#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年5月27日】 き、言ってたじゃん」 「……そうだっけ?」 「だから、……体が、甘くなっちゃったんでしょう?」 言い回しに若干の違和感をおぼえながらも、うなずく。匂いのことを言っているのだろう。それにしたって、 たかだか、パイントサイズを2つ pic.twitter.com/OK4W5pgO9C
2022-05-27 08:00:14、食べたくらいで。 「ダイエット、してたんじゃないの?」 「……してたけど」 そんな話、しただろうか。 「体重減ってるよ、きっと」 「そう、……ね」 これだけ汗をかけば、そうだろう。 「じゃ、……センセ、呼んでくるね」 少女は出ていき、ふたたび、カーテンが閉められる。 あとには、
2022-05-27 08:00:16#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年5月28日】 籠もりきった、あまい匂いだけが、残った。 * 「……うげ、」 夜──。 いつもの……いや、最近、後ろめたさからさぼりがちな習慣。風呂あがりの体重計。脱衣場から出てすぐ、リビングで。 「姉ちゃん、太ったん?」 ソファに座っ pic.twitter.com/udXVJMcUdb
2022-05-28 08:00:14ている弟が、さして興味もなさげに、まんが本から顔をあげる。 「……ちがう」 「え?」 二人で、デジタルの数字を見下ろす。それから、顔を見合わせる。 「……壊れたんじゃね?」 「そうかも、……」 一週間ばかり前の数字を思い浮かべて、比較する。さすがに、ありえない。 まさか、肉をそぎ
2022-05-28 08:00:15#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年5月29日】 たわけでもないのに。 * さかのぼって、夕方。 「……ちょっと、舐めすぎたかなぁ」 保健室のドアを、からりと閉めて。 赤い髪留めをした、背の低い少女が、ちょっと眉をひそめてつぶやいた。 白い舌を出して、はぁっと、バニラの pic.twitter.com/4GojxLkrWi
2022-05-29 08:00:14香りをするため息をついて。 (アイスクリーム 了) 台風の魔女(7月10日 吉田美緒) 「──暴風警報が出たってサ」 とんとんとん、と階段をあがる。母の声が追いかけてくる。はぁいと生返事。あしたは休みになるだろうか。それとも、夜のうちにいってしまうか。 9時のニュースでは、台風
2022-05-29 08:00:15#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年5月30日】 は、まだ太平洋上だったはずだ。直撃コースとはいえ、もう警報が出るなんて。雨戸をしめているので、外の音は聞こえない。自室に入って、ベッドのわきに腰かける。かるく、伸びをする。 10時。まだ、寝るにはすこし早い。 宿題はとっくに pic.twitter.com/jaYx2kRi7k
2022-05-30 08:00:13済んでいる。勉強机にすわって、ちょっと教科書をひらく。すぐ、閉じる。日曜の夜に予習なんか、がらでもない。 ふと、古い落書きノートが目にとまる。ぱらぱらと開く。なんとなく恥ずかしくなって、閉じておく。 壁に耳をつける。弟は、もう寝たようだ。 そっと、少しだけ雨戸をずらす。 すぐ
2022-05-30 08:00:14#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年5月31日】 に、風の音が入りこんでくる。風圧がカーテンを吹き飛ばして、ばさりと顔にかかる。空は曇っていて、月も星もない。街灯のあかりが、舞い上がるつむじ風をうっすらと照らし出している。 もう少し、開く。 顔を出す。動くものはなにも見えな pic.twitter.com/lSnZEKUg6n
2022-05-31 08:00:12い。ただ、雨が降り出す前の独特の臭いが、街じゅうをおしつつんでいるのがわかる。 ぶわりと、また突風。 前髪が巻き上げられて、大きく跳ねる。ぴん、と音がして、なにかがはじけとぶ。髪がぶわりと広がる。ヘアゴムがちぎれたらしい。触ってもいないのに。 ぱちぱちと、静電気が走る。 ─
2022-05-31 08:00:15#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月1日】 ─ねえ、と誰かの声がきこえた気がした。 眼鏡がずれる。次の瞬間、鼻あてがずるりと滑って、落ちてしまう。焦って手をのばす。窓のさんにひっかかっているのを確認して、ほっとする。 視界に、ふと違和感。 ピントが、合っている。そん pic.twitter.com/ccoxJZRt3Y
2022-06-01 08:00:25な気がする。まさか。裸眼なのに。 遠くを見る。 街灯。そのむこうの塀。家。その窓。雨戸はしまっていない。ガラスのむこうに、30代くらいの、薄手の長袖シャツを着た女。赤いマグカップを持って、左手でひらいた本を見ている。本のタイトルは、── ぞっとして、目を閉じる。まさか。 こん
2022-06-01 08:00:27#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月2日】 なに見えるわけがない。 いや、見えているわけではない。わかるのだ。 風がまた強くなった。 目をあけて、まばたきをくりかえす。風が染みる。 ぞわりと、力が湧いてくる。 なにかの、音が──、 ──ねえ、いこうよ! 耳のお pic.twitter.com/9yZHzYzqA0
2022-06-02 08:00:26くから。 ──はやく! 若い女のような、すこし低めの、透き通った声。 すぐそば、いや、やっぱり耳のおく。 混乱しながら、部屋を見回す。それから、外を見る。いつものくせで、ぎゅっと眉に力を入れる。それから、そんなことをしなくても見えるのに気づく。裸眼なのに。 なにかが、飛ん
2022-06-02 08:00:28#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月3日】 でいる。 目の錯覚かと思う。いや、それとも、幻覚。 ……風のなかを、おおぜいの女たちが。 しぜんに、手をひかれるように、美緒は身をのりだした。 * 飛ぶ。 飛ぶ。 飛ぶ! (ひさしぶり!) 風の精霊が、声をかけてくる pic.twitter.com/TmfimvuyTe
2022-06-03 08:00:24。ボンヤリした記憶が、少しずつよみがえってくる。これが初めてではない。そんなふうに、思う。 空を蹴る。さらに高く跳ぶ。星が真下に見える。上には闇。 風と、雷鳴と、嵐! 肺に、空気にまぎれていなづまのかけらが入って来る。 ばちばちと、静電気がはじけて、皮膚にへばりつく。 まわ
2022-06-03 08:00:25#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月4日】 りは、精霊だらけ。 氷の精が、かすかな雹のつぶになって浮いている。 暖気と、低気圧の精が、ぐるぐると回転しながら頬をかすめていく。 街が見える。 学校。住宅地。海岸ぞいの国道。 人が歩くのが、みえる。こんな台風の日なのに pic.twitter.com/wyLUssFa6k
2022-06-04 08:00:25。 とん、と風を蹴る。 しゅん、と首をのばして、耳元でささやく。「あぶないですよ!」びくんと震えるのを見て、くすくすと笑う。 また、飛ぶ。 学校をめがけて、ふわりと降りる。誰もいない校庭。まっくら。いや、職員室にはまだ、あかりがついている。 ぼつんと、地面になにかがにじむ
2022-06-04 08:00:26#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月5日】 。 雨だ。雨粒がからだをすり抜けて、落ちていく。風にあおられて斜めに、吹き付けるように、地面ではじけて波紋を。すぐに水たまりができて、その上を跳ねるように雨粒が、落ちて、また落ちて、嵐のなかを滑っていく。 雨──、 * ま pic.twitter.com/udYo5NbipA
2022-06-05 08:00:20ぶたが開く。 ざあざあと、雨戸のあいたすきまから振り込む雨粒で、机が濡れている。ずれてしまった眼鏡をきゅっと戻して、立ち上がる。 腕に力をこめて、雨戸を閉める。ボンヤリしていた頭が、すっと醒める。 床も、濡れている。かろうじて、ベッドは無事。ちょっと眉をひそめて、それから、 「
2022-06-05 08:00:21#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月6日】 おかあさーん、タオル……、」 ちいさな声でさけびながら、階下へ。 べっしょりと濡れてしまった、古い落書きノートを、とじて。 * 翌朝は、からりと晴れていた。 美緒は、いつものように白いスニーカーをはいて、玄関をでた。夏の pic.twitter.com/wkGJ6G5UTD
2022-06-06 08:00:24強い日差しが、首筋をさしてぎりぎりと痛む。嵐は、もうかけらも残っていない。 いや。 台風のあとの、独特の匂いだけが、あたりに満ちている。 「……おはよう!」 ぽん、と肩を叩かれる。 後ろから、ちょこまかとした早足で、背の低い、どこかで見たような顔の少女が、追いついてきている。
2022-06-06 08:00:25#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月7日】 「ゆうべは、お楽しみでしたね?」 追い越しざま、にんまりと笑いのこもった声で、そう言われて。 「え、」 美緒が立ち止まって聞き返そうとしたときには、もう、十歩も先へ。 赤い髪留めのついた少女の後ろ姿を、ぼんやりと眺めるしかな pic.twitter.com/yMxkHdppML
2022-06-07 08:00:20かった。 (台風の魔女 了) 異世界から来た少女(8月2日 下田桃花) 思い出したのだ。 わたしが、どこから来たのか。 * 夏休み──、 梅雨はとっくにあけたのに、朝から大雨。 大粒の雨が、叩きつけるようにアスファルトを打つ。 熱帯低気圧。こんな日の昼間に、傘をささずに
2022-06-07 08:00:22#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月8日】 立っている人はいない。 ふつうは。 「……なにしてるの?」 赤と黒のチェック模様の、ちいさな傘。まっすぐに持って、レインブーツをはいた少女が、近くで立ち止まる。知り合いのような気もする。顔をみても、よく思い出せないが。 桃 pic.twitter.com/JyFK90PNKy
2022-06-08 08:00:23花は、落とした傘の柄に、右手の指で触れたまま、ぼんやりと空を見上げていた。雷鳴。傘をさしていてもあまり変わらない大雨だが、もう全身、海にとびこんだようにずぶぬれで。 もう、五分ほどもたっただろうか。時間の感覚が、わからなくなっている。 「ねえ!」 少女は、ちょっと傘をふるわせて
2022-06-08 08:00:24#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月9日】 、眉根を寄せた。びちゃりびちゃりと無遠慮な足音をたてて、近寄ってくる。 手を伸ばしてくる。指先が服にふれる。 ──静電気! 少女はびくりと手をひっこめて、まじまじと桃花をみた。こんな大雨の日に、静電気。それから、気づいたよ pic.twitter.com/qp2vBcc3yM
2022-06-09 08:01:33うだ。 桃花の服のすそが、焦げているのに。 「……どうしたの?」 声の調子をかえて、そう、たずねてくる。 桃花の答えは、大雨の音にまぎれてしまった。もう一度、声をだそうとする。喉がかすれて、うまく出ない。 「……雷が、」 「え?」 「雷が、おちてきたの」 そう、つぶやく。いや、大
2022-06-09 08:01:34#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月10日】 声で泣き叫びたかったが、つぶやくような声にしかならなかった。 「え、」 少女は、ぱちぱちと目をしばたかせて、首をふった。 「それは……、」 ごそごそと、何かポケットをさぐるような手つきをして、それから、また眉根を寄せる。 「救 pic.twitter.com/OAfAvUG32o
2022-06-10 08:01:31急車……、」 「それで、」 考え考え、しゃべる。まだ、相手が誰なのかわからない。 「……思いだしたの」 「なにを?」 「ううん……、」 首をふる。自分でも受け止めきれていないのだ。 「……昔の、こと。」 それだけ、いって、目をとじる。 救急車はいらないと、そう言おうと思った。けれ
2022-06-10 08:01:33#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月11日】 ど、 チェックの傘をもった少女は、もういなかった。 * さて、数日後──、 からりと晴れた朝。 桃花は、山道をゆっくり歩いていた。 山道といっても、ちいさな丘に設置された遊歩道のようなものだ。桃花の家の近くのバス亭から pic.twitter.com/yuuzCjxvOH
2022-06-11 08:00:1420分。そこから、まだ歩いて10分。 ひとりで。 押入れから引っ張り出した、2年前のリュックをしょって、赤いキャップ。いつも雑に縛っている、かすかに癖のついた髪を、今日はみつあみにして。 他に人はいない。イベントの日でもなければ、こんなものだ。ふもと近くでは、犬をつれて歩いて
2022-06-11 08:00:17#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月12日】 いる人がいたが。 慣れない山道である。歩いていると、しぜんと足元に目がいく。息はまだ切れない。部活よりは楽だ。そう、思う。 それでも、もう少し急がなくては。どんどん暑くなる。いま、8時半くらいだろうか。9時前には、着いてしま pic.twitter.com/F6UpgLouiQ
2022-06-12 08:00:14いたい。 汗がにじむ。 あせりから、自然と脚が速くなる。 (……あれ、) 人がいる。 赤いリュックが目に入る。それから、ちょっとオーバーサイズぎみの白いTシャツとジーンズ。赤いスニーカー。男の子のようなつば付きの帽子をかぶって。短い脚を、ちょっと早足にうごかして、えっちらおっち
2022-06-12 08:00:16#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月13日】 らと登っている。 ……ふと、見たような、と思う。 同じクラスの子だ。そういえば。名前は、思い出せないが。 どうして、こんなところに。 声をかけようとして、ためらう。 「……あ!」 くるりと、顔が見える。 むこうが先にふ pic.twitter.com/MLDUZXwaZL
2022-06-13 08:00:13りむいてきた。吊り目ぎみの、するどい目を、くしゃっと細めて。 「シモちゃあん」 ひとなつっこく、あだ名で。 「あれ、……」 名前が思い出せないままに、返事をする。つい最近も、会ったような。 「どしたの? こんなとこで。」 息も切らさず、かけよって来る。こちらは脚を止めない。かって
2022-06-13 08:00:14#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月14日】 に歩調をあわせて、横からのぞきこむようにして来る。 「そっちこそ、……」 「ピクニック!」 「ひとりで?」 「そっちこそ!」 まあ、それはそうだ。 それから、思い出す。 いや、むしろ、どうして今まで忘れていたのか。 「こないだ、 pic.twitter.com/gw2pfcnspI
2022-06-14 08:00:24雷のとき──、」 「雷?」 あいては首をかしげる。むしろ、むこうが忘れていたようだ。 背筋がぞくりとする。……そんなこと、あるだろうか。 「先週の月曜日! 雨のとき──、」 「ああ、」 と、わざとらしく大きくうなずいて、なんだか乾いた声で。 大丈夫だろうか。 ともかく、桃花は話
2022-06-14 08:00:25#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月15日】 をつづける。歩きながら。 「……あのとき、思いだしたの。」 ここで話すことにしたのは、ほんの気まぐれだった。 「なにを?」 「わたしが、……どこから来たのか。」 * ──わたし、別の世界からきたの。 * 「へえ、」 「だからね pic.twitter.com/PmO73l2Ogy
2022-06-15 08:00:20、今日は」 「うん」 「この山のうえの洞窟に、異世界の遺物があるのがわかったから、取りにね」 「うんうん」 「……信じてないよね」 「えー、」 ふわふわと曖昧な笑みをうかべる少女をぎゅっと睨むように見て、桃花は、足を止めた。 ぱちぱち、とまばたき、それからちいさく呪文をとなえて。
2022-06-15 08:00:21#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月16日】 力、を手のひらに集中する。 両手をあわせて、その間に、ゆっくり、血をめぐる力をうつしていく。 まあるく、ととのえて。 真球に整形した力が、炎のようにかがやきだして、それから。 剣、が落ちた。 「……すごぉい」 ぱちぱち pic.twitter.com/m5mZAbdekr
2022-06-16 08:00:21と、拍手。 すとんと地面に落ちた、刃わたり1メートル近くある両刃の剣。柄はきれいに飾られて、先端にはにぶく輝く緑の石が。鞘はない。 手にとる。軽い。いや、重みを感じない。 刃にふれると熱を吸って、じんわりと冷える。 気持ちいい。 「なあに、それ?」 「剣!」 すっと、きっさき
2022-06-16 08:00:22#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月17日】 を前にむけて。構えなど、知らない。我流だ。 「えー、あぶない」 女の子は、おどろいたふうもなく、まだへらへらと笑っている。 桃花は、無造作にリュックをおろして、前にでた。横によけた女の子の脇をぬけて、道わきの藪に近づく。 エ pic.twitter.com/Hg27dIpy7b
2022-06-17 08:00:25ノコログサ、ヨモギ、それから、すすき。膝上までびっしりと草の葉で埋まって、地面はほとんど見えない。その、奥が。 ざわざわと、動いている。 じゅ、じゅ、とフライパンに水を落としたような音と、機械油に汚水をまぜたようなつんとした匂いが、足元からわきあがって来る。 獣臭、ともちがう
2022-06-17 08:00:26#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月18日】 。 「あれえ、」 一瞬、ふたりは顔を見合わせて、それから、女の子は軽いしぐさで膝を折って、藪のなかを覗きこんだ。 「猫、かな?」 「どいて!」 思わず、さけぶ。手をのばそうとしていた女の子を蹴りとばすようにして、桃花が前にでる pic.twitter.com/HhYel2sz3J
2022-06-18 08:00:18。両手で力をこめて、剣先を藪につきいれる。手ごたえはない。いや、 絡みつくような力が、ぬるりと剣先を包んでいる。 剣を抜く。すると、 ──赤黒い、粘液質の、大きな血のかたまりのようなものが、藪から跳ね上がってきた! ぎゃ、と、しゃがんでいた女の子の喉から悲鳴がもれる。粘液
2022-06-18 08:00:21#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月19日】 は、桃花の肩のあたりまで跳ねて、空中で大きく変形して広がった。ゆっくり回転しながら、頭をつつみこむようにふわりと飛んでくる。 小さく地面を蹴って、下がりながら、逆手でにぎり直した剣を、思いきり振り抜く。 遊歩道の端にかかとが pic.twitter.com/7MsX9IIwOl
2022-06-19 08:00:14触れて、姿勢を崩しそうになる。こらえて、剣を戻す。 まっぷたつに別れて、地面に落ちた粘液は、すぐ動かなくなって……、じんわりと染み込んで、消えた。あとかたもなく。 「……なに、あれ」 ぼそりと、女の子がつぶやく。桃花がこたえる。 「スライム、とか?」 「とか、って」 「ああいうのが
2022-06-19 08:00:15#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち【2022年6月20日】 、いるから。」 宝剣を、杖のようにかるく地面につきたてて、リュックを背負いなおす。 「……一緒に、来る? よかったら」 「どこに?」 「山頂!」 それだけ言って、答えは待たずに、 桃花は、また歩きだした。 * それから、ふ pic.twitter.com/IIIUb2FSxg
2022-06-20 08:00:20たりは山頂の洞窟で、見張りの小鬼を倒し、竜を退治し、はるか昔の冒険者の霊に導かれて姫を救い、宝物庫の罠にかかって隠し部屋に飛ばされ、地下世界の戦士たちと友情を育みながら古代の怪物たちを退け、夕方になってからようやく、地上に戻ってきたのだった。 * 「つーかれたー!」 山頂の休
2022-06-20 08:00:21