毎日正午すぎくらいに勝手に呟いています。
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…ただいま」夫の写真に、ちいさく声をかけて、上着を脱ぐ。向かいの席に写真立てを置いて、夫の分もご飯を盛り。話しかけながら食事をする。…おやすみ、と言って、ナイトテーブルの上の写真立てを裏返す。…私は、結婚していない。これは生成AIでつくった写真。…ともかく、おやすみ。 pic.twitter.com/jh7gRInRva

2023-08-23 12:10:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…ア、」ふと、頬にみえないなにかが触れる。『現実』の感覚が残っているのだ。時々、そういうことがある。一種の不具合らしい。事故で没入型VRゲームの世界から抜け出せなくなってもうどれだけ経つか。…こうして、ときどきふれる誰かの手の感覚だけが、わたしに現実を知らせてくれる。 pic.twitter.com/KkuDkxDdHy

2023-08-22 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「パパ、来てるかなあ」久しぶりの実家。お昼のそうめんに箸をのばしながら、つぶやく。「もう帰っちゃったよ。あんたが来るのが遅いから、お盆終わっちゃった」と姉。「仕方ないでしょ、仕事だもん。…パパは待っててくれてるよ、ねぇー」「あんたはいつもそうだったよね。末っ子め!」 pic.twitter.com/MONxqF6I22

2023-08-21 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 ……吸血鬼、だって。あんたもか。なんだか知らんが、ぼくの血はうまそうに見えるらしいな。……別に、吸ってもかまわないよ。いままで、何人も吸わせてる。……なんでか知らんが、ちょっと口をつけるとすごい顔をして逃げちゃうんだけどな。さあ、吸ってみるかい? pic.twitter.com/zyxLHuhI8O

2023-08-18 12:10:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 霊媒体質、で。…早くになくなった姉の霊が、ときどき。…それは知っていた。けれども、ちょっと目を離したすきに地蔵にそなえられた団子をガツガツと盗み食いする彼女をみて、ぼんやりと思う。…それは、本当にお姉さんなのか。 pic.twitter.com/OIBLG0Pcd8

2023-08-17 12:10:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 『クローン体への精神移植の同意を…、』さいごに聞こえた、医者の声。すぐ意識を失って、目が覚めると病院のベッドの上だった。…退院手続きをして家に戻ると、…リビングに、わたしと似た女。『…すみません、まさかあの状態から意識が戻るとは…』電話のむこうの声。女が、ふりむく。 pic.twitter.com/g2mwlL8tGv

2023-08-16 12:10:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 はじめての一人ぐらし。荷ほどきをひととおり終えて、夜。コンビニで遅い夕食を買ってきて、ふと気づく。…黒い影。「やっぱり、いたのか。安かったもんなあ」話しかけるが反応はない。「悪いけど君のは…」いいかけて、思い直す。お茶を一本おいて、「どうぞ、」と。これから、よろしく。 pic.twitter.com/viBYf6G9ak

2023-08-15 12:10:03
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#140字小説 「なにを描いてもいいのよ。自由にね」と先生にやさしく言われる。白紙の画用紙。…それから、教室の前のほうをじっと見る。『金賞』のラベルが貼られたきれいな絵と、それからずっと端のほうに、ぐちゃぐちゃの絵。…あんなところに貼られてやるもんか。ぼくはじっと画用紙を睨みつける。 pic.twitter.com/MTYaseMtTP

2023-08-14 12:10:03
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#140字小説 深夜二時。となりの部屋からの苦情。…子供の悲鳴がうるさい、と。…わたしは一人ぐらしだ。うんざりしながら対応していると、視界の端に、ちいさな子供の後ろ姿が。…あれは、まさか。昔の、わたしの。 pic.twitter.com/svAql3hPny

2023-08-11 12:10:05
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#140字小説 6千万年前。2億年前。10億年前。…少しずつ周期が短くなっていく。…近年の研究で、毎回同じ質量、同じ成分の隕石が落下していることが判明した。…なお、ユカタン半島で発掘されたプレートは『劣化試験の結果証明書』であると推測され、末尾の記号は次回試験の予定日だと思われる。 pic.twitter.com/AVXQhJYsB5

2023-08-10 12:10:04
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#140字小説 「…あー、歯に聖剣が刺さってますね」「え」「ちっちゃいやつですけど。明らかに聖剣なんで、ほっとくとこれから色々集まってきますよ。勇者とか魔物とか」「えー、じゃあ抜いてください」「はい、じゃあ麻酔しますよー」…「ムリでした。僕、勇者じゃなかったみたいです」「ええー」 pic.twitter.com/e49j7ck3Qs

2023-08-09 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「……今日、おやすみする……」朝、七時。小学生のわたしは、学校に生きたくなくて、ごねる。母親の表情を薄目でうかがって、毛布に顔をうずめてしれっと二度寝。……八時前。すっかり大人に戻ったわたしは、重くなった体をおこして眉をしかめる。さあ、……会社に行かなくては。 pic.twitter.com/3h6V2c9qFl

2023-08-08 12:10:03
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#140字小説 『ママ、愛してる』…霊能者が手をかざすと、ボンヤリと幼い娘の霊が姿をあらわす。…しばらく話したあと、娘は満足げに消える。…涙を流しながら霊能者に霊を言う母親のうしろに、…本物の、娘の霊がいる。憎々しげに睨むが、霊能者は、そしらぬ顔。 pic.twitter.com/w9lKt9Thhd

2023-08-07 12:10:03
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#140字小説 食い詰めた男が、強盗をすることにした。窓を壊して入ると、真っ暗な部屋に女がひとり。…よく見ると、女は、男の妻であった。「…どうして、」とつぶやくと、…次の瞬間、妻の顔は髑髏に変わっていた。…血相をかえて逃げ出す男の背中に、からからから、と骸骨の笑う声が投げつけられた。 pic.twitter.com/9Tl1JyhgMQ

2023-08-04 12:10:05
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#140字小説 「…ありがとうございました」長い長い打ち合わせをおえて、ぐったりと疲れたまま会議室を出る。自分の席に戻って、ふと土砂降りの外を見る。…あれは。外に出て、拾う。ぐちゃぐちゃに塗りつぶされた、わたしの名刺。…たぶん、さっき渡したばかりの。 pic.twitter.com/aAzRMOJdFs

2023-08-03 12:10:03
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#140字小説 カプセルの温度が下がっていく。俺の動脈に注入された不凍液が、血液のかわりに循環して、少しずつ、脳と脊髄に浸透する。俺は、意識を、…なぜか、失わなかった。「冷凍処置完了です。予定では100年後に…」技術者の声もはっきりと聞こえる。体はぴくりとも動かない。…声も、出ない。 pic.twitter.com/JaV4Xd3oUE

2023-08-02 12:10:03
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#140字小説 白衣をきた美しい男が、青白い顔をした娘の首筋に牙をはわせる。じゅるりと音をたてて、鮮血が唇に吸い込まれていく。…男は吸血鬼の末裔であった。 「…えー、赤血球がちょっと少ないです。まあ、このくらいだと様子見ですかね。何かあったらまた受診してください。…はい、次のかた!」 pic.twitter.com/z1FDB7wMzF

2023-08-01 12:10:05
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#140字小説 『久しぶりねえ』そう言って、母が並べてくれた料理。…口をつける前に、目が覚めてしまった。…全身に、痛み。うっすらと記憶が蘇る。ここは病院か。「気がつきましたか、」と医師の声。…ああ、失敗してしまった。どうしても、あの味噌汁が飲みたい。また、挑戦しなくては。 pic.twitter.com/n56aB9jnyy

2023-07-20 12:10:03
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#140字小説 洞穴の写真。そこから何かが出てきて、持ち主をとり殺すという触れ込みだ。…気に入って寝室におき、毎晩ながめて寝た。いっこうに怪物は出てこない。…ある夜、…おれはついにしびれを切らして、夢うつつに、洞窟に入っていった。   …一か月後、その男の死体が発見された。 pic.twitter.com/2tmT7j5Qu5

2023-07-19 12:10:03
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#140字小説 ほとんど会っていなかった父の喪が明けた。だからというわけではないが、久しぶりの釣り。…リールを巻く。大きな鯛だ。釣りあげる瞬間、特徴的な模様が目にはいる。…あの日、父と釣ったのと同じ鯛ではないか。…気をとられたすきに糸が切れて、逃げてしまった。もう、確かめようがない。 pic.twitter.com/E5c6sRJZuS

2023-07-18 12:10:03
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#140字小説 日本人形。数ヶ月前に亡くなった、叔母の形見。棚に置いておいても、勝手に床に降りている。今朝などは、寝室の足元まで。さて…「はい、いま動いた!」さっと振り向いて叫ぶと、棚を這い降りかけていた人形が、すごすごと戻っていく。…タッチされたら、一体どうなっちゃうんだろう。 pic.twitter.com/axJaciSSWa

2023-07-17 12:10:03
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#140字小説 「…やった!」ついに、きみを助けることに成功した。この事故を止めるために、ぼくは何度も何度もタイムリープを繰り返したのだ。ついに、運命を変えたのだ。……次の瞬間、ぼくは目をあける。そうして、…きみの通夜から帰る。 pic.twitter.com/XciJaRMgbf

2023-07-14 12:10:05
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#140字小説 夕焼けの、大きな大きな沈む陽のまえに君が立って、わらいながら「まるで世界の果てみたい」といった。ぼくは、なにもいえずにたちつくしていた。…本当に、明日がこなければいいのに。 pic.twitter.com/1tvD5xDxPa

2023-07-13 12:10:03
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#140字小説 入るたびに構造が変わるという、不思議なダンジョン。その奥には素晴らしい財宝が眠っているという。…「…えー、まだ入れないんですか?」「ええまあ、いちおう来週の水曜が工期になってまして、そのあと内装屋さんが入るんで、もうちょっと…」 pic.twitter.com/17aUbSepr1

2023-07-12 12:10:04
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#140字小説 …おかしいと思ってたんだ。引越代むこうもち、超格安の家賃で入居できるかわりに、演奏をしてくれって。他の部屋のやつらと一緒に、薄い壁越しに毎晩セッション。…で、唯一演奏に加わらなかった角のやつが今日出ていって、俺たちはお役ごめんさ。道路の買収で取り壊すらしい。やれやれ。 pic.twitter.com/1nIYtPKV4S

2023-07-11 12:10:03
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#140字小説 「転生者を!」王国の危機に、ほかに手段はなかった。召喚の儀式のために多くの生贄が用意され、魔法陣の内側に座らされた。私は、目をつむって最後の瞬間を待った。…目をあけると、そこには見たこともない高い塔と、轟音をあげて進む色とりどりの箱。…いったい、ここは。 pic.twitter.com/U2suIpg70o

2023-07-10 12:10:03
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#140字小説 「…今年は、だめかあ」輸送航路は、惑星の位置と重力分布によって厳密に決められ、スケジュールは変えられない。母星の公転周期で、およそ1年に1度の着陸チャンス。…なのに、デブリの雨。なにも、こんなときに。…会いたい。あなたに。どう、しても。 pic.twitter.com/R9Y0dHBdHD

2023-07-07 12:10:03
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#140字小説 「…1年ぶりね」耳元で小さくささやく。かれに会えるのは年に一度。七夕まつりの夜だけ。「…ア、」ぽつりと、額に水滴があたる。雨だ。「どこかで雨宿り、しなきゃ…」いいかけて、気づく。かれの姿は、とっくに消えていた。「…さよなら」また、来年。次は晴れるといいな。 pic.twitter.com/Fy6ouZH6S8

2023-07-06 12:10:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 一年に一回の逢瀬。…どうしても、我慢できなかった。水没したかささぎの橋をむりに渡ろうとして、足をとられた。…天の川の水とともにずっと下まで落ちて…気がついたら、この暗い筒の中に。…そうして、大きな音とともに竹が割れて、わたしは声を聞いた。「かぐや姫と名付けよう!」 pic.twitter.com/FOzXurOV8E

2023-07-05 12:10:03
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#140字小説 「おかえり。…もう、寝てるよ」単身赴任先から、ずいぶん久しぶりの帰宅。大雨の影響で電車が遅れに遅れ、ようやく帰ったときにはもう真夜中。…娘はぐっすりと寝ていた。窓ぎわに立てかけた笹飾りには、「来年は晴れますように」と書かれた短冊が。…明日は、たくさん遊んでやろう。 pic.twitter.com/eyiBN3TrZq

2023-07-04 12:10:03
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#140字小説 笹飾りを、燃やす。大きく炎がもえあがった瞬間、ばさっと何かが投げこまれた。大量の、たんざくだ。振り向くと、マスクをつけた女が走って逃げていった。…火の粉とともに、投げ込まれたたんざくが一枚、飛んでくる。…願い事ではなく、ただ、大きく、男の名前が書いてあるだけ。 pic.twitter.com/tKhKlRAXUl

2023-07-03 12:10:03
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#140字小説 「…あれ」わたしの耳のかたち、前からこんなに尖っていたっけ。…思い出せない。写真はみんな、処分してしまったから。1年前、わたしは姉を突き落として、一緒に落ちた。それから、…記憶が混乱しているふりをして、姉の名前と立場を乗っ取ったのだ。…ああ、思いだせない。この、耳は。 pic.twitter.com/Yf3G4Ofjj0

2023-06-30 12:10:06
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#140字小説 雨上がり、虹に座る。ゆっくりと下界を見下ろし、お弁当をたべる。ひとくち食べたところで、……虹が消えて、わたしは落ちてしまう。「キタマツ、寝るな!」「はぁい」ああ、もう少しだったのに。 pic.twitter.com/KthzjBp3Pi

2023-06-29 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 朝がくる。…わたしたちはみんな、消えてしまう。たった一人をのぞいて。眠っているのは、いったい誰なの? 顔を見合わせてさがす。わからない。ここに一人だけ、夢の主が…。…「あー、ねむ」私はよろよろとベッドから降りる。なんだか、長い夢を見ていたような気がする。 pic.twitter.com/kkNayBCa3C

2023-06-28 12:10:03
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#140字小説 奥へ、奥へ。何があるのかは知らない。とにかく、追手から逃れるには進むしかない。王国は潰え、王であった父も、兄弟たちもみんな殺された。あとは、私だけ。…この先に何があるのかは、知らない。…ただ、迷宮の底へ。 pic.twitter.com/BEeESTKLzk

2023-06-27 12:10:09
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#140字小説 男が、罠にかかった狐を助けたとさ。その夜、美しい女が男の家を訪れた。女は覗くなと言って部屋にこもり、立派な毛皮のマフラーを差し出した。男が毛皮に目を落として、…まさか、とつぶやくと、女は消え、男はボロ布をもって立っていた。…遠くで、ケーンと狐の鳴き声と、大きな笑い声。 pic.twitter.com/rZEvZAHkju

2023-06-26 12:10:03
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#140字小説 「逃げろ!」遠くから砲撃の音がする。あわてて塹壕に身をひそめる。「ばか、魔女砲だ!」…まさか、配備されていたのか。軍曹にひっぱられて塹壕を出る。空中からゆっくりと、撃ちだされた魔女たちが降りてくる。…くそ。たぶん、俺は死ぬだろう。 pic.twitter.com/p1rfTvNzSl

2023-06-23 12:10:06
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 新月の日。生贄を魔法陣の前に捧げて、呪文を唱える。『…魔術師よ…』頭の中で声が響く。魔神だ!『…ちょうど別の場所で、召喚の儀式をしている者がいる…』なんだって?『向こうの生贄は3人だ…どうする…』…おれは、仲間と顔を見合わせた。…今、捧げた生贄は2人。おれたちは3人。 pic.twitter.com/Lq1P7kpYYr

2023-06-22 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 深夜二時。今夜も、うなされて起きる。汗だくの体を、ぎゅっと抱きしめて青ざめる。…ああ、あなたは今日もわたしを蹂躙するのか。…まだ、会ったこともないのに。…わたしの、運命のひと。愛してる。 pic.twitter.com/m4HrdOTP9m

2023-06-21 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 ざァ…ッ、ざァ…ッ。情報界面がざわめく。大きな音をたてて波がうねる。深層からいっぺんにかけあがるように、巨体が浮かびあがってくる。『きたぞ、電子くじらだ!』だれかが叫ぶ。張り巡らされたネットが、鯨の巨体にからみつく。…この日のために、インターネットは作られたのだ。 pic.twitter.com/dEN2NI2iYT

2023-06-20 12:10:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 人類の大半が生殖能力を失った原因は、いまだに不明である。…が、およそ30世代前に、共通の先祖としてひとりの男がいたことが判明した。男もその子孫も、魅力にあふれており、すぐに世界の大半にその遺伝子が広がった。…ところで、男の素性は全くわからない。一説には、…宇宙だとも。 pic.twitter.com/6z5mF6jAUL

2023-06-19 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 書き割りの背景。コスプレ用の衣装。でも、あなたは本物。…学園祭の練習が終わって、王子だったあなたはふつうの女の子にもどる。相手役のわたしは、すっと離れて、台本に目を落とす。ああ、…ずっと続けばいいのに。 pic.twitter.com/5L8Fl6SkxL

2023-06-16 12:10:06
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 ポストに、栞が一枚、投げ込まれていた。心当たりをさがしてボンヤリ考える。…ふと、思いだす。10年前の夏、母方の祖母の家のちかくで、こんな花が一面に咲いていた。あのとき、…一緒に遊んだ女の子は、どこの誰だったろう。 pic.twitter.com/rQRhd9uCGk

2023-06-15 12:10:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 人減らし。村で食わせられなくなった年寄りと子供が、帆のない船におしこめられ、沖へと送り出される。…すぐに地平線が見えなくなり、漂流がはじまる。…今だ!隠してあった帆をだして、老人たちがさっそうと動き出す。少年が帆をはる。少女が水平線を見張る。さあ、俺たちの旅立ちだ! pic.twitter.com/oG2q5IncFw

2023-06-14 12:10:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 意識が遠のく。…次の瞬間、ぼくは懐かしい少年の姿になって、きれいな丘に。少女になった妻が笑っている。迎えに来てくれたらしい。…「注入しました」医師が遺族に告げる。死の寸前に使用される薬物。体感時間を永遠に引き延ばして幻覚を見せる。…死後の世界は、こうして作られるのだ。 pic.twitter.com/9FmhfvyEvc

2023-06-13 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 旅先で海難事故。夫の遺体はどうしても見つからない。…遺族一同で相談し、やむなく違法なクローン業者に依頼した。でっちあげた遺体で葬儀を済ませ、遺産の分配もすっかり終わってひと安心。…まさか、帰ってくるなんて。 pic.twitter.com/gJtgL0kKDf

2023-06-12 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「遠くはなれても同じ空を見てる」どこかで聞いたようなせりふを、真剣にあなたが言ったのを思い出す。…海外転勤が決まった日のことだ。あれから10年。…もう、あなたには会えない。だって、空が違うから。火星の空をみながら、わたしは、とおい地球にいるあなたのことを思い出す。 pic.twitter.com/XkQSyTC3ft

2023-06-09 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 後輩の男の子からのラブレター。無視して行かずにいると、その子はずっと待っていて、ついに、…こんな大きな木になっちゃった。「…それ、ほんとう?」「さて、どうでしょう」先輩は赤いくちびるをきゅっとまげて、大樹のふもとに腰をおろして、わたしを抱き寄せた。 pic.twitter.com/tlGYV7L9um

2023-06-08 12:10:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 超能力で、首を斬る。マリの、ゆうなの、りんの、萌里の、さくらの。みんなの生首が、ごろりと歩道に転がって。…それから、…わたしは目を開いて、すっと深呼吸をして、現実のなかで歩き出す。「おっはよ!」 pic.twitter.com/FctNF4WTlX

2023-06-07 12:10:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「お前、中学生のころ、しょっちゅう『見える…』とか言ってたよな」にやにやしながら声色をまねて、兄がからかう。私は真っ赤になって、兄の背中を叩く。「やめてよ、今さら!」…そう、今さらだ。私はもうそんなことは言わない。今もそこに一人いるけれど。…言わない。 pic.twitter.com/HVolprUhpj

2023-06-06 12:10:04
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まとめたひと
楠羽毛 @kusunoki_umou

SF、とか…?