中国・明代の江南の街を絵巻の中に復興させるという設定のまちづくりゲーム「水都百景録」。登場人物や街を調べていくうち、どんどん面白さが増して深みにはまったので、参考になった本をまとめてみました。
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muye @muye_sanyue

なお、南京の玄奘の骨については、例によって日中戦争時の日本軍がやらかしているようですが、こういう本があるようです。面白そう。>坂井田夕起子『誰も知らない『西遊記』:玄奘三蔵の遺骨をめぐる東アジア戦後史』 pub.hozokan.co.jp/book/b532587.h…

2022-10-03 19:53:30
muye @muye_sanyue

明末清初の紹興の人、張岱の『陶庵夢憶』に瑠璃宝塔の記述があるとの情報をキャッチして岩波文庫を読む。塔を飾る仏像は瑠璃瓦十数片を組み合わせて作られているが、鬼神の技としか思えぬくらい寸分違わず、細工も素晴らしいらしい。型に入れて成型したのか。新情報としては→ amzn.asia/d/cw8hAQO

2022-11-16 17:46:16
muye @muye_sanyue

→陶板を焼成する時、必要数の三倍を用意しておき、本体に使ったもの以外の残りの三分の二は番号振って地下に埋めてあるらしい。本体の陶板が破損するとその番号を工部に知らせて、同じ番号のものを取り出してそこだけ交換して元通りにすると。ザ・きちんと動くシステムって感じでかっこいいな。

2022-11-16 17:51:05
muye @muye_sanyue

工部の厳さま、知府との交換には毎日2時間しかいてくれないけど、それ以外の時間は瑠璃宝塔の陶板交換の監督とかして実はちゃんと働いてるってことですか、ひょっとして…

2022-11-16 17:53:12

蘇州府:

muye @muye_sanyue

水都百景録、蘇州開発にあたり、参考になりそうな本を見つけた。前に紹介した『中国遊里空間:明清秦淮妓女の世界』の続編だが、花街以外の話題も多そう。何より写真と図や絵が豊富で思った以上に街づくりの役に立つ。>大木康『蘇州花街散歩:山塘街の物語』 #水都百景参考書 amazon.co.jp/dp/4762965936/…

2022-06-23 21:50:55
muye @muye_sanyue

村上哲見『蘇州杭州物語』(中国の都城シリーズ)は、春秋時代から呉国として栄えてきた蘇州と、比較的近年に湿地が陸地化し、唐代以降の治水工事により繁栄の礎が築かれた杭州という江南の二大文化都市の歴史と文化をまとめて概観できる便利な本です。#水都百景参考書 amzn.asia/d/dtBjXkH

2023-01-15 17:58:14
muye @muye_sanyue

このシリーズ、出版時期からしても内容からしても、ちょうどパックツアーとかで大挙して中国観光旅行に行き始めた日本人に最低限の知識教養をつける目的で書かれたのだろうなという言葉の端々が時代を感じさせて興味深い。なお同シリーズの『上海』はほぼ19世紀以降のみ。冒頭に徐光啓はいますけども…

2023-01-15 17:58:55

明の歴史と文化

明朝歴史パック:

muye @muye_sanyue

上田信『海と帝国:明清時代』は海のネットワークの観点から見た明清時代の概説書で、超絶面白いです。経済・社会が中心なので水都百景録の世界の町の人々の暮らしを想像するのに良いかも。人物は鄭和、利瑪竇、徐光啓らに加え、短いが黄道婆の紹介も。#水都百景参考書 amazon.co.jp/dp/B08XQ8R35F/…

2022-08-28 22:56:00
muye @muye_sanyue

上田信『海と帝国』には杭州に関するエピソードもあり、夜間の門番の住民負担が重いので生員を中心に廃止運動したり、陳情活動の中心人物が逮捕されると住民達が黒幕の邸宅を焼き討ちしたりしたそうな。杭州は作業場が多く、労働者は日が暮れても働いていたので、門を閉められると不便だったらしい。

2022-08-28 23:12:19

明初皇帝パック:

muye @muye_sanyue

ふわ、永楽ガチャですと…?(ようやく最新のイベントスケジュールを確認した)(というか、来てくれなくて取り越し苦労かもしれないですけど、永楽帝をうっかり応天府に入れたら、諸々血みどろにならない…?)(建文帝逃げろ…!)

2022-09-16 17:40:03
muye @muye_sanyue

水都百景録、本日の応天府。鴨料理派の皆さんが気を吐いておられますが、朱棣さんはまだ影も形も見えません。ところで彼らがこのタイミングでこういうことを言うのはつまり、「鴨」とは何かの隠語なのでしょうか。応天府を生きて出られる鴨だってちゃんといますからね。不穏なことは言わんで頂きたい。 pic.twitter.com/CYY89JGyQo

2022-09-22 13:19:03
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ということで、

muye @muye_sanyue

水都百景録、永楽ガチャと諸々アップデートを祝し、僭越ながら明初皇帝パックを作りましたのでご査収ください。まだ読んでないのが多いので暫定版ですが、左二冊は明朝概説、右三冊は朱棣とか姚広孝(セットの坊さん)とか、中の三冊は朱元璋と仲間たちと沈万三等々です。たぶん。 #水都百景参考書 pic.twitter.com/0zgSf0H4eg

2022-09-16 20:41:38
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朱元璋(洪武帝):
【公式】水都百景録✨🍃 @suito2022

#水都百景録 登場人物・朱元璋👑皇帝さまなのになぜ農作業得意なのという疑問を抱える方もいらっしゃるかと思いますが👀、史実上の朱元璋は貧しい農家の生まれです🧑‍🌾 波乱万丈な人生を送った皇帝さまは今絵巻の中でコツコツと畑仕事… 平和ってすてきですね✨ pic.twitter.com/uxgqwLLRDs

2022-06-25 12:30:00
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muye @muye_sanyue

水都百景録では餌場の糞掃除も厭わず各方面勤勉に働いてくれる朱元璋ですが、貧農から皇帝にまで至った史実の朱元璋の一代記が檀上寛『明の太祖:朱元璋』です。人生も粛清も諸々ハードすぎて、今生は絵巻の世界でのんびり餌場掃除やってなよ…という感想。#水都百景参考書 amazon.co.jp/dp/4480510052/…

2022-09-11 10:35:36
muye @muye_sanyue

水都百景録だと部下の人たちが来るけど、むしろ糟糠の妻の馬皇后が居るべきなのでは…? というか、部下の人たち、常偶春や劉伯温はまだいいとしても、江南百景図には藍玉もいるらしいのだが大丈夫なのか…? 洪武帝晩年の大疑獄事件の渦中の人だが…実装されたら、知府、人間関係で胃病になりそう。

2022-09-11 10:45:40
muye @muye_sanyue

そう言えば、買ったはずの厳さま栞、最近見かけないなと探してみたら、こんなところに囚われていた。ヘビーな内容なので、なかなか手に取れないんだよ。厳さま、必ず救出しますから、もう少し我慢していてください。 pic.twitter.com/dIcZ27cydu

2022-11-02 20:39:56
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muye @muye_sanyue

さて、川越康博『明代中国の疑獄事件』読了して、厳さま栞を無事救出しました。藍玉の獄の取調記録を元に刊行された「逆臣録」に見える膨大な関係者を分析し、この事件は、皇太子の急死後、軍部隊の人的面での解体再編を意図して洪武帝が発動したと結論。時代の解像度は超絶上がるけど諸々えぐい。pic.twitter.com/fNYnyA88az

2022-11-13 21:26:47
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muye @muye_sanyue

→前半は、藍玉は性格行動に問題あったので、叛意ありとの告発の言わば犠牲になったこと、藍玉家との家庭教師繋がりで沈万三の一族からも連座者を出したこと、不倫関係の恨みから藍党だと密告されて犠牲になった人の話等。蘇州の人の人物評で道衍の発言が言及されていて、そうかこの人蘇州人だった。→

2022-11-13 21:28:51
muye @muye_sanyue

→5章「藍玉の獄とモンゴル人」では、藍玉の獄の際、洪武帝の命により燕王府から護送され処刑されたモンゴル人有力武将(朱棣の軍に投降し、その後明朝で厚遇、燕王軍とともに辺境防衛対応)の分析を通じ、軍事制度の基幹である衛所からのモンゴル人排除の波紋を語る。この辺から不穏度が増す感じ。→

2022-11-13 21:30:25
muye @muye_sanyue

→6章「藍玉の獄に連座した火者たち」は鄭和さんの話を書くために先に目を通していたのだけど、非常に興味深い内容ではあるものの大変につらい。問題設定は、洪武帝が民間で他人を去勢することを禁止して大分経つこの時期に、何故功臣家などに多数の火者(=被去勢者)が存在したのかということで、→

2022-11-13 21:31:28
muye @muye_sanyue

→結論としては、民間における自己調達は禁じられたが、功臣家等の家政に火者は必要であり、皇帝の恩賜を通じての保有の道は開かれていた。そして皇帝権力は(自宮者を除けば)、朝貢の献上品や戦争捕虜として被去勢者を調達していた。前者は朝鮮・ベトナム、後者はモンゴルや雲南。→

2022-11-13 21:33:28
muye @muye_sanyue

→朝貢の献上品と言っても、自発的に献上する訳では当然なく、明朝に数と条件を指定されてやむなく対応する。条件は「年少無臭気」「乾浄的俊的」とかで、要するに「若くて麗しく賢い者」を寄越せと。マムルークとかイェニチェリ的なシステムなのだろうけど、露骨に露骨でとにかくひどい。→

2022-11-13 21:35:57
muye @muye_sanyue

→で、藍玉の獄に連座した雲南出身の火者ですが、うち、年齢が分かる人物は、事件当時21歳、20歳、18歳とかで、鄭和と同じく雲南平定戦で捕虜となり、去勢されたらしい。なお事件当時22歳だった鄭和は、元は雲南平定軍の主将傅友徳の火者だったものの事件以前に燕王に与えられていたので無事だった。→

2022-11-13 21:37:06
muye @muye_sanyue

→それにしても、そんな若者たちもでっちあげ事件に連座してあっさり処刑されちゃうんだとか、鄭和を朱棣に推薦した傅友徳自身も藍玉の獄の翌年には粛清される訳で、鄭和が生き延びたのはほんの紙一重の偶然だったのだなとか、色々とやるせなくてな…資料の分析のあの手この手は本当に面白いんだけど…

2022-11-13 21:38:49
沈万三:
muye @muye_sanyue

「当時江南随一の富豪といわれた沈万三という人物は、海外貿易で得た莫大な財産をもとに、蘇州近郷に広大な田土を所有していたと伝えられる」(壇上寛『朱元璋』)え、待って。今更だけど、水都百景録の桃花村の沈万三さん実在の人だったの!?

2022-09-08 00:26:35
muye @muye_sanyue

なお、続き。「のちに彼は朱元璋によって財産を没収されたが、応天の城壁の三分の一はこの時の没収金によって築かれたとの伝説もある」それって、謎を解き明かしてはまずいやつでは…

2022-09-08 00:28:28
muye @muye_sanyue

こんな小説まであるようです。>呉恩培『巨商 沈万三』 bensei.jp/index.php?main…

2022-09-08 00:30:43
朱棣(永楽帝):
【公式】水都百景録✨🍃 @suito2022

📖#水都人物紹介📖 永楽帝・朱棣(しゅ てい)⚡️と僧侶・姚広孝(よう こう こう)🪷 pic.twitter.com/7ug3rsbHIk

2022-09-26 10:00:00
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muye @muye_sanyue

#水都百景参考書 水都百景録に関連して永楽帝に関する本を読んでいたら、「靖難の変を文学的に味わいたい読者には、ぜひ『運命』を一読されることをおすすめする」(壇上寛『永楽帝』)とおすすめされたので、幸田露伴「運命」の青空文庫版にリンクを貼っておきます>aozora.gr.jp/cards/000051/f…

2022-09-25 22:56:52
muye @muye_sanyue

幸田露伴『運命』の紙本は、岩波文庫、講談社文芸文庫などで出ているそうですが、特に『日本近代文学大系6 幸田露伴集』(角川書店、1974年)に収録されているのは、「まず董其昌を殺せ」を書いた中国文学者の福本雅一氏による「該博な知識をフルに活用」した精緻な注釈付きだそう。

2022-09-25 23:04:24
muye @muye_sanyue

永楽ガチャ記念に、文庫で読める永楽帝特集。まずは中公文庫の寺田隆信『永楽帝』 執筆時期が早いこともあり、割とオーソドックスな人物伝、英雄伝の体裁で読みやすい。父・朱元璋の出世から説き起こし、靖難の変前後のあれこれ、即位後は対外関係中心。→ #水都百景参考書 amazon.co.jp/dp/4122027993/…

2022-09-26 22:35:59
muye @muye_sanyue

→特徴としては、即位後の対外関係について、対モンゴル、チベット、安南、シベリア、日本、南海と各方面バランスよく紹介しているのと、同時代の中央アジアの雄ティムールについてかなり紙幅を割いている点。水都百景録は江南中心だから、北や西は遠い印象だが、歴史のダイナミズムを感じられて良い。

2022-09-26 22:42:21
muye @muye_sanyue

→なお、永楽帝は甥から帝位簒奪したというので巷では評判が悪く、靖難の変後、部下の人が久しぶりに帰郷したら高齢の姉はじめ親族知人友人に総スカン食らったという話があるが、あれは蘇州出身の道衍(姚広孝)の挿話だったらしい。蘇州人、筋金入りの在野人だな…

2022-09-26 22:52:57
muye @muye_sanyue

だいぶ前に読んだので忘れる前に紹介をば。壇上寛『永楽帝:華夷秩序の完成』は、甥・建文帝から帝位を簒奪した汚名をすすぐべく海外に威光を示して華夷秩序を構築したという見通しで描かれた永楽帝の伝記。簒奪の経緯を丁寧に書くためか靖難の変に至るプロセスが厚いです。→ amzn.asia/d/gsDHJLP

2022-11-20 00:05:11
muye @muye_sanyue

→で、壇上版が他の永楽帝本と最も違うのは、出生から靖難の変に至るまでの史実を永楽帝がどういう意図でいかに書き換えたか、それに対して後世、どのような揺り戻しがあったのか、といった部分をじっくり分析している点。ここはもう、超絶に面白いです。歴史学の醍醐味って感じ。→

2022-11-20 00:06:18
muye @muye_sanyue

→もう一つは、洪武帝にも引けを取らない永楽帝の粛清っぷりのネガティブな部分をかなり描いているところ。特に後年の後宮での事件などは陰惨で、なかなかきつい…水都百景録の中でも懐疑と不信に囚われている感じの朱棣ですが、…絵巻の世界では健やかに生き直して欲しいです。 #水都百景参考書

2022-11-20 00:07:24
muye @muye_sanyue

荷見守義『永楽帝』は千円以内約百ページでコンパクトに解説してくれる、初心者にもやさしい山川の世界史リブレットシリーズの一冊。朱元璋の建国から説き起こし、朱棣だけでなく道衍(姚広孝)と鄭和にもそこそこ言及あるので、水都百景録勢的にはお得かも。 #水都百景参考書 amzn.asia/d/dBORzkr

2022-11-20 17:58:10
muye @muye_sanyue

→読みどころの第一は、靖難の変直前、王といえども実は軍事権はあんまりない(軍を動かすには皇帝の命令が必要)中、建文帝側から監視され、削藩する口実を見つけるために挑発されるも反撃できず王府全体がほぼパニックの極限状態から逆転クーデターまでの描写が迫真。→

2022-11-20 17:58:24
muye @muye_sanyue

→第二は、王府の軍事権の話もそうだが、さらりと背景となる制度の説明を入れてくれるところ。逆転クーデターで帝位簒奪という経緯からインナーサークル型の意思決定を行い、それを踏まえた体制に変わったり、軍人の配置転換を行ったり、対外関係にも順逆で取り扱いを変えたり的な。

2022-11-20 17:59:25
muye @muye_sanyue

鄭和さん勢としては、燕王府極限状態のあたり「削藩されれば燕王とその家族は助かるかもしれないが、王府の者たちはむごたらしく粛清されるであろう」と書かれたところで「鄭和さん、一度ならず二度までギリギリ紙一重の人生だったんだ…」と思いました。故郷征服された時も含めると三度かもしれない。

2022-11-20 18:00:01

北虜南倭の北虜のほう:

muye @muye_sanyue

川越泰博『明代長城の群像』 最近、水都百景録で江南の対極としての辺境がクローズアップされているので読んでみた本。皇帝が野戦で負けて捕虜になった土木の変を中心に、明・モンゴル双方の諜報活動や、大人数で押しかけて面倒を起こす朝貢団の実態などスリリングで面白かったです。 #水都百景参考書

2023-02-05 13:02:08
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まとめたひと
muye @muye_sanyue

水都百景録:町活と読書案内と二次小説。鄭和さんと馮夢龍推し。ゆるくおつきあいのほどを。ただし、無邪気な差別含めあなたからヘイト発言は聞きたくないです。📘読書案内まとめ→ min.togetter.com/7iXYgVx 📗二次小説まとめ→ min.togetter.com/go6Z0Gn