ヒーロー派遣会社

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L い。でも、後悔しているかと言われたらビミョーだ。ああでもしなければ、勝てなかったのも間違いない。 「あ、課長から、言付けがあります。全て自分の責任だから、アスカさんは気に病むなと。プロトのメガーネ化も……」 「そう。奈倉君、貴方に話しておく事があるの」 神妙な顔つきのアスカさん

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi に不安を覚えた。 「視力矯正手術を受けた人がメガーネになるって話、知ってるわよね？」 談話室でアスカさんは買ったコーヒーを僕と自分の前に置いた。 「はい。でもただの噂……」 「本当なの、あれ。研究所はいま、トリガーになる薬の特定を急いでる」 「え？」 なにが言いたいのかわからない。原因

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L は、視力矯正手術？だが、近視は今や全世界の7割が陥る生活習慣病のようなもの。その画期的ともされる手術に問題が？いや、この場合、手術そのものより、その際に投与される薬品か。 「同じ手術、同じ薬でも、人によってなるならないがあるの。眼鏡に対する憧れが強い人ほど、発症率が高いそうよ」

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi 眼鏡に対する憧れ？まったくもってわからない。 「眼鏡教はそういう人々を救うため、となんらかの薬を開発した。最初はただ、眼鏡をかけている気分になれるだけだったわ。でもそれが……」 「その薬のせいで、メガーネに？」 アスカさんが黙って頷く。そんな馬鹿な話、信じられるわけがない。 「信じ

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L られないのは分かる。でも、宗教なんてのは、そんなものなのよ。人が神に願い事をする。自分ではどうにもならないことをね。そして、それが自分達以外の他の人も巻き込む時、大抵は破滅への道を歩むわ」 遠い目をしたアスカさん。僕にも、思い当たる節はある。過去の歴史、宗教戦争はほとんどそれだ。

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi 「それにね。私は見たの、この目で」 なにを？とは聞かなかった。大体の予測はつく。 「人がメガーネに変わるところ。奈倉くんがマコト……倉池さんを止めてくれてよかったと思う」 目を伏せたアスカさんの声は震えていた。ああ、あれはやはり、アスカさんの恋人なんだ。 「マコトは死んだあとも

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L プロトに閉じ込められていた。きっとプロトのAIには、装着者の生死は関係ないのね。戦えれば問題ない。そして、そのAIシステムがマコトの身体を侵食し眼鏡教の開発した薬と特殊な反応をして、怪人化した。これは死亡した人間が怪人化したレアケースだけど、スーツ装着者はみんな眼鏡に憧れが強いそうよ

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@777nagomi 今日も戦っているうちにメガーネに変化した人が何人も」 「え？」 じゃああれは、同僚たちだった？今朝は普通に、「早く一人前になって俺らを楽にしてくれよ？」とか笑っていたのに。 「でもいい知らせもあるの。今日はいままで一番濃く薬が採取できて、これで中和剤が作れそうだって！」 ようやく

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L 終わる？戦いが？少なくとも、怪人化する事がなくなれば、自ずと怪人は淘汰されていくだろう。なんといっても、ヒーローの数は案外多く、各支部にエースはいるのだ。 「近日中に薬は配布されるはず。…その時がきっと最後の戦いになると思う」 「…眼鏡教」 そもそもの元凶。狂ってしまった宗教の末路

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@777nagomi 本当にこれで、終わりになるんだろうか。 「だから奈倉くんはしっかり休んで、怪我を治して！」 「痛っ！」 思いっきり背中を叩かれて悲鳴が漏れる。いまは考えても仕方ない。そのときのために体調を整えるのが先決だ。 アスカさんと別れ、部屋に戻りながら違和感を覚えた。 「あれ……？」 手が震える

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L 震えが止まらない。これは、ひょっとして怪人化の前兆とか？そう思った刹那、身体が急激に熱くなり、立っていられなくなった。終いには、光まで放ちはじめた。 ーこれは、いよいよか。 身構えると同時に、不意に身体が軽くなった。そして、窓ガラスには、パワードスーツを着ていないのに、それに似た姿

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi の僕が映っている。 「え？……あ、あ、アーッ！」 あたまが割れるように痛い。そこからの記憶は曖昧だ。 目の前でビルが倒壊する。アスカさんが、課長がなにか言っているがよく聞き取れない。それどころか目の前に広がる光景には現実味がなく、まるで映画館で映画でも観ているような気分だ。 ……僕

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L は何をしている？ ーコワセ。スベテヲメガネニ。 頭の中で自分とは違う別のものが暴れ回る。だが、同時に、光のようなものが反発するかのように暴れる。身体の中で暴れ回る二つの声。身体は拒否反応を起こし、行動を伴って暴れまわる。 違う、僕は壊したくなんかない！ ハッと気づくとベッドの上。夢？

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@777nagomi 「うなされていた。怖い夢でも見たか？」 おかしそうに課長が僅かに笑い、カッと頬が熱を持つ。 「そう、ですね」 笑って誤魔化し、からからに乾いていた喉へ置いてあったペットボトルの水を流し込む。あれが夢？それにしては妙にリアリティがあった。 「まあ、病院だから怖い夢も見るかもな」 「だか

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L らといって、恥じる事はない。怖いと感じるのは戦士として重要な感覚だ。それに予知夢ということもある」 「予知夢ですか？」 読んでる本を一度置いて、僕に向かって話す課長の顔は真面目だ。だけど、僕にはどうも非科学的な事に思えてならない。 「半信半疑といったところか。まぁ、それでいい」

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi 課長がなにを言いたいのか、僕はさっぱりわからなかった。 「それより、もう明日は退院か。若いと治りが早くていいな」 相変わらず、課長の左足は釣ってある。安静1ヶ月、全治3ヶ月らしいが、スーツの助けがあったからとはいえこの複雑に折れた足で戦っていたのだ。僕には真似できない。 「僕は軽症

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L でしたからね」 はにかみながら、スーツは全壊でしたがと付け加える。 あの後、プロトは完璧に機能を停止。某博士いわく 『考えられんが、プロトの機能を持ってしても、お前さんの全力には耐えれんらしい。すぐに次のスーツの製作に取り掛かるが、さすがにすぐには出来ん』 と、言われ、有給消化が決定

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi していた。 「最終決戦にそなえてゆっくりするといいさ。私も予定外にバカンス中だ」 課長は笑っているが、これのどこが？彼のベッドには大量の書類と本が積まれていて、看護師や介護士にいつも小言を言われている。書類はもちろん仕事のものだし、本もそういう関係の専門書ばかりだ。これで休みだなん

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L だと言われても、普通は思わないし、当然僕も思わない。ただ、本人が休みだというなら、休みなのだろう。 「まぁ、お互い休めるときは休もうじゃないか。これは、ヒーロー以前に人として生きていく上で重要だ」 包帯だらけの手で缶コーヒーを啜る姿は、やはりCMに出れそうな雰囲気だ。そして、その通り

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@777nagomi オファーもきていると聞く。噂によると社内どころか一般人の間でも課長のファンクラブがあるらしい。会員は女性が大半を占めるが、若い男性や子供も多いという話だ。 ……というか。課長は絶対的に女性にモテる。なのに浮いた話は一切なかった。それだけ仕事一筋だからと言われれば確かにそうだろう。

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L ヒーローとは孤独なり。 昔、何かで見た。もしそうなら、少し悲しい存在なのかもしれないが、そもそも職業ヒーローかいる時点でそれはないか。 そういえば、今度の怪人化を防ぐ薬の配布されてら、僕らヒーローはどうなるのか。用済みでリストラかな？何か、再就職先を考えておくべきか。

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi 「お世話になりましたー」 翌日、僕は退院した。 「なにか買って帰りましょ？ごはん、作ってあげる」 「え、そんなのいいですよ！」 車に乗り込み、シートベルトを締める。運転はアスカさんだが大丈夫……じゃなかった。 「ア、アスカさん、安全運転でお願いします！」 「えー、これ以上ないくらい安全

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L 運転だよ私は」 自分で安全運転という人の運転が安全だったパターンを僕はまだ知らない。 「じゃ出すから。寝ててもいいからね！」 「待っ……！」 そこから先は、言葉にならなかった。急激な加速により、僕の身体は慣性の法則に従い、シートに押し付けられ、アスカさんがハンドルをきるたびに右に左に

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@777nagomi 激しく振られる。スーパーの駐車場に急停車したときには、ぐったりと疲れていた。 「なにが食べたい？退院のお祝いだもの、豪華にしなくっちゃ！」 うきうきにカートを押すアスカさんの後ろをふらふらとついて回る。カゴの中身を見ながら不安になったが……気づいてないことにしよう。 「僕が運転

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L でもいいですか、帰りは？」 「あら、運転したいの？いいわよ！」 嬉々としてお会計を済ませたアスカさんは、レジ袋いっぱいの荷物を車のトランクに詰め込んだ。これで、車の助手席でKO（物理）は避けられた。 「じゃあ、出しますね」 アクセルをゆっくり踏んで、車をスタートさせる。

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@777nagomi 車は普通に走り出した。助手席に想いを寄せる女性を乗せて運転なんて、これはもしやデート……!?なんてドキドキしたのは一瞬だった。 「つまんない」 僕の妄想を遮るようにぽそりとアスカさんが落とす。 「はぁっ!?」 若干、キレ気味になってしまったのは仕方ない。 「だって、ただ走ってるだけなんだ

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L もん！」 いや、それが普通の運転だから！そんなツッコミはもちろん心の中だけ。口から出るのは、 「す、すみません」 と、面白くない謝罪だけ。やはり、僕にデートなんてのはまだ早いのか。 「アニメみたいに、車が変形したら、私も戦えるのにね」 少し寂しげな顔をするアスカさん。その瞳は、きっと

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@777nagomi ……キラキラしているに違いない。いや、気づいてたんだけどさ！心的外傷で周りの人間が死ぬのが怖くてすぐに突っ込んでいくというのは聞いた。それもあるんだろうがこの人、根っからのスパロボ好きだ。だからあの専用トレーラーにうきうきだったし、いまもこの車が変形するのを想像しているのか、

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L 遠い目をし始めたし！いや、過去を引き摺って暗い思考に囚われるよりかはよっぽどいいのかもしれない。負の感情と正の趣味？が妙な化学反応をしている気もしなくはないけど。 楽しいような、楽しくないような、妙な気分でいると、車の無線が喋りだす。 『薬の開発に成功。明日運搬なり。各員の配置は、

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@777nagomi 追って連絡する』 「いよいよ明日なのね」 アスカさんの顔がぱっと上がる。 「こんな大事なときに、休みなんていいんでしょうか……？」 きっと薬の運搬には危険が伴うだろう。人員はひとりでも多いほうがいいはずだ。 「なに言ってんの！退院したって言ってもまだ万全じゃないんだし、スーツもない

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L なら仕方でしょう」 確かに、警備の場に生身の人間がいても邪魔か。怪人に対応出来るのはヒーローだけ。最も、その怪人化のリスクを背負って戦ってるのもヒーローなのだが。 「奈倉君は、余計な事を考えずに大人しく休んでおきなさい！」 アスカさんがフフッと微笑む。後部座席の荷物を思うと、僕は

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi 不安だった。 ……ああ。僕の部屋でアスカさんが料理をしている。 なんて感動はまったくなく。それよりも命の危機を感じる。 「んーんんー」 楽しそうにアスカさんは鼻歌を歌いながら鍋をかき回しているが、さっきから鼻を刺すような刺激臭が充満していた。いったい、なにを作っているんだ？カレー

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L だとは言っていた。ただ、漂ってくる香りは、少なくとも僕が知るカレーのものではない。だが、同様にカレーを作って失敗したとしても、食べれないパターンも知らない。それにかけるしかない。 「はーい、お・ま・た・せ！」 ハートマークが語尾につきそうなハイテンションで、エプロン姿のアスカさんが

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@777nagomi 僕の前にカレーを置く。しかしそれはドブ色をしていたうえに、ぼこ、ぼこ、っと謎に沸騰していた。 「さあ、召し上がれ」 アスカさんは夫に自慢の料理を出す新妻の顔をして、期待を込めて僕を見つめている。 「……いただき、……マス」 スプーンを握る手がぶるぶると震える。そもそもこれはカレー

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L なのか？そういえば、まだ確認していない。カレールーを買っていたから、僕がそう思い込んでるだけよ可能性もある。……最も、仮に違ったとしても、じゃあ、これは一体なんなのか？という新たな疑問が生じるわけだが。 「アスカさん、これはカレーなんですよね？」 もはや、直球以外の聞き方をする余裕

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@777nagomi はない。 「……カレー以外のなにがあるの？」 「……スミマセン」 超不機嫌にアスカさんから睨まれ思わず謝っていたが、本当にこれはカレーなんだ……。 あらためて皿の上に盛られる自称カレーと向き直る。手はスプーンを持ち上げたまま、一向に動きそうはない。カレー以前にこれは人間が食べていい

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L ものなのだろうか。だがしかし！目の前では、先の質問で若干不機嫌になったアスカさんが見ている。いや、睨んでいる。これを拒否するということは、その後どうなるかは分からない。 だが、最終的に食べざるは間違いなく"死"を意味する。逆に、食べるは"生"の可能性もあるのだ。そう、見た目あれだが、

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@777nagomi きっと美味しい……はず！ 勢いよくカレー(自称)にスプーンを突っ込む。口もとに持っていきながらも、まだ迷いは生じた。 「……ごくり」 スプーンの上の物体は不気味に蠢いている。本当にこれは料理以前に人間の食べ物か？しかし僕にはこれを食べるという選択肢しかない。目をつぶり、勢いよく

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L 口に入れた。 ドロリとしたものがスプーンから溢れてくる。そして、口から鼻まで突き進むのは口に含む前は感じなかったスパイスの刺激。それも、火を吹くレベル。勢いよく水を飲みたくなるが、目の前にあるのは、何故か手作りされたインド名物のラッシー（自称） カレーと一緒にすると爆発しかねない。

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@777nagomi けれど迷う暇などなく、僕はそれを一気に口の中へ流し込んだ。 ……ところまではかろうじて覚えている。 「美味しすぎて気絶しちゃうなんて。私って罪な女」 ようやく意識が戻ってきて、かろうじてアスカさんのそんな言葉が聞こえた。美味しすぎる？いやいや。味見、しましたか？なんて思いながら目を

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L 向けるも、少し頬を赤らめて嬉しそうな顔をしているアスカさんを見てしまっては、何も言えなくなってしまう。実際、アスカさんはズルいのだ。普段の大人びた姿も、時折見せる、少女のような可愛らしさも、全部可愛くて、愛おしくて、だから、だから、守りたい。その笑顔を曇らせたくない。

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@777nagomi ………でもこのカレーはギブアップさせてください。 「あんまり食べなかったね。まだ具合、よくない？」 片付けをしながらアスカさんは心配そうだ。 「そ、そうですね」 うっ、嘘をついてしまった。入院中も悪いのは怪我だけで、残さず食事を食べていた。いまだってお腹はぐーぐー鳴っている。 「もう

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L ひょっとして、甘えてるの？」 そういうと、アスカさんはスプーンでカレーを掬って、僕の口に持ってくる。絵面だけ見ればご褒美だが、現実は逃げ道のない拷問だ。 「ほら、口をあけて、あーん」 う、うぅ、観念して口を開けると、一口二口と、カレーが放り込まれる。しかし、身体は喉を通そうとしない

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@777nagomi 「うっ、ううう〜」 これ以上入れられまいと口を押さえて拒否する。 「なあに？お残しはダメよ」 アスカさんの目はマジだ。このままではヤラれる。いくらアスカさんを慕っていても、それだけは許してもらいたい。 「ほら、口を開けて？」 「うー、うー！」 スプーンを手にアスカさんが迫ってくる。

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L その時、天の恵みか、はたまた女神の慈悲か。社内の緊急用アラームが鳴り響いた。驚いて、それぞれのスマホを見る僕とアスカさん。ちなみに、驚いた拍子に口に含んでいたカレーは飲み込んだ。……僕は明日の朝日を見えないかもしれない。 そんな心内とは関係なく、スマホは司令室からのメッセージを

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi 伝えている。全社員出社、怪我や病気で動けないものを除き、休日のものも出社せよ。 「奈倉くん。残念ながら休みは返上みたいね」 「そ、そうです、ね」 全社員出社だなんて緊急事態なのはわかるが、それ以前に僕の身体が緊急事態だった。遅いくる吐き気と便意。さらに目の前がぐるぐる回る。 「奈倉

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L 君、君はここで待機よ！」 気持ち悪さに必死に抗いながらアスカさんを見ると、さっきまでとは違う、キリリとした顔をしている。 「君は今日退院したばかりで、戦える状態じゃないわ。それにスーツだってない今、足手まといでしかない。だから」 言葉とともに、腹部に強い衝撃が走った。 アスカ、さん

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi 僕は……。 気がついたら部屋の中は真っ赤な夕日に照らされていた。……違う。それほどまでに炎が暗闇を焦がしている。 「いったい、なにが……？」 スマホがひっきりなしに通信を流す。 『こちら、ニーハチ地区！怪人化により戦闘……ぐはっ』 『至急応援、応援をこ……うわーっ、助けてくれ』

和美 @777nagomi

@megane_ryman_L 聴こえてくる通信は絶望的なものばかり。そして、聞き覚えのある声が聞こえた。 『増援は不可能。各員の健闘を求む。なんとしても、薬を守れ！』 課長。どこで戦ってるかは分からない。けれども、入院しているはずの課長が、少なくとも指揮を取っている。だのに、僕は寝ていていいのだろうか？

眼鏡リーマンスキー @megane_ryman_L

@777nagomi 『イチハチ地区壊滅。繰り返す、イチハチ地区壊滅……！』 さらに悲痛な声が響いてきて反射的に身体が動いた。あれは、アスカさんの声だ。壊滅、って？じゃあ、アスカさんは？ 「行かなきゃ！」 スーツのない僕になにができるかわからない。それでも、アスカさんひとり守るくらいはできるはずだ。