高校時代からの友人でもある白波レイユと偶然の再会をした朝松紗南は「壱ノ笠の平和を守るヒーローと悪い軍団がいる」という話を聞き、それを事務所長でもある秋山愁治に話した途端、何時も以上に興奮し出したのは、彼自身が特撮を始めとしたヒーロー好きとしての一面があったのだ。そんな中、愁治の親戚の子でもある結が事務所へやって来てレイユと同じことを言いだしたのだから、何時もよりも気合を入れて依頼を受けたのと同時期に、街では知らぬ間にヒーローと悪の対峙が繰り広げられていた…?! (※連載当時のまま掲載しているので、誤字脱字があります)
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伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

ただその思いだけで突っ切り、到着の音が鳴ると、目の前には史織本人がそこに立っていたのである。 「慎ちゃ~ん、どうしたのそんなに怖い顔しちゃって~」 相変わらず、のんびりとした声で迎え入れる姉を見て、当の弟は「ちょっと、聞きたいことがあって…」と返す。

2019-02-27 18:56:51
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「そうなの~、電話でもよかったのに、私に直接聞きに来る辺りは一種の職業病ってヤツなのかしらねぇ」 言われてみれば確かにそうだ、と思うのは正に今更過ぎるだろう。 しかし「本人に会って話を聞く事は、何よりの確証である」というのが情報屋・前沢慎呉の信条の一つでもある。

2019-02-27 19:00:03
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「まぁ、大体そんな感じかなぁ…」 「慎呉ちゃんらしいわね」と納得する史織は改まった表情になり「それで、ご用件は何かしら?」と聞いた。 あっ、と短い声を出し、自身の用件を姉に伝える。 「内容も気になるけど、今朝のコラム記事を書いた人が誰かってのを知りたいんだ」

2019-02-27 19:03:46
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

慎呉の手に握られていた新聞は随分としわくちゃになっていたが、それでも破れていはいないので、史織は指に差されたその記事を見て「あぁ、この記事は確か雷桜君が担当したのよ。ほら、ここにフリーの新聞記者って書いてるでしょう?」と言う。 twitter.com/5jyouTsukito/s…

2019-02-27 19:05:43
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

とある記者のコラム 壱ノ笠にはローカルヒーローや悪い軍団たちが居る、デパートで偶に開かれるヒーローショーで活躍する者達の事も含むのだが、今回の場合は少々事情が異なる。#事務所物語

2019-02-24 20:00:36
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

それは誰が見てもわかる事だ、しかし慎呉にとってはそこではない。 「俺より年は上、下?」 「そうねぇ、慎太ちゃん……いいや慎呉ちゃんよりは年下ね。雷桜君、自分でそういう事は余り言わないタイプの子なの」 「能力者?」 「解らないけど、何時も白い手袋をはいているわね」

2019-02-27 19:09:35
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「外見の特徴は?」 「サラサラの金髪ね、マッシュルームっぽいけどそこまで多い訳じゃないわ。眉毛も同じく金だし、目も金色で桜の花びらっぽい形をしてるのよ。正に「カミナリサクラ」…、雷桜の名に合う感じはするわね」

2019-02-27 19:12:20
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

前沢慎呉は姉の言う事はちゃんと一言一句メモしていた、書く手が止まり手帳を閉じた。 「その雷桜ってヤツの記事、俺が今丁度追ってた事だったんだよ。今度、その話を聞きに行こうと思ってさ、連絡先とか姉さん知ってる?」

2019-02-27 19:16:17
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「そうねぇ…」と顔を上向け、考えるような仕草をしたかと思えば「あぁ!…・・ちょっと待っててね、直ぐに戻るから」と両手でジェスチャーし、一旦その場を離れた。 慎呉はエレベーター近くの休憩室に入り、そこに置かれいたウォーターサーバーに目に入り、水を一杯飲もうかと思った時である。

2019-02-27 19:18:23
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

その中にあるカウンター席に、先ほど聞いた特徴を持つ青年が座っていたのだ。 サラサラとした金髪に、手には手袋をはいている。目までは見えないが、その視線は一冊の本に集中しているようだ。 相手に気付かれぬよう静かに近づき、その近くに座ってみる。

2019-02-27 19:21:51
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――確かに、姉さんの言う通り、めっちゃ金だな…。 等と思っていたら、青年はこちらを向き「アナタ、史織さんの弟さん。ですね?」と聞いてきたのである。 「なっ、なんでわかった?」 「廊下の会話が僅かに聞こえてたので、そこから推測しただけです」 ――本当に桜の花びらのような形してるな…。

2019-02-27 19:23:48
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「…というのもありますが、史織さんからよく話を聞いてますよ。料理が上手い弟さんと情報屋を営んでいる弟さんが居るってね」 青年の言っている事は、実際問題事実だ。 慎呉の兄は料理が上手く、役場に併設されている食堂の人気メニューを担当する程の実力を持っている。

2019-02-27 19:27:58
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

慎呉は唾を一度飲んだあと「アンタが、今朝のコラム記事を書いた雷桜なのか?」と聞く。 「はい、その通りです」 言い方と言い、その表情と言い、全くもって嘘や偽りを感じさせない。正に好青年、という印象を受けているが、今はそれよりも一番気になることを聞く。

2019-02-27 19:31:12
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「この記事について、聞きたいんだ。ヒーローは本当に居るのか?デパートでやっているショーのヒーローじゃない、本当に、この街を守る存在が居るのか?!」 段々と大きな声になるものだから、相手も驚いたような表情を浮かべているが、直ぐに表情を戻し、慎呉の問いに答える。

2019-02-27 19:34:28
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「俺は、この目で見た事実を書きます。そこに嘘というのを入れたら、それこそ伝わる物も伝わらないですからね。でも、それは時と場合に合わせてです。事実は事実ですが、時としてそれを良しと思わない人だっている、というのも忘れてはいませんから」

2019-02-27 19:36:42
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――この青年、雷桜は俺と同じく揺れぬ信条を持っている。 慎呉がそう思った時、史織が休憩室に入ってくる。 「あら、雷桜君」 「史織さん、何時もお世話になってます」 「いえいえ」

2019-02-27 19:40:04
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

雷桜が壁にかかってある時計を見て「あ、俺そろそろ行きますね」と言い「それじゃあ、今後ともよろしくお願いします」と礼を言いながら頭を下げ、休憩室を去った。 雷桜が先ほどまで座っていた席の近くに座っていた慎呉だったが、放心状態になっている姿を見て、史織はその肩を叩いた。

2019-02-27 19:42:20
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

それにようやく気づいた前沢慎呉はハッと我に帰り「姉さん、今時、あんな若いヤツが居たんだな…」と呟くように話したのだ。 「そうよ、雷桜君は本当に人が良いフリーの新聞記者なのよ」

2019-02-27 19:43:58
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

秋山結は自宅へ帰るやいなや、ランドセルを部屋に置き台所のテーブルに置かれているお菓子にも目もくれず、茶の間にある電話まで行き、とある所へかけた。 受話器を耳にあて、呼び出し音が何度も鳴る中で「もしかしたら、外に出てるかも…」と時計を見て思ったが、向こうは少し遅れて出る。#事務所物語

2019-02-28 19:19:42
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

『もしもし、こちら秋山事務所です』 聞き覚えのある声に安堵し、結は「おねーさん!僕、秋山結です」と元気な声で言う。 『結くん、元気にしてました?』 「うん!僕は何時も変わらず元気だよ。…おねーさん、しゅーじおじさんっているの?」と聞く。

2019-02-28 19:22:49
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

『あー…』と、紗南の声のトーンが少々落ちた後『秋山所長、今ちょっと外に出てるんですよね』と返す。 「そうなんだ」 『何か、秋山所長に用事ですか?』 「この前、僕が来た時に話した事覚えてる?」 確か、私達の住む街にヒーローと悪者集団が居る、という件だ。

2019-02-28 19:25:46
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

『ヒーローと悪者の件、でしたよね』 「そう、しゅーじおじさんに伝えといて、もう大丈夫だって」 『いいんですか?』 ――あれほど気になっていた事柄だったし、秋山所長だって熱心になっていたと思ってたが…。と紗南は思っていたが「いいんだ、その事は」と結は返す。

2019-02-28 19:28:48
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

――そういえば、今朝の新聞を熱心に読んでいた上に、気になった記事をスクラップにしてた所を目撃したと思えば、どこかに出かけてしまい、今はまだ帰って来ていないような…。 と、紗南は改めて考え、結に『わかりました、秋山所長にそう伝えときますね』と返した。

2019-02-28 19:31:12
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「ありがとう、おねーさん」 結のお礼を聞いたのと直後に秋山愁治は事務所に戻り「帰ったぞ~」と、小声で言いながら応接室へ入る。その姿を見た紗南は小さな声で『結くん、秋山所長帰ってきましたけど、代わりますか?』と聞く。 「ううん、大丈夫。それじゃあ、また」と言い、結は電話を切った。

2019-02-28 19:34:40
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「今の誰からだったんだ?」 愁治が上着を脱ぎながら紗南に聞く「結くんからです、例の件はもう大丈夫だそうですよ」と伝える。 「ほほぅ、やはりそう来たか」と、最初からその電話が来る事を解っていたかのような反応を示す愁治を見て、紗南は驚きを隠せない。

2019-02-28 19:36:42
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「そういう事が来る事を解ってたんですか、秋山所長?」 「未来予知……ではないが、今日の新聞の地方欄に載ってたコラムを結が読んでたとしたら、大体は予測出来てた事だな」 と言い、愁治は今朝とったスクラップと新聞を紗南に渡す。 「な、成程ぉ…」

2019-02-28 19:39:14
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「まぁ、ヒーローってのは最初から正体が解ってちゃあアレだが、そういう風に活躍してるってのもめっちゃいいよなぁ、ウン…」と言っているのを横目に、紗南は新聞の広告欄に目を移し「あっ、今度コンサート開くんだ。予約しようかな…」と呟いた。

2019-02-28 19:41:07
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「っておい、俺の話を聞けよ長身!」 「すみません、つい…」 「んで、なんのコンサートに行く気だ?」 紗南はその広告に指を差しながら「この人のですよ、生頼亨さんのコンサートです」と返す。

2019-02-28 19:43:41
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

ピアノを弾いている姿を映している写真の横に「生頼亨ソロピアノコンサート」と題され、開催される日時と会場に、チケット購入場所、これまでの経歴を紹介した文章が軽く添えられている。 「へー、長身もそういう事好きなのな」

2019-02-28 19:48:32
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「はい、音楽を聴いてると元気を貰えるんです。特に生頼さんの弾かれるピアノは良いんですよ。それに、生頼さんはピアニストでもあり作曲家でもありますから、クラシックは勿論の事、自身が作曲した曲も演奏する時は本当に良いんですよ」

2019-02-28 19:50:14
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「成程なぁ」 「秋山所長もどうですか?」 「俺はいいわ、多分、そういう所行ったら開始10分で寝そうな予感がすっからな」 愁治の返事に対し、紗南は思わず愛想笑いで返したのは言うまでもない。

2019-02-28 19:51:50
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

#事務所物語【次回予告的コーナー…】 愁治「今回の話も地味に長かったな」 紗南「確かに…、でも所長、このコーナー名の後に続く三点リーダーが凄い気になるんですけども…」 愁治「あー……それはだな」 紗南「所長、何か知ってるんですか?」 愁治「まぁ、俺達の日常ってまだ続く、じゃん?」

2019-02-28 21:30:55
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

紗南「ま、まぁ…それはそうですけども…」 愁治「ていうか、今回はこういう終わり方をするらしいぜ(引用ツイ参照)」 紗南「それ本当なんですか?!!」 愁治「どうやらそうらしい」 twitter.com/5jyouTsukito/s…

2019-02-28 21:33:17
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

先に言っておく今回の『事務所物語』は、ひとまず今月で連載の方は終わる予定だが、お話自体は他にも思いついていたりするので、それが出来次第シレっと連載する感じで行こうかなと思います(ハイ

2019-02-06 22:11:49
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

愁治「明日からはまた、別のお話を書くとか言ってるからな」 紗南「へ、へぇ…(今回はやけにメタい話してないかな…?)」 愁治「まぁ、俺達の日常も思いつき次第シレっと書かれるみたいだからな、その時はよろしく頼みますわ」

2019-02-28 21:36:25
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

紗南「そ、そうですね。私たちは何時ものようにココへ来た依頼人の依頼を受けましょう!秋山所長…!」 愁治「(それを解決するのは俺の能力なんだがなぁ…、まぁ、細かい事はいっか)そうだな、俺らには俺らの日常ってのがあるもんな」

2019-02-28 21:40:35
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

今月で連載という形でのお話を書くのはココまでです。 私自身、自創作はどの作品も思い入れがあるのですが、この『事務所物語』は特に思い入れがある一作だったりしますので、今回はこのような形で締めくくりをさせていただきました。

2019-02-28 22:04:54
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

今回の『事務所物語』という作品も『一人の少女と二つの世界』と同じく、かつて書いていたお話を今の形で書く…ようはリブートした作品という位置づけに当たります。 その時も今回も、本来だったら出ていない子がちゃっかり登場したり、その当時では書けなかった要素等が盛り込まれていたりします。

2019-02-28 22:08:00
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

そしてなんといっても、他の作品とは少々異なる「次回予告的コーナー」は、当時書いていた時の雰囲気を今に変換したら…?という勢いで行きましたので、少々メタい発言してたのはそういう事だったりしますね。

2019-02-28 22:09:33
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

去年11月から今日までの約4カ月、コラボ作品を合わせても歴代最長の連載期間となりました。私自身もビックリですが、多分、読んで下さってなおかつこういう事をしているのを初期から知っている方々も驚いたのではないのかな?とは改めて思います。

2019-02-28 22:12:04
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「それじゃあ、明日からは『事務所物語』じゃなくて何を書くの?」と思われている方も居るかもしれませんが、先にチラっと言っておくと、4カ月振りのコラボ作品です。 私側の登場人物は、ピアニスト兼作曲家な方と女子高校生だけど何処か幼さが残る子、そして刑事でカゲ法師が出てきます。

2019-02-28 22:15:31
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

「どんな感じのお話なのよ?」と思われますが、それは明日のお楽しみです。 …これ以上長くなるのもアレなので、今回はここでシメさせて頂きます――。

2019-02-28 22:17:51
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

改めまして『事務所物語』を読んで下さった方、本当にありがとうございます。 この連載形態で長いお話を書いてしまう時もあれば、極端に短い時もあったりして、なんだこれは!?と思われそうだなとは何時も思いますが、これが私だったりします。 それでは次に会えたらば Snow Production 2019.02.28

2019-02-28 22:19:42
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まとめたひと
伍条 月斗(創作アカ) @5jyouTsukito

基本は自分が考えた創作ッ子達の事を呟いたり、絵を上げたり、お話も書いたりします。偶に違う話等もしておりますが……ようは気まぐれだが基本は創作用アカウントです。(※食べても美味しくない鶏野郎で無言フォローをしたり、時として話すとアツくもなりますがそれでもよろしければです)御用の方はDMまで。