#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月21日】 憩所、いかにも長いあいだ誰も使っていないような、ぼろぼろに汚れたテーブルに上半身を投げ出して、 「……おつかれ。食べる?」 桃花は、リュックから、いきがけに寄ったコンビニエンスストアの袋をだして、おにぎりとペットボトルのお茶を pic.twitter.com/2gOymvOhEw
2022-06-21 08:00:20テーブルに置いた。昼食用にと買ったものだが、今まですっかり忘れていた。 「ありがと。……ねえ、」 遠慮なくペットボトルのキャップをひねりながら、ふと気がついたという顔で。 「……そういえば、異世界の遺物って?」 そう、聞かれて、桃花はきょとんと首をかしげた。 「なんのこと?」 「え
2022-06-21 08:00:22#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月22日】 ー。言ってたじゃん」 「……ああ、そういえば」 桃花はぽん、と手をたたいて、それから、ひらひらと広げてみせた。 「冗談に決まってるじゃない。信じたの?」 いつのまにか、剣はどこにもなくなっていた。 休憩所のすぐそばにあったは pic.twitter.com/5mGCUs1eUV
2022-06-22 08:02:13ずの洞窟は、入り口のあった斜面ごと消えて、ただの茂みに。 竜の気配も、子鬼の声も、粘液の腐臭すらなく。 ふたりは、目を見合わせて、──それから、大声をあげて、笑った。 夏の、かすかに夕陽のさしかけた、小さなあずまやの下で。 (異世界から来た少女 了)
2022-06-22 08:02:16#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月23日】 ウルフ2(8月12日 藤井大悟) 満月が、雲のあいだからのっそりと這い出してくる。 その真下。住宅街の4メートル道路を、夏用の、ストレートパンツのスーツを着た女が、こつこつと高い音をたてて歩いている。 街灯から街灯へ、飛 pic.twitter.com/ZxH49UFXK3
2022-06-23 08:01:28び石をふむように大股で。 月が、まっすぐに降りて街灯のあいだを照らしている。うすい影が、いくつも女のまわりを囲んで、さやさやと揺れる。 前の街灯の影。 背中側の街灯の影。 月光。 街灯の真下に達すると、後ろの街灯の光は届かなくなる。2つに減った影が、少しすると、また3つにふ
2022-06-23 08:01:30#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月24日】 える。時計の針のように、くるくると角度をかえながら、女を守るようにとり囲む。 ──ふと、うしろの影に、なにかが触れた気がした。 ふりむく。誰もいない。 いや、ずっと前に通りすぎた小さな交差点の右脇に、子供がひとり。遠くて pic.twitter.com/uw2QUBbM19
2022-06-24 08:01:02よく見えないが、男の子のようだ。 中学生くらいか。この蒸し暑いのに長袖の上着にフードをかぶって、両手をポケットに突っ込んでいる。 他に、ひとの気配はない。 気のせいだろう。歩きなれた道とはいえ、夜だ。すこし、過敏になっているのかもしれない。 もっとも、今夜はみょうに明るい。月
2022-06-24 08:01:03#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月25日】 光にそって歩けば、怖くはない。 ふと、生臭いにおいが鼻につく。 獣臭。実家で飼っていた犬の匂いに似ていた。一瞬、懐かしさを感じて、すぐに妙だと気づく。散歩の途中で、手首に鼻をこすりつけてきたときの匂い。濡れ落ちた落ち葉のよう pic.twitter.com/55wj9yZPMB
2022-06-25 08:01:11な。 あまりに、近い。 もう一度、あたりを見回す。犬はおろか、虫一匹見当たらない。人も、車も。 いや、さきほどの交差点には、少年がまだ立っている。伏し目がちにこちらを見ているようだ。が、遠い。犬を連れているようでもない。 こわくなって、立ち止まる。自宅のアパートまで、あと10
2022-06-25 08:01:12#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月25日】 分。走りだしたくなるのをこらえて、匂いのもとをさぐる。気のせいかもしれない。けれども、あまりに近い。 獣臭が、足元から、そっと探るようにひざをつたって、股のあいだをぬけてのぼって来る。胴から、首筋、耳のうしろを探って──、 pic.twitter.com/HRgVTwSUm6
2022-06-26 08:00:12やめて、と叫ぼうとする。喉がからからで声が出ない。 右手に、なにかが触れた。ざらざらした動くもの。一瞬後に、舌だと気づく。それから、硬いもの。歯。きゅっと強い力をこめて、手の甲に、なにかの牙が。 ぎりぎりと、ちぢこまった喉のおくで悲鳴が暴れまわる。声がでない。 牙が──、 「
2022-06-26 08:00:14#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月26日】 どうしたの?」 ちいさな声。いや、遠くの声。はっとして見回す。何もない。遠くの交差点にいた少年は、いつのまにか現れた、もうひとりの子供と立ち話。ほかには、なにも無い。犬も、虫も。 影さえ。 * 紅い、少し派手めのヘアクリッ pic.twitter.com/PqBZU5VN9R
2022-06-27 08:00:12プ。 毛量がおおい、ふんわり撥ねるような髪をぐいっと留めて、髪留めと同じ色のスニーカーを履いている。ワンポイントの入った靴下の上に、ハイウエストのハーフパンツ。Tシャツの袖からすらりと伸びた腕で、少年の頭をつんと突いて。 「何これ! 暑いでしょう」 夜闇にひびくような声。少年はび
2022-06-27 08:00:14#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月27日】 くんと震えて、しばらくためらってから、そっとフードをおろす。 細おもての、肌の白い少年である。 「汗べっとり。何してんの」 きれいに頭皮に張り付いた髪に、少女が手をのばす。少年はいやそうに右手ではらいのけて、にらむように目を pic.twitter.com/Ni6A8hFrtL
2022-06-28 08:00:11細めた。 「パーカー、脱いだら?」 「うん、……」 眉をしかめて、緩慢な動作でチャックをおろす。青いパーカーを脱ぐと、むわっと汗のにおいが漂ってくる。 少女は、西の住宅街に目をやって、──女が、走って去っていくのを見た。 「あの、……」 「なあに? 大悟くん」 少年、藤井大悟は、
2022-06-28 08:00:13#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月29日】 ……小さく、うつむいて、 「すこし、……話したいんだけど。」 と、言った。 * 藤井は切り株を模した椅子に座って、そのとなりに、赤い髪留めの少女が立っている。 住宅街ができたときに一緒につくられた、小さな公園。時計柱のほ pic.twitter.com/Z2x6FlgnnW
2022-06-29 08:01:28かは、ブランコとあずまやがあるだけ。あずまやの椅子に、時計柱の蛍光灯から青白い光が斜めにおちて、ふたりの影が短く伸びている。 「話って?」 「……おかしいんだ。」 「なにが?」 「影が……、」 少女はすこし黙って、とん、と脚を動かした。 蛍光灯に照らされた影が、とん、と同じく動く。
2022-06-29 08:01:28#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月30日】 それが、一瞬遅れたような気がして、藤井は目をしばたかせた。 「どう、おかしいの?」 「どうって……さっきの、見たろう」 「さっきの、」 少女は、右眉をちょっとだけあげて、飴を噛むように唇を動かした。 それから、半分うわのそらの pic.twitter.com/kad5DkN6ZZ
2022-06-30 08:00:15ような声音で、 「さっきの、あれが?」 「そう。……三ヶ月くらい前から、かな」 「そんなに?」 「うん、…」 藤井は立ち上がった。少女に背をむけて、三歩ほど歩く。蛍光灯の真下、いちばん明るいところへ。 影が濃くなって、輪郭があざやかに地面に落ちる。 四つ脚の、ざらりとした毛に包ま
2022-06-30 08:00:16#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月1日】 れた、狼のような獣の。 ぐ、ぐ、と唸り声がきこえた。 藤井は、少女に背をむけている。唇は見えない。くるしげな、喉の奥から絞り出したような声が、かれの口から出たものか、少女にはわからない。 人のものとは思えないような、低い、 pic.twitter.com/Z96EUHMkev
2022-07-01 08:00:17ぶきみな唸り声である。 ぐるる、と歯を噛みしめるような声。 外飼いの動物のにおい──、 「ア、月」 そう、少女がつぶやいた。 月は、さいぜんから出ている。その言葉が出たのは、 影の獣が、満月をじっと見上げている。そのことに、気づいたからだ。 「満月の日だけ、出るんだ。そ
2022-07-01 08:00:19#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月2日】 うして……、」 「人を襲おうとする?」 「それも、とくに女の人を。」 「へえ。」 「いまは、……なんとかぼくが抑えているけれど……、そのうち。」 「そのうち、どうなるの? もし、ほんとうに影が、人を襲ってしまったら?」 「さァ……わ pic.twitter.com/PZJBww0Xhv
2022-07-02 08:00:14からない。」 「ふゥん。……ね、」 「え?」 「どうして、私にその話を?」 藤井は、くるりとふりむいて、少女のいるあずまやにむかって、一歩、踏み出した。地面に目を伏せて、ちいさく、目尻に涙をにじませて。 「……においで、わかるんだ。」 「何が?」 「きみ……人間じゃないだろ?」 少女
2022-07-02 08:00:15#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月3日】 は、目をまん丸くして、……立ち上がった。 からからと、空にとどくように大きく笑って、 ……影の狼の頭を、そっと、撫でて。 「ねえ、藤井くん。……月がきれい、ね」 そう、言った。 (ウルフ 2 了) pic.twitter.com/32Uhdn2APJ
2022-07-03 08:00:13人魚族(9月8日 伊藤明日香) 「……あぁっつい! もう!」 帰り道。夏休みがあけてまだ一週間。もう夕方だが、とにかく蒸し暑い。ただ歩いているだけで、汗で背中がべとべとになる。肌着を通りこして、カッターシャツの表側まで。 眼鏡のつるも、じんわりと熱い。 「汗くさいったら、ねえわ
2022-07-03 08:00:16#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月4日】 。本当に。」 となりで、ぶつくさとこぼしているのは、同じクラスの女の子。さっきから一緒に歩いているのだが、名前は思い出せない。やせた、背の低い少女。ふんわりと撥ねた髪のうえに、赤い髪留めを乗せて、大股ですたすたと歩いている。 pic.twitter.com/TDBLEmq0VN
2022-07-04 08:00:13柏木亮は、ボンヤリと眉をしかめながら、返事もしない。 暑いね、のひとことも。 「ねえ、聞いてんの? 亮くん!」 ほんのちょっと声を高くして、こっちに手をのばしてくる。肩をつつかれる前に、亮は足をとめて、 聞き入る。 「……どしたの?」 カッターシャツの袖にふれる寸前に指を止め
2022-07-04 08:00:14#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月5日】 て、少女はぽかんと眉をひそめる。二人は、まだ校門から出たばかり。歩道には他に誰もいない。が、学校に残っている生徒たちのざわめき声は、うっすらと聞こえてくる。部活動はもう終わっているはずの時間だが、片付けで残ってでもいるのか。そ pic.twitter.com/cuC3opaiL3
2022-07-05 08:00:18れとも、亮とおなじく、居残り勉強をしたあとか。 少女は、亮の目線をおって、学校のほうに目をむける。学校まわりの塀。その奥はさらに一段あがってフェンスがあり、プールをかこんでいる。 「……だれか、噂でもしてる?」 少女は首をのばして、あたりを見回すような仕草をする。耳を、ちょっと
2022-07-05 08:00:20#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月6日】 つまんで。 「そんなんじゃ、……聞こえないの?」 「なあにが!」 「……なんだか、高い音。叫び声っていうか、……なきごえ、みたいな」 「ええ?」 ぎゅっと眉をきつく締めて、もう一度、少女は耳をつまむ。 「ぜんぜん、聞こえないけど」 pic.twitter.com/P7m4QwA0cB
2022-07-06 08:02:10「……モスキート音?」 「じゃあなんであたしに聞こえないのよ!」 「いやあ……」 亮は、……まだボンヤリとした目つきのまま、じっと、プールのあるほうに顔をむけて、耳をすましている。 なきごえ、いや、 ──歌声、のような。どこか、外国の民謡。そんなふうにもきこえる。 「……うみね
2022-07-06 08:02:11#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月7日】 こ、」 「え?」 「いや、なんだろう……猫?」 「なあにが! ……ァ、」 少女は汗ばんだ亮の肩にぐっと手をあてて、……背伸びをした。 「きこえた?」 「ぜんぜん!……ねえ、」 そういって、少女が、ぴっと指をさした先……、 プール pic.twitter.com/WaEPhf5I9d
2022-07-07 08:01:58サイドに、だれかの顔がみえる。 塀とフェンスにさえぎられて、見上げても首筋から上しか目に入らない。水着ではないようだ。白い襟が見える。たぶん、少女とおなじ、夏の制服。 「あれ、……」 「伊藤さん、」 ふいと、滑り出すように、亮の口から。 「はぁん?」 すっとんきょうな声をあげて、
2022-07-07 08:02:00#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月8日】 少女がもう一段、背伸びをする。ぐぐっと亮の肩に体重をかけて、首をのばす。……と、「あッ、」声をあげて、がたっと崩れる。 ぺたんと、暑いアスファルトに二人して尻もちをつく。少女はすぐ立ちあがって、ぽんぽんとスカートの後ろをはたい pic.twitter.com/iUjozW2XB6
2022-07-08 08:01:44た。 「……目が、あっちゃった」 なんでもないようにそう言って、座ったままの亮に手をさしだす。亮も、すぐ立ちあがる。別に、腰がぬけたわけではない。 ただ、 (……目が、) まあるく、黒目のやけに大きい、まるでまぶたが無いような。 あんな、目だっただろうか。……伊藤さんは。 「
2022-07-08 08:01:45#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月9日】 ね、……あんまり、近づかないほうが、いいよ」 「え? どうして」 「べつに!」 少女は目をそらしてそう言って、それから、 「行こ、」 と、早足で歩きだした。 * 「のあちん、おはよ」 始業前。ひと足さきに席についていた明日香は pic.twitter.com/5MCv4CMLCS
2022-07-09 08:00:11、隣の席に座ろうとしている、おさげ髪の少女に声をかける。いつもの、きゃらきゃらとした高い声で。 「おはよう」 隣の少女は、落ち着いた仕草で椅子をひく。山崎乃愛。目もとがちょっと冷たくて、ぴんとはった背筋は、椅子の背からちょっと離れて定規のようにまっすぐ立っている。少し、つめたい雰
2022-07-09 08:00:12#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月10日】 囲気の。 ぐいと明日香は顔を近づけて、話をはじめる。 「ねえねえ、あのさ、ペットとかこっそり飼うのって……、」 「ミコちゃん、」 そう、いわれて、明日香はちょっと首をかしげた。ミコというのは、明日香のあだ名。それより、乃愛の声 pic.twitter.com/VmPL8jwdSG
2022-07-10 13:33:55の調子が、ちょっといつもと違うような気がして。 「……あのさ、知ってる?」 ちょっと周りに目線をはしらせて、くぐもったひそひそ声で。 「なあに、」 「……人魚、の話」 「人魚? なにそれ、アニメ?」 「ちがう!」 「なーに」 「出たん、だってさ」 「だから、なあにが」 「プールに。人魚が
2022-07-10 13:33:57#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月11日】 」 明日香は、はぁん、と曖昧につぶやいて、目をそらした。 「……ばか! ほんとの話」 「ほんとったって……」 「昨日さ……」 かつん、と足音。 乃愛は、ぴっと口をとじて、姿勢よく前をむいた。明日香は一瞬きょとんとして、それから pic.twitter.com/b9oBAnSiLr
2022-07-11 08:00:12あわてて机のなかに手をいれて、筆箱をさがした。いつのまにか、先生が黒板の前に立っている。 「日直さーん」 すこし間延びした、担任の先生の声。 明日香はそれきり、人魚の話なんかすっかり忘れてしまった。 * 「……プールに?」 亮は、めがねをかけた目をちょっとくもらせて、小さく聞
2022-07-11 08:00:13#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月12日】 き返した。 「そう、出るんだって」 同級生の篠田崇が、早口でいいつのる。細い眉をぎゅっとしかめて、唇をつりあげて。いつもは落ち着き払っているくせに、こういう話になると、途端に。 亮は日陰で足を止めて、崇のほうをむいた。夕方で pic.twitter.com/qRiDIyCphC
2022-07-12 08:00:19もまだまだ暑いが、ここは少しましな気がする。 「なにが、出るって」 「でっかい魚さ」 「あぁ?」 「巨大魚!」 「プールって、……そこのプール?」 亮はくいと親指で背後を指した。プールは、いま水泳部が使っているようだ。かけ声とかすかな水しぶきが落ちてくる。塩素のにおいが目に入ってきて
2022-07-12 08:00:20#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月13日】 、ちょっと顔をしかめる。 崇は亮の目を見上げるようにして、細い腕を大きくうごかした。 「そこの! あの、夜中にさ……、」 とんとん、と音。 反射的に見上げると、……2メートルばかりも上、フェンスのむこうから、紺色の水着を着 pic.twitter.com/jYpfCrSrlT
2022-07-13 08:00:12てべったりと濡れた小柄な少女が、こちらを見下ろしていた。 黄色の水泳帽の下、毎日泳いでいるのに色白の、小さな顔をまっすぐにこちらに向けて。 「伊藤さん、」 亮は、昨日ちょっとけさのことを思い出して目をそらした。別に、どうということもないのだが。 「……センパイに聞こえたら、うるさ
2022-07-13 08:00:14#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月14日】 いよ。そういうの」 すずやかな小声で。右手をしィっと唇につけて、一瞬だけ微笑む。 すぐにフェンスを離れて、プールに戻っていく。その瞬間の、水泳帽のうしろからちょっとだけはみ出した、長髪の端から、水滴が落ちるのを、 亮は、ぼ pic.twitter.com/EjbVTy21Ne
2022-07-14 08:02:09うっと見ていた。 「え、おまえ」 さっきまでの上ずった早口は消えて、いつもの、落ち着き払った声で、唇の端を少しだけつりあげて、崇が、 「伊藤さんのこと、好きなの?」 「……ばか!」 * 理由も、正体もわからない。 ただ、見つけてしまった。それだけだ。 * 夜中──、 こうこ
2022-07-14 08:02:09#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年7月15日】 うと、街灯が路面をさして、スポットライトのように校門のまえを照らしている。 亮は、きょろきょろとあたりを見回しながら──、誰もいない道を、とぼとぼと歩いていた。センターに英字が入った白いTシャツに、膝までの茶色いステテコ。まる pic.twitter.com/7vPfkCFH2r
2022-07-15 08:02:15で寝たまま、という格好で。 校門から少し離れた、塀のそばに、ひとかげ。背の低い、色白の少年。襟のあるシャツをはおって、ジーンズにスニーカー。シャツには皺ひとつなくて、まるで出掛けにアイロンをかけてきたような。 「なんで手ぶらなのさ!」 色白の少年、──崇は、右手にさげていた細い
2022-07-15 08:02:16