「善逸さん、お兄ちゃんのこと大事ですか」 「そりゃね、親友だと思ってもらえてたらうれしいなあってくらいにはね」 「それ以上でも好きですか」 「人の心を無遠慮に暴き立てようとするもんじゃありません。たんじろうじゃあるまいし粋じゃない」 「…時世が、どんどんつらい方向に行ってます」
2021-09-12 20:16:36「私、もう行き遅れですけど、それでいいって言ってくれる人だそうです。私、お兄ちゃんが死んだ後の竈門の家が心配なの」 「俺が守るよ?」 「お兄ちゃん、それをきっと望んでないから」 「えっ面と向かって頼まれたよ。ねずこちゃんのことも」 「だいぶ深刻な顔してたでしょう」 「まあそりゃね」
2021-09-12 20:16:36「言えないことがあったんです。もしかしたら、お兄ちゃん本人も気づいてすらもないのかもしれない。カナヲさんや子供たち、今は伊之助親分や蝶屋敷も頼れるけど…あそこも何時まで余裕があるかわからない。縁談の先はこんな炭売りの家じゃ手の届かないほどの名家です。善逸さん、お願いします、
2021-09-12 20:16:37私と共犯になってくれませんか」 「聞いた時点で逃げ場ないじゃんかそれ――そりゃ、たんじろう、草葉の陰で泣くんじゃないかな」 「そうです共犯です。善逸さん。私の決意を、あなたにだけは聞いていてほしかった。兄が焦がれたあなたにだけは。一番最初に私たちを認めてくれたあなたにだけは」
2021-09-12 20:16:37「――条件がある、ねずこちゃん」 「はい」 「その人を好きになりなさい。努力目標なんていうな。絶対になるんだ。君は自分の力で幸せになる努力をするんだ。そうしたら、俺は君の助けに全力でなるよ」 「――なれるでしょうか」 「あれ弱気。いい顔してた御仁じゃない」 「知ってるんですか!?」
2021-09-12 20:16:38「俺の聴覚舐めちゃだめだよ。出刃亀は別に好きじゃないけどいっとう得意」 「恋は、素敵だよ、ねずこちゃん。俺は君たちのことが好きでほんとによかったって思ってる」
2021-09-12 20:16:38やっぱりねずこちゃんはちゃんと信頼して恋をして結婚して、それでも時とともに変質した部分があってそれがあがつまくんに流れ弾被弾したって感じの方が救いがあるな
2021-09-12 20:43:34いやでも脳内の善が混乱している カナヲちゃん家族とねずこちゃんとどちらについて生活してたらいいのかって たぶんねずこちゃんも同じことで混乱している そういう意味で君ら似たもの夫婦になれたよ…
2021-09-13 01:57:30この話のねずこちゃん兄夫婦気に掛け過ぎてめちゃくちゃ行き遅れそうなんだな…そして兄が心配する なんだって善はねずこを娶らないんだって思ってるそれですべては解決だろ なんでだろうな
2021-09-13 02:00:42嫁ぎ先の人がねずこちゃん大好きすぎて兄を看取るまで待っててくれたって言う可能性あるな ねずこちゃんにはデロ甘にいい顔するからねずこちゃんは大概幸せ でも善のことが処理しきれなかった旦那さん
2021-09-13 02:12:10そんなんだから令和で伊之助にたいそう詰められる善♀がいる 「お前、なんでそれねず公に言ってやらなかった」 「だってそれ以外申し分なかったんだよ。普通にいい人だったと思うよあの人」 それに、それ以外にあの家族の傍にいる方法はなかったと今でも思うぜ
2021-09-13 02:46:21「それでも、ねず公には言ってやるべきだったろ。知らねえとは言わせねえぞ紋逸。あいつ結構泣いてただろ」 ――ぜんいつさんだけが、家族の中に入れない、って。 「お前の自己満足にねず公付き合わせたのは、お前が卑怯な弱味噌だったってだけだ」 「相変わらず男前だよお前は。返せる言葉が全くない」
2021-09-13 03:04:56――まあでも、戦後には結構落ち着いたのだ。 「どうしたらもうちょっとねずこと仲良くなれますか」って、情けないような悩みを相談されることも増えた。 時に性生活すら突っ込んでくるから、おい童貞にそんなこと訊くのかよほんとお前はあの男に似ているな!なんて呪いをこそこそと唸ったりして。
2021-09-13 03:35:06善♀の親 「……だってさあ、どうやったらまともに育てられるって言うの。何もしてねえのにこんなあからさまに傷跡だらけの子供をさ。世間体とかそういうレベルですらないじゃない?ただでさえ核家族とかそういう、つながりの薄い時代の夫婦がさ。難しいだろ、実際」
2021-09-13 04:01:49爺ちゃんは厳しかった。お嬢様学校って有名な女子校に俺を放り込んでおきながら、同時並行で鬼狩りの修行をつけた。むしろ鬼とはこれかとちょっと思った。まあ、あの時の俺にはそれが必要だったし、半分は俺から頼み込んだのだ。否やはない。
2021-09-13 04:21:36ああいう私立の学校は、ちょっと問題のある子供も受け入れるだけの間口があった。清楚な恰好って、つまりは肌を隠すんだ。そのうち、制服がスカートとズボンでカスタムできるようになったのもよかったな。調べてみたら産屋敷がバックにいる学校だったので力が抜けた。本当、お館様の慧眼はすごい。
2021-09-13 04:21:36「ん?うーん」と善逸は首を傾げた。 「なあたんじろう、俺は結構結婚に夢を見てるタイプなんだ」 「愛し愛されてないと、お互い幸せじゃないだろう」 「だからねずこちゃんとは結婚しない」
2021-09-13 04:45:53本当は、ねずこの伴侶の嫉妬心などかわいいものであったのだ。 「……伊之助はさあ、ねずこちゃんのお屋敷にほとんど来たことなかったよねえ」 「あそこはピリピリ、居心地が悪かったかんな」 「いやいや、竈門兄妹やお前ら鬼殺隊が特殊だっただけだぜ、あれは」
2021-09-14 06:07:28優しくて、勇敢で、時に蛮勇だとすら思わされる純真。 あの下男は妖怪なのだと、眠りに落ちる寸前の刹那に脳味噌の空洞に響く讒言の音。 妖怪サトリ、われらの心を、悪心を羞恥をすべてを読んでつまびらかに明かしてしまう。
2021-09-14 06:07:28「正直、俺にはお前らがわからん。あんなところでよくも一生過ごしたな」 「俺ぁ奉公の玄人だからさぁ。プロなのよ。あそこより環境悪いとこで過ごしたことなんざ何度もあるわ」 でも時々、疲れるからさあ、あの檻の中に逃げてたの。
2021-09-14 06:07:28「ねずこちゃんにはばれてたかもなあ。鬼と鬼殺隊士だったころから、ああいう陰口の類はいっぱい拾っちまう感覚があったかんね俺たちは」
2021-09-14 06:07:29「一年、かまどたんじろう」 その低い低い憤怒の声に、甘ったれた鼻声で呼ばわれたいと思ったことは、六人兄弟の生まれのてっぺんに生まれたが故の悪癖だろうか。
2021-09-14 06:07:29鬼殺隊士になった時。 鬼殺隊士という任から解かれることが許された時。 二人のお館様は、孤児である俺たちに戸籍を与えようとしてくれた。 伊之助は「要らねえよ」と言っていたけど、俺は強くそれを勧めた。少しだけ、伊之助が迷うような音を立てていたこともあるし、その上。
2021-09-19 04:54:48結局伊之助は戸籍を作ってもらうことに同意した。…というよりは、元の戸籍があったのを探し出して現在に紐づけた、と言った方がよかったのかもしれない。 「お前はそれでいいのかよ」 伊之助が訊いたが、俺は笑って頷いた。竈門兄妹はこんな措置をもとから知らないだろう。
2021-09-19 04:54:48家系図をさかのぼることもできない根っからの孤児が戸籍を持ったところで何になる。 それは、同時にねずこちゃんを生涯決して娶ることがないという己の意思の形でもあった。
2021-09-19 04:54:49「善逸さん!今は戸籍ありますか!」 「ありますね普通に困るしね生活するのに。というか戦後にもちゃんと従業員として戸籍貰っちゃったでしょ。墓は無縁仏にしてもらったけど」 「じゃあ今度こそ私と結婚してください!」 「駄目ですよ結論が一足飛びなんだよなこの兄妹~」
2021-09-19 10:22:02戸籍制度が広く周知されたばかりの明治の世ならもぐりこむのはたやすかったろう。しかし今は既に大正の世だ。孤児に戸籍を与えるのには、それなりの額が動いてしまうことも知っている。
2021-09-25 17:32:25爺ちゃんは優しい。優しかった。 でも鬼殺隊に問答無用で放り込むって言うのは要は死ねっていうことだ。大義のために死ねという。 今と何が違うのだろう。それでも恭順できない己は、何を違いと認識しているのだろう。
2021-09-26 03:04:17関東大震災時のあの事件 たまたま震災時居合わせたので救助に当たったら髪色のせいでキレられ追い掛け回されてあわやリンチ寸前まで行く善(あえて受けるか呼吸使って逃げ切るかはその時次第)
2021-09-26 10:12:40その後新聞とかであの事件のこと知ったりして 「たんじろ」 「…行かせないぞ」 「わかってる。俺が行っても悪化する。行かねえから手ぇ放せって握力すげえな」 蝶屋敷として現場に出張した伊とかアオイちゃんとかからも来るな来るなと言われている 混迷
2021-09-26 10:12:41・密告される ・拷問を受ける(もしくは戦場を疾走せよ)(しないと腱斬るぞ) ・スパイになれ(もしくは戦場を疾走せよ)と連合国側の間者に言われる(上層部付近の早耳でもいいし獄中でも何らか聞いてるだろう?) ・あまりにもスパイ勧誘がわかる人にはわかるのでまた軽率に密告されるループ
2021-09-26 20:25:36