本人にはどうしようもない初期条件、本人が選んだわけではない帰属的特性[出身家庭のSESと近隣文化資本]による教育機会の多寡は最終学歴に繋がり、様々な格差の基盤となる。
0
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

第4章、中学校~「選抜」前夜の教育格差 学校制度には二つの機能が期待されている。一つは子供たちが社会に適応できるよう社会化することだ。この中には個々の「能力」を一定基準以上にすることが含まれる。  もう一つの機能は、人々を「能力」によって格付け、「適切」な進路に振り分けることだ。

2022-01-11 04:08:30
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

学校制度は「選抜装置」(sorting device)だ。「〇〇の子」のような「生まれ」ではなく「能力」によって選抜し、「相応しい人」(メリットmerit)によって社会的地位が決まる社会をメリトクラシー(能力主義による支配体制)という。「能力」の定義は社会的に構成されるのでいつの時代も問い直される。

2022-01-11 04:16:35
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

「意図的養育」を行う大卒の親は、現在の日本社会における教育選抜で最重要視される筆記試験によって計測される「学力」獲得のために、学習塾利用へと焦点を移行する。両親非大卒層はそこまで意識的な戦略を採用していない。

2022-01-11 04:20:56
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

出身家庭のSESによって子供たちは構造化の度合いの異なる時間を過ごすし、住んでいる近隣の公立小学校でどのような経験を得られるのかも社会経済的文脈と無縁ではない。中学校に入学するまでの約12年間、かなり異世界を過ごしてきているのだ。

2022-01-11 04:24:05
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

中学生になったということは高校受験という教育「選抜」の時期が近づいてきたことを意味する。現在の教育制度の中で評価される「能力」が学校制度の中で「公式」に格付けされるわけだ。  そんな新生活1年目に「誰」が中学校教育や学歴獲得競争に親和的で有利なのか。

2022-01-11 04:29:02
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

同じ制服を着て無邪気に笑っていても、中学1年生の時点ですでに格差が存在している。両親大卒層は授業外学習時間が長く、学校に適応し、将来働き始めるのは大学卒業後だと考える傾向にある。同じ制服を着て同じ教室にいても、経験の蓄積の内在化によって、目指すところはすでに異世界なのだ。

2022-01-11 04:33:30
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

通塾と習い事の経験蓄積があると、親学歴、世帯収入、中学1年生時点の通塾状況などを調整しても、学習時間は長く、大学進学期待を持つ傾向にある。習い事の経験蓄積量が大きいと中学校教育との親和性も高い。メディア時間の蓄積量が多いと、学習時間は短く、学校適応指標は低く、

2022-01-11 04:54:50
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

大学進学期待を持たない傾向にある。  新入生はそれぞれ異なる経験を心身に蓄積した状態で中学校生活を開始しているのだ。時に個性として理解される行動・態度・志向の背景には、(部分的に)親学歴によって異なる経験蓄積格差がある。

2022-01-11 04:58:45
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

小学校の外で教育経験を蓄積することで学習・学校・進学に対する親和性を身体化した、学歴獲得競争に有利な生徒がいるのだ。一方、そのような機会にあまり恵まれないまま、不利であることにも無自覚なまま、競争に参加している生徒がいる。

2022-01-11 05:02:11
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

小6時点の学力は3年後である中学3年時の学力の個人間分散の約半分を説明する。中学校入学前の学力が受験学年の学力の土台になっている。フルマラソンで、最初の10キロで開いた差がそのまま20キロ、30キロ、40キロ地点で維持されているようなものだ。同じ速度で走っても差は一向に縮小しない。

2022-01-11 05:08:32
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

21世紀出生児縦断調査の親の子に対する教育期待の設問では、「子どもの意思にまかせる」という選択肢がある。これを選ぶのは「意図的養育」ではなく「放任的養育」の発露と言える。実際、選択率は親大卒者層0~2の順に42・36・26%と非大卒層において高い割合だ。

2022-01-11 05:18:51
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

また、親が「子供の意志に任せる」うち、子が大学進学期待を持っている割合は親大卒者数0~2の順に32・48・65%だ。両親大卒層は「子供の意志に任せる』割合が26%と、そもそも0~2すべての層の中で最も低いのだが、そのうち最も高い割合(65%)で、本人が大学進学を期待している。

2022-01-11 05:23:38
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

親が希望せずとも子が大学進学を規範としてすでに内在化していると解釈して差し支えないだろう。一方、両親非大卒層の親の42%は「子どもの意思に任せる」とするが、そのうち32%しか子本人が大学進学を期待していない。

2022-01-11 05:30:48
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

「子どもの意思」は「生まれ」によってだいぶ異なるので、子に「任せる」意味合いも変わってくるのだ。  「意図的な養育」を受けることで多種多様な経験を蓄積し学校教育に適応してきた高SESの生徒は、自分が大学に行くような人間であり進学は当然のように可能だ、という感覚を持つと解釈できる。

2022-01-11 05:34:33
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

一方、放任的養育によって構造化されていない日常生活を送ってきた低SESの生徒は、他の生徒よりも低く評価される経験を積み重ねて、進学に対する現実味を感じることができなくなるのかもしれない。身近なロールモデルである親の大学時代の思い出話の有無も格差の背景にあるだろう。

2022-01-11 05:38:16
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

進学期待格差は小学校に入学以後積み重なってきた経験や自信、学校教育との親和性、それに、普段の家族内の会話による規範と期待など社会の中における自らの位置付けが反映されていると考えられる。

2022-01-11 05:43:19
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

21世紀出生児縦断調査を用いて中学生の学習努力量の差を見てみよう。中学3年間で両親大卒層と両親非大卒層では461時間の努力量の差がある。公立中学校に通っている生徒だけでみても、両親大106卒層と両親非大卒層では、義務教育の9年間の学校外学習間量の差が平均で628時間となる。

2022-01-13 18:24:16
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

両親大卒層の公立中通学者の小学校学習時間の平均が1903時間であることと比べると、同じ両親大卒層でも私立中に通うことになった生徒たちの小学校時代の学習時間は(3836時間)際立って長い。

2022-01-13 18:25:03
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

第三章で確認したように、小学校の段階ですでに、「多様な子がいる公立学校」はSESという観点から幻想に過ぎなかった。日本全体を俯瞰してみれば学校間格差は明確に存在している。これは、みなさんの一回限りの特定の学校における小学生経験が社会全体の平均とは限らないことを意味する。

2022-01-13 18:25:40
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

15歳時の「くらしぶり」の自己評価が「ふつう」でも実際に大卒となった人たちの階層指標は非大卒層よりも高かった結果を思い出してほしい。あなたが大卒であるのなら、データを基に今一度本当に「平均」的な学校経験だったのか問いかける価値はあるだろう。

2022-01-13 18:26:44
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

学校間・地域間の格差で無視できない小中学校の違いは、私立校進学者が全体に占める割合だ。小学校では私立校在籍者割合は全体の1.2%だが中学校では7.2%となる。私立校への通学は、近所の公立校では得られない構造化された時間を子に与える行為であり、

2022-01-13 18:27:20
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

「意図的な養育」の一環として理解できる。両親大卒層が私立校に集まるので、学校の設置者種別(国公私立)はわかりやすい格差の象徴だ。中学でも「多様な人がいる公立校」は「生まれ」という観点では幻想に過ぎない。学校間で、生徒のSES属性に偏りがあり、それは「校風」「学校文化」につながる。

2022-01-13 18:29:01
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

都心部の私立熱は主に両親大卒層のものである。同じ東京都区部でも両親非大卒層の大半は公立に通っているわけで、地域を限定しても階層によって早い時期に受験して私立を選ぶことが「現実的な選択肢」な層と公立通いが「当たり前」な層に分かれている。階層×地域分断なのだ。

2022-01-13 18:35:10
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

21世紀出生児縦断調査のデータで、公立中学生の通塾地域格差を確認しよう。両親大卒層は三大都市圏・大都市に住む傾向にあるので、「地域格差」には階層格差が含まれている。住んでいる地域の親学歴の高さは地域水準の教育期待を介して通塾と関連している。

2022-01-13 18:37:03
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

どのような社会経済的文脈の近隣に住んでいるのかで、親子の大学進学期待、通塾、学習時間が異なる。住んでいる「近所の同級生」によって「規範」が異なる。目に見える範囲の平均(「みんなと同じぐらい」)で走っていても、その集団そのものが全体の中でトップ集団であったり、

2022-01-13 18:51:30
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

すでに平均からも引き離された集団であったりと大きく違うのだ。  小学校入学以後に確認される格差は、義務教育期間を通してゆっくりと拡大する。授業内容が平易であれば言語力に格差があることは認知されない。ワークテストや通知表も、能力差として児童に明示されない限り、

2022-01-13 18:53:52
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

格差は潜伏したままだ。でも、それは存在しないことを意味しない。  選抜まで年月がありカリキュラム量も多くなく順序づけを伴うテストがない状態では「生まれ」による格差は可視化されづらい。しかし、それは格差そのものがないことを意味しないし、

2022-01-13 18:58:29
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

むしろ全員に「平等な」機会が与えられたという見なしが成立してしまい、結果は自己責任と理解される副作用もある。  中学校生活は、小学校ではなかなか可視化されないSES格差が、「選抜」という現実が近づくにつれ炙り出され、顕在化する過程だ。

2022-01-13 19:00:53
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

中学校に入っても生徒は親大卒者数によって異なる学力・教育のゴールを持ち、時間の使い方(通塾・学習時間・メディア消費)にも違いがある。公立中学校であっても学力、大学進学期待、通塾、学習努力量、メディア消費、親の学校関与、これらすべての観点で「ふつう」が学校SESによって異なる。

2022-01-13 19:03:44
花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

また、特に都市部では高SES・高学力層が私立中学に抜けるため、公立校におけるSESと学力は小学校より均質化する。高い学力があり、大学進学期待を持ち、学習努力を惜しまない層がいなくなるのだ。これは平均が下がることを意味する。

2022-01-13 19:29:47