Twitterには毎朝8時掲載です。 第6部まではこちらで。 https://ncode.syosetu.com/n3866fg/ 第7部も、後日小説家になろうに掲載予定です。よろしくどうぞ。
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楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 異世界八景 第七部 未来の世界 「減速、」  誰にきかせるでもなく、そう呟く。  いちおう、録音はされている。それに、すべての操作行為は、確認のために口に出すことを推奨されている。  この実験船にのっているのは、たったひとり。エマ=ブラウン。わたし pic.twitter.com/PBMQlrmuWi

2023-01-01 08:00:38
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楠羽毛 @kusunoki_umou

。専門の宇宙飛行士ではなく、エンジニアですらない。軌道エレベータ上のステーションで訓練を受けただけの、素粒子物理学者。27歳の未婚の女。

2023-01-01 08:00:39
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  新型エンジンを使っての加速実験。太陽系を飛びだして、銀河のかなたへ。観測ではなく、ただ、物理理論の検証のために。だから、わたしが乗ったのだ。超光速物理学研究の前線にいて、長期間の単独行にいちばん支障がないのが、わたしだったから。  正確には、志 pic.twitter.com/L0wtdoC0VZ

2023-01-02 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

願したのだが。志願者のなかで、もっとも適性があったのが、わたしだった。  主観的時間で、およそ62日。いまは、さいごの詰めの段階だ。  減速のための計算と簡易チェックリストに半日かかった。そのあと、再チェックに2日。おおむね、予定どおりだ。

2023-01-02 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  計算結果も、まあまあ予測の範囲内。少なくとも、想定していた7つの解のうち、いちばんマシなものに収束している。  稼働誤差3パーセント。それだけが、気になる。 「超光速エンジン、停止」  口に出しながら、カバーを開けて灰色のボタンを押す。実験エンジ pic.twitter.com/VYUvvO3Yhg

2023-01-03 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

ンの操作系のなかでは、これだけが物理ボタンだ。もっとも、計算結果がきちんと出ていないと押せないので、物理である意味はあまりない。

2023-01-03 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  超光速エンジン、という語感はあまり好きではない。詐欺的だからだ。船の速度はせいぜい亜光速にすぎない。ただ、加速する過程で、超光速粒子が発生している、はず、というだけだ。  われわれには観測できない領域で。  理論上、このエンジンからは超光速粒子 pic.twitter.com/FhPreaAAxq

2023-01-04 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

が放射されていて、船が加速するのはその反動である、……はずだ。ただ、超光速粒子に与えられたエネルギーを観測する方法がないので、一方的に加速しているように見えるだけ。

2023-01-04 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  さて、エンジンは無事に停止したようだ。ブウン、という低周波音が消える。完全に停止するには数時間かかるが、もう、やることはない。  同時に、イオンエンジンが起動プロセスに入る。これも、実際に動作を始めるまでには時間がかかるが、操作側でやることはな pic.twitter.com/PG9LeTuLEM

2023-01-05 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

い。全てコンピュータ制御だ。特段、人力で計算する必要もない。ひと段落だ。  地球への信号を送る。もっとも、ここからではすぐに返信はこない。 「マップ、」

2023-01-05 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  小さくつぶやきながら、投影画面を操作する。メインパネルに音声認識機能はないので、すべて手で操作する。設計段階で、エマ自身が関わって決めたことだ。…なにかを決めるときは、口よりも、指がいい。  立体映像の星間マップが表示される。  ぐるりと回して pic.twitter.com/gxxFgh61B4

2023-01-06 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

、全体を把握する。軌道計算はとっくに完了しているので、いまさら映像で見る意味はあまりない。……が、天体の配置は、やっぱり目で見たい。指で手触りを感じるように。

2023-01-06 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  太陽系まで、イオンエンジンの推力でゆっくりと減速しながら帰る。いったん通りすぎて、太陽の重力で大きくスイングしながら、また戻る。彗星のように。その間も減速を続けて、地球との相対速度を調整する。  最終的にはイオンエンジンも切ってしまい、液体燃料 pic.twitter.com/YDHd5wtzPJ

2023-01-08 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

のサブスラスターで位置を調整する。  地球のステーションまで、宇宙船内部の時間で、およそ71時間。 「……ん、」  小さく、エラー表示。  眉をあげる。船の慣性軌道が、予定をかすかに外れている。

2023-01-08 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  もう一度、マップを確認する。大きな要素の増減はない。たとえば、検索範囲外から、大きな彗星がとびこんできたというようなことは。  いや──、  ふといやな予感がして、マップを切り替える。現在のマップと、発射時の、太陽系をとびだしてきたときのマップ pic.twitter.com/gC5aDl4Lh0

2023-01-09 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

。それから、後者をもとにあらかじめ作成された、現在時点の予測マップ。それらを比較する。  目でみてもよくわからない。やはり数字だ。計算表におとす。

2023-01-09 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  画面をきりかえて、数秒だけ表をにらむ。それから、画面を切り替えてコマンドを作成する。計測誤差に収まらない天体を確認するのだ。コンピュータの計算結果を検算するだけだが、計算過程を自分で確認しなければ気がすまない。どうせ、地球のステーションで、何 pic.twitter.com/dDu4VWErRT

2023-01-10 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

度も、何度もやった作業だ。  30分ばかり格闘して、ようやく、結果がでる。  頭をふる。  もう一度、命令を走らせる。……もう一度。……計算式を、別のファイルでつくりなおして、もう一度。結果は、ぴったり同じ。

2023-01-10 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  誤差、0.2から0.76。平均は0.59%。ほとんどすべての重力源に、まんべんなく。本来の許容範囲に収まっている対象は、ひとつもない。  ありえない。  ため息をついて、座席を蹴る。無重力の船内で、ふわりと浮き上がる。本来はシートベルトをしてい pic.twitter.com/2O4foAKwwN

2023-01-11 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

ないといけないのだが、いつも省略してしまう。狭い船内で、天井にタッチ。  考える。  また、考える。

2023-01-11 08:00:05
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  式を、頭のなかでもう一度検討する。間違ってはいない。だいたい、誤差を検出しているだけなのだから、2回もつくりなおして間違っているはずがない。となると、おおもとのマップがおかしいのか──、  観測誤差?  機器の異常?  エラーチェックプログラムを pic.twitter.com/vQnBlqP5Da

2023-01-12 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

走らせる。異常なし。重力センサの異常であれば、遠くの天体と近くの天体で、誤差の大きさがはっきり変わるはずだが、その兆候はない。太陽はじめ近くの天体で確認したところ、重力センサと光学センサはぴったり一致している。計測結果ではなく、天体の位置が、ちがうのだ。

2023-01-12 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  とすると、古いマップが間違っているのか。  いや、となると、  ──やはり、時計が?  もう一度、計算式を組む。高速移動した際に時間がずれることは、経験的にわかっているが、厳密な算出式はまだ完成していない。……観測結果から、自動で補正しているは pic.twitter.com/E5NUnenDrY

2023-01-13 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

ずだが──、  とにかく、時間の流れをかえて、星の動きをもう一度照合してみる。経過時間のパラメータを変数にして、……  ちがう。どうしても合わない。時刻の問題ではないのだ。 (……いつから合わないんだろう、)

2023-01-13 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  超光速エンジンが停止した瞬間にマップをとりはじめたから、その時点で、すでに?  目をつむる。  そうして、エマはまた、深い思考の波にのまれていった。  すぐそばで、エミーが見守るなかで。 *  頭の中だけで、式をたてなおす。5回目の検算。間違い pic.twitter.com/RQoigvUYWu

2023-01-14 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

はない。超光速粒子に関する理論をもう一度おさらいする。頭の奥がちりちりする。夢のなかで、見つからない探しものを延々くりかえしているような。  だんだん、ぼうっとしてくる。  体から力が抜けていく。だんだん感覚がうすれて、頭のなかだけが無限に広がっていくような。

2023-01-14 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  答えは、まだ出ない。 *  式を立てるのは、嫌いではない。 *  ふたたび目をあけると、地球はずいぶんと近くにあった。  画面の時刻表示をみる。船内時間で、5時間ほど経ったようだ。のろのろと体をのばして、もういちどディスプレイにむかった。答えは pic.twitter.com/S4jLxt5fjt

2023-01-15 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

、出ていない。  ステーションからの返答もない。  最初の送信のあと、コンピュータが、自動で、何度も地球に呼びかけているが、なんの反応もない。これも謎だ。  カメラの映像に切り替える。肉眼でももう見えるはずだが。拡大して……、

2023-01-15 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  地球を探していて、ふと、気づく。ずっと大きい光源。太陽。  光学処理されたカメラ画像を、注視する。拡大。さらに拡大。  黒点。フレア。吹き上がるプロミネンス。  それだけ。  ダイソンプロジェクトの衛星が、ひとつも見えない。  まさか、と思う。太陽 pic.twitter.com/cgwCYSHLLP

2023-01-16 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

の近くを、地球に影がささないように電磁力で常に位置を調整しながら回転する、太陽光パネルの羽根をもつ妖精のような衛星群。この角度からなら、群れの大部分がカメラに映らなければおかしい。  ……なにか事故でもあって、堕ちてしまったのか。  それにしたって、全部?

2023-01-16 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  画像処理の都合で、見えていないだけならばよいが……、  ぞっとして、他のところに目をむける。地球。その前に、月が目に入る。昼と夜の位置関係を頭のなかで計算し、月基地が可視部分にあることを確認する。  ない。  地球を見る。健在だ。宇宙ネックレスも pic.twitter.com/S772wHWRY8

2023-01-17 08:00:03
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、軌道エレベータも。少なくとも、ここから見える範囲は。  ただし、応答はない。  エマは、ひざをかかえてそっと目をとじた。わからない。  何も。 *    帰還寸前になっても、地球からの応答はない。

2023-01-17 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  着陸予定の軌道ステーションは、かわらず存在している。ただ、なんの返答もない。地上基地も。  応答ねがいます、と20回ばかりくりかえして、エマはあきらめた。また自動通信にきりかえて、耳だけ傾ける。回答は一度もない。  地球の衛星軌道に近づいていく。 pic.twitter.com/UXPt2UAOcb

2023-01-18 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

からだが重い。操作室の椅子にすわって、肩を動かす。ベルトも電磁靴も使わずに、体の重みで座る感覚を、久々に思いだす。  地球の重力ではない。遠心力だ。つまり、地球は頭上にある。

2023-01-18 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  着陸予定のステーションは、地上から立ち上がる巨大な塔のような軌道エレベータの先端にあり、エレベータを安定させるためのバラストを兼ねている。船は、ステーションの回転にぴったりつきしたがうようにして、500メートルほど距離をとっている。いつでも、 pic.twitter.com/jLdm5CHjCc

2023-01-19 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

接触できる状態だ。  だが、勝手に降りるわけにはいかない。そもそも、入り口が開かない。  何度も、信号を送る。  何度も、何度も。  数時間──、  このまま回っていても、どうにもならない。  そう思いながら、また、信号を送る。応答はない。  決心する。  こじ開けるしかない。

2023-01-19 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景 「マニピュレータ、起動」  どきどきしながら、いちいち口に出して、ホログラムパネルを操作する。  ボール状の船の両脇に収納されている、2本の腕。  緊急時のためのツールで、パワーは弱いが、接舷用のハッチを強引に開けることくらいならできるはずだ。 pic.twitter.com/mOBV1wIIBJ

2023-01-20 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

あまり真剣に訓練していなかったので自信はないが、とにかく、起動する。  マニピュレータがせり出していく振動が、操縦席まで伝わってくる。  3Dモデルが画面に表示される。それから、カメラ映像。発着ステーションと相対速度をあわせているので、画面はほとんど動かない。

2023-01-20 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  さすがに、ホログラムパネルでは操作しきれないので、物理コントローラを起動する。グローブ型の、無骨なコントローラ。10指を同時につかわねばならない。訓練でひととおり覚えたが、あまり好きではない。  3D表示の画面のなかのマニピュレーターが動くと同 pic.twitter.com/ulWGpbqbud

2023-01-21 08:00:04
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楠羽毛 @kusunoki_umou

時に、振動が指先につたわって来る。カメラも、同時に見る。  苦手だ。まあ、やるしかない。  画面のはじに、船のモーメントへの影響値が表示されている。  コンピュータの補助が欲しいな、と思う。残念ながら、そういう機能はついていない。リアルタイムの細かい操作は、機械の手にあまるらしい。

2023-01-21 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  そのかわり、船体への反動は、ある程度自動で舵をきって吸収してくれる。 「ハッチを開ける」  記録のため、そうつぶやく。  オートバランサーの数値を横目で見る。腕を振るだけであれば問題ないが、思い切り叩いても大丈夫、というわけではない。だから、難し pic.twitter.com/pEQJFGsNwh

2023-01-22 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

い。  かるく、叩く。  反動でバランサーが動作する。  もう一度。  バランサーの閾値を超えそうになり、警告音。  ため息をついて、やり方をかえる。  モードをかえて、マニピュレーターのさらに先にある、三本の『指』を動かすことにする。

2023-01-22 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  指の太さは、人間の手と同じくらい。関節の数は、人間の倍。熟練した操縦者でなければ、まともに扱えるものではない。  ……もちろん、エマは熟練者ではない。  ともかく、マニピュレーター本体の保持をオートバランサーにまかせて、『指』をハッチのはしに据 pic.twitter.com/1uc2s9m0Xx

2023-01-23 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

える。  カメラのむこうに、ハッチの外部操作盤が目に入る。あれを使えば、と一瞬考えて、やめる。マニピュレーターの指では大きすぎて、操作盤は扱えないし、そもそも内部からロックを解除しないと動かないはずだ。船外に出て直接作業することも考えたが、操作盤が使えないことに変わりはない。

2023-01-23 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景   とにかく、やるしかない。  ハッチの端、気密材が密着している部分に、指をねじこむ。  もう一度。  うまくいかない。  こうなれば、最後の手段だ。  深呼吸して、コントローラから手を抜く。  オートバランサーのモードを変更して、3D画面で宇宙船と pic.twitter.com/DpjxEn6v7a

2023-01-24 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

ステーションとの相対位置を指定する。  かすかな振動が、座席に伝わって来る。  宇宙船をハッチに正対させる。ハッチの端に据えたマニピュレータの指を、ぐっとねじこんだままで。

2023-01-24 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  いま動いているのは、液体燃料の補助エンジンだ。その向きを、ハッチの反対側にあわせる。手動では不安なので、軸をあわせる作業はオートでやらせる。  ぴったり、合っていることを3回確認する。  深呼吸がわりにため息ひとつついてから、全開。  この世の pic.twitter.com/FUYCwlFQRs

2023-01-25 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

終わりみたいな振動が伝わってくる。  宇宙船の外殻より、ハッチの接合部分のほうが絶対的に弱いはずだ。少なくとも、船が壊れることはない。  そう思っていても、どきどきする。  振動、また振動。座席が跳ねる。それから、音。轟音。  ふたたび、轟音。

2023-01-25 08:00:04
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #異世界八景  カメラにノイズが走って、一瞬後、暗くなる。壊れたか、と一瞬思ったが、単に暗いだけのようだ。屋内には、太陽の光は届かない。  成功だ。  ハッチは破壊された。  ひととおりチェックプログラムを走らせる。宇宙船のどこからもエラーは出ていない。外殻も pic.twitter.com/B4ab0ErPaA

2023-02-02 08:00:03
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楠羽毛 @kusunoki_umou

大丈夫だ。  が、燃料がもうほとんどない。再発進どころか、船内電力の再充電にも足りない。ということは、イオンエンジンの再起動もできないということだ。  どうして、こんなに減っているのか。厳密な燃料計算は少々サボっていたが、それにしたって、減りが早い。もっと予備はあった筈だ。

2023-02-02 08:00:04
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