①の方の、第1章、神経生物学的な名残としてのトラウマ~断片化はどのように起こるのか、 から少々。 愛する人から虐待やネグレクトを受けると、子どもは心理的に距離を取り、大丈夫でいようとします。「(ひどい目に遭っている)悪い子ども」を「自分でない」とします。twitter.com/chokusenhikaem…
2020-11-18 11:07:29やうやく古新聞を片付けたので、次のターゲットを晒す。 ①『トラウマによる解離からの回復: 断片化された「わたしたち」を癒す』 2020/8/25.ジェニーナ・フィッシャー著、浅井咲子訳、国書刊行会 pic.twitter.com/B64YbyJy50
2020-11-18 00:36:02搾取されたつらい経験を切り離して、自分は「平気だ」という感覚を保つために、人間の右脳ー左脳の分離脳の恩恵、区画化という能力を使うのです。しかし、分離や断片化は適応策ですが、犠牲がついてきます。「私ではない」とされた子ども(のパーツたち)は意識の外に追いやられて、さらなる解離、否認、
2020-11-18 11:13:23自己嫌悪によって断片化が強化されていきます。最も無防備で傷ついたわたし(パーツ)たちを置き去りにすることで、虐待や裏切りから生き延び、そして、ほんのわずかなわたしで生活し、自分をごまかしていることに気づく時がきます。「だましているような」「フリをしているような」「他人の期待通りに
2020-11-18 11:17:17しているような」、そんな感覚に苦しみます。ある人はこの僞りのわたしに憤り、ある人は恥や猜疑心を感じます。いずれにせよ、トラウマの名残に支配されます。 子どもが虐待を受けると、この分離は潜伏したまま思春期から成人期へと移行します。そして、「よい子」の私は発達の課題をこなします。
2020-11-18 11:21:24しかし一方で、断片化されたパーツたちは、過去の感情的・身体的な痛みをこらえ、危険の兆候にいつも警戒し、次の脅威や見捨てられることに備えているのです。物事を複雑にするのは、この「私」も「わたしでない」も連続性のある物語的記憶を持たないことが多いためです。
2020-11-18 11:24:55記憶は、侵入するイメージ、感情、身体反応として起こり、なんの前触れもなく現れるのです。 トラウマ・セラピーでは、トラウマ的記憶そのものではなく、その過去の影響について話し合う必要があります。大事なのは、心臓が高鳴るのは、現在の危険の兆候などではなく、刺激された時の反応なのだと
2020-11-18 11:28:53自分を安心させられることなのです。そして、恥や悲嘆や怒りが、あまりにも幼くて自分をなだめられなかった頃の過去の名残であると知ることです。癒やしは、切り捨てられ、失われたパーツたちを取り戻すことなしには起こりません。そのパーツたちを温かく迎えて、安心を提供し、大事にされていることを
2020-11-18 11:33:13知らせるのです。統合とは、Siegel, D. J. (2010) の定義によると「つながりと区別化が同時に存在する」ということです。あるパーツが捨て置かれ、あるパーツが過度に同一化されていることではありません。または、過去の安全ではなく凶暴な世界の影響が、今の安全を脅かしていることに気づかないのも
2020-11-18 11:38:16統合がなされていない証拠です。 幼少期は右脳が優勢です。左脳は遅れて発達し、言語を獲得して十分使えるようになるのに18年くらいかかります。そして右脳と左脳のコミュニケーションを司る脳梁は、20歳ぐらいにやっと完成します。幼少期には右脳の経験は左脳のとは独立してあるのです。
2020-11-18 11:42:48この発達の差により、断片化が起こります。Teicher, M.H.(2004) によると、子どもと思春期の脳の発達は、虐待やネグレクトを受けた場合、脳梁が通常より未発達になるとされています。そうすると右脳と左脳が独立してトラウマの影響を受け、「2つの別々の脳」として機能するかのようになります。
2020-11-18 11:48:27両方の脳に共有する知識があったとき、左脳は経験と情報を表すのに言葉を用いますが、右脳は、ヴィジュアルとして刺激の異なる点や共通点を認識しても、言葉は持ちません。右脳は出来事として潜在的に記憶しますが、左脳は年代的に記憶し、知識として貯蔵します。しかし左脳は情報を言語として記号化
2020-11-18 11:53:03できますが、想起された記憶が必ずしも「正確である」ということではありません。左脳は状況の要点を捉え、一般的なスキーマに当てはめて推測し、該当しないものは除外します。この特性は正確さでは劣りますが、新しい情報の処理を簡単にします。一方、右脳は、事実のままオリジナルを保存します。
2020-11-18 11:57:01感情は両方の脳で経験されますが、左脳でのみ言語化されます。脳梁を介して情報のやり取りが行われないと、左脳は右脳の感情に基づく行動や反応の記憶を、持つことができません。 愛着の研究では、ストレス下による区画化という概念は次のように説明されています。愛着対象が虐待者であると、
2020-11-18 12:12:07子どもの安全と保護の源が同時に危険と化します。子どもは本能の2つの葛藤状態におちいるのです。愛着を持った人に一方では、親密さ、慰め、庇護を求めるのですが、同時に脅かす人に近づくと凍りつく、たたかう / 逃げる、明け渡す、解離するという強烈な動物の防衛本能が働くのです。
2020-11-18 12:20:31Liotti, G. (1999) は解離的な分離は、感情と身体の相反する2つの強い回避不能な苦闘をコントロールするために不可欠なものとしています。Van der Hart, O. (2004; 2006) らは、解離における区画化を「行動化システム」(action systems)、つまり衝動に着目し、子どもの発達と環境への適応を促進する
2020-11-18 12:30:31もの(propel)と考えました。必ずしも安全でない環境に置かれた子どもは、学校では、探求をする、授業に集中する、友達や教師と社会的につながるというパーツが働き、家では、無関心やネグレクト、暴力などの脅威に対処するパーツが活動するのです。親たちの顔色を注意深く「警戒して」、いつでも
2020-11-18 12:35:06脅威になる言動に備えているのです。こうしてパターン化された区画化は、トラウマ関連の手続き的な学習です。統合された全体性を持つ「自己」でいるよりも適応策である様々なパーツたちでいた方が安全なのです。 愛着対象と親密になりたいという衝動と、寂しさを感じて慰めを求める神経伝達回路が
2020-11-18 12:43:01同時に賦活化されるとします。そうすると「彼女は僕のことを愛しているのだから、僕のことを寂しくさせることはしない」という考え方をしがちになります。この神経システムのあり方が、安心と親密さを求め、愛着対象はそれを提供してくれる、といったような幼児のような非現実的な幻想を作ります。
2020-11-18 12:46:20もし、これが脅かされると、不安定になり、幼い子どもの人格パーツが働きます。神経系の仕組みは個人のアイデンティティと言う複雑で主観的な感覚を作ります。 日常をこなしてくれているパーツを「日常を送るパーツ(自己)」、動物の防衛反応に触発された部分を「トラウマ関連のパーツ」とします。
2020-11-18 12:52:29「日常を送るパーツ」は、動揺する感情や動物の防衛本能が起こった時に調整を試みてくれます。その動物の反応を無視するわけでも「本来の自分」と解釈することもしません。生存を担ってきてくれたパーツたちの肯定的な役割をただ探っていきます。それぞれのパーツは危険な環境のもとで、生き延びようと
2020-11-18 12:56:22様々なあり方をしてくれてきたのです。ですから、その断片化に意味と尊厳が与えられて当然なのです。パーツは記憶の貯蔵庫というわけではなく、「最悪の中の最悪」を生き延びてきた手段なのです。 ですから、目の前の人には、「それぞれのパーツがちゃんと働いて生き延びるのを助けてくれなかったら
2020-11-18 13:00:06私とあなたは今ここにこうして一緒にいることはできなかった」とお伝えします。その生き延びてきた手段は、たとえ何年経過した今でも、次の脅威やトラウマ関連の引き金に備えてくれているのです。 個人によってトラウマへの反応が多岐にわたるように、構造的な解離も一人ひとり、ユニークです。
2020-11-18 13:04:26トラウマ的な環境、虐待、ネグレクトが重なると解離構造も煩瑣な様相を呈します。そして日常を送る自己と、生存のためのたたかう、逃げる、凍りつく、服従する、助けを求めるパーツのそれぞれが働きます。PTSDや双極性Ⅱ型のような診断をされた個人の場合、明確に異なる状態に移行することもあります。
2020-11-18 13:10:43境界性パーソナリティ障碍の場合、往々にして仕事では機能が高かったりします。DDNOSの場合は、区画化が明確に現れ、記憶に困難さが見られることがあります。(例えば、たたかうパーツの強い怒りの言動や分離不安の子どものパーツの愛の欲求などを覚えていないことがあります。)
2020-11-18 13:15:54解離性同一性障碍の場合は、トラウマ関連のパーツが多く存在すると同時に、日常をこなすパーツも幾つものサブパーツに分かれていることがよくあります。例えば職業的なパーツ、子育てのパーツ、といったように優先すべき物事によって分化しています。このように神経系システムが精巧に自律的に機能する
2020-11-18 13:20:08ため、パーツに「ハイジャックされた」かのように入れ替わったり、時間を失ったりします。何らかの引き金によって、日常を送る自己の意識的な気づきの外でこれらが起こります。 日常を送る自己が働きながらも(仕事をし、子育てをし、家事をこなしていても)、他のパーツたちは、動物の防衛本能である
2020-11-18 13:25:07たたかう、逃げる、凍りつく、服従する、愛着を示すパーツたちは、トラウマ関連の刺激により活性化され続けるのです。そうすると、過度の警戒、不信、うつ、不安、自殺願望、未来への恐怖と絶望などに苦しむことになり、セラピーの扉を叩きます。
2020-11-18 13:28:23個人によっては仕事では「ポジティブな刺激」によって高い業績をあげていても、家庭や私生活では、トラウマ関連の刺激に誘発され、破綻している場合があります。関係性では、見捨てられるのを怖れる一方で、接近してくる人を拒絶したり、理想化した人に幻滅して怒ったりするのがパターン化されます。
2020-11-18 13:32:56見捨てられるのを怖れるのは、愛着を求めるパーツの働きであり、いったん親密になると分離不安を示すのです。親密になるのを拒絶するのは無防備になって傷つくことを恐れるたたかうパーツです。このように内なる分離は矛盾した行動を引き起こします。
2020-11-18 13:36:23たとえば、恐怖を感じても、実際の脅威への適切な対処ができなかったり、次の夏の家族旅行を計画していながら同時に自殺を企てる、などです。(p.39) pic.twitter.com/LP8jLEypTi
2020-11-18 13:53:51ソマティック(身体的)な症状としては、痛みへの強烈な過敏性や、逆に痛みへの高すぎる耐性、ストレスによる頭痛、目の瞬きが多くなるとか、とろんとするなどのナルコレプシー的症状などがあります。向精神薬に反応しない場合は、構造的解離を視野に入れたほうがよいでしょう。
2020-11-18 14:21:42なぜならパーツたちは、身体を通じて訴えている場合が多いからです。瞬きが多くなったりとろんとするのは、パーツが交替する時によく起こります。崩壊している左肩、堅く持ち上がっている右肩などは、明け渡すパーツとたたかうパーツが混在している証拠です。(Anderson, 2014)
2020-11-18 14:25:25しばしば「両極感情」とされますが、日常の些細な決断や意思表示が困難だったりするのは、相反するパーツたちの葛藤です。仕事、キャリア、関係性の頻繁な転向、功績を残すかと思えば自己妨害からの致命的な失敗、高機能と機能不全、勤勉さと自己破壊的なサボタージュは、パーツたちによるものです。
2020-11-18 14:32:09人生の重大な決断のときよりもむしろ、日常の些細な決断が困難になります。何を着ようか、朝食は何を食べようか、友人との昼食の日程をいつにしようか、決めるのに苦しみます。 記憶が途切れ「時間を喪失する」のは、解離性障碍の特徴的な症状ですが、次のような日常の問題もパーツが引き起こす
2020-11-18 14:37:23構造的な解離です。一日をどう過ごしたのかを思い出すのが難しい、会話を覚えていられない、セラピーに集中できない、「真っ白になる」、(自宅から職場など)通い慣れているところで迷子になる、(運転の仕方など)慣れた動作を忘れる、夢中になっていた行動が思い出せなくなるなどです。
2020-11-18 14:40:42自殺、自傷、嗜癖などの行為は、トラウマ関連の刺激を受けた時のたたかうと逃げるパーツが活性化した時に起こります。日常生活を送る自己が、人生を向上させようとセラピーを受ける一方で、たたかうパーツたちはリスクの高い行動や自傷行為などをして、潜在記憶の苦しみから逃れようとするのです。
2020-11-18 14:45:29攻撃性が自分や他者に向かい自殺を試みることもあります。逃げる反応のパーツたちは、摂食障碍や麻痺、嗜癖的な行動によって変性意識になることで耐え難い感情やフラッシュバックから距離を取ろうとします。 2歳から10歳の重症の入院患者を対象とした Pilot Study では、構造的解離モデルを使用し、
2020-11-18 14:51:53意図的・衝動的なものでも、自殺が防止できることを示しています。危険行為をもたらすパーツたちを特定し、日常を送る自己の能力を高め、衝動を俯瞰できるように1年間、心理教育に基づきはたらきかけると、8人中6人にかなりの改善が見られました。(Fisher)
2020-11-18 14:55:12トラウマを生き延びた人々が初めてセラピストのもとを訪れる時、自律神経系の調整不全、無秩序型の愛着、そして構造的解離のパーツたち、これらが部屋に一緒にいることになります。そして、いかなる引き金にも反応します。症状や反応は、今や潜在的な手続き学習になっているので無意識であり、自動的に
2020-11-18 14:59:02引き起こされるのです。ですから「これが自分なのだ」とさえ思っています。過去と関係ないようでいて、「これが自分なのだ」には、記憶にない、言葉にならない物語があり、パーツたちが持つ物事の捉え方、誘発要因へのサバイバル反応が抱え込まれているのです。
2020-11-18 15:02:03トラウマから生き延びた人たちは、調整不全の神経を何とかしようと様々な試みをします。自傷や自殺企図、危険行為、再演、他人の世話、自己犠牲、再犠牲、嗜癖行為など、これらは神経を調整する試みでもあり、次の脅威への備えでもあります。自傷や自殺を計画することは、アドレナリンによって力の
2020-11-18 15:07:10感覚が漲ることもあれば、静かな平安が得られたり、統制や強さを感じられたりします。またエンドルフィンも分泌されるので、リラックスします。拒食、むちゃ食いと嘔吐、過食は感情や身体を麻痺させてくれますし、嗜癖的行為は、麻痺か覚醒、または両方が起こります。
2020-11-18 15:11:04従来のセラピーではこれらの危険行為をまず安定化させてから、トラウマ的出来事に取り組んできました。しかし、このやり方でも、自律神経系の強烈な覚醒が起こり、危険への「警戒」がさらに強まり、自己破壊行為が悪化することがあります。ただ「思い出すことを想定してもらう」だけでも、その出来事が
2020-11-18 15:14:11今ここで起きているかのような神経系の活性化を引き起こすのです。 症状がトラウマ関連のパーツたちの緊急事態の潜在記憶を示す時、個人は安全を感じず、パーツたちは今も危険下にいるように防衛し続けます。パーツたちがこのように脅威を感じていると不完全さ、無希望といった感情が沸き起こります
2020-11-18 15:19:50これは危険な環境のもと、守ってくれる人がいないという孤独のフェルトセンスなのです。ですから、優先すべきは、あらわれている症状は果たして今の危険なのか、不完全さの根拠は何か、などを検討していくことです。これらは習慣的に触発される危険信号への反応であり、それらはパーツからの対話である
2020-11-18 15:23:16ことを伝えていきます。クライアントが構造的解離について心理教育を受け、マインドフルになって好奇心を持ち、誘発要因に新たな対応をし始めると、自己調整力が芽生え、「今、ここ」にいる能力が開発され始めます。自律神経系が調整不全ではなく調整された状態を経験する機会が増えると、
2020-11-18 15:27:18「現在にいる」ことができるようになるのです。それは、身体に穏やかさを感じる瞬間であり、思考が明確になり、安全を実感するということです。 改善が見られないもどかしさ、抵抗、慢性のうつ、変化への怖れ、常にある恐怖や自己嫌悪、危機や葛藤、自殺願望さえも過去を怖れているパーツたちからの
2020-11-18 15:31:49対話であることを理解するだけでも安堵が得られます。今警戒している危険は、もう過去のものであるということです。落胆、批判、親密と疎遠、権威への対応、これらは生命を危険に晒すものではなく、トラウマ関連の潜在記憶であり、パーツからの対話なのです。
2020-11-18 15:35:12症状に興味と関心を持ち、そのメッセージを解明していくことで、自分や過去との関係が変わり、恥と嫌悪から思いやりが芽生えるでしょう。各々のパーツたちがどのように傷を負ったかではなく、生き残るためにどう貢献してくれたかを発見していきます。
2020-11-18 15:39:01ぬくもりと共感が幼い傷ついたパーツに届き、見捨てられ感や孤独感が自己理解へと変容します。 (p.43)
2020-11-18 15:40:09