Twitterには毎朝8時掲載です。 第6部まではこちらで。 https://ncode.syosetu.com/n3866fg/ 第7部も、後日小説家になろうに掲載予定です。よろしくどうぞ。
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  考えても、仕方ない。ログを見るのは、落ち着いてからでいいだろう。いや、ステーションの職員に任せたっていい。  ともかく、帰ってきたのだ。 「エミー! 船外服をとってきてくれる?」  エマは、くるりと振り返って、ずっと控えていたアンドロイドに命じた pic.twitter.com/Ge0oUI9oRF

2023-02-03 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

。 *  二重ハッチの内部には、空気はない。  外部への出入り口は壊してしまったが、奥のハッチは無傷だ。その向こうは、有人環境。通常なら、だ。  鈍重な宇宙服をきて、エマは慎重に船からおりた。……おりる、というのは少し違和感がある。まだ、上下は逆。地球は天井側。外宇宙は、床側だ。

2023-02-03 08:00:05
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   あたりを見回す。  本来の手順は、外側のハッチを閉じた状態でフネの点検をし、必要に応じて内側のハッチの向こう、第二ドックへ宇宙船を移すのだが、一人ではできないし、ともかく、今は地上と連絡をとらなければならない。  第二ハッチ近くの操作盤へ。 pic.twitter.com/cUl6HXtNOF

2023-02-05 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

宇宙服の太い指で苦労しながら、起動ボタンを押す。  動かない。  反射的に電源コードを目で確認する。つながっている。他のボタンを押しても、反応しない。そんなにややこしい起動手順ではないはずだ。  灯りもつかない。

2023-02-05 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   宇宙船のライトで照らしているが、本来なら、ドック内部は自動で明るくなるはずだ。  電源がないのか。  発着ステーションの電力は、そう簡単にはなくならないはずだ。ダイソン衛星からのレーザー補給が断たれても、メインステーションからの供給がある。メ pic.twitter.com/X5F3YnBuo8

2023-02-06 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

インステーションは太陽光発電で自給していて、停電は考えにくい。  何にしても、無線連絡に誰もこたえないのは、おかしい。ステーションだけならともかく、地上基地がぜんぶ沈黙だなんて。  ともかく、……電源をなんとかしないと。

2023-02-06 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   しばらく悩んで、宇宙船にもどる。操作室でマニュアルを見返す。ついでに、自動で呼びかけをくりかえしているシステムのログを見る。応答はない。  マニュアルの該当箇所を3回くりかえして読んで、手順を確認する。  外部電源。  実験船の電源供給アタッチ pic.twitter.com/oUVbGdlBXH

2023-02-07 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

メント。元々、燃料を使わずにイオンエンジンを始動するために用意されたものだが、逆に、船から電力を供給する機能もある筈だ。発着ドックなら、規格も合う。  ケーブルを探す。船の荷物リストにさっと目を通して、船内倉庫からエミーにもってこさせる。

2023-02-07 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   ステーション側の操作盤の下に、ジャックがあるのを確認する。  直径5センチほどの太いケーブル。2つあるジャックの片方に、ぐいと挿し込む。赤いマークのほう。取説によれば、こっちが受給側。  宇宙船まで、15メートルほどケーブルをのばして、こんどは、 pic.twitter.com/vXOHxLoMGf

2023-02-08 08:00:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

マニピュレータ収納口の奥にある、ふたつのジャックのうち一つへ。  それから、もう一度操舵室へ。出入りするたびに船のエアロックを抜けるのが、実にわずらわしい。宇宙服も、早く脱いでしまいたい。

2023-02-08 08:00:06
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   操舵室のディスプレイの補助メニューから、外部への電源供給をオンにする。電力不足の警告。無視する。  しばらく、待つ。  宇宙船の電力インジケータが、どんどん減っていく。少しだけ、不安になる。  が、待つしかない。  カメラの映像が、ふいに明るく pic.twitter.com/Monlk5vtcc

2023-02-09 08:00:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

なる。ドックの非常灯がついたらしい。  ため息がもれる。  もう一度、外に出る。操作盤を開けて、まずメインステーションとの接続を確認する。ランプは、青。エラーなし。  ただし、メインステーションの電源残量のランプが、赤。  指をとめて、考えこむ。頭がおかしくなりそうだ。

2023-02-09 08:00:06
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  しばらく悩んでから、操作盤のさらに奥にある蓋を開け、スイッチを入れる。発着ステーションからメインステーションへの電力供給。通常、ありえない操作だ。メインステーションの停電はほとんど考えられないし、仮にそうなったとしても、地上から電力供給するほ pic.twitter.com/KYPIlFmC3H

2023-02-10 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

うが早い。  腰に手をあてて、しばらく待つ。  着陸してから、そろそろ1時間というところか。疲れはないが、宇宙服がわずらわしい。宇宙船にもどって脱ぎたいが、また着るのも面倒だ。  待つ。

2023-02-10 08:00:05
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   さらに1時間ほどして、ようやく反応がある。操作盤のサブディスプレイに光がともり、ホログラムパネルが起動する。  一瞬だけロゴが表示されて、すぐにメニューにうつる。  ふと、違和感。  ロード画面が、……見たことのない緑色の立体ロゴだった、ような pic.twitter.com/G7jDTblmyv

2023-02-11 08:00:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

。  ともかく、メニューを見る。以前のインターフェースと違う気がする。もっとも、最後にここの操作盤を触ったのは、訓練過程の半ばで、もう何ヶ月も前だ。バージョンが変わったのかもしれない。低電力モードでの操作は初めてだし。

2023-02-11 08:00:06
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   メインステーションのシステムに入る。ここから全てが操作できるわけではないが、最小限の情報は見られるはずだ。  やはり、電力不足だ。宇宙船から供給したわずかなエネルギーで、まずは太陽光パネルのエラーチェックを指示する。とりあえず、メインステーシ pic.twitter.com/i8uVrY4GX8

2023-02-13 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

ョンの近くの1ブロック。少しでも電力源を確保しないと、燃料が尽きたら真っ暗だ。  エラーはない。機構は、生きているらしい。  地上に向けて、カメラを起動する。それから、太陽光パネルの展開を指示。  画面を凝視する。

2023-02-13 08:00:06
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   ……メインステーションは、地上から屹立する高い高い塔のなかばにある。  大気圏のずっと上、地球の重力が遠心力と拮抗する点よりほんのわずか上。  赤道上に6本ある塔のメインステーションを、軽いチューブがつなぎ、遠心力でぴんと張っている。ぐるりと pic.twitter.com/0dxBAHONfH

2023-02-14 08:00:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

、円を描くように。  その、チューブの両脇に、太陽光パネルが折りたたまれている。

2023-02-14 08:00:06
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   エマのいる発着ステーションの直下、いや、エマからみれば、はるか頭上。大西洋エレベータのメインステーションの前後、チューブの脇から、何百枚もの巨大な長方形の太陽光発電パネルが、少しずつ、ふわりと翼を広げていく。  思わず、見入ってしまってから、 pic.twitter.com/RakMk52xij

2023-02-15 08:00:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

はっとして次のコマンドを送る。  センサを起動させる。  まずは、この奥。発着ドックの有人エリア。慣れないインターフェースに苦労しながら、インジケーターを読み取る。  まずは気圧、……ほぼゼロ。  気温、……マイナス52度。  やっぱり、人はいないのだ。

2023-02-15 08:00:06
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  少なくとも、生命維持システムは稼働していない。  メインステーションのセンサを読み取ろうとして、やめる。その前に、発着ドックの与圧機器をチェック。……自動チェックの範囲では、問題なし。おそらく、空気は漏れていない。  事故ではない。たぶん。  与 pic.twitter.com/AQR8RraIdB

2023-02-16 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

圧指示をだす。エラーはなし。与圧は可能だ。  ライフラインは生きている。

2023-02-16 08:00:05
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   それがなにを意味するのか、わからない。酸素は循環機と貯蔵大気のほかにメインステーションから送る非常用のパイプもあるはずだが、それが生きているのかも、ここからでは不明だ。メインステーションには、もっと高度な大気生成システムもあった筈だが……、 pic.twitter.com/1pTshylsFD

2023-02-17 08:00:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

とにかく、画面上では、与圧が進んでいることになっている。  一息つく。与圧には長い時間がかかる。ひとまず、また実験船に戻ろう。  わからないことだらけだ。

2023-02-17 08:00:06
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  *  故郷を求めてさまよう宇宙船。  砂漠の都市ハ・ル・シティ。  動物たちの住む地底世界。  大河に浮かぶ方舟。  仮想世界の迷宮。  生きた島。  それから──、 *  朱里は、陰鬱な気分で目を開いた。まっくら。でも、真の闇ではない。  かす pic.twitter.com/BhdAlHVdu3

2023-02-18 08:00:05
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楠羽毛 @kusunoki_umou

かな、光の気配が漂っている。   頭のなかに雲がかかっている。まぶたを動かすと、涙がにじんでくる。夢のなかで泣いていたらしい。  目をつむって、ゆっくりと思い出す。向田朱里。13歳の女。長女で一人っ子。日本の、海辺の町の生まれ。とおい、遠い世界の。

2023-02-18 08:00:06
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   少しだけ、からだを動かそうとする。うまくいかない。  足が、どこにもつかない。まだ、夢のなかにいるのか。  それとも、また──、  だんだんと体の感覚が戻ってくる。体温と、骨のかたさと、肌にふれる冷気。  胃の内容物が、喉まで逆流する。まるで pic.twitter.com/9QBOoD7RU7

2023-02-19 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

、上下がひっくりかえったような、……いや、上下がなくなったような、 (この感覚……、)  味わったことがある。ずいぶん前に、ほんの、わずかな時間だけ。  宇宙の、感覚だ。  こわごわ、目をあける。暗い。が、空気はあるようだ。  重力は、ない。  浮いている。

2023-02-19 08:00:05
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   どことなく埃っぽい空気が肺に入ってくる。深呼吸しようとする。喉がひりついて、うまく動かない。  かるく、手を振ってみる。すぐに壁にあたって、反動で体が押し出される。反対側の壁に、背中があたる。  そんなに広くない部屋みたいだ。  部屋。そう。た pic.twitter.com/ii66Qw0suc

2023-02-20 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

ぶん、屋内。  宇宙空間では、ない。    ……ああ、吐き気がする。  無重力のせいだけではない。さっきまで見ていた夢のせいだ。  地球の夢。  よくない夢。  それだけを、ぼんやり覚えている。  ただ──、 「あたし、……なんで、死のうと思ってたんだっけ」

2023-02-20 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   朱里は、童顔に不似合いなほど赤い唇を、かすかにふるわせて、ぽつりと、つぶやいた。 *  ボンヤリしているうちに、時間が経って……、少しずつ、体が沈んでいく。  やはり、重力はあるのだ。  いや、さっきまでは、たしかに、浮いていた。  とすると、 pic.twitter.com/a8A4dc47pE

2023-02-21 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

今、重力が発生したのか。  どれくらい時間がたったのか、わからない。また、夢うつつ。  ……起きなければ、と思う。  半身が、まだ夢のなかにあるようだ。  ぼんやりしている間に、2回、ドアがあいた。いや、たぶん、ドアだと思う。

2023-02-21 08:00:05
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   なにかが動く音がして、人間のようなものが入ってきて、すぐに出ていった。  それだけ。  暗くて、それ以上はわからない。 「……カセイジン、」  ちいさく、つぶやく。返事はない。  右手を見る。  手首の肉のなかに、白い、つるつるした腕輪が埋め込ま pic.twitter.com/kjS1MFZcLj

2023-02-22 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

れている。  異物感はない。筋肉も、自由に動く。表面は陶器のようだが、とても軽くて、実際はどういう素材でできているのか、よくわからない。朱里には想像もつかないような、高度な技術でつくられたものだ。

2023-02-22 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   宇宙船デイジーベルの支配者、クラデ王女に、むりやり装着させられた、インプラントの端末。  これは、転送機。  それから、翻訳機。  ホログラムと人工知能──、 「カセイジン!」  もう一度、叫ぶ。腕輪に内蔵された、人工知能プログラムの名前を。 pic.twitter.com/X8WoSrMfhJ

2023-02-23 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

反応はない。いつもなら、わざわざ呼ぶまでもなく、朱里のそばに勝手に浮いているのに。  ……ため息。  体は、とっくに床についている。  よろよろと、身をおこす。体の重みは、すっかりもとに戻って──いや、ほんの少しだけ、いつもより軽いような気がする。体調が悪いせいかもしれないが。

2023-02-23 08:00:05
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  (……ここ、どこだろ)  知らない世界。それはたしかだ。  朱里は、多元宇宙をさまよう旅人だ。  異世界デイジーベルのクラデ王女の陰謀で、地球からむりやり転送されて以来、おおよそ一週間ごとに、強制的に別の世界に移動させられている。  今の世界が、 pic.twitter.com/xKH60Wn1OU

2023-02-24 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

6つ目。  予定では、もうじき、もとの地球に戻れることになっている。  と、いうことは──、  ……朱里は、考えるのをやめて、床にぺしゃりと座った。ひんやりと冷たい。いや、寒い。凍りつくほどに。

2023-02-24 08:00:05
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   もっと、あたたかい服を着ておくべきだった。いま着ているのは、砂漠の国でもらった薄布だ。セパレート型でおなかが出ているし、飾り鎖が冷えきって、刺すようにつめたい。ひらひらと派手なばかりで、実用性がない。  ほんのすこし前は、ひとりで、陽ざしの強 pic.twitter.com/bUT6CvfAcB

2023-02-25 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

い海辺にいたのだ。  手探りで、荷物をさがす。足もとに、大きなナップザックが落ちている。詰まっていた荷物の半分くらいは、前の世界に置いてきてしまったが、まだ、いろいろと入っている。  着替えなければ、と一瞬だけ考える。面倒でやめる。

2023-02-25 08:00:05
楠羽毛 @kusunoki_umou

中みたいな、せまい縦穴。  腕をのばす隙間もない、通気口みたいな。正面をさぐると、小さなはしごがある。かっちりした金属ではなく、分厚いゴムみたいな感触の。  しばらく考えこんでから、これは廊下だと気づく。縦の廊下だ。

2023-02-26 08:25:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   ザックを左手にさげて、少しふらつきながら、立ち上がる。 「カセイジン!」  もう一度、少し大きな声で呼びかける。  返事はない。  朱里はため息をついて、……さきほど開いたドアらしきところへ向かって、よろよろと歩いていった。 *  マンホールの pic.twitter.com/lk7Idl0Ulg

2023-02-26 08:44:10
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   かすかな光が、上から落ちてきている。上の部屋には、人がいるらしい。たぶん。おそらく。人間。  はしごに手をかけて、力をこめる。少したわんで、ぐっと反発してくる。  掴めない。握力がなくなっている。  ため息をつく。深呼吸をして、もう一度。  だ pic.twitter.com/9h1sZQ3p5l

2023-02-27 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

いじょうぶ。ちょっと、疲れているだけだ。 *  夢見が、よくなかったのだ。 *  おしゃれな窓みたいな、小さな丸いドア。青いパッキンのようなもので、外枠とつながっている。  ドアの右端にあるレバーに、手をかける。  ──金属製のレバーの表面に、顔がうつる。自分の顔。

2023-02-27 08:00:05
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   木製の四角い眼鏡をかけた、きつい目。まつげが長くて、普通にしているのに、なんだか睨みつけているようだ。唇も、やけに赤い。そのくせ、顔のりんかくは丸くて、子供っぽい。頭は鳥の巣みたいにくしゃくしゃしていて、何回なでつけても直らない。  ひどい pic.twitter.com/G9YyIJKOoA

2023-02-28 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

顔──、  心臓が、きゅっと痛くなる。  忘れることにする。二回、まばたきをして、レバーから目をそらす。  ぐっと引く。シュッと空気が動く音がする。隙間から、光がこちらに飛び出してくる。  最初に目に入ったのは、髪。  あざやかな金髪。

2023-02-28 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  目が慣れるまで、3秒ほどかかって、座席にかけた人間の後頭部だと気づく。  狭い部屋の中心、面積のほとんどを占める大きな黒い座席。たぶん、革張りの。美容室の椅子みたいだ、と思う。それよりも大きくて、高級そうだが。  シートの両サイド、手すりの上側 pic.twitter.com/terf1z1hBI

2023-03-01 08:00:06
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楠羽毛 @kusunoki_umou

には、緑と青の線がかすかに光る、小さなディスプレイ。いや、タッチパネルか。それから、手をのばせば触れるくらいの距離に、車の速度メーターみたいなアナログの計器がいくつかと、ちかちかと青白く光る画面がさらに3つ。  ちらりと、足下を見る。

2023-03-01 08:00:07
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