南阿蘇鉄道 高森線の第一白川橋梁(熊本県南阿蘇村)について。この橋梁は熊本地震による被害が大きく、架け替えられる。
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タケ @take_all_a

少し日にちが開いたが、阿蘇(熊本県)の立野渓谷に架かる橋梁群の話を続ける。道路橋の(仮称)新阿蘇大橋と阿蘇長陽大橋の次は、南阿蘇鉄道 高森線のふたつの橋梁(第一白川橋梁、立野橋梁)について。

2021-01-12 22:10:55
タケ @take_all_a

阿蘇カルデラ内には2本の鉄道が通っている。ひとつは熊本~大分を結ぶJR九州の豊肥(ほうひ)本線だ。熊本駅を起点として述べると、熊本から阿蘇に向かった路線は、外輪山の切れ目である立野火口瀬からカルデラ内に入って北側(阿蘇谷)を横断した後、外輪山を越えて大分県へと抜ける。 pic.twitter.com/0HqCNE1Xu1

2021-01-12 22:13:12
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もうひとつは南阿蘇鉄道の高森線で、立野火口瀬にある豊肥本線 立野駅から分岐する形でカルデラの南側(南郷谷)を横断し、高森駅で終点となる。高森線の開業は1928・S3。国鉄からJR九州には引き継がれず、第三セクターの南阿蘇鉄道に転換された。

2021-01-12 22:14:33
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豊肥本線、高森線とも2016・H28の熊本地震で被災した。豊肥本線は2020・R2年8月に全線が復旧したのに対して、高森線は今のところ早期に復旧できた中松~高森のみで運行、立野~中松は復旧工事中につき不通のまま。写真は高森線の終点、高森駅。 pic.twitter.com/8IzeR9NR5G

2021-01-12 22:18:26
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不通区間で特に被害が大きかったのが、立野渓谷の第一白川橋梁とその前後の犀角山(さいかくやま)トンネル、戸下(とした)トンネルだ。画像はGoogleマップ3Dモードのキャプチャに加筆したもの。立野火口瀬には2本の河川(白川と黒川)が深い渓谷を刻んでいて、近代以降、複数の橋が架けられてきた。 pic.twitter.com/Saxt124SJY

2021-01-12 22:24:12
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立野火口瀬の地形図(地理院地図のキャプチャ)に加筆。外輪山の切れ目に道路・鉄道・河川が集中していることが分かる。黒川はここで白川と合流、白川はカルデラ外に流れ出て熊本市から有明海へと至る。この画面のURL maps.gsi.go.jp/#15/32.877043/… pic.twitter.com/dPSvpPrlNV

2021-01-12 22:26:17
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豊肥本線は立野駅からスイッチバックで高さを稼ぐと、黒川の渓谷沿いに外輪山の裾野を北上する。立野駅を起点とする高森線は、白川の渓谷沿いに立野橋梁~犀角山トンネル~第一白川橋梁と進み、戸下トンネルで山を抜けて南下する。

2021-01-12 22:27:46
タケ @take_all_a

これがその第一白川橋梁(熊本県南阿蘇村)。竣工年は書籍やウェブサイトによって1927・S2と1928・S3の二説ありハッキリしない。写真は阿蘇長陽大橋(写真右)と戸下大橋との間の道路から2020年6月に撮影した。特別なツアーに参加しないかぎり、第一白川橋梁に近づくことはできない。 pic.twitter.com/7MfJDt8sTD

2021-01-12 22:29:48
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第一白川橋梁の構造形式は3径間バランストアーチ橋。さらに高森側(戸下トンネル側、写真左)に1径間の鋼板桁橋が付くが、撮影ポイントからは見えなかった。アーチの主径間は91.44m(300フィート)で側径間は両側とも30.48m(100フィート)、これに鋼板桁橋を加えた全長は166.3mとなる。 pic.twitter.com/mXRGSPbvnL

2021-01-12 22:31:59
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川底からレール面までの高さは約60m。深い渓谷に長大アーチ橋を架けるのは、かなりの難工事だったろう。阿蘇の南半分しかカバーしないローカル線に対して過剰な投資では、と疑問を抱いた人もいるだろうが、もともと高森線は宮崎県の高千穂線と接続する計画だった。 pic.twitter.com/Wi5f6rFHHa

2021-01-12 22:35:37
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熊本と宮崎を結ぶ九州横断鉄道という計画があったからこそ、困難でも橋梁は施工された。しかしこの計画は最終的に頓挫する。第三セクター高千穂鉄道に継承された高千穂線は台風で被災して廃止。南阿蘇鉄道高森線も熊本地震で被災するが、こちらは復旧に向けて工事中という経緯だ。 pic.twitter.com/OhBPMsWXOp

2021-01-12 22:37:26
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第一白川橋梁の被災だが、崩落はしなかったものの部材の変形や破断、全体的な歪みが生じ、架け替えが決定された。2020年は上部工の工場製作に取りかかったとのこと。 鉄道チャンネル > 南阿蘇鉄道の復旧進む 第一白川橋りょうの照査業務が完了し、上部工の工場製作へ――JRTT tetsudo-ch.com/10448974.html

2021-01-12 22:50:57
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高森側2P橋脚のピン支承(写真)は、台座コンクリートからの浮きあがりが生じている。さすがにこの距離では分からないが、言われてみれば隙間が空いているような気がする。 pic.twitter.com/Jt1PFQuUwP

2021-01-12 22:52:53
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また、第一白川橋梁の立野側にあった犀角山トンネルについては、山全体を切り崩してトンネルは撤去された(撮影地点からその現場は目視できず)。切り崩した方がトンネル修復よりもコスト減になることに加え、橋梁架け替え工事のための施工ヤードを確保する目的も兼ねるようだ。

2021-01-12 22:57:28
タケ @take_all_a

「第一白川橋りょうの復旧方法」の説明資料。「南阿蘇鉄道の災害復旧調査結果について」(国土交通省鉄道局)から引用。URL mlit.go.jp/common/0011816… (注 PDF)。この資料によると犀角山トンネルは一部撤去になっているが、完全撤去が最終決定。 pic.twitter.com/RZvJOOzsei

2021-01-12 22:59:53
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私が訪れた2020年6月時点では、第一白川橋梁の解体工事中に上弦材を支えるケーブルを張るための鉄塔が建っていて、ケーブルや下弦材を支えるブロックは未施工だった。その後の写真は見つからず、現時点の解体の進捗は分からない。なお、高森線は2023年に全線復旧の予定である。 pic.twitter.com/BtXAXaUukE

2021-01-12 23:04:53
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高森線の終点の高森駅に、第一白川橋梁の模型が展示されている。なかなかの力作で、架構がよく分かる。アクリルケースへの映り込みが激しくて撮影は苦労するが… pic.twitter.com/UgbgXPSA0g

2021-01-12 23:07:14
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タケ @take_all_a

福岡県を中心に、建築・団地・土木・産業遺産などについて、ツイッターにつぶやいたことをまとめています。個人サイトの方は放置中。