今日の天気は快晴、だが、季節的には秋も大分進み、気温も徐々に低くなる中、壱ノ笠にあるデパートの屋上では一部の熱気による盛り上がっている場所がそこにはあった。#事務所物語
2019-02-01 18:31:48お金を入れたら動き出す遊具を横に、特設ステージが設けられた上には我が街のローカルヒーローの名が書かれた看板が掲げられ、今か今かと待ち望んでいる親子連れたちが居る中、なぜか朝松紗南と秋山愁治の二人もそこに居るのである。 「秋山所長…、やはり私、他の所見てきます…」
2019-02-01 18:35:21いくら1番後ろの席とは言え、周りに居る子供には不思議そうに見られているし、その連れでもある親からも妙な視線を感じるわで、正直言ってツラいと思う紗南であるが、愁治はそんな事すら気にせず、今か今かとヒーローを待ちわびている。 ――秋山所長にこういう趣味があったとは思わなかった…。
2019-02-01 18:37:54そんなことを思っていると、ステージ横からカラフルな服を着たお姉さんが登場し「みんな、今日は来てくれてありがとう!」と明るい声で言った後、ショーおなじみのお約束を喋り終えた途端に怪しげな音楽が流れ、お姉さんが悪役な部下二人につかまりそうになった所を、姿も見えぬ声がそれを制したのだ。
2019-02-01 18:41:51その声と共に現れたのは正に正義の味方で、子供達は興奮しながらも応援し始める。 ――やっぱり、こういうのは子供でも男女関係なく応援したくなるものなんだなぁ…。 そう思って紗南は横を見れば、愁治も子供に負けじと大声を張りながら「ブッ飛ばせーー!」と応援している。
2019-02-01 18:44:53ヒーローが部下二人を倒し、お姉さんを助けたのも束の間、高笑いするような声が聞こえ始め「何処にいるんだ、出てこい!」とあっちこっち見ている中、ヒーローから見えないように悪役のボスらしき人が舞台の袖から現れた途端、子供たちは「うしろ!」「まえみてー!」等という声をかけはじめる。
2019-02-01 18:48:53背後から攻撃を受け、ようやくヒーローはボスの存在に気付き「お前か!また悪さをしているのは!!」と言い叫ぶ。 「いかにも、ワシはシズリス団の幹部だ!ガハハハ!!!」 ヒーローには勿論、観客席側にも向かって言うものだから、本当に小さい子は泣き出してしまったが、ショーは続いて行く。
2019-02-01 18:51:55「お姉さんは危ないから、下がっていて」 「うん!」返事をしたと思えば、観客席の方を向き「みんなの応援で彼は強くなれるの!だから、今まで以上に応援してね!!」と言った途端に向こうの対戦が始まり、子供たちは今まで以上に応援し始めたのだ。
2019-02-01 18:54:25押して押されての攻防が続き、敵の幹部が一次的に勝ちを納め再び高笑いしている中、ヒーローは立ち膝状態で自身の負けを認めようとする台詞を言っていた時だ。 「がんばって!」「まけないで!」という声援を更に受けた途端、ヒーローはやる気を取り戻し、一気に形勢を逆転し、幹部を倒したのである。
2019-02-01 18:57:26「覚えてろよ!俺を倒しても、シズリス団はいつでも蘇るからな!!」という捨て台詞を言いながら去り、ヒーローは皆の居る前で「何度蘇ろうとも、俺には守るべき皆がいる!そして俺は、これからも、この街の平和を守るんだ!!」と言い、如何にもヒーロー然としたポーズをとり、ショーは終了した。
2019-02-01 19:00:36「今日も大活躍だったな!」 ヒーローショーも終わり、愁治の手にはそのヒーローと一緒に並んで同じ変身ポーズをとっているインスタントカメラで撮った写真があり、それを見る度に「はぁ~」と、満足げに溜息をもらしつつ、店内を歩いている。#事務所物語
2019-02-02 19:45:57「そっ……、そうですね」 紗南にとって男の子モノのヒーローと言えば、小さい時に好きなアニメが入る前にちょこっと見た程度だったり、同い年の男の子がその事で盛り上がっていたのを横にいたのを聞いていたくらいの印象で、よもや上司でもある秋山愁治が今もこうして好きでいる事に驚きを隠せない。
2019-02-02 19:48:35ましてや、今回の場合はテレビに映っているヒーローショーではなく、地元発のヒーローショーなのだから、そこまで好きだったのかというを思った時であった。 「お前は今こう思っただろ」と愁治がいきなりいうものだから「えっ?」と聞いてしまう。
2019-02-02 19:51:17「『普通、大の大人がこういう所に来るものですかねぇ…』ってよ」 言おうとしたのを抑えたつもりでは居たが、秋山愁治の場合【人の心情を読む事が出来る能力者】な上に、街では数少ない【多彩能力者】だったという事を改めて痛感し「ははは…」と、照れ笑いでごまかし終えたところであった。
2019-02-02 19:54:46「よし、次は路面電車で二つ行ったところのデパートでやるヒーローショー見に行くぜ!」 隣でワクワクしながら気合を入れている事務所長を横目に、紗南は「事務所、大丈夫なんですか?」と聞くものの「そんなに何時も、人が来る事務所じゃねーだろ!」と返されてしまう。#事務所物語
2019-02-03 20:37:03――駄目だ、今日の秋山所長は完全に休日モードになってる…。 そんなこと口に出さず、エスカレーターに乗り、正面玄関へ向かっていた時「あっれー、紗南じゃない!?」と、人が多い店内の中でも通る明るい声に呼び止められ、二人は足をとめる。
2019-02-03 20:39:28その声の主は二人の方へ向かい、紗南を見て「久しぶりだねー!元気してた?」と聞いてくる。 その勢いに思わず後退りしそうになるも、紗南も「まぁ、それなりには…」と返す。
2019-02-03 20:43:10「誰だ?」 隣に居た愁治に聞かれ、紗南が紹介しようとしたが、向こうから「白波レイユです、紗南とは高校時代からの仲です!」と、紗南に会った時よりも更に勢いよくいうモノだから、質問した愁治でさえも「元気があっていいな、おい」と同じく後退りしながら返す。
2019-02-03 20:44:27「元気だけが取り柄ですから!」 「成程な、俺の名は秋山愁治だ」 レイユはハァッ!といいながら両手で口を塞ぎ、何かを思ったようだが、あえて口には出さなかったが、その心情を読み取った愁治は「残念ながら、俺は長身の上司だ」と言えば「そうなんですか?!」と驚いてしまうレイユであった。
2019-02-03 20:47:28「レイユ、ところで今日はどうしたの?」 紗南がそう聞くと「今日はお休み、そういう紗南と愁治さんは?」と聞かれ「あー…、ちょっと、ね」と、曖昧に返す姿を見て「俺達は仕事の依頼帰りみたいなもんだ」と助け舟のように愁治が返す。 「へぇ~、そうなんですか~」#事務所物語
2019-02-04 18:43:53――本当は秋山所長がヒーローショー見たくてココに来た、なんてことは言えないもんね…。 口には出さなかったが、それが表情に出ていたのを見た愁治は「(この事は、くれぐれも黙ってろよ、長身)」と黙ったまま返したのである。 なお、一切として、口には出していない。
2019-02-04 18:45:37「ここで会ったのも何かの縁ですし、よかったらお茶でもどうですか??このお店出てちょっと歩いたところに美味しいカフェがあるんですよ!」 「えっ、でもまだ予定が…」 予定と言っても、違うデパートの屋上で行われるヒーローショー。紗南が断ろうとしたら「行けばいいじゃねぇか」と愁治がおした。
2019-02-04 18:50:55「良いんですか?」 「俺は別の用事があるが、そこに長身が居なくても問題はないからな」 「でも…」 もしまた、この前みたいに秋山所長の身に何かがあったら――という場合の事を考えてしまう不安が襲いそうになるが、愁治は紗南の肩を軽く叩いて言った。
2019-02-04 18:54:43「心配するなよ、長身。俺なら大丈夫だ。今日はもう、仕事も終わってるんだ、このまま帰っても良いからな、長身」と言い、愁治は二人の下へ去って行った。
2019-02-04 18:56:05白波レイユと朝松紗南は近くの喫茶店に入り、二人用の席へ案内され、椅子に座るとメニュー表を渡され、レイユはコーヒーを頼み、紗南はカフェラテを頼めば、店員は「かしこまりました」と言い、メニュー表を引き下げて行ったのを見て、レイユは先ほどから気になっていた事を紗南に聞く。#事務所物語
2019-02-05 20:00:46「ねーー、紗南は上司さんの事どう思ってるの?」 しかし、当の本人は外の方を黙って見てばかり。もう一度名前を呼んでみるものの、一切こちらに気付かない。 溜息を一つつき、レイユは紗南の顔の近くで猫騙しのようにパンッと手を鳴らした時、ようやく「あぁ、ごめんなんだっけ?」と紗南は聞いた。
2019-02-05 20:04:59「あの上司さんの事、どう思ってるの?」 「秋山所長は秋山所長だよ、私の仕事場の上司。歳の割にはちょっと生意気な所あるけどね、でも、やっぱり頼れるところはある感じかな」 「成程ねぇ~、その上司さんて好きな人とかいるのかな?」 「さぁ…、聞いたことないかも……」
2019-02-05 20:08:07「もしかしたら、紗南が知らないだけであの上司さんにも好きな人いたりしてね??」 「そうなのかな…、そこらへんよくわかんないや」 頭を掻きながら言う紗南の姿を見て、レイユは「まぁ、頑張りなよ紗南!」と返すが、無論、本人はなんでそういう事を言ったのかは理解していない。
2019-02-05 20:09:56頭にハテナマークが浮かんでいるような紗南の顔を見て、レイユが笑いそうになる所で頼んでいたコーヒーとカフェラテが運ばれ、二人は一口飲み、レイユは話題を 変える。 「そういえば、私の職場で聞いた話なんだけど、この街にヒーローが居るらしいのよね」 「ヒーロー?」
2019-02-05 20:12:50「そう、壱ノ笠の平和を守るヒーロー。なんでも、悪い軍団もいるとかいないとかっていうのも聞こえてたけど、私ちゃんと聞いてなかったからそこらへんは曖昧なんだよねぇ」 レイユの職場も今いる場所とは違う喫茶店で、お客さんからもお店でも信頼を置かれているという話も聞いたことがある。
2019-02-05 20:15:26紗南自身、まだその喫茶店には行った事がないが、今度キールを連れて行こうかなと思っていた矢先に会ったのだから、これでチャラになる…訳ではないよなとは思いつつ、紗南は「そのヒーローって、誰がなっているとかもわからないの?」と聞く。 「うん、そこまではわからなかった」
2019-02-05 20:17:47「そっかぁ…」 こういう話を秋山所長にしたらきっと真っ先に反応して、探しに行くぞ!とか言いそうだなと考えつつカフェラテを飲む紗南であったが、二人の席の後ろで「お困りのようですね、お嬢さん方?」という声がかかり、二人ともそちらの方を見る。
2019-02-05 20:19:31長い髪を横に一つでまとめ、糸目な上に半袖スーツを着ているニコニコ顔な男こと、前沢慎呉が二人の下へ来て言った。 「その話には続きがあるんですよ」
2019-02-05 20:23:14レイユが「紗南、だれこのひと?」と少し驚いたような声で聞くが、紗南は「前沢慎呉さん、情報屋で秋山所長の高校時代から友達なんだって」と紹介する。 「紗南さん!俺の事そこまで覚えていてくれたなんて、俺凄い感激です!」
2019-02-05 20:25:12今にも泣きそうな声でいうものだから、紗南は「慎呉さん、大丈夫ですか?」と言いながら、ポケットに仕舞ってあったハンカチを差し出そうとするが「大丈夫です!!お心遣い感謝します」と言い、自らのハンカチを取り出し、出そうになった涙を拭き。 改めてレイユの方を見て自己紹介をし始める。
2019-02-05 20:27:03「改めまして、紗南さんの紹介にもあったように、俺はこの街で情報屋を営んでます、前沢慎呉です。紗南さんの所で働いてる上司ってか、あの事務所長でもある愁治とは高校時代からの腐れ縁なんですよね、ハハハ」 そう言って、慎呉はレイユに名刺を差し出した。 「へぇ、前沢さん。すごいですね…」
2019-02-05 20:29:23「それよりも、お二方が話していたヒーローについてだけど、それは俺の方でも情報収集している所なんだよね」 「そうだったんですか」
2019-02-05 20:31:47ウンと頷き「俺が掴んだ話によると、もしかしたら、街でいま売り出しているローカルヒーローや悪の軍団が本当に活躍してるんじゃないかっていう話らしいんだけど…、そこまで詳細な事が話が流れていないから、未だに謎のヒーローなんだよね」 「なんか、それ凄いですね…」 「確かに…」
2019-02-05 20:34:08「今は俺の力だとここまでかな、また新しい情報が入ったら更新されるけどもね」 そう言って、慎呉は席を離れ「それでは、お邪魔しました」と頭を下げ、喫茶店を後にした。
2019-02-05 20:35:24翌日、紗南が仕事場でもある秋山事務所へ行き、何時ものように愁治が飲むコーヒーを白マグに淹れ、それを渡しながら慎呉から聞いた「壱ノ笠にはヒーローが居る」という話をした途端、新聞のテレビ欄から目を外し「なんだと?!」と勢いよく聞いてきたのだ。#事務所物語
2019-02-06 20:00:09「それはホントなのか!?」 どうどうと、馬を落ち着かせるように紗南は両手で愁治を抑えながら「でも、前沢さんだってまだ情報を全て得た訳じゃないですし…」と返すものの「アイツの情報はどーでもいい、この街にヒーローが居ると、俺は信じたい!」と興奮と熱が籠ったように言う。
2019-02-06 20:05:22すると、事務所の呼び鈴が鳴ったのと同時に愁治も席から離れたものだから「今日は秋山所長が出るのかな?」と思っていたら「あぁ、俺トイレだから、依頼人だったら入れておけよな」と言い、そのまま応接室を出て行ってしまい、紗南は短い溜息をつくものの、こちらも応接室を出てすぐの玄関へ向かった。
2019-02-06 20:09:27朝松紗南が何時もように事務所の玄関扉前まで行き「どちら様ですか?」と聞けば「しゅーじおじさん、いる?!」と、幼い男の子の声が聞こえ、紗南は一瞬、誰の事だろうと思ったがすぐに「もしかして、秋山所長の事かな」と辿り着く。#事務所物語
2019-02-07 19:57:07「っていうか、ここ開けてよ~」 と急かされ、紗南は「あっ、はい!」と慌てて扉を開けば、愁治と似たような髪色だが、目元はハッキリと見え、今日は肌寒いのに上は長袖で下は短パンという格好した男の子が居たのである。 「おねーさん、だれ?」 「あ、私は朝松紗南と言いまして、ココで働いてます」
2019-02-07 20:01:29「へぇ、そうなんだ~」 「ところで、君の名前は?」 「ん、僕?僕はね、秋山結って言うんだ。よろしくね、お姉さん」 「うん、よろしくね、結くん」
2019-02-07 20:04:32トイレから出てきた愁治は「おい長身、誰が来てんだ?」と聞きに来る。 「あぁ、所長」 「しゅーじおじさん、久しぶり!」 「おぉ、結久々だな。前に会った時よりも大きくなったような気がするな…」 「そのうち僕がしゅーじおじさんを超すからね!」 「言うようになったな~、結!」
2019-02-07 20:07:10愁治は結の傍まで来て、髪を両手でわさわさとしている。 「やめてよー」と結は言うものの、愁治は「おらおらおら~」と言いながら手を動かし、ある程度満足したのか「そういや結、今日はどういう用事で来たんだ?」と手を止めて聞いた。
2019-02-07 20:09:23#事務所物語【依頼人メモ】 名前:秋山 結(アキヤマ ユウ) 性別:男 年齢:10 職業:小学生(メモ・秋山所長の親戚のお子さん)
2019-02-08 19:09:09結は応接室のソファで大人しく座っており、おじでもある愁治と色々と話している声が台所まで聞こえつつ、紗南は愁治のコーヒーと自身と結の分のココアを淹れ、二人の居る方へ向かう。 「はい、どうぞ」 「ありがと、おねーさん」 「秋山所長の方は新たに淹れ直してますからね」 「サンキュな」
2019-02-08 19:12:44何時ものようにコーヒーが入っている白マグを受け取り、愁治が一口飲んだところで「しゅーじおじさんは、このおねーさんと付き合ってるの?」と、いきなり聞くものだから、愁治は勢いよくコーヒーを誰も居ない所で吹いた後に言葉を返そうとするのと同時にむせてしまう始末だ。
2019-02-08 19:15:25