アザラシこと青波零也が2023年の朝にぼちぼち書いている140字のおはなしのまとめ。
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青波零也 @aonami

ベンチに腰かけて、煙草に火をつけた。あいつは煙草が嫌いだから、今ばかりは僕一人。ポケットに入っていた箱はくしゃくしゃで、いつ買ったのかも思い出せない。煙を吸う。肺に落とす。体に悪い手続きを、教わった頃のまま続ける。あの人は元気にしているだろうか、今もまだ煙草を吸っているだろうか。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/EtJ006trqh

2023-08-24 06:02:31
青波零也 @aonami

書き出し:ベンチに腰かけて、煙草に火をつけた。

2023-08-24 06:01:43
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青波零也 @aonami

体育の授業は、いつだって憂鬱だった。ただ走るだけ、体を動かすだけなら構わない。問題は、人と手を組んで競技に挑むとき。どれだけ速く走れても、高く跳べても、ボールを巧みに扱えても。「やりづらいんだよ」僕はいつだって、「あいつ一人でいいんじゃない?」頼るのも頼られるのも下手くそだった。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/L635bPYRor

2023-08-25 05:25:21
青波零也 @aonami

書き出し:体育の授業は、いつだって憂鬱だった。

2023-08-25 05:23:46
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青波零也 @aonami

新しい手帳を買った。仕事をやめてから、記録もやめていた。その間の記憶はあやふやで、何もかもが夢のよう。けれど、ここからは。「忘れたくないこと、ばかりだから」僕が忘れても、記録は残るよう。彼女と過ごすかけがえのない一日一日を、取り落とさないように。ペンを手に取る。白い紙に向き合う。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/RDs28g8kDg

2023-08-26 07:12:36
青波零也 @aonami

書き終り:ペンを手に取る。白い紙に向き合う。

2023-08-26 07:11:22
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青波零也 @aonami

「切手のコレクションが趣味なんですよ。これがなかなか奥深い」アルバムの分厚い表紙を開けば、無数の切手が収められていた。僕は蒐集というものとは縁遠く、故にこそ興味深い。一つ一つが異なる図柄。草花に動物、建物、果てには何かもわからぬ物体。色とりどりの異国の切手に、見知らぬ土地を思う。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/V28bg6a4Kq

2023-08-27 07:17:12
青波零也 @aonami

書き終り:色とりどりの異国の切手に、見知らぬ土地を思う。

2023-08-27 07:16:26
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青波零也 @aonami

波に洗われ、角の取れた硝子を拾う。どこから流れ着いたのだろう、曇り硝子の風合いに、空を閉じ込めたような青。「宝石みたい」とはしゃぐ子供の声に、「綺麗ね」という声が続く。己の経験を誰かと共有できるのは、幸福なことだ。波打ち際で遊ぶ親子を横目に、ひとり、硝子の欠片をポケットに落とす。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/ugA6KTVi7Q

2023-08-28 05:54:42
青波零也 @aonami

書き出し:波に洗われ、角の取れた硝子を拾う。

2023-08-28 05:53:43
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青波零也 @aonami

コインの表か、もしくは裏か。面倒な作業の分担に関して「きりがないからコイントスで決めよう」と言ったのはそいつだが、「どっちが表か確認させて」「表が出たら俺だよな」「そのコイン、変な仕掛けなんてないよな」「待って、そのコイン実は両方表ってことは」いいから早く投げさせてくれないかな? twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/EuMFJl1o08

2023-08-29 05:50:08
青波零也 @aonami

書き出し:コインの表か、もしくは裏か。

2023-08-29 05:48:14
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青波零也 @aonami

並んだロッカーのうち、一つを開く。必要なものを取り出す。頭の中で予定をなぞる。抜けがなければいいが。ミスを想定して遊びを持たせても、いつだって計画通りに行くとは限らない。手首の時計を見れば、そろそろ標的が家を出る時刻。ロッカーの扉を閉めて、鍵をかけて。僕は、僕にできることをする。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/1UtCjYzdZR

2023-08-30 04:55:37
青波零也 @aonami

書き出し:並んだロッカーのうち、一つを開く。

2023-08-30 04:54:29
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青波零也 @aonami

彼女はいつだって正しいが、意図がわからないことも多い。「花火をしよう」そう言って、袋詰めの花火を買ってきた真意も。宵闇に弾ける色とりどりの光、火薬の独特の香り、浮かぶ彼女の白い横顔。このまま時間が止まればいいのに。僕の願いを断ち切るように、線香花火の先端から、火がぽとりと落ちた。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/Nim5F457dN

2023-08-31 05:12:38
青波零也 @aonami

書き終り:花火の先端から、火がぽとりと落ちた。

2023-08-31 05:11:56
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2023年9月の旅

青波零也 @aonami

白米に生卵、醤油をひとたらし。久しぶりの炊飯器は、それでも僕の意を正しく汲み、ふっくら炊き立てのご飯を提供してくれた。茶碗を持ち、箸でかき混ぜる。生卵を安全に食べられるのは幸せなことだ、と胸を張るあいつを思い出す。君の功績ではなかろうに。おかしくなりながらも、ありがたくいただく。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/RdOwlvB3D3

2023-09-01 05:41:52
青波零也 @aonami

書き出し:白米に生卵、醤油をひとたらし。

2023-09-01 05:40:41
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青波零也 @aonami

林檎がひとつ、転がっていく。袋から零れたそれを、「落ちたぞ」と拾う彼女のすべらかな手。「ありがとう」「随分たくさん買ってきたな」「林檎の季節だから、パイでも作ろうかと思って」艶やかな唇が笑みを象る。「お前が旬を意識するとはな」僕が、あなたから教わったことを忘れることなどあろうか。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/oXam7YpbX3

2023-09-02 06:53:29
青波零也 @aonami

書き出し:林檎がひとつ、転がっていく。

2023-09-02 06:52:49
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青波零也 @aonami

見下ろす夜景は、闇に煌めく宝石箱のよう。以前は誰かさんと一緒だったと思い出す。天空からの景色にはしゃぐ声を思い出し、視線を傍らに向けるも、今いるのは顔も名前も知らない誰かばかり。この場にも、眼下の世界にも、もはや僕の居場所はなくて、煌めく記憶だけを抱えて、彷徨い歩くしかないのだ。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/ElwFqW8ATo

2023-09-03 06:43:15
青波零也 @aonami

書き出し:見下ろす夜景は、闇に煌めく宝石箱のよう。

2023-09-03 06:42:41
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青波零也 @aonami

ルーレットが回る。球が滑っていく。「そんなじっと見つめなくても」そいつが笑う。確かに、僕の眼力がルーレットに作用するとは到底思えず、もちろん球は想定外の場所に落ちる。賭けたチップが回収されていくのを眺めながら、「面白いな」「賭博、手を出してみちゃう?」「僕ら、取り締まる側だろ?」 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/k1HTRSH6xC

2023-09-04 05:11:56
青波零也 @aonami

書き出し:ルーレットが回る。球が滑っていく。

2023-09-04 05:10:30
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青波零也 @aonami

この上には「天国」があるという。無機質な白い階段に足をかける。生まれてこの方、天国を信じたことはない。仮にあったとして、死後の祝福なんて無いのと変わらないだろう。それでも、もし天国という世界があるとするならば、それはどのような場所なのか。上へ上へと延びる階段に、終わりは見えない。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/ssDHVQjCTK

2023-09-05 05:16:23
青波零也 @aonami

書き終り:上へ上へと延びる階段に、終わりは見えない。

2023-09-05 05:15:33
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青波零也 @aonami

強い日差しに、麦わら帽子をかぶり直す。すっかり土にまみれた軍手で触ってしまったから、つばが汚れてしまったと一拍遅れて気づく。後で謝ろうと思いながらも、今は握った鍬を振るう。土を耕し、作物を植える。絶え間ない手入れを経て、収穫に至る。かつての僕には縁遠い手続きを、この手に教え込む。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/QS21tyKthz

2023-09-06 05:24:12
青波零也 @aonami

書き出し:強い日差しに、麦わら帽子をかぶり直す。

2023-09-06 05:23:17
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青波零也 @aonami

この先は行き止まりだという。「道、間違えたかな?」助手席のそいつが首を傾げる。手元の地図を覗き込めば、確かに僕にもこの先に道があるように見えた、が。「古い地図だからな。別の道ありそう?」「今辿ってる、ちょっと待って」「オーケイ」進むのをやめて切り返す。今まで来た道に、頭を向ける。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/0LtIVMl3GY

2023-09-07 05:17:13
青波零也 @aonami

書き出し:この先は行き止まりだという。

2023-09-07 05:14:44
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青波零也 @aonami

乾いた地面を濡らす、恵みの雨。次々と落ちてくる雨粒を吸った大地は、やがて地中に眠る種を芽吹かせ、辺り一帯を満たすのだろう。雨が止んだあとの陽光の下、咲き乱れる花々と、風に揺れる葉の鮮やかな緑を思い描く。一方の僕はといえば、何を成すこともないままに、ただ、降りしきる雨を浴びている。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/2dowSqkpqV

2023-09-08 04:54:28
青波零也 @aonami

書き出し:乾いた地面を濡らす、恵みの雨。

2023-09-08 04:54:20
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青波零也 @aonami

化粧とはまるで縁がない、と思っていたが。「何事も試してみないとな」と彼女は僕の顔をカンヴァスにする。化粧下地にファンデーション、アイシャドーにマスカラ。口紅を引き、頬にも色を付けてゆく。恐る恐る鏡を見て、「どうだ?」と笑う彼女に、首を横に振る。やっぱり縁がなかった、ということだ。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/fb2kI1qLUt

2023-09-09 06:33:56
青波零也 @aonami

書き出し:化粧とはまるで縁がない、と思っていたが。

2023-09-09 06:32:34
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青波零也 @aonami

その人は、祭りの喧騒の中、いつも以上に危なっかしくて、履きなれない草履のせいか、何もないところで転びそうになったり、人込みに流されていきそうになったり。思わずその手を掴めば、見開かれた両目が僕を見て、「ありがとう」と笑む。藍の地に白い線で描かれた、菖蒲の浴衣が、よく似合っている。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/ufe3ugiw45

2023-09-10 04:14:40
青波零也 @aonami

書き終り:菖蒲の浴衣が、よく似合っている。

2023-09-10 04:14:29
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青波零也 @aonami

野球のボールが、足下に転がってきた。土色に汚れた、使い古されたボール。手に取れば、心地よい重さと懐かしい感触に自然と目を細めていた。遠い昔、大切な人としたキャッチボールの記憶を、頭より体が覚えている。「すみません」ボールの主らしい少年の声に振り向き、手にしたそれを山なりに投げた。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/P3PtgDVQ1H

2023-09-11 07:08:11
青波零也 @aonami

書き出し:野球のボールが、足下に転がってきた。

2023-09-11 07:07:42
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青波零也 @aonami

差し出される、隠し撮りによる数枚の写真。ほとんど名前しか知らない誰かの行動を捉えたもの。「これでいいんだろう」「ああ」写真を受け取れば、彼は不審げな目で僕を見やる。「何に使うんだ?」彼は口が堅い方だ。それでも、彼にばかり頼るのは危険かもしれない。何も言わぬまま、写真を懐に収める。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/kofQEnMOeS

2023-09-12 05:27:16
青波零也 @aonami

書き出し:差し出される、隠し撮りによる数枚の写真。

2023-09-12 05:26:46
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青波零也 @aonami

気づけば曇り空の下だった。鼻をくすぐる生臭い水の匂い。昔住んでいた家の近くに流れていた、川の匂いに似ている。脳裏によぎるのは、河童に足を掴まれた子供が描かれた、水辺の危険を示す錆びた看板。視線を上げれば、見渡す限り水が広がっていて、地面は全く見えない。静かな水面に、小舟が揺れる。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/9pzblDDWez

2023-09-13 05:26:27
青波零也 @aonami

書き終り:静かな水面に、小舟が揺れる。

2023-09-13 05:25:41
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青波零也 @aonami

蜘蛛の巣に頭を引っかけてしまった。髪にべったりついたそれを払おうとしても、今度は指に付着してしまって、なかなか離れてくれない。流石、一度かかった獲物を逃さない罠なだけはある。僕を捕まえても食べられやしないだろうに。背後のそいつが笑う。「似合ってるよ」「そう思うなら君も試しなよ?」 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/zd6uwx7XL0

2023-09-14 05:16:00
青波零也 @aonami

書き出し:蜘蛛の巣に頭を引っかけてしまった。

2023-09-14 05:14:42
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青波零也 @aonami

死んだら天国や地獄に行く、なんて全く信じてはいないが、神や御使いの存在を疑うわけでもない。「なら、死後の世界を信じたっていいんじゃない?」と言うそいつには、「死後まで何かが残るなんて御免だ」と答える。その時、不意に視界が翳った。見上げた空から舞い降りるそれは、天使のように見えた。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/QefIvvHzJq

2023-09-15 05:48:55
青波零也 @aonami

書き終り:空から舞い降りるそれは、天使のように見えた。

2023-09-15 05:48:12
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青波零也 @aonami

赤い薔薇の花言葉は、「愛」や「美」もしくは「情熱」だとか。僕にはどれもが欠けていて、胸に渦巻く思いだって、愛よりもずっと醜いもの。それでも、目にも鮮やかな赤に祈りを込める。「伝わらない思いはないものと同じさ」かつてそう言った誰かの言葉を信じ、薔薇の花束を手に、あなたに会いに行く。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/3KjbNtmSeg

2023-09-16 06:21:44
青波零也 @aonami

書き終り:薔薇の花束を手に、あなたに会いに行く。

2023-09-16 06:21:12
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青波零也 @aonami

四つ葉のクローバーを探している。公園で休んでいたところ、名も知らぬ子供たちに誘われたのだが、そう簡単には見つからない。無数の三つ葉をかきわけ、一つ一つを確かめて。「おじさん、見つけた?」「いえ、見つかりませんね」どうも僕には運がなく、もちろん幸運の象徴とも縁がないのかもしれない。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/pKGLn6lxvU

2023-09-17 06:28:37
青波零也 @aonami

書き出し:四つ葉のクローバーを探している。

2023-09-17 06:27:43
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青波零也 @aonami

キッチンに立ち、鍋を火にかける。今まで、料理というものに興味を持たなかったが、これがなかなか面白い。素材に手を加えると、加えただけの変化が起こる。適切な手順と適切な時間をかけることで、驚くほど味を変える。何より、「美味しい」と彼女が言ってくれるから、今日も新しいレシピに挑戦する。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/r2MKYcNmfZ

2023-09-18 06:30:04
青波零也 @aonami

書き出し:キッチンに立ち、鍋を火にかける。

2023-09-18 06:29:04
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青波零也 @aonami

海辺の町に辿り着いた頃には、もうすっかり暗くなっていた。頼りない街灯だけを頼りに、遠い灯りを目掛けて歩く。耳に響く、絶え間ない波の音。曇り空には星一つ見えなくて、海があるはずのそこに、ただ闇だけがわだかまる。それは、どこか怪獣の唸り声にも似て、僕を飲みこもうとしているかのようで。 twitter.com/aonami/status/…

2023-09-19 06:21:50
青波零也 @aonami

書き出し:海辺の町に辿り着いた頃には、もうすっかり暗くなっていた。

2023-09-19 06:21:47
青波零也 @aonami

砂時計をひっくり返す。白い砂が落ちていく。紅茶は、抽出時間が大事なのだと彼女は言う。三分、それより長くても短くてもいけない。砂が落ちるまで別のことをしてもいいのだが、つい、積もっていく砂を見つめている。留め置くことのできない時間。僕はあとどれだけ、彼女に報いることができるだろう。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/Hys7IAPvON

2023-09-20 06:06:59
青波零也 @aonami

書き出し:砂時計をひっくり返す。白い砂が落ちていく。

2023-09-20 06:05:38
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青波零也 @aonami

規則正しく並ぶ、白と黒の八十八の鍵盤。僕の手でそれに触れるのは躊躇われた。「ピアノ、弾かれますか?」「いえ、全く」学生の頃に、授業で触った以来だ。ピアノ弾きが生業だという傍らの人物の、しなやかな、しかし見るからに骨太そうな指が、白鍵のひとつを叩く。ぽーん、と、澄んだ音色が、響く。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/tnwbXzkxFl

2023-09-21 05:56:28
青波零也 @aonami

書き出し:規則正しく並ぶ、白と黒の八十八の鍵盤。

2023-09-21 05:53:57
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青波零也 @aonami

棚に並ぶ酒の中から、ウイスキーの瓶を取り上げる。香る、煙の気配が特徴の銘柄。その横にドランブイを並べる。数多のウイスキーに、ヒースの蜂蜜、スパイスやハーブを混ぜたリキュール。教わった分量をロックグラスに注ぎ入れ、ゆっくりと、混ぜる。それは儀式にも似ている。もしくは魔女の秘薬にも。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/GJ1oEv502b

2023-09-22 05:34:27
青波零也 @aonami

書き出し:棚に並ぶ酒の中から、ウイスキーの瓶を取り上げる。

2023-09-22 05:33:30
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青波零也 @aonami

占いを信じるか、と言われたらノーと答えるけれど。かつて誰かさんは言った、「科学は『確かさ』を積み重ねるもんだけど、それも人間が人間のために定めた確かさだろ」と。世の全ては人が人のために用意したツール。もちろん同じラインに置くものではなかろうが、「興味は、あります」そういうことだ。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/KvmJqKHtG9

2023-09-23 09:46:13
青波零也 @aonami

書き出し:占いを信じるか、と言われたらノーと答えるけれど。

2023-09-23 09:44:38
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青波零也 @aonami

カセットテープに録音された、知らない歌。舌足らずな幼い声が、時折音を外しながら、楽しそうに歌う。あいつがいなくてよかった、必要以上のものを感じ取るだろうから。荒らされた部屋、失われた声の主、残されたテープ。僕にできることは、冥福を祈り、更なる悲劇を生まないよう尽力することだけだ。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/Q2p7e75YzC

2023-09-24 08:15:57
青波零也 @aonami

書き出し:カセットテープに録音された、知らない歌。

2023-09-24 08:15:18
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青波零也 @aonami

花だ。夏も過ぎ去り、少しひんやりとした風に揺られる、可憐な花々。頼りなくも思える細い茎の先端で開いた花の色は、紫にピンク、それから白。誰が種を蒔いたのか、それとも自然に広がったものか。子供が絵に描いたような姿は酷く懐かしく感じられるのだが、一面に乱れ咲く花の名前を、思い出せない。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/rmQFhy5mVA

2023-09-25 06:15:06
青波零也 @aonami

書き終り:一面に乱れ咲く花の名前を、思い出せない。

2023-09-25 06:14:19
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青波零也 @aonami

硝子越しに並ぶ、きらきら輝く指輪を見つめる。つい、彼女の指には何が合うだろう、と考える。白くしなやかな、作り物のような手。繊細な金の指輪だろうか。白金の輝きも似合うだろう。宝石もつけるなら何色がいいだろう。まあ、彼女に養われる僕が彼女のために指輪を買うなんて、夢もまた夢なのだが。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/6ewyHCLvyX

2023-09-26 05:43:48
青波零也 @aonami

書き出し:硝子越しに並ぶ、きらきら輝く指輪を見つめる。

2023-09-26 05:42:19
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青波零也 @aonami

畦道に伸びた彼岸花が、真っ赤な花を咲かせている。葉のない茎についた花びらは、虫の脚か何かに見えて不気味ですらある。彼岸花、という名前だってそう。僕は死後を信じないが、名付けたその人は、この時期に咲く不思議な花に、何かを感じたに違いない。花々を揺らす風に、線香の匂いが混ざっている。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/IJgPqDXM5W

2023-09-27 06:21:27
青波零也 @aonami

書き出し:畦道に伸びた彼岸花が、真っ赤な花を咲かせている。

2023-09-27 06:20:40
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青波零也 @aonami

いつもより明るい、月が綺麗な夜。昼の強い日差しとはまた異なる光が、立ち並ぶ建物の輪郭を柔らかく照らし上げていた。眠る街を起こさぬよう、足音を殺して歩いていると、ふと、視線を感じてる振り返る。屋根の上から、何かがこちらを見ている。蟠る影は、動物だろうか、鳥だろうか、それとも、人間? twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/gY7b2xRShx

2023-09-28 05:24:53
青波零也 @aonami

書き出し:いつもより明るい、月が綺麗な夜。

2023-09-28 05:23:49
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青波零也 @aonami

ひとつ、またひとつ、朱に塗られた鳥居をくぐる。果てなく続く鳥居は、もはや別世界だ。観光客で賑わっている、と聞いていたのだが、人ひとり見えなくて、ただ、鳥居だけがある。どれだけ歩いただろう、帰り道はとうに見えない。「行きはよいよい、帰りは怖い」どこかで聞いた一節を、口の中で呟いた。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/QAcO4xvxDD

2023-09-29 06:06:06
青波零也 @aonami

書き出し:ひとつ、またひとつ、朱に塗られた鳥居をくぐる。

2023-09-29 06:05:05
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青波零也 @aonami

目的の扉は鎖と錠前とで厳重に封鎖されていた。「仰々しいなあ」そいつは肩を竦める。「それだけ見られたくない、ということだろう」「どうする?」そんなもの、決まりきっている。「切断のために応援を呼びつつ、僕らは他に入り込める場所を探そう」「了解」僕らは、立ち止まってなどいられないのだ。 pic.twitter.com/gTHE60i72O

2023-09-30 16:04:21
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2023年10月の旅

青波零也 @aonami

「花を買おう」と彼女が言った。曰く、テーブルの上が味気ないから。買うなら季節の花がいい、派手になりすぎず、しかし確かな存在感のある花が。花屋に彼女の言付けを伝える僕は、だいぶ滑稽だっただろう。花に囲まれた場所は、僕には到底似合わない。かくして手にした花束は、想像よりもずっと重い。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/jZM9OFsGHB

2023-10-01 07:14:59
青波零也 @aonami

書き終り:手にした花束は、想像よりもずっと重い。

2023-10-01 07:14:20
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青波零也 @aonami

今日は彼女がいないから、代わりに言葉少なな先輩がカウンターに立つ。今日の客は常連で、故に店の作法も心得ている。一杯の酒と引き換えに、物語を。この不文律は彼女が不在でも有効だ。お決まりの海色を湛えた酒を手に、彼にしか見えない不思議を語る。僕はグラスを拭きながら、その声に耳を傾ける。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/huFgooo9DI

2023-10-02 06:15:50
青波零也 @aonami

書き終り:グラスを拭きながら、その声に耳を傾ける。

2023-10-02 06:15:01
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青波零也 @aonami

随分高いところまで登ったものだ。周囲の山々を見下ろしながら思う。空気が薄いのは、現実にそうなのか、心地よい疲れがそう感じさせているのか。困難な道に無心に挑み、結果として雄大な景色を眺めるのは、悪くない。次はもっと高い山に挑戦してみようか。あてもない旅の、一つの目標になるだろうか。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/aUmuINTBRr

2023-10-03 05:53:38
青波零也 @aonami

書き出し:随分高いところまで登ったものだ。

2023-10-03 05:52:20
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青波零也 @aonami

いつの間にか暑さは止んでいた。つまり、僕の旅も季節を一巡りしたということだ。何が得られたわけでもない、一人でも案外生きていけるということがわかったくらい。ひんやりとした風が肌を撫ぜる。きっと、この風が更に冷たくなる頃には、木々も葉を色づかせるに違いない。そうしてすぐに、冬が来る。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/q7GR7XDwUk

2023-10-04 05:50:03
青波零也 @aonami

書き終り:そうしてすぐに、冬が来る。

2023-10-04 05:49:07
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青波零也 @aonami

声がした。振り向いても誰もいないが、聞き間違えようもない、声が。それとも、僕の頭が生み出した都合のいい幻聴なのか。名前を口の中で転がす。もう、どこにもいないはずの彼女の名前を。そう、どこにもない。いてはならない。視線を前に戻す。声が背中を追ってくる。後ろ髪を引かれるが、それでも。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/SslVZ1uWxH

2023-10-05 06:12:51
青波零也 @aonami

描き終り:後ろ髪を引かれるが、それでも。

2023-10-05 06:12:02
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青波零也 @aonami

よく晴れた、洗濯物日和の空の下。多忙を言い訳に先延ばしにしていた洗濯を敢行した。衛生的によくないと頭で理解していても、仕事に追われるとまず生活が犠牲になる。風にはためくワイシャツは、乾いたらアイロンをかけよう。一つ一つ、家事という手続きをこなすことで、僕は自身の有様を見直すのだ。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/dx5kXm8HOg

2023-10-06 06:04:03
青波零也 @aonami

書き出し:よく晴れた、洗濯物日和の空の下。

2023-10-06 06:03:18
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青波零也 @aonami

飴玉を口の中で転がす。すうっとする薄荷の飴。「おいしい?」「それなりに」「煙草よりはいいでしょ?」それはそう、だが。「禁煙した方がいいか?」こいつは煙草が嫌いだ。僕が吸うのは黙認するが、それでも。「そうは言ってないけど」その方が嬉しい、という気持ちが顔にありありと浮かんでるよな。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/asRDqU8qQI

2023-10-07 07:59:20
青波零也 @aonami

書き出し:飴玉を口の中で転がす。

2023-10-07 07:55:09
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青波零也 @aonami

気づけば、海を行く船の上だった。空は青く、海は広い。僕の背後では、船員たちが忙しなく駆け回っている。手伝いは必要か、と問うてみたところ、客人は客人らしく大人しくしていろと言われたため、甲板に立ち水平線を眺める。船は大きな帆に風を受けて進んでいく。水しぶきをあげて、イルカが跳ねた。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/wTiwt1qHCC

2023-10-08 08:26:46
青波零也 @aonami

書き終り:水しぶきをあげて、イルカが跳ねた。

2023-10-08 08:26:37
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青波零也 @aonami

窓越しに聞こえる、濡れた道路を走る車の音。降りしきる雨はきっと、轍を洗い流してくれるだろう。使った道具を片付ける。何もかもの痕跡を隠すのは難しいが、第三者が追跡しづらいように、もしくは惑わせるように、丁寧かつ大胆に。見開いたままの目が僕を見つめているが、死人に口なしというだろう? twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/ZIYFWJiFe3

2023-10-09 06:19:42
青波零也 @aonami

書き出し:窓越しに聞こえる、濡れた道路を走る車の音。

2023-10-09 06:18:22
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青波零也 @aonami

昔、告白を受けたことがある。学生の頃、クラスメイトの女子から声をかけられたのだ。結局、断ったのだが。何せ、ほとんど話もしたことのない、顔と名前しかろくに知らない相手とまともに付き合えるはずもなく、仮にお互いを知っていたなら、その女子だって僕と付き合いたいなんて思わなかったはずだ。 twitter.com/aonami/status/… pic.twitter.com/xIp9mlxXQo

2023-10-10 05:45:26
青波零也 @aonami

書き出し:昔、告白を受けたことがある。

2023-10-10 05:44:00
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