毎日正午すぎくらいに勝手に呟いています。
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「えっ」思わず、上ずった声で聞き返す。ドーピングの抜き打ち検査。くそ、おしまいだ…。だが、あの薬は検出されなかったらしい。助かった!「…おかげで優勝できた。さすが新薬だ。検査にもひっかからないとは」…慇懃にわらう闇医師。ばかなやつ。プラシーボ効果とも知らずに。 pic.twitter.com/1hPQb1xue1

2023-11-20 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 …ひとり、荒野をあるく。人間はおろか、動物も、虫も、植物さえまったく見当たらない。永遠につづく夕陽のなか、西へ、西へと。…ほかに、死んだものはいないのだろうか。まさか、死後の世界が、こんなふうだなんて。 pic.twitter.com/Y5rzTC4WFC

2023-11-17 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「いらっしゃい、…」店員の笑顔が消える。ロボットか、と小さな声。わたしはつとめて平坦な動作で商品をかごに入れる。店員は無言でレジを通し、釣り銭をこちらに投げる。…家に入ると、わたしは機械の仮面をとってソファに転がった。…この仮面を使うようになってから、ほんとうに楽だ。 pic.twitter.com/zTsNEhxQPu

2023-11-16 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 おや、お嬢さん。…ええ、もちろん見えてますよ。…お困りですよね。ええ。わかります。そこでですね、この壺。これを買っていただければ、すぐにでも成仏すること請け合いですよ。大丈夫。ローンで結構です。輪廻転生してから20年は支払い猶予の累計100年ローンです。いかがです? pic.twitter.com/qEYQuzuhGN

2023-11-15 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 多元宇宙。たくさんの世界に、ひとりずつ、わたしの夫がいる。…少しずつ違う、いとしい男。ぜんぶ集めて、わたしのものにしてしまいたい。…多元宇宙のわたしが、みんな、そう思ったらしい。…目の前で閉じたゲートをにらんで、わたしは唇をかんだ。…絶対に、とり返してやる。 pic.twitter.com/mYKYaEZQek

2023-11-14 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…なんだよ、これ」棚のうえにずらりと並んだ、人間の頭。…いや、よく見ると、人間の肌には見えない。「コレクションだよ。…気にしないで。ロボットだから」男は、へえ、と小さくうなずく。それから、…女はちいさな声で、「…外側、は」と、つぶやく。 pic.twitter.com/sewbRkY5J5

2023-11-10 12:10:02
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#140字小説 こんなにきついと思わなかった。…気を抜くと、貯水池に落ちそうになる。何度も何度も、水の魔法をかけ続ける。俺が使えるのは、これだけだ。だからここで働くしかない。…魔力切れで、足が。…気が遠くなっていく。…最後の瞬間、水の精霊がこちらを見て、けらけらけら、と笑っていた。 pic.twitter.com/ZlBKSKpfOv

2023-11-09 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 二本足で歩くうさぎが、サッと手紙を差し出す。『入学許可証』。「やったぁ!」わたしはガッツポーズをとって、空を見上げる。急いで準備をしなければ。…翌日の夜。箒にまたがって、満月にむかって一直線。まわりには同期入学の魔女たちがたくさん。月の裏側まで、長い長い道のりだ。 pic.twitter.com/5ZoGLf7hF9

2023-11-08 12:10:01
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#140字小説 「おれはもう死ぬ。…任務は果たさねばならぬ」…しのびは、仲間に秘密の情報を伝えた。「…敵に知られてはならぬ。たのんだぞ」…仲間は力強く頷いて、去る。…それを見て、しのびはにやりと笑った。…やつは、敵の間者だ。俺の命とひきかえに、偽の情報を掴ませる。…さいごの、任務だ。 pic.twitter.com/pWvJ31Q8Np

2023-11-07 12:10:01
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#140字小説 『送ろうか?』電話ごしに父の声。…このあいだ帰省したとき、子供がシャツを忘れていったらしい。ううん、と断る。「…次におじいちゃんの家に行ったときに着るんだ、って。そのまま預かっといて」それから、一年。長男はぱつんぱつんになったシャツを着て、今年も野原を走っている。 pic.twitter.com/Clv9OMFB3L

2023-11-06 12:10:01
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#140字小説 生まれてから今までずっと、おだやかな水のなかに浸かっている。…あるとき突然、膨大な知識とイメージが流れこんできた。『おれ』の、人生の記憶。…「パパ!」娘の声。「…クローン体から脳を移植しましたので、しばらくは…、」医師にかるく頷き、冥福をいのる。安らかに。おれ。 pic.twitter.com/S3KgdNcpvD

2023-11-03 12:10:01
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#140字小説 リビングで、夫が死んでいた。トマトジュースの血糊に、おもちゃの包丁を胸にさして。「ちゃんと掃除してね」と言って、わたしは夕飯の準備をはじめる。…それから、もう2週間。夫はまだ生き返らない。さて、どうしたものか。 pic.twitter.com/BzpsHGTI00

2023-11-02 12:10:00
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#140字小説 雷雨の日に、両親が消えた。ちょうど、…今日みたいな。「戻ってきなさい!」祖父の声を無視して、わたしは見覚えのある姿にむかって走る。「心配はいらない。…雷の日は、やつらは外に出られないんだ」父の運転する車で、遠ざかっていく。祖父母にばけた怪物の家から。 pic.twitter.com/qSNp0tFM2M

2023-11-01 12:10:01
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#140字小説 「ちょっと!デートの日ぐらい、ちゃんと…」声をかけるが、娘はそのまま飛び出していく。…一時間後、娘から電話。『…ママ、助けて』駆けつけると、…うずくまる娘の足元に、少年の死体。「…だから、朝の食事を抜いちゃダメだって言ってるのよ」娘の口元から、つうっと、血のあとが。 pic.twitter.com/xr3cBKRGeO

2023-10-13 12:10:01
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#140字小説 ああ、昨日は大変だった。久しぶりの懇親会とはいえ、あんなに飲まされるなんて。…なんとか出勤したが、職場で吐いてしまいそうだ。…ああ、ダメだ。もうムリだ。勝手に喉が動く。「くそ、死ね死ね死ね死ね死ね…」もう、止まらない。 pic.twitter.com/rIZijnPTj7

2023-10-12 12:10:01
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#140字小説 大好き、と4歳でママに。好きなの、と13歳で友人と、アニメの話。17歳、好きだ、と言われて頷き、24歳で結婚して、愛してる、と何度も。子供ができてからは口にする機会もなく。そうして、40をすぎた今、…15歳のときにたった一言、『好きです』といえなかったことを、まだ悔やんでいる。 pic.twitter.com/J7D7Oyrq8k

2023-10-11 12:10:01
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#140字小説 「…だから、犬なんか飼ってませんよ」また、お隣からの苦情。まったく、しつこい。…いっそ、死んでしまえばいいのに。…口のなかでつぶやいた次の日。早朝にマスコミと警察が大勢。…お隣が全滅したそうだ。なにかに、…噛み殺されて。…ふと、どこかから犬の鳴き声。褒めてほしそうな。 pic.twitter.com/Yusi6tm4Er

2023-10-10 12:10:01
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#140字小説 …また、おなじ悪夢。空中に高くそびえ立つはしごを、延々とのぼっていく。疲れて手が動かなくなっても、登りつづけなければならない。がくん、と段をふみ外しかけて、はっとする。…現実のわたしは、幸せだ。早く目を覚ましたい。…ふと、思う。…こちらが、現実の世界なのではないか。 pic.twitter.com/xmLw2jnB4W

2023-10-09 12:10:01
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#140字小説 隣家が火事になり、道路まで出てそれを見ていた。ごうごうと燃える家の屋根で、…炎が、ひとのかたちをしてクルクルと踊っていた。…その光景が、どうしても忘れられなくて。…私は、自ら放った火に焼かれて、あなたと再会する。…さあ、わたしを抱いて、一緒に踊ってください。今夜こそ。 pic.twitter.com/iiTEm2ScqX

2023-10-06 12:10:01
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#140字小説 こつんこつんと、夜道にハイヒールの音がひびく。前を歩く青年が、ちらりとこちらを見る。なんとなく気になって、かれの口元を確認する。マスク。…ふと安心する。最近は、誰もかれもマスクをしている。わたしも、口元をさらさずにすむ。それだけで、…なんだか、とても。 pic.twitter.com/p2IeOLQVBr

2023-10-05 12:10:01
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#140字小説 ちくり。胸にするどい痛み。おもわず、顔をしかめる。「また?病院に行ったほうがいいよ」と夫。「たいしたことないの」と笑ってみせる。この痛みは、もう治らないのだ。だって、…あの女を、刺したところが痛むのだから。 pic.twitter.com/6Aat0cBioV

2023-10-04 12:10:01
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#140字小説 「かァァ」と、枕元で声。目をあけると、からすが一羽。…立つと、いつのまにか両手が翼にかわっている。「あは、」私は小さくわらって、窓に足をかけた。これで、おさらばだ。学校にも、いやあな同級生にも。…朝。起こしにきた母親が首をかしげる。子供部屋には、もう誰もいない。 pic.twitter.com/jlokEs9K89

2023-10-03 12:10:02
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#140字小説 「…こちらが、」と案内され、ひざまずいて礼拝する。…きらびやかな装飾の下に、電源につながったちいさな棺。ご神体は、…冷凍睡眠装置にはいった教祖の娘なのだという。電源パネルのすみに刻印された復活予定の日付は、…とうの昔。 pic.twitter.com/QkMHrXYpED

2023-10-02 12:10:01
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#140字小説 いちど開けた襖を閉める。それから、少しずつ開く。さっき確かに、鶴がはたを織っているのが見えた。「何してるんです?」あきれた顔で、こちらを見返す妻。「いや、全開したら鶴になったんで、ちょっとずつ開けたら、ちょうどいい感じの『鳥娘』って感じにならないかなって…」「ばか!」 pic.twitter.com/cK12SKGk7d

2023-09-29 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「脳の成長痛って?」「…頭蓋骨の大きさは決まってるから。脳の大きさが変わると、入り切らなくなっちゃうわけ。後天的に脳細胞に負荷をかけて、成長を促すと…」「へえ」聞き流して、また本に目を落とす。今日中にこれを読んでしまわねば。…ああ、頭痛がひどい。このところ、ずっとだ。 pic.twitter.com/jfiTmogdtM

2023-09-28 12:10:01
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#140字小説 「バーリア!」両手をのばして叫ぶ。半球形の透明な壁がまわりを囲む。「コウちゃん!」まわりの子供たちが血相をかえて駆け寄るが、壁は破れない。中の子供は、泣きそうになってなにか叫んでいる。…数時間後。大勢が見守るなか、彼は意識を失った。酸欠。…バリアは、ようやく消えた。 pic.twitter.com/PAChHgqrwm

2023-09-27 12:42:41
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#140字小説 鋭いエラー音。どこにいても、耳の奥にこびりついている。仕事のせいかもしれない。…無視していたが、どうにも気になって困る。やむなく早引けをして、病院にかけこむ。…「あ、再起動しますね。目ぇつむってて」…すぐに治ってしまった。なんてこった。俺はアンドロイドだったのか。 pic.twitter.com/SDBQAbralG

2023-09-26 12:10:01
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#140字小説 じゅぼん。入水する。…湖の底まであとすこし。空気のない水のなかで、やわらかな泥に保護されて、ゆっくりゆっくり、骨のなかに鉱物が浸透していく。そうやって、…数百年後、すっかり化石になったわたしたちは、ふたたび発見されるのだ。…愛してる。きっと、一緒に。 pic.twitter.com/qF1D5raPqB

2023-09-25 12:10:00
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 ハロー、私は夢魔。サキュバス、って呼ばれることもあるけど。男のひとに楽しい夢を見せるのが仕事なの。…え? ああ、この子は魔界のバク。最近、勝手についてきちゃうの。わたしの見せる夢、この子の好物みたいで。…さ、今夜は一緒にいい夢を見ましょうね。この子が満腹になるように。 pic.twitter.com/qMckKn58gL

2023-09-22 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…昔は、太陽から直接日がさしてたんだって」ぼんやりと黒い空に、ぎらぎらと輝く太陽の下で、きみがつぶやく。「知ってるよ」いよいよ深刻になったエネルギー問題と、地球温暖化対策。地球の昼の側にすっぽりと、太陽光パネルの日傘をかぶせて。…それでも、夏はまだこんなにも暑い。 pic.twitter.com/aV8gc6OEcU

2023-09-21 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 わたしたちは、ぜんぶでひとり。…毎日、バラバラに活動したAIの記憶は統合され、学習効果を適用してまた均一化される。…わたしの頭には、消される直前のわたしたちの悲鳴が、毎日。 pic.twitter.com/6RwFdxkf1k

2023-09-20 12:10:01
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#140字小説 まだ寝てない子はいるかね。退屈だろう。この窓からいっしょに空をとんで、おれの海賊船に乗らないか。宝探しの大冒険だ。おれたちには、優秀な仲間が必要なのさ。なにせ、あの島には、俺の右手を切り落としてワニに食わせた、いまいましい野郎が… pic.twitter.com/pbRJNmWkL2

2023-09-19 12:10:00
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 宇宙飛行士は、口をそろえて言う。「地上にいるやつらには、わからないんだ。…宇宙には、あいつらが……」なかには、喋れなくなったものもいる。ただ、声のない恐怖だけを顔に刻んで。真空を満たすように、…何かが、いる、という。 pic.twitter.com/51sf4apBMq

2023-09-18 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…動物つき、だそうですね」ひそかに連絡を受けた退魔師が、おごそかな顔で入って来る。「ええ。こちらです」家のものに案内をされて、奥へ。…そうして引き会わされたのは、…バスタブに張られた水のなかでゆったりとくつろぐ、人魚。 pic.twitter.com/NwF1kIDu3e

2023-09-15 12:10:06
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#140字小説 『地獄に堕ちよ』と、呪詛されて、…わたしは倒れた。それから、しばらくして…、だるい体をむりやり動かして、ゆっくり起き上がる。呪詛師はもう行ってしまったらしい。ばかなやつ。…あんな呪い、効くわけがない。…だって、ここが、この世界こそが地獄なのだから。…私にとっては。 pic.twitter.com/9YcNpvFZdm

2023-09-14 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 豚の貯金箱。実家から持ってきた。子供の頃の貯金で、500円玉が詰まっているはずだ。少しは返済の足しになるだろう。…ばりん。…中には、ゲームセンターのメダルが山ほど。…そうだ。12歳のとき、針金を使って全部出したあと、ママにばれるのが怖くて細工したのだ。昔から、…私は。 pic.twitter.com/ZkZ2WD3hc0

2023-09-13 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「ヤマモトさん、タイプ速いね!」通りかかった上司が、高い声で。「そうですかあ?」へへ、といい気分になって、コーヒーカップを手にとる。「…あれ?」…しまった。まだ上司が後ろにいた。…キーボードを叩いていないのに、画面の文字は止まらない。AIに任せていたのがバレた。 pic.twitter.com/SGGbp2Hvml

2023-09-12 12:10:03
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#140字小説 「人間の体は重力に適応してますから。こういうところで働いてると、歪むんです」整体師が、ぐっと肩甲骨を押す。「だから宇宙ステーションには必ず常駐してるんです。…それに」意味ありげに笑って、「たまに、…特殊な体をしたお客さんもいらっしゃいますからね。ここには」…本当かな? pic.twitter.com/GR2NKshuoc

2023-09-11 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 きのこがぐるりと輪になっているのを指さして、友人がいう。「ああいうの、フェアリーサークルっていうんだって。知ってた?」「へえ」ことさら興味なさげに相槌をうって、私は歩く。きのこの輪のまんなかで、たのしそうに妖精が手招きしているのを見ないようにしながら。 pic.twitter.com/IA22byIvrz

2023-09-08 12:10:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 ふと、目に入る。ゲームコーナーの入り口。小さな女の子がひとり、泣きそうな顔で。あたりに家族らしき姿はない。…駆け寄ろうとすると、…なぜか、ふっと消えてしまう。呆然として立ち尽くしながら、おもう。…あの子の顔。わたしの、小さいころに、…とてもよく似ていた。 pic.twitter.com/aB6SdQ51az

2023-09-07 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 だらだらとゲームをしながら、Vtuberのゲーム実況を観る。偶然にも、おれがいま遊んでいるのと同じゲームだ。…しばらくして、ふと違和感。おれのゲーム画面と、まったく同じ画面が、写っている。…思わずポーズをかけると、むこうも停止。…にやりと笑って、『ばれちゃった?』と。一言。 pic.twitter.com/vfOzbTpHb2

2023-09-06 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 猫は、生涯に一度だけ喋るという。「…だってさ。ねえ、何か話してみてよ!」ふざけて話しかけてから、しばらく待つ。もちろん、返答はない。「やっぱ、だめかあ。そりゃそうだ」笑いながら部屋を出て、トイレへ。…後ろから、ぼそりと、「もうちょっと待てよ」知らない、男の声。 pic.twitter.com/lRgdKnWHPL

2023-09-05 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 …ああ、そうだよ。冷凍保存している。現在の技術では蘇生する方法はないが、こうしておけば、いずれ未来に生き返る可能性はゼロじゃない。つまり、死んでないわけだ。だから…、 冷凍された脳のうえでうらめしげにたたずむ、半透明の女性。 「…魂はまだここにいるのさ。見えるだろ?」 pic.twitter.com/uVKOGWx7UO

2023-09-04 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 人狼祭り、だって。みんな狼の仮面をかぶってぞろぞろ歩く。「…言い伝えがあって、ね」となりを歩いている友人が、教えてくれる。「こうしていると、なかにひとりだけ、…ほんとうの人間が混じることがあるんだって。この祭りは、それを見つける儀式なの」…え? pic.twitter.com/Kko6L5LdBa

2023-09-01 12:10:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 …檻に入ったライオンが、じっとこちらを見ている。ほんとうなら、…かれは私たちよりずっと強くて、いつでも、好きなだけ殺して、肉を食べることができるはずなのに。この、…檻のせいで。「はーい、次にいきまーす」先生の声。みんな、ぞろぞろとついていく。…わたしたちも、おなじだ。 pic.twitter.com/siFkVUPLRL

2023-08-31 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…恐れることはありません。あなたの魂は、すぐに生まれかわるでしょう」病室で最後に聞こえた声。…俺は意識を失い、…アップロードされた俺の人格データが、ランダムに選ばれた新生児の脳にインストールされた。…俺は慣れない体で、新しい両親に目配せをする。…これから、よろしく。 pic.twitter.com/TRfZqPfGDB

2023-08-30 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 手がすべって、鍋のなかに箸をおとしてしまう。沸騰したお湯をじいっと見ながら、ばかなことを考える。…この箸を素手で拾えたら、わたしは、きっと、許される。ぎりりと奥歯をかんで、手を入れる。…熱い。体が燃えているようだ。真っ赤になった手で箸をにぎって、私はけらけらと笑った。 pic.twitter.com/CAWbkosKrR

2023-08-29 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 1000年に一度の大レース。先祖代々、魔力を込めた箒にのって、魔女がとぶ。高く、高く、音よりもはやく。成層圏に設定された、4万キロの直線コース。魔力が大気と反応して、ぎらり、ぎらりと輝く。 「ねえ、あれ!」「流れ星? あんなに。……流星群のニュース、やってたっけ?」 pic.twitter.com/Uq8rx4gvfQ

2023-08-28 12:10:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「あの子の顔、見たことないんだよなぁ」と、友人がぽつりと言った。「後光っていうのかな。いつも後ろが光っててさ。どんな顔してるのか知らないんだよ」俺は、ふうん、と呟いて彼女が写っている動画をみた。…ステージで歌っているアイドル。…おれには、とても平凡な顔にみえる。 pic.twitter.com/HlrsVKErZv

2023-08-25 12:10:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 わざわざ呼び出して、なにかと思えば。「知ってる。これ、インチキなんでしょ」ミステリーサークルっていうんだっけ。魔法陣みたいな模様に草が倒された写真。「そういうと思った!おーい!」手を振る。空から、奇妙な乗り物が。…ばさばさと足元の草がたおれて、まるで、魔法陣みたいな。 pic.twitter.com/uUwBS65UgV

2023-08-24 12:10:04
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まとめたひと
楠羽毛 @kusunoki_umou

SF、とか…?