抜粋)②『アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)第２版～マインドフルネスな変化のためのプロセスと実践～』星和書店 2014.9.9

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唐突ですが、ACTで言うところの「コミットされた行為」(Committed Action)　について、ちょっとだけ呟きます。

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ACTで、コミットメントと言う場合、それは、将来についての約束というよりも、価値に基づいた行動パターンを、行動する人自身がそれに責任を持ちながら実際に刻々と生きることである。(『ACT第２版』星和書店p.153)

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コミットされた行為がくじけだした時には、その責任を引き受けてもう一度価値に基づいた方向へと努力を向け直すことが、新たなコミットメントとなる。コミットメントし続けることは、瞬間ごとに、行動をより大きなパターンへと方向づけし直していくことである。

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ある人が自分の行動が価値から逸れていると気づいて、行動を価値に沿うように方向づけし直そうと選んだ瞬間に、その人はコミットされた行為に従事しているといえる。(p.154)

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行為や行動は物理的な行為を意味するとは限らない。コミットメントが私的で精神的な活動を意味することもあるからだ。V.E.Frakl がナチス強制収容所の中で行ったコミットメントのひとつは、心の中の妻に関するものだった。

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彼は、心の中で、妻への愛は、死と隣り合わせの収容所生活の苦悩にさえも耐え忍ぶに値するだけの意味を与えると強く信じた。そして、妻が自分の心の中に存在し続けるようにするために、数えきれないほどの方法を考え出した。全収容期間を通じて、妻がまだ生きているのかさえも，再会できる日が来るのか

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どうかさえも知る由がなかったにも関わらずである。Frankl は、古代イスラエルの王ソロモンの歌を引用する。「私を刻みつけてください。あなたの心の印章のように　愛は死のように強い。」

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Frankl は、絶望が誘惑してくるのをはっきりと感じたけれども、妻のイメージを心の中に抱き続けるほうを選んだ。そうするたびに、彼は、選択して、自分の価値へのコミットメントに従事したのである。(p.154)

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特定の思考や感情一式がどこから来たのかを、まるでそれを除去する方法を見つけ出そうとするかのように、クライエントに対し尋ねることは、ほぼ確実に問題を引き起こす。臨床の場で「なぜ」を使うのは、ほとんど常に間違いだ。

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それは、クライエントが何らかの理由づけ(reason giving)や物語をはじめる呼び水となってしまい、たいがいの場合、クライエントとセラピストの双方を袋小路へと導く。(『ACT第２版』p.252)

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アジェンダ(agenda)という語は、これから次の意味で使います。 ・・・その人にとって、これまでの履歴の中で培われ、今もその人が置かれる文化的な状況によって維持されている、ある意識的もしくは無意識的な「発想」もしくは「習慣」のこと。

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↓　今の若い子は、「キツネ憑き」というアジェンダをほとんど言いませんし、ルワンダでは、ビタミンB12欠乏症になると「ヒーラーに毒を盛られたんだ」と言ったりしますが、日本でそんなことを言う人はまずいないでしょう。fofa.jp/1032/c.p?42cn9…

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一般に、精神科につながることや服薬することに対しては、文化的な偏見が存在する。クライエントがその一線を越えるとき、彼らにそうまでさせるだけの何かが起こっているものである。その人が自分の前に訪れたことの持つ重みを、臨床家は考慮しなければならない。(p.258)

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マインドの言語的な問題解決モードはあまりに強力で、ヒトは、そのモードを適用するのに没頭し執着してしまう。そうして、いよいよ「行き詰まり身動きが取れなくなった」という感覚を伴ってセラピーへ訪れる。

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一般に、はじめてやってきた際の彼らは、これまでも彼らが従ってきた既存のアジェンダを手放そうなどとは思っていない。今度こそ、より良い気分になるための何らかの洞察か実践的なテクニックをこのセラピストなら提供してくれるだろうと強く信じセラピーを求めている。(p.260)

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①問題を解決するための正しい方法を知らない。②そもそも「期待される結果」自体が、その状況に対して不相応で有効でない志向性に基づいている。クライエントが、自分が当てはまると信じるのは、ほぼ例外なく前者のほうである。しかしながらACTでは、それに代わる後者の視点からスタートする。

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一般に、クライエントは、自分が解決のための正しい公式を発見できていないことについて、自分自身を非難しているのである。

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そして、彼らは、セラピストに対し、彼らの土台となっているアジェンダを正当なものとして認めてもらいつつ、そのアジェンダに沿っておこなった彼らのこれまでのアプローチに足りない要素を明らかにしてもらいたいと望んでいる。

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問題は、彼らを取り囲んでいる文化的な環境が、成功するための率直な機会を彼らに提供してはくれない点である。代わりに彼らの問題解決の努力は、文化的に権威づけられたルール・システムによって干渉を受け、問題をどのように同定し、分析し、そして解決すべきなのかについて、型をあてがわれる。

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まず心理的な問題は、「不快な感情、思考、記憶、身体感覚、またそれに類するものが存在する状態」と定義され、こうした望まれない体験は、クライエントの何かがおかしくなっていて、何かが変わらなければならないことを示す「シグナル」とみなされがちだ。

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そうしたネガティブな体験が排除されない限り、健康的な生活の実現はありえないと思い込んでいる。その原因となっている自分自身にとってのある欠落(自信の欠如・人間関係における信頼のなさ等)を補正することで、ネガティブな体験を排除しなければならないと信じている。

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困難のそもそもの元となっている要因(過度に批判的な両親に育てられた結果としての自信のなさ・性的虐待から引き起こされた不信感など)を理解または修正することで、「変化のアジェンダ」は最も効果的に達成されると信じ込んでいる。

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この問題解決アプローチをたどることで、多くのクライエントが有害な結果を招いている。それにもかかわらず、彼らは、このアプローチは有効だといとも簡単に主張する。

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彼らは目の前のセラピストに対し、「コントロールと排除」のサイクルの努力を今度こそ成功へとつなげるための特効薬の処方を期待しているのである。(pp.260-2)

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セラピーをはじめるにあたっては、セラピストが何らかの仕方で向き合わなければならない根本的な問題がある。

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その問題とは「健康とは、感情的な苦痛がない状態であり、苦痛を支配するための意図的な努力があれば、健康の維持・向上はおのずと達成されるはずだ」という考えとクライエント自身とのフュージョンもしくは過度な一体化である。

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いうなれば、クライエントは「部屋の中の象」に目が向けられていない。明らかに目の前に存在する大きな問題の存在をクライエントは認められずにいる。こうなるはずだと文化的なルールが主張する事柄と、実際に起きている事柄とを対比することで、何が有効で何が有効でないかに目を向けるようにすべきだ

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クライエントがこれまで従ってきたシステムを浮き彫りにする作業は、次の四つの質問から進められる。(p.265- )

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(A) あなたが望む最善の結果とは何か？ (B) すでに試みてきた方略はどんなものだった？ (C) それらは、どのように役立った(worked)？ (D) その方略を使うことであなたが支払った代価は何？ pic.twitter.com/ncCGhtcVgm

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「私的体験をコントロールできれば人生は成功する」という解決策を、その妥当性を検証したうえで廃棄すること。それらが有効でないことに気づくということ。 創造的絶望(creative hopelessness)からスタートする。「絶望からはじめよう。」(p.266)

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コントロール方略の使用は、意図せず内的世界の苦痛をいっそう増幅させるにとどまらず、必然的に外的世界での問題までも引き起こす。二重の苦悩に直面することになる。「コントロールと排除」の方略は有害だったのである。(p.267)

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仮に、水漏れが起きたため配管工を呼んだ人が、その人自身は、トイレが壊れているものと間違って確信していたと考えてみよう。配管工は、トイレとは無関係なパイプが破損していることにすぐに気づく。

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しかし、ここで、クライエントが問題を間違って見立てたというだけで配管工がトイレを修理するのは、非倫理的である。問題は水漏れであって、配管工には、水漏れの原因を探し出す専門家としての責任があるといえる。

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同様に、心理療法家には、クライエント自身や文化によって変化のために必要だと信じられているが効果的ではない手段を採用するのではなく、実際に有効な手段を採用するだけの専門家としての義務がある。

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クライエントは、生きるうえでのある特定の問題を抱えている。それに対し、セラピストにはクライエントが抱える問題の元と解決策をプロとして分析する責任があるのである。(前掲書、pp.283-4)

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「私は憂うつだ」という言葉は、通常、憂うつな気分は消え去ら〈なければならない〉ことを暗に意味する。しかし、もっと詳しく検証してみれば、この要請は、手段またはプロセスなのであって、最終ゴールではないことがわかる。では仮に、クライエントの抑うつが実際に消え去ってしまったとしたら、

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クライエントの人生が以前よりもうまくいっていることを表す行動として、クライエントは何に取り組んでいるのだろうか？　この問いにクライエントが答えたなら、その答えは「憂うつを消し去ること」以外の、もっと重要な何らかの結果について語ったものとなるはずである。

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つまり、このことから、抑うつ気分の排除自体は、クライエントにとっての最重要課題ではなかったことが明らかになるのである。

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先日述べた四つの質問の一番目の問いである。「より良い(ベター)とは何か？」について、「基本的な問題が解消したら状況はどうなっているのか」について、イメージをつかんでおくことである。この第一の質問から、二つ引き出せる。

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一つは、クライエントが訴える問題に対してクライエント自身が抱いている「解決策」の定義を引き出すことができる。そうした質問を受けたクライエントは、プロセス・ゴール、すなわち、人生の前進を妨げていると考えられる何らかの望まれない私的出来事が取り除かれた状態をもって回答するものである。

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問題が解消したら状況がどうなるかに関する質問の第二の目的は、そのクライエントの価値について、また、人生で何を得たいのかについて、クライエントと一緒に手短に話し合っておくことにある。ここで示されるより良い(ベターな)人生のビジョンこそが、アウトカム・ゴールなのである。

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一般に、クライエントを締めつけているシステムには、アウトカム・ゴールとプロセス・ゴールを間違って結びつけたルールが含まれている。たとえ、プロセス・ゴールを達成しても、それによって関連づけられたアウトカム・ゴールが実現することは、実際には保障されない。

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ところが、慣習となっている変化のアジェンダは、その２つが結びつくという前提に基づいているのである。プロセス・ゴールの達成とアウトカム・ゴールの実現を直接的に結びつけた発言には注意しておく必要がある。

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#アジェンダ (agenda)・・・その人にとって、これまでの履歴の中で培われ、今もその人が置かれる文化的な状況によって維持されている、ある意識的もしくは無意識的な「発想」もしくは「習慣」のこと。

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飲酒した際には「より良い気分になった」ものの、より良い気分になることが、より良き人生には結びつかなかった、とクライエントが語る場合、プロセス・ゴール(より良い気分になること)は、実際には、アウトカム・ゴール(価値のある人生を生きること)とは負の関係にあったことになる。267-71

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先日の四つの質問の四番目。支払った代価について。コントロールと回避の方略は有害であるにもかかわらず、ほとんどのクライエントは、そうした不都合な結果を、あたかも苦痛な私的出来事のコントロール法を探求していくうえで必要な「仕方のないダメージ」と考えている。

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彼らの視点では、私的出来事をコントロールするためなら極端な方法さえも正当化される。こうした不都合な結果に与えられた「仕方のないダメージ」というラベルから「引き起こしてしまった結末」というラベルへの張り替え作業が試みられる。

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実際に、「コントロールして排除する」アジェンダは、苦痛な内容を和らげないどころか、クライエントの心理的空間と外部の世界に対して大損害を与える。この大損害こそが真にクライエントが支払ってきた代価なのである。この事実をクライエントが受け容れられれば、他の選択肢を探す動機づけになる。