毎日正午すぎくらいに勝手に呟いています。
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…年の数だけ食えったって、なぁ?」きょうは節分です、とニュースキャスター。この年で、ただの豆を何十粒も食えるもんか。眉をしかめながら、妻が置いてくれたコーヒーを一口。「…ん?」やけに薄い。「年の数だけ、入れてみたの。せっかくだから」妻が、にいっと笑う。 pic.twitter.com/GqT3kEoBuX

2024-01-30 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「今日だけは、──を、やってはいけないよ」なんと言われたか、忘れてしまった。公園で、いつものように鬼ごっこ。ぼくが最初に鬼。…いつのまにか、誰もいない。いやになって公園を出る。「…鬼はぁ、外」「鬼は、外…」だれかの声。どうしても、家の場所がわからない。…どうしても。 pic.twitter.com/uwRPknOSIr

2024-01-29 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「将棋盤に向かうと頭がはっきりするみたい。将棋がお好きだったんですね」ホームの職員にいわれて、ぎょっとする。父は、将棋なんか指したこともないはず。…ためしに、コマを握らせてみる。…人がかわったような目つき。なんだかこわくなって、誰、と聞いてしまった。…知らない、名前。 pic.twitter.com/hPsFnStyph

2024-01-26 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 …知人の訃報。通夜は明日6時。喪服はずいぶん着ていないが、サイズは大丈夫だろうか。数珠は実家に置きっぱなしだったような気がする。焼香ってどうやるんだっけ。たしか、宗派とかによって違うんだよね。誰か一緒に行く人は…そこまで考えて、ため息。…悲しくないわけでは、ないのに。 pic.twitter.com/QXW0GYc4AJ

2024-01-25 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…血?やぁだ、吸わないでよ」ぎろりと睨まれる。吸血鬼も、これではかたなしだ。闇に紛れ、乙女を魅了し、ときには獣に変ずる不死の一族。人類を支配するべく運命づけられた…「だって、あんたに吸われるとかゆくなるんでしょ」…ただ、蚊から進化したっていうだけで。ひどい。 pic.twitter.com/KTKu6W6ADS

2024-01-24 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 ドッペルゲンガー。まさか、本当に現れるなんて。…死闘のすえ、ようやく倒して、ほっと息をつく。…ほんとうに、俺にそっくりだ。ただし、こいつは鏡像。よく見るとホクロの左右が逆だ。俺が本物である証拠に、この写真が…、…いや、まさか。 pic.twitter.com/1NERfDMF5d

2024-01-23 12:10:01
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#140字小説 目の前に、上司の背中。…昨日、怒られたばかりだ。気まずくて、少し距離をとりながら歩く。…突然、上司が立ち止まる。思わず、私もびくっとして止まる。しばらく後、上を見上げていた上司は、また歩き出した。上司が立っていたところで、空を見る。…あ、飛行機雲。 pic.twitter.com/nyCsVlk5vB

2024-01-22 12:10:01
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#140字小説 「…あ、」ぱちぱちと、あなたがまばたきをする。きっと、もうすぐだ。「これ、…夢なんじゃ、」言い終わるまえに、あなたは消えた。もう、会うことはないだろう。…あなたが目覚めてしまっても、この世界は消えない。 わたしたちは、ずっとここに残っている。この、ひとときの夢の世界に。 pic.twitter.com/hWdQ3cc1yX

2024-01-19 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 5歳の娘と、はじめての遊園地。ねだられてグッズを買い、3人で写真のフレームに入る。…ハッと目がさめる。「起きたか!全人類を洗脳して仮想世界で偽りの人生を送らせるなんて、なんて非道な…大丈夫、もう洗脳は解除した。さあ、一緒に戦おう!」…ちょっとまってくれ!俺の家族は! pic.twitter.com/3CCOfmHU62

2024-01-18 12:10:01
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#140字小説 子供のころ、…人間にまじった、ヘンなものが見えた。正体はわからない。宇宙人か、怪物か。…やがて、それは見えなくなった。単に妄想だったのか、それとも、やつらの擬態がうまくなったのか。…すっかり忘れたころ、…気づく。…わたしの子供の目。あのときの、やつらと同じ。 pic.twitter.com/ARxmeU4MO6

2024-01-17 12:10:01
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#140字小説 「今日はツかねえなあ」ヒゲの男がぼやく。当然だ。…おれの相棒が、いま、別室でまじないをかけている。それを知らずに打っているこいつは、いいカモだ。…眼鏡の男が、にやりと笑った。よく見ると、男の肩に白いモヤが。…こいつもか。やれやれ。今夜はハードな勝負になりそうだ。 pic.twitter.com/VUyB9PuCpA

2024-01-16 12:10:01
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#140字小説 ダンジョンの最下層。…奥の暗闇から、なんだかとてもよい匂いが。反射的に足を踏み出すと、崖。「しまった、罠か!」「…なにが罠なの?」呆れたような声。…ぼくはVRセットを外して、ママの背中をにらみつけた。今夜はカレーらしい。…まったく、匂いだけはどうにもならないんだから! pic.twitter.com/xCALvxbgVW

2024-01-15 12:10:01
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#140字小説 「玉手箱。開けちゃダメよ」押し入れに入った木箱を触ろうとすると、冗談めかしてそう言われた。……母の死後、遺品の整理中にふと気がついて、あけてみる。…誰かにあてた、書きかけのラブレターが一通。それから、二人のところだけ切り抜かれた、学校の集合写真の一部が。 pic.twitter.com/9bsLN7WTBa

2024-01-11 12:10:01
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#140字小説 パパ、ありがとう。ママ、大好きよ。…わたしの、お葬式。ボンヤリと浮いたまま、聞こえるはずもない言葉を、一人ひとりに。…ユウちゃん、お幸せに。リン、ごめんね。…そうして、きりりとした顔で焼香するあなたの顔をじっと見て、…だまって、上にのぼっていく。…言えない。死んでも。 pic.twitter.com/Qe5HOqds90

2024-01-10 12:10:01
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#140字小説 『この先は、だめだよ。禁止区域』ポチにいわれて、立ち止まる。…先月、手術したばかり。脳内の疑似神経回路がポチの鳴き声を分析して、会話ができる。「禁止区域…なんだっけ」手術のときに、説明を受けた気もする。…悩んでいると、…遠くの牛舎から、喉をつぶされた牛たちのうめき声。 pic.twitter.com/6ou8PM7IPe

2024-01-09 12:10:02
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#140字小説 「花火ってなんかいいね。…一瞬のはかない命、って感じでさ」…となりの友人のことばに、しずかにうなずく。彼女の頬はかすかに上気して、かすかな鼻歌がきこえてくる。…たった100年後にはもうどこにもいない、はかない、異種族の親友。 pic.twitter.com/f3CEZ8VA4e

2024-01-08 12:10:01
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#140字小説 「お疲れ様!待ってて」先輩を待つ。これから帰って、少し寝てから洗濯。…いや、まずコンビニに…「はい、どうぞ」お汁粉の缶。白玉入りの。「あけまして、おめでとう」いつのまにか、年が明けていた。「…これ、お正月のお餅ですか」「気分だけ、ね」二人で、少し笑う。今年もよろしく。 pic.twitter.com/wP542AWwvi

2024-01-05 12:10:01
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#140字小説 初売り。福袋がずらりと並ぶなか、人混みを娘と歩く。…視界のはしに、いま。おもわず、足が止まる。あの人。どっちに行ったのか。「…ママ、どうしたの?」はっとわれに返る。彼の姿は、もうどこにも見えない。…いや、見えるはずがない。あの人は、もう、この世にいないのだから。 pic.twitter.com/nXdTr1CIkv

2024-01-04 12:10:01
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#140字小説 「おかくれになったそうじゃな」「今朝、突然に」「お役目の年というのに」参道のわきから、ひそひそと相談する声がきこえてくる。「…かわりをたてるしかあるまい」「時間がない、急げや」…目の前に数匹のうさぎが飛び出してくる。思わず足を止めると、…おれの手に、緑色のうろこが。 pic.twitter.com/qHG4PX39CB

2024-01-03 12:10:02
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#140字小説 汗だくで目が覚める。…悪夢だ。初夢だっていうのに。…もう一回眠れば、なかったことになるだろうか。…今度は、いい夢になりますように。 「どうした、顔色が悪いな。お正月は忙しかったのかい」 「いえ…、…寝正月でしたよ。…今朝まで、ずっと」 pic.twitter.com/VeE32oo1tg

2024-01-02 12:10:01
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#140字小説 「…ア、年が明けた」腕時計をみて、小さくつぶやく。「おめでとー!」酔っぱらった観光客たちが、また乾杯。「…それ何回目?」小さくつぶやいて、ため息。…正月惑星ラ・ザー。公転周期は約10分。新年会を開くためだけに、呑兵衛たちが集まってくる。「…あ、また」「いえーい!」 pic.twitter.com/ZKmbkcwwOo

2024-01-01 12:10:01
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#140字小説 年末年始。みんな帰省してしまった。帰れない私だけが、残っている。…談話室のコタツ布団にもぐって、除夜の鐘をきく。「…ア」スマートフォンに通知。母からだ。タップして、カメラ通話を起動。「おかあさん、いつ日本に戻るの?…実家に誰もいないんじゃ、私、帰れないじゃない!」 pic.twitter.com/ZMMhqvG3MY

2023-12-29 12:10:01
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#140字小説 終業式のあと。…アノ、と小さな声で呼びとめる。振り向いたあなたの目をみて、喉が詰まってしまう。ゆっくり十秒、何も言えないまますぎて、ようやく、…「…年賀状、出すから」と、かすれた声で。…はじめて知ったあなたの住所を、手帳のおくに大事にしまって、どきどきしながら帰る。 pic.twitter.com/6xHNkwPWnL

2023-12-28 12:10:02
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#140字小説 …がたん、ごとん…、ふと目をさます。年末だというのに、この車両はやけに空いている。…ぼんやりと、実家に帰ったあとのことを考える。頭がうまく働かない。…よく見ると、ほかの乗客は皆うつむいて、顔色がわるい。床に、ぼたぼたと、血が。…おれは、…何も、思い出せない。 pic.twitter.com/jBQSR7nLpe

2023-12-27 12:10:01
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#140字小説 「年末は、工事ばっかり。やあね」運転席の母が、顔をしかめる。「そうね」母の顔は、昨日とはちがう。車の色も。…世界が、作りかえられているようだ。これも、年末だからか。「…☓△◎って、どんどん住みにくくなってくわ」…今のは、国の名前だろうか。わたしは、どこにいるんだろう。 pic.twitter.com/kQlAZjYjQS

2023-12-26 12:10:01
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#140字小説 …寝過ごしてしまった。年末なのに。「大掃除、…しなきゃ」。よろよろと身を起こすと、どこかで見たような男女が、待ち構えたように声をかけてくる。「…まだ、年明けは遠いですよ」「もう少し、お眠りなさいませ」そうか、とまた眠る。…なんだか、ずっと前から、繰り返しているような。 pic.twitter.com/THWKj4fzxe

2023-12-25 12:10:01
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#140字小説 おや、新人。…いま、プレゼントを選んでいるんだ。モニターでこの子の1年間の様子を見て、欲しがってるものを調べるのさ。…ああ、その子はいい。もう、決まってるんだ。俺たちが調べる前に、…本当のサンタクロースが、先に選んでいたんだよ。…用意する前に、亡くなってしまったがね。 pic.twitter.com/J4v4RbAKTl

2023-12-22 12:10:01
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#140字小説 夜。枕元の靴下をじいっと見る。朝になると、ここにプレゼントが入っているはずなのだ。…しばらくすると、少しずつ、靴下が膨らんでいく。…なかに、大きな箱が入っているみたいに。ぎょっとして手を突っ込む。…手首がぐっと掴まれて、『かかったな』と。 pic.twitter.com/hEDWEU0OrN

2023-12-21 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「今日だけは、早く寝なさい」「はーい」こっそり目をあけて、にやり。今年こそは、サンタの正体を。…がたん、と物音。布団から顔をだして、目をこらす。…それから、悲鳴。朝になり、誰もいないベッドの脇で、両親がさめざめと泣く。…この日だけは、寝ていなくてはならなかったのに。 pic.twitter.com/LnEuMztUvF

2023-12-20 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 クリスマスの特別任務を説明するぞ。…え?サンタクロースをレーダーで追跡する?それは表向きのカモフラージュさ。…実際の任務は、サンタの護衛だ。なにしろ世界中の子供に渡すおもちゃを運んでるんでね。狙ってくるやつらが山ほどいるのさ。…ほら、去年の映像だ。ワクワクするだろ? pic.twitter.com/NBC2TyrY66

2023-12-19 12:10:01
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#140字小説 飛び起きる。枕元には、欲しかったゲーム機と、サンタからの手紙。両手にかかえて、リビングへ走る。「パパ!パパ!」…そこで、目が覚める。パパは、もういない。枕元には、ゲーム機と手紙。手紙の文字は、去年とはまるで違う。のろのろと身を起こす。 pic.twitter.com/TQM741MYP1

2023-12-18 12:10:01
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#140字小説 人造天国。死後、半永久的に仮想空間で過ごせるシステム。「…まただ」何者かに人格データを消される事件が、これで10件。手口は不明。超自然的存在のしわざだ、なんて言うやつもいる。「これ、署名かな」アクセスログの末尾、存在しないアカウント名。……バク、と名乗りたいらしい。 pic.twitter.com/y6xAqjJgZJ

2023-12-15 12:10:01
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#140字小説 「人間って原始時代からいるんだよ。全員が霊になってたら、今頃地球は霊でみっちりでしょ」「…そうだね」知らない奴は、これだから。ああ、どんどん霊圧があがっている。そろそろ臨界点をこえて、地球は霊的ブラックホールになるだろう。そうなったら何が起こるのか、誰にもわからない。 pic.twitter.com/p3QYf7sxE0

2023-12-14 12:10:02
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#140字小説 「マジかよ」ボロ負けだ。このゲームは得意なのに。「…あんたも脳いじってんの?」カマをかけてみる。培養した脳細胞を植え付けて思考力を増強する手術。俺も先月受けたばかりだ。「まあね。…でも、あんたのは養殖でしょ。あたしのは、…天然モノ、だから」…にやり、と笑って。 pic.twitter.com/Wj3sMZARWr

2023-12-13 12:10:02
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#140字小説 悲鳴。逆G。揺れる機体。泣き声。翼から漏れる煙。息が苦しい。やがて、強い衝撃……、汗だくで目が覚める。『…自動操縦に支障はありません…』録音されたアナウンス。他の乗客はまだ夢を見ているようだ。…魔の空域。空中爆発した航空機の乗客たちが、今でもここにとどまっているという。 pic.twitter.com/hq0y8tCQ1l

2023-12-12 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 生魚、苦手じゃなかったのかって?こないだ電脳化したんだ。味覚補正技術で、どんなものでも美味しく食べられる。歯ごたえの感覚だって自由自在だ。ほら…、…あれ、どうしたんだ。急に気分が悪くなって…ここは病院か?僕は何を…食品サンプル?まさか。 pic.twitter.com/shhqWBL5gS

2023-12-11 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「わたしの好きなトコ、10個言ってみて!」ちょっと驚いた顔の彼氏。3つはすぐ出てくる。5つで口ごもり、眉をしかめてなんとか10個ひねりだす。ありがとう、と笑ってハグする。…夜。ひとりになって、ぼんやりと考える。「わたしの、好きなとこ」…ひとつだけでも、あればいいのに。 pic.twitter.com/6szsiJ5WzR

2023-12-08 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 魔物を従える悪の魔術師を討伐するため、俺たち幼馴染の騎士のふたりは洞窟をもぐってきた。だが、ここには魔物どころかコウモリ一匹いない。…相棒の顔をみる。そういえば、この男は、隊長の妻を寝取ったという噂が。…遠くで、なにかが崩れるような音がする。もう、帰り道はわからない。 pic.twitter.com/NZ23Jf0l5n

2023-12-07 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 『優勝した者に、姫を与える』。激戦の末、最後の勝ち名乗りをあげた剣闘士の前に、王の号令で、…大きなライオンの入った檻が、引き出された。…獣に食まれながら、恨みがましげに姫をにらむ男。…これまで、ぴくりとも表情をかえなかった姫の頬から、涙が一筋だけ落ちた。 pic.twitter.com/n7lSkmQp8X

2023-12-06 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「そうですよねぇ。ホント」ニコニコしながら、適当にあいづち。こういうのは、得意だ。この職場は、ほんとに居心地がいい。…給湯室からの戻りしな、トイレから、ふと声が。「…あのひと、ロボットみたいだよね」かすかな笑い声。…手がすべって、カップが、…こなごなに割れた。 pic.twitter.com/H3qBp3vuVX

2023-12-05 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 ここは俺が大好きだったゲームの中の世界らしい。このゲームのことは、隅から隅から知っている。裏技もバグも使いほうだいだ。…あれから、10年。何度倒してもまたやってくる『主人公』を、俺は手段を選ばず撃退し続けている。…俺がいる限り、このゲームは誰にもクリアさせない。 pic.twitter.com/39fl9UBDvy

2023-12-04 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 ざざーっ、ざざーっ、……「ねえほら、波の音みたいでしょ?」と、ふざけてユキがいう。「わざわざ買ったの?」ユキの手元には、小豆のはいったザル。「いいじゃん、それっぽいでしょ」そうね、と私はつぶやく。私もユキも、本物は見たことがない。…この星から、海がなくなって、久しい。 pic.twitter.com/xhGZWS8ARM

2023-12-01 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 『オカルト研究会 幽霊部員募集中』「シャレが効いてるでしょ?とにかく、名簿上だけでも頭数をあつめないと、部費が──」「そうですね。…でも、よくないんじゃないかなあ」「何が?」きょとんとする部長に、ぼくは黙って首を振った。…まったく、見えない人は気楽なもんだ。 pic.twitter.com/OD0khviZvj

2023-11-30 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「世界で一番美しいのはだあれ?…それはあなたです」洗面台にむかって、にいっと笑いながらつぶやく。…だいじょうぶ。きっとうまくいく。わたしは、かわいいんだから。『いいえ、…世界でいちばん美しいのは、──』ふっと、脳裏に別の声が聞こえてくる。…わたしの、心の声。 pic.twitter.com/X93z4qKqEc

2023-11-29 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…盗作って言われてる。まずいぞ」「違うって!」作風やイメージの問題で、自分の名前で出せない作品を発表するための共同ペンネーム。当然、正体は非公表だ。「その、…ちょっと、昔発表したネタを使いまわしただけで…」必死で言い訳をする仲間に、ため息。…さあ、どう乗り切ろう。 pic.twitter.com/21LdxSF1wh

2023-11-28 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…そっちは、違うよ」背後から、声。ほかの登山者はいなかったはずだが。と思う間もなく、すぐそばを気配が追い抜いていく。…姿は、みえない。立ち止まって見回すと、…遠くで、青い顔をした人たちが、ぞろぞろと登っていくのが見える。…どうやら、わたしは道を間違えたみたいだ。 pic.twitter.com/MGmqufQ3N9

2023-11-27 12:10:02
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…あんた、見えてるんだろ」うしろから、声。幽霊だ。「そうね、」返事をして歩きつづける。あまり幽霊と話していては、へんな目で見られる。…「おはよう!」知った顔をみて声をかけるが、反応がない。…ア、そうか。「…見えてないのね」この子にとっては、わたしが幽霊らしい。 pic.twitter.com/ZiRbv9pypj

2023-11-24 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 …あ、これですか。安眠枕です。すごくいい商品ですよ。あっというまに回収されちゃったんで、今じゃなかなか手に入らないんです。…いえ、大したことじゃないですよ。本当にいい枕なんですから。…ただちょっと、成分が、法律的に。…いえ、その、…よく眠れるんですよ、本当に。 pic.twitter.com/zmvHzehgUr

2023-11-23 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「このトリックなら誰でも実行可能です。ハラさんが犯人とは言えません」探偵の言葉に、頷くしかない。そんなややこしいトリック、お前以外の誰が思いつくんだ、と思いながら。「で、真犯人は?」「さあ、知りません」…いつもこれで迷宮入りだ。くそ、本当はお前が犯人じゃないのか? pic.twitter.com/wD6G7qbITj

2023-11-22 12:10:01
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#140字小説 「…お前は、もしや。」骨董屋で買ってきた掛け軸。虎の絵だ。注いだ酒をひとくち飲んだ瞬間、虎と目があう。「…もしや、我が古い友ではないか。」戯言である。だが、あの目は。…掛け軸の前に杯をおき、酒を注ぐ。…もう、二度と会うことのない友人の名前を、小さくつぶやいて。 pic.twitter.com/19kKjrISpD

2023-11-21 12:10:02
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まとめたひと
楠羽毛 @kusunoki_umou

SF、とか…?