そしてこの種の誤解は、「クライエントの心理的苦痛の全体が、特定の感情を回避する機会を果たすものとして説明できる」という二次的な信念を派生させる。そのため、セラピストがこうした誤解を抱いている場合、クライエントに対して、何を回避しているのかを多かれ少なかれ直接的に尋ねることとなる。
2015-05-09 14:22:24そこでの前提は、「回避されている事柄と接触できさえすれば、クライエントの人生は自動的に良い方向性を帯びるはずだ」というものである。感情の回避は、ACTのテーマの一つであるけれども、それは、回避が、クライエントがコミットされた人生の方向を追求するのを妨げる限りにおいてのことである。
2015-05-09 14:33:37クライエントが活き活きとした人生のプロセスを確立する方向へと動くにつれ、回避されていたネガティブな感情・思考・記憶が表面化しはじめる。感情それ自体は本質的に健康なものと考えられる。しかし、ただそれだけでは、「自分自身の感情と接触する」作業は、何の深遠なエクササイズにもならない。
2015-05-09 14:38:33感情を発見すること自体を目的としてそれを強調するたぐいのよくある心理療法家のセリフ(「自分の感情をただ感じればよいのです!」)は、ACTセラピストが犯すかもしれない間違いの中でも、おそらく最も魅力的なものだろう。
2015-05-09 14:45:30クライエントが流した涙の量で臨床の前進が測られるかのようにセラピストは考えるかもしれない。 セッション内におけるこの種の感情的なもつれ合いへの誘惑を確実に区別して切り離すことは、経験を積んだセラピストにとってさえも難しい。
2015-05-09 14:50:09こうした間違いへの打開策は、セラピストが価値と行動変化に結びついた能動的なエクササイズに立ち戻ることである。
2015-05-09 14:52:16第4の問題。セラピスト自身の問題に対処すること。 セラピストが身動きが取れなくなりやすいのは、セラピストとクライエントが、双方にとって同じように顕著な問題につまずく時である。
2015-05-09 14:55:10セラピストがクライエントのある種の行動一式(例 : 自殺行為)に対して強い道徳的信念を持っている時や、クライエントの葛藤が、セラピストが自分自身の人生の中でうまく対処できなかった問題と非常に似通っている時、いつセラピスト側に問題が起きようともおかしくはない。
2015-05-09 14:58:16こうした場合、通常、セラピストが何らかの感情を帯びた話題を避けたり、助言したり、またはセラピスト個人の経験に過度に頼ってしまったりするという間違いを犯すことになる。(例 : 「私が経験したのと同じ過ちをあなたには犯してほしくないのです!」)
2015-05-09 15:07:04臨床実践や経験をいくら積んでも、【セラピストも結局は人間】であり、「逆転移」の問題を完全になくすことはできない。人間として避けられないこの問題に対して何がなされるべきかは、心理的柔軟性モデルそのものが示唆する通りである。
2015-05-09 15:12:44すなわち、問題が存在していることを認め(まずはセラピスト自身の中で認め、臨床上有用そうならクライエントにも伝える)、問題に対して心理的にオープンになり、そして、セラピスト自身の価値に基づいていてクライエントのためになすべき行為に注目するのである。
2015-05-09 15:40:39セラピー関係それ自体は、最終目的ではない。それは変化のための輸送手段(vehicles)である。ACTは、力強い介入となることもできるが、その本質からして侵襲的であり、価値、意味、自己同一性にまつわる根本的な問題を呼び起こしもする。
2015-05-09 15:46:52以上が、『ACT第2版』第5章「ACTにおけるセラピー関係」pp.221-56 からの抜粋です。精神科での担当医との治療同盟についてどう思うかについてのアンケート調査などがあった時の回答のご参考までに揚げてみました。
2015-05-09 15:50:57心理的柔軟性モデルは、ノーマル(健常)についてのディメンショナルなアプローチである。私たちは皆、言語を有した人間であるという意味で、「損なわれている状態こそがノーマル」という前提からスタートする。従って、そのゴールは、人々を「修理する」ことではなく、エンパワーすることなのである。
2015-05-09 16:00:10アプローチ全体としては、強みとなっているプロセスを用いて弱点となっている別のプロセスをターゲットとする。クライエントの価値を用いて、セラピーに意味と焦点を与える。セラピー的な関係性を用いてACTに一貫したロールモデルを示し、クライエントの中にプロセスを生み出し、それを支えていく。
2015-05-09 16:05:33こうしたプロセスが時間とともに構築されてくるにつれて、心理的柔軟性が高まり、意味のある行動変化へとつながっていく。 クライエントが自力で意味深い変化を達成できるようになったとき、セラピーは終了し、それから先は人生そのものがクライエントのセラピストとなる。 (pp.219-20)
2015-05-09 16:10:21