馮夢龍は山歌という蘇州周辺に人々歌われていた歌謡を集め、出版しました。それについての研究書が大木康『馮夢龍『山歌』の研究:中国明代の通俗歌謡』です。分厚い本ですが、前半は山歌とは何かや馮夢龍の編集意図についての分析、後半が山歌の翻訳になっています。→ amzn.asia/d/gslIEun
2022-12-02 21:31:41→山歌とは何ぞやということですが、主に男女の赤裸々な恋愛感情や性愛行為を歌う内容です。古くは歌垣のような場で男女の掛け合いとして歌われ、農作業の労働歌、農村を離れた船頭や職工たちにより都市にもたらされ、妓楼で歌われ、文人も作ってみるようになったという流れらしい。→
2022-12-02 21:32:03→山歌の歌詞の一部は現在でも歌われているとのことで、著者は現代中国のフィールドワークも踏まえつつどのように山歌が歌われたかを解き明かします。歌上手が音頭を取ったり、祭りの時に大勢が橋のたもとで歌ったり、ロックフェスか?みたいな熱気を感じます。
2022-12-02 21:32:33→なので、山歌はそもそも士大夫が関心を持つようなものではない下々の俗な歌なのだが、馮夢龍の時代には「士大夫の文学は形式主義に陥っている。民衆の歌にこそ真がある」といった文学的主張が生まれており、馮夢龍もそのような考えから山歌を採集して編集出版したのだろうということ。→
2022-12-02 21:33:11→もっとも恋愛・性愛描写を平気でやる馮夢龍への世間の風当たりは強く、「息子を不良にしやがって」と怒った父兄に攻撃されてにっちもさっちも行かなくなった馮夢龍が大物官僚にして文壇のボスみたいな人のところに助けを求めに行って、助けてはもらうんだけど散々いじられて憮然とする話も。
2022-12-02 21:34:07→ちなみに山歌の中には「この間春画で見た体位を今度彼氏に試してみるんだ〜」みたいな内容があったり(AVを実際のセックスのお手本にするのはやめようね)、「病気の時はやっぱり古女房がいい」という歌に「突然の道学だが、病気じゃない時の方が多いよな」と馮夢龍が突っ込んだりします。
2022-12-02 21:35:07→あと、馮夢龍、全然関係ない歌の後ろに、知り合いの話として、民家に泊まったらその家の女性の恋人が忍んで来て戸口から勃起したイチモツを握らせようとするので押し返しているうちについその気になってしまって自分のモノを握らせたら相手が逃げてったみたいなこと書いてたり…その話、必要???
2022-12-02 21:36:05→ということで、水都百景録の馮夢龍の人物紹介、すごくいい感じで好きなのですが、堅物な人では全くないので、その辺は含みおいておくと楽しいのではないかと思います。それにしても、下ネタが息吸って歩いているようなのに文章が全然下品でなく、妙に品があるのは人徳なのか… #水都百景参考書
2022-12-02 21:37:17↓大木康『馮夢龍と明末俗文学』※分厚い研究書
大木康『馮夢龍と明末俗文学』 元祖馮夢龍推し(?)の大木康先生による分厚い研究書。馮夢龍の略伝や同時代人による人物評から始まり、彼の作品や批評形式(傍点つけるみたいなの)の分析、音楽や妓女との関わり等の切り口から馮夢龍の人と作品についてミクロに論じるのに加え、→ #水都百景参考書
2023-02-24 23:14:45→白話小説をめぐる作者と読者、士大夫層と民衆の関係から現代までを視野に入れた中国小説史の構想といった、構造的でマクロな見通しまでを一冊で読めてしまうお得(?)な本。(お得とは言え1諭吉超えなので、まずは同じ著者の『明末のはぐれ知識人』を勧めますが) amzn.asia/d/5iAMELJ
2023-02-24 23:15:26馮夢龍、白話小説書くだけでなく、科挙の参考書作ったり各種作品補訂&出版しまくり、実は湯顕祖の牡丹亭も改作し(言葉重視で音楽無視が気に食わなかったらしい)、結局知県もやり、明が滅亡した最晩年は北方からのニュース集めて出版するジャーナリストやっていて、才能がマルチすぎるんだよ…
2023-02-24 23:16:20あと、この本読んで感じたのは、馮夢龍、結構みんなに愛されているんですよね。父兄に有害図書扱いされて文壇の大立者みたいな人のところにぴえんしに行ったら、お灸は据えられるけど全て裏で手を回して解決してくれたり。最晩年の、再会を期したがお亡くなりに的な友人の文章も情感こもっていて。
2023-02-24 23:17:06あと、この本読んで感じたのは、馮夢龍、結構みんなに愛されているんですよね。父兄に有害図書扱いされて文壇の大立者みたいな人のところにぴえんしに行ったら、お灸は据えられるけど全て裏で手を回して解決してくれたり。最晩年の、再会を期したがお亡くなりに的な友人の文章も情感こもっていて。
2023-02-24 23:17:06妓女との関係でいくと、二十代前半で惚れた相手が別の男に落籍されて妓楼遊びはすっぱりやめた(と本人は言うが後年も普通に出入りしていた)が、妓女に俗謡歌ってもらって収集したり、若くして不幸な死を遂げた妓女のお墓を仲間と建てて追悼書いたり、対等な人間同士の交情という感じもあり。
2023-02-24 23:17:43まあ家父長制で男尊女卑という構造的な格差がある中での対等ではあるのかもしれないけど、馮夢龍は後年赴任先の男尊女卑の風俗について「女を軽んじているばかりでなく、女もまた自ら軽んじている。悲しいことだ」と書いているそうで、結構まじめにフェミニストだったのかもしれない。深掘りしたいな。
2023-02-24 23:18:35(「女もまた自ら軽んじている」って普通あんまり書けないと思うんですよ。この一文が書けるだけで信頼できる人という気がする。馮夢龍、読めば読むほど魅力的な人物で、大木先生が推しまくるのも納得だ…奥が果てしない…)
2023-02-24 23:23:06もっと昔のこと
阮籍と嵆康:
📖#水都人物紹介📖 竹林の七賢🎍 阮籍(げん せき)🎋と 嵆康(けい こう)🪕 pic.twitter.com/ZkbDQX7JsP
2022-10-02 09:30:00江南百景図、嵆康に気を取られて気づくのが遅れたけど、阮籍さんもいるではないですか。しかも侯で。候ならワンチャン望みがある。水都百景録にも早く来てくだされ…待っております。(阮籍の詠懐詩がすごく好きなので)> 吉川幸次郎『阮籍の「詠懐詩」について』 amazon.co.jp/dp/4003315219/…
2022-09-15 22:36:52魚玄機:
📖#水都人物紹介📖 魚玄機(ぎょげんき)、中国晩唐の女性詩人。若い頃から読書を好み、詩文の才能で有名になった。「唐女郎魚玄機詩」1巻を今に伝える📖 今年没後100周年を迎えた森鴎外先生が、「魚玄機」という短篇小説で彼女の生涯を描いていた。興味がある方はぜひ読んでみてください👀 pic.twitter.com/ahaL6M746I
2022-03-07 17:30:00#水都百景参考書 魚玄機については、森鴎外が「魚玄機」という短編を書いているんですね。あと、岩波文庫の「唐宋伝奇集」あたりにもあった気がする。森鴎外版、青空文庫ではこちら。> aozora.gr.jp/cards/000129/f…
2022-10-13 21:03:32李師師:
表題作「鳩摩羅什の煩悩」に惹かれて買って積読していた短編集ですが、目次を見たら李師師の話があったので読んでみました。作者は中国の文学者で、1930年前後に歴史小説を書いていたそう。日本の芥川や谷崎、あとユルスナールのオリエント物等を彷彿とさせる作風です。→ hoyubook.co.jp/book/detail.ph…
2023-01-07 21:05:49→収録作品は表題作のほか、異民族出身の唐の将軍の葛藤「花将軍の涙」(杜甫の詩の引用あり)、水滸伝に題材を取った「石秀の欲望」、明に滅ぼされる雲南梁国最後の王バツァラワルミも登場する「大理王の妻」、架空の史料を用いて描き出された尼僧の生涯「黄心大師の奇跡」、そして「李師師の恋」。→
2023-01-07 21:06:08→「李師師の恋」は、俗物な豪商と思って冷淡にあしらった新客が皇帝として彼女を迎えに来るまでの李師師の心理を、風流な馴染み客の塩税官との対話を交えてテンポ良く描写して、なかなか良い。ちなみに俗物商人が実は徽宗で、塩税官が実は著名な詞人周邦彦だったというのがミソ。 #水都百景参考書
2023-01-07 21:06:58