック・バイオレンスのイシュー化も同様である。

2021-01-04 19:10:05
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(p.37) 声をあげる人がぽつぽつ出てきて、やがてお互いの存在に気づき始める。「セクハラ」「DV」といった問題への「名づけ」が行われることで、お互いがつながる術も生まれる。  けれども油断をしたら、いつでも〈水位〉は上がる。〈重力〉や〈風〉にあおられて、内側の人が〈内海〉に、外側の人が

2021-01-04 19:15:25
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〈外海〉に放り出され、島の上に立つ人間がいなくなれば、それは加害者の勝利である。すべてが沈黙させられ、忘却されてしまえば、「完全犯罪」となる。環状島の上に立つ被害者や支援者を分断し、孤立化させ、消耗戦にもちこみ、息の根を挙げるのを待ち構える動きも、確実に存在する。

2021-01-04 19:20:53
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(前掲書抜粋その2)『環状島=トラウマの地政学』宮地尚子著、みすず書房、2018.7.5. 3章、環状島の生成過程…セクシャル・ハラスメント裁判から~1 1989年に日本で初めてのセクシャルハラスメント裁判を起こした原告・晴野まゆみが、1992年の勝訴後、10年目に出版した『さらば、原告A子』海鳥社。 pic.twitter.com/508MGQ4Dz5

2021-01-05 15:19:53
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(p.46) 興味深いのは、坂井フタという歴史上の人物を、晴野が裁判中ずっと心の支えとしたという点だ。坂井は函館遊郭の遊女で、1900年、函館地裁で初の「遊女の自由廃業権」を訴え、一度は敗訴したが大審院(後の最高裁)に控訴し、勝利判決を得た人物である。

2021-01-05 15:27:41
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遊女たちは当時、金銭で身を売られ縛られ、自分の意思による廃業を認められていなかった。坂井が「遊女は家畜にあらず」と訴えた裁判は全国に知れ渡り、遊女たちの間で瞬く間に自由廃業を求める声が広がる。しかし、彼女の後に続いた遊女たちの多くは、置屋からリンチを受けて廃業を諦めさせられた。

2021-01-05 15:34:09
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(47) 晴野にとって坂井は、環状島の上で声を挙げる仲間であり、〈重力〉に負け、〈内海〉に沈んで行きそうな自分を〈陸地〉につなぎとめるための灯台のような存在であったのだろう。遊女でありながら法的権利を主張した坂井の存在は、性的な色づけをどれほどされても、そのスティグマを内在化して

2021-01-05 15:43:13
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自壊していかないための、そして「性の二重基準」が女性の声を抑え込むからくりをしっかり見据えるための、重要なロールモデルでもあった。  晴野は裁判終結後、裁判を起こさなかったために勇気がないと切り捨てられた被害者の存在を知って衝撃を受け、自分が裁判を起こしたことで「私の後に続け」と

2021-01-05 15:49:37
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無言のうちにすべての女性被害者を強制していたのではないかと考える。裁判を起こしたから勇気がある、起こさないから勇気がないということではない。 (p.49) 提訴の1989年は、「セクハラ」が流行語大賞となった。〈水位〉が少し下がっただけで、どれだけ多くの被害が見えてくるのか、適切な言葉を

2021-01-05 15:55:36
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与えられただけで、どれだけ〈内海〉から〈波打ち際〉に上がって声を挙げやすくなるかを示す、象徴的な出来事だった。 (p.52) 〈風〉…一般論 裁判支援活動に限らず、社会運動の中で当事者と支援者の間に葛藤や対立、傷つけ合いが起こることはめずらしくない。程度の差はあれ、必然的に起きるトラブル

2021-01-05 16:01:58
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だとさえいえる。〈風〉はないほうがおかしい。  まず、〈支援してあげる・してもらう〉というつながりは、微妙な権力関係をもたらす。当事者はどうしても引け目や負い目を感じるし、支援する側にもどこかで「やってあげている」という意識が生まれてしまう。そういったことをお互いが意識して活動を

2021-01-05 16:07:27
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進めないと、当事者は率直な気持ちや本音を言えなくなってしまうことが多い。契約的な関係ではないだけに、持ちつ持たれつといった互酬性をどう保つのかは、運動における大きな課題だろう。そうでないと、お互い「利用されただけ」といった被搾取感をもつことにもつながる。

2021-01-05 16:14:26
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次に、同一化の問題がある。支援者には支援者の思い入れがある。支援者は当事者に自分の思いを仮託する。これは自分の問題なのだと、当事者に同一化する。逆に、当事者も支援者に同一化する。同じような経験や悩みをもって支援にかけつけてくれたのだから、自分の気持をわかってくれるに違いないと

2021-01-05 16:19:55
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思ってしまう。けれども、支援者にもいろんな人がいる。支援の理由も目的も人によって異なる。支援者の中には、自分の被害経験については心の中で否認したままであったり、未整理のままの人もいるだろう。活動に参加するなか、些細なきっかけで生々しい記憶や激しい感情が蘇り、それが当事者にぶつけ

2021-01-05 16:26:22