第2章、精神分析的臨床実践と女性性
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抜粋『精神分析にとって女とは何か』西見奈子編著、北村婦美・鈴木菜実子・松本卓也、福村出版,25.10.2020 第2章、精神分析的臨床実践と女性性 ① 第1節、女性性に関わる諸問題 [略] 第2節、フロイトにとっての女性性 [略] 第3節、女児のエディプス・コンプレックスに       関する議論 pic.twitter.com/wyR1XCeyKK

2021-02-24 14:24:27
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③ 第4節、女性の身体     4, 摂食障害     5, 性的外傷 ② 第5節、女性性に関わる現代的な問題     2, 閉経     3, 暴力・怒り・攻撃性     4, LGBTQに対して ④ 第6節、女性が精神分析的セラピストになること ⑤ 第7節、おわりに

2021-02-24 14:24:52
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p.62 あまりに短絡的に結婚や出産が治療的達成のしるしとされる雰囲気があることには戸惑いを覚える。成功した治療の証左として、患者の結婚や出産について尋ねられる場面もしばしば見かける。ジェニタリティの確立は一つの精神分析的達成ではあるが、それだけが今もなお、治療の幸福な帰結として

2021-02-24 14:34:09
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扱われ続けているとしたら、フロイトの時代の女性観の反復に分析的セラピストが絡め取られていることに他ならない。おとぎ話のようなエピローグを付け加えたくなる背景には、女性性に関わる変化を受け入れることへのセラピスト自身の抵抗や葛藤が隠されているのかもしれない。

2021-02-24 14:38:24
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p.95 歳を重ねることの意味は、生物学的、心理学的、社会学的観点から、男女において非対称的である。  父親に抱いていた理想的なパートナーになるという空想の断念の達成には、娘の女性性に父親がどのように反応したかが重要である。かつてその女性が少女であった時に、女性になっていく過程で

2021-02-24 14:45:43
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父親が娘のエディプス的勝利を制限したかどうか、娘の女性性を脱価値化することなく、母親に罪悪感を感じることなく戻ることを促せたか、父親から離れることを成功させたかどうか、といったことが問題となる。中年期以降において、自分自身を良いものと感じられるためには、父親とのエディパルな関係性

2021-02-24 14:49:41
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を新たにし、変化させる必要が生じる。  年代をまたいだコミュニケーションは簡単ではなく、娘の役割に置かれるセラピストには、極度に混乱した情緒が引き起こされる可能性がある。逆転移として、母親を失う恐れ、羨望を引き起こす恐れ、歳を取る恐れ、年老いた女性に愛され、世話されたいという

2021-02-24 14:54:07
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欲望と願望といった混乱した情緒が生じうる。セラピストの中に、そうした願望がある場合には、治療の終結が子どもの出立ではなく、母親の死や喪失となってしまう可能性がある。こうした意味で、歳を重ねた患者とのセラピーにおける主たる問題はセラピスト自身となるとも言えよう。

2021-02-24 14:58:12
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p.98 怒りは能動性の発露であるにもかかわらず、抑制するよう求められる社会的傾向の存在が、女性性の特徴と混同され、受動性やマゾヒズムと理解されてきた可能性がある。  女性の怒りは気難しく、耳障りで、ナルシスティックなものと矮小化されやすく、正当な情緒とされず、除外されてきた。

2021-02-24 15:02:06
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例外は、女性がたとえば子どものためなど、他者のために怒る場合である。自己主張や怒りは正当なものかもしれないのに、怒りを表現する女性は揶揄され、煙たがられ、治療においては症状に転換された怒りは病理として記述されてきた。twitter.com/WenYuju/status…

2021-02-24 15:12:52
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女性が自らの怒りの正当性を表現することは、可愛くない、愛らしくない存在だと見なされ孤立を招く危険がある。そのため、男性を勝たせ、男性が主であるように振る舞うという解決策を取ることで、競争的になることや、怒りを表現することが回避されてきた。

2021-02-24 15:17:06
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怒りや攻撃性の抑制と回避は、女性が関係性において受動的になり、従順に振る舞うこととも結びついているかもしれず、こうした傾向が暴力的な関係や差別的な関係に女性が巻き込まれることを容易にしていたかもしれない。カップルのDVにおいては、攻撃者と被害者がともに、ある種の反復的な投影同一化

2021-02-24 15:22:39
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のサイクルを共有している場合がある。攻撃をする人物も、その犠牲になる人物もともに自尊心や怒り、依存、分離個体化といった問題を抱えており、そうした問題をもとにした対象選択が行われる。こうしたカップルは、苦痛を伴う特定の感情を取り除くためだけでなく、相手に特定の感情を引き起こさせる

2021-02-24 15:27:16
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ことを投影と同一化を通して行っている。彼らは相手を刺激して、投影されているものと似た考えや感情を実際に体験させるように振る舞う。投影するパートナーが自分自身を愚かだと感じている場合には、受け取る側のパートナーに愚かだと感じさせるように行動する。

2021-02-24 15:30:23
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職場や学校などでのハラスメントについては、これに加えて、被害者・加害者・傍観者の間での力動が指摘されている。  そうした患者の治療においては、セラピストは転移において被害者、加害者、傍観者の立場に立たされ、患者が体験していた強い恐怖や怒りを向けられることになる。

2021-02-24 15:34:05
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セラピストはハラスメントや暴力的な状況について、患者の過去の外傷体験の転移として、攻撃者と被害者の投影同一化として、あるいはマゾヒズムや受動性という女性的な特徴として検討するとともに、それらのすべてを患者自身に起因させるのではなく、被害に対しての正当な怒りや反論が抑制されている

2021-02-24 15:37:08
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可能性を見逃してはいけないということを強調する必要がある。治療においても、女性の怒りや自己主張を正当なもの、能動性の発露として理解するよりも、女性の個々の神経症の副産物として扱い、社会的・文化的な力の影響が軽んじられてきた。こうした被害者や加害者、傍観者たちの作り出す関係は

2021-02-24 15:41:11
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一時的にではあるが現状にかりそめの安定をもたらすゆえに、こうした状況に変革をもたらすことには困難が伴う。もし、怒りや暴力に関する問題の前で、その原因を患者個人の要因に、なかでもそれを女性性や女性性に起因する問題として考えるのであれば、セラピストは、自分が傍観者の立場に立ち、根底に

2021-02-24 15:44:42
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存在する不安に立ち向かうことを回避しており、かりそめの安定の一部として取り込まれている危険性を考慮する必要があるだろう。 p.101 2019年6月、アメリカ精神分析協会の会長リー・ヤッフェが、LGBTQコミニュティに対して過去に同性愛を病理として扱ったことに対する謝罪を行った。

2021-02-24 15:48:31
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アメリカの精神医学、メンタルヘルスに関わる組織がこうした謝罪を公に行ったのは初めてのことである。彼は過去の精神分析の理解が、KGBTQの人々への差別や偏見の原因の一つとなっていたことを謝罪したが、過去数十年に渡って、アメリカ精神分析協会はLGBTQの平等を主張している。同協会は1991年に

2021-02-24 15:52:23
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同性愛が精神障害や発達上の問題に起因するものではないという声明を出しており、イギリス精神分析協会も2012年に同様の声明を出している。  1990年代以降のフェミニズムの第3波は、男性・女性という対立を越えて、個人や人種、さまざまな性的アイデンティティに焦点を当てるようになっていたが、

2021-02-24 15:56:11
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こうした流れと呼応して、1997年にはアメリカ精神分析協会は同性婚を支持する初の主要な団体となり、転換療法をやめさせ、LGBTQの人々の兵役に関する制約を解放し、いじめや嫌がらせに対処するためのロビー活動を行ってきたが、このような状況が確立されるまでには長い時間が費やされた。

2021-02-24 15:59:34
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長い間、異性愛を規準としてLGBTQは検討されてきた。それから引き出された一般化がセラピストたちの思考にバイアスを与えなかったとは言い難い。同性愛恐怖を内在化したセラピストによって、性的マイノリティの人々の自尊心や安心感に破壊的な損傷が与えられるという弊害が生じうる。

2021-02-24 16:04:21
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LGBTQの人々との治療に当たる際に、セラピストは自分がリベラルであると認識をし、多様なあり方を肯定するだけでは、治療には行き詰まってしまうだろう。それは患者もセラピストもともに、LGBTQの人々のセクシュアリティの扱いに対して困難を抱いている可能性があるためである。

2021-02-24 16:07:49
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ここには種々の逆転移の問題が指摘されており、患者の中に内在化された同性愛嫌悪の探求や、患者の潜在的な性愛的転移に対してのセラピスト自身の反応への恐れがセラピストの意欲を制止してしまう可能性がある。  セラピストは自分の性的欲求がほかの人の性的欲求とは異なっていると感じている人々の

2021-02-24 16:12:20
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自己探求という体験の決定的な重要性を認識しなければならない。ナンシー・マクウィリアムズはこうした患者との治療において、患者の持つ普通でありたいという感情と特別でありたいという感情を感じ取ること、患者がセラピストは共感の限界に率直であると感じること、さらには、セラピストが性的普遍性

2021-02-24 16:16:10
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と性的流動性の両者を認識し、患者のプライドと悲しみのバランスを取ること、自己愛的な傷つきを伴わずに性的な転移を解決することが必要であると述べている。 p.87 バークステッド・ブリーンは、「私ではない空間と、あなたではない空間の欠如」という表現で、拒食症患者には移行空間が欠如しており

2021-02-24 16:24:02
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母子関係が口唇愛的な状態にとどまっていると指摘している。転移において、これは患者とセラピストの間の空間の欠如、象徴化の欠如として生じる。拒食症患者には、母子の間に設けられる空間の発展に関わる象徴化の領域に障害がある。象徴等価という観点から見れば、患者にとって食べ物は母親の世話の

2021-02-24 16:29:32
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象徴ではなく、母親そのものであり、身体の成熟は、成熟や母性として象徴化されるのではなく、母親の身体からの分離そのものとなる。  マリリン・ローレンスは、摂食障害患者が自分の身体に対して暴力的で、殺人的な暴力を用いて内的対象を支配しようとしていると述べている。

2021-02-24 16:33:01
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彼女たちは生き生きとした自己と、頼らざるを得ない自己と、わずかに頼っている対象を憎んでおり、自分の中にある対象への憎しみと拒絶を嘔吐によって表現しているという。自己や自身の身体に向けられる殺人的で暴力的な傾向は、内的な両親と彼らとの関係に対してなされたものを反映していると考える。

2021-02-24 16:36:58
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p.90 性的な虐待体験に対しての否認と抑圧は、かつて文化的に受け入れられていたために、外傷体験の影響が組み込まれていることが見過ごされてしまうことがある。世代から世代へと外傷を無意識に伝達してしまう母親は、娘のこころを自分の外傷体験を貯めておく場所、植民地のように使用している。

2021-02-24 16:41:55
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p.116 女性の問題と並行して、90年代以降には、性的マイノリティーの訓練生の扱いにも変化が生じていった。かつては同性愛は治療の対象とされており、それは患者だけでなく、セラピストに対しても同様であった。英国では、同性愛は倒錯とみなされることが多く、それゆえ訓練生として認められなかった

2021-02-24 17:15:54
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ことが、さらに同性愛の現実を分析家たちが理解することを遅らせた。1989年に米国精神分析アカデミーが性的志向による差別を撤廃したことに続き、1991年に訓練生の選抜において、アメリカ精神分析学会も性的志向による非差別という方針を採択し、続いて1992年にこれを教員と訓練分析家にも適応すること

2021-02-24 17:20:40
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になった。96年には半分の研究機関がゲイとレズビアンの訓練生を受け入れるようになった。しかしながら年配の分析家たちの間にあった反同性愛的な態度や、暗黙の差別は存在しており、女性に関する問題と同様に、LGBTQの人々が訓練生、分析家となり、その数が増えていくこと、そして彼ら・彼女らが

2021-02-24 17:25:01
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指導者となることで、ようやくこれまでマイノリティーとされてきた人々への分析的理解についても本質的な変化が生じると言えよう。   p.118 精神分析の女性性に関する理論は、あるいはこころに関わる理論は、「いま・ここ」にある現象のみと切り結ぶものではない。

2021-02-24 17:28:31
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患者の母親、さらにはその母親の母親が生きてきた歴史と体験は、子どもである患者のこころに影を投げかけ、こころの中で生き続けている。精神分析は、こころの中にある一世代、二世代、あるいはもっと以前の女性の体験による影響にも目を向けることになる。

2021-02-24 17:31:33
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精神分析セラピストたちは、「かつて・あそこ」で女性/母親たちが体験した苦しみが落とした影に無意識に同一化している患者の部分にも向き合わざるを得ない。そこには過去の女性性の理論が現在のものとして息づいている。それゆえに、ときに精神分析の女性観は、現実に今、存在する女性の変化に後れを

2021-02-24 17:36:51
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取っているように見えることもあるのではなかろうか。そしてもし、この精神分析理論の中にある歴史に自覚的でないならば、精神分析的な治療者は時代遅れのジェンダー観や患者の個別の母子関係を過度に一般化する有害な治療者になりかねないだろう。

2021-02-24 17:39:29