抜萃①『まとまらない言葉を生きる』荒井裕樹著、柏書房、2021.5.25.

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誰かに「命に関わる遠慮を強いる」のは暴力だ。マイノリティにとって「遠慮が死因になる」ことは、現実に起こりうる恐怖だ。(こうしたことは生活保護の現場でも起きている)。

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p.190　「自己責任」が人を黙らせるための言葉になりつつある。この言葉は他人の痛みへの想像力を削いでしまう。 　差別されている人に「勇気を出せ」とけしかけるのではなく、勇気を出せる条件を整えることが大切で、そのためには孤立しない・孤立させない連帯感を育むことが必要だと森田竹次はいう。

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実際に声を上げる一人ひとりは、恐怖心を持った生身の人間なのだ。 　「言葉」には「受け止める人」が必要だ。「声を上げる人」にも「耳を傾ける人」が必要だ。 　でも、「自己責任」というのは、声を上げる人を孤立させる言葉だ。

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「他人の痛み」への想像力は、人々が社会問題に対して声を上げるための< 勇気 >を育む最低限の社会的基盤だ。 　「自己責任」という言葉は、誰でも使えるし、誰にでも使える。

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「理不尽に抗う方法」を知らなければ、「理不尽な目にあう」ことに慣れてしまい、ゆくゆくは「自分がいま理不尽な目にあっている」ことにさえ気づけなくなる。 　「自己責任という言葉で人々が苦しめられることを特に理不尽だとも思わない社会」を、ぼくは次の世代に引き継ぎたくはない。

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差し当たり、ぼくは「いまこの瞬間、怒っている人・憤っている人・歯噛みしている人」を孤立させないことからはじめたいと思う。「自己責任」という言葉が、「人を孤立させる言葉」だとしたら、「人を孤立させない言葉」を探し、分かち合っていくことが必要だ。

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p.202　「評価されようと思うなよ。人は自分の想像力の範囲内に収まるものしか評価しない。だから、誰かから評価されるというのは、その人の想像力の範囲内に収まることなんだよ。人の想像力を越えていきなさい。」 #大谷翔平　 Photo by Yuji Arakawa pic.twitter.com/2vSyyDnCRP

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「評価されたい」という気持ちが強いと、人はどうしても、自分の信念より相手が何を望んでいるかを気にしてしまう。自分の主張の一貫性・論理性・正当性といったものよりも、注目されることや話題になること自体が目的になってしまう。

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p.231　川口さんのお母様(ALS)は、Totally Locked-in State という状態に至り、身体を(眼球も)一切動かすことができなくなったのだけれど、それでも、その体温で、誰かのことを温めていたのだ。 　きっと、人には、人の体温でしか温められないものがある。

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p.250　世の中には「一端を示す」ことでしか表現できないものがある。「要約」というのは、「お前は、この私にとってわかりやすい存在であれ」といった傲慢さと隣合わせだったりする。だからこそ、そうでない言葉の在り方を、祈りのような言葉の重みを、いろんな人の言葉の力を借りて表現してみよう。

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パンデミックに限らず、大災害は人間を数字(死亡者数・重症者数・陽性確認者数など)に置き換える。数字化(データ化)というのは究極の「要約」かもしれない。 　でも、その数字はあくまで「うまく言葉にまとめられない人生を生きる一人ひとり」を置き換えたものだ。

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コロナ禍による苦しみの内実は各々違う。日々更新される数字の裏には、「要約」なんかできない人生が張り付いていることを忘れてはいけない。 　「安易な要約主義」は、そうした想像力を削ぎ落として、「人間をとにかく数字化すれば世界を理解したことになる」という過信へと傾きかねない怖さがある。