[したがき] 抜粋①『「助けて」が言えない~SOSを出さない人に支援者は何ができるか~』松本俊彦編、日本評論社、2019.7.15.

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抜粋①『「助けて」が言えない~SOSを出さない人に支援者は何ができるか~』松本俊彦編、日本評論社、2019.7.15. 　3章.「楽になってはならない」という呪い~トラウマと心理逆転、嶺輝子、 　前回の治療のテーマがまた課題に上がってくる、何度も同じ地点をグルグルと歩き回るルーピングが起こる、等の pic.twitter.com/AtNFSn3PIl

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クライエントがみせる抵抗的なふるまいをCallahan,R.J.は「心理的逆転」と名づけた。以下、心理的逆転と深い関連がある複雑性心的外傷後ストレス障害(複雑性PTSD)について述べる。 　心理的逆転という用語は、その状態が、自己利益に向かうという人の通常の動機づけの状態を逆転させ、敗北や不利益へと

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向かう行動をとらせるように見えるため名づけられた。この心理的逆転には部分的なものと、広範性のものがある。広範性の心理的逆転は、人生の特定の領域だけでなく人生全体の殆どに逆転した影響が及んでいる状態であり、このような人々はしばしば慢性的に不機嫌で、人生に対して否定的な姿勢を示す。

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キャラハン博士は「自滅的パーソナリティ障害」の行動的特徴が、心理的逆転が起きている人にも確認できるとし、8つの特徴を挙げている。 ①他によい選択肢が明らかにあるとわかっている時でも、失望、失敗、虐待を招くような人や状況のほうを選ぶ。 ②他者の助けを拒絶したり、その助けを無効化する。

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③新しい目標達成など肯定的な出来事に対して、落ち込んだり、罪悪感をもったり、苦痛を伴う行動をとる。 ④他者から怒りや拒絶反応を引き出しておきながら、その後で傷ついたり、敗北感や屈辱感を抱く。 ⑤充分に社交的スキルや楽しむ力があるにもかかわらず、喜びの機会を拒否し、みずからが楽しんで

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いることを認めない。 ⑥発揮できる能力があるにもかかわらず、個人的な目的のための大切な仕事を完遂することができない。 ⑦常によい扱いをしてくれる人に対して退屈を感じたり、無関心である。 ⑧当の相手に求められてもおらず、やめてほしいと言われるような、過度に自己犠牲的なことを行う。

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クライエントのなかに心理的逆転があった場合、このような自己否定的な力動の作用により、われわれが提供する治療や適切なアドバイスが、効果を発揮できなかったり、悪化を招くことさえありうる。 　心理的逆転が認められた場合、まずそれを解消して、その後の治療がよりよく進むように整えておく。

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クライエントが抱える心理的逆転が、自己破壊的な力動を発揮して回復を阻むからだ。その際に留意すべきは、心理的逆転が存在するクライエントは、高い確率で複雑性PTSDをも抱えていると思われることである。

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そもそも、複雑性PTSDとは、①継続的あるいは長期にわたる、②保育者やその他の表向き養育責任を担っている者による加害や放棄を伴う、さらには③幼児期や青年期など、被害者の人生において傷を受けやすい発達段階に発生するなどの特徴を有する、重度のストレス要因にさらされた結果引き起こされる

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心的外傷である。PTSDは、①外傷性記憶の侵襲的再体験、②感情的な麻痺および記憶障害を含む外傷リマインダー(トラウマを思い出させるもの)の回避、③過覚醒ならびに抑うつ、不安、その他の共存する病的状態が診断基準となる。 　複雑性PTSDにはそれらに加えて、発達およびパーソナリティ障害と症状、

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身体的健康問題、そして重度の社会的障害といったものが含まれる。複雑性PTSDは、PTSDのより重症な一形態であるが、それはこれまでよく知られたトラウマ症候群から、(もっとも一般的かつ面倒な)5つの特徴によって一線を画される。すなわち、①感情のフラッシュバック、②有毒な恥辱感、③自己放棄、

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④悪質な内なる批判、⑤社会的不安である。影響を受ける領域は生物学的調整機能、感情調整、行動コントロール、認知能力(注意、集中、問題解決、学習)、自己イメージと意味の創出、自己統合(解離と意識)、愛着と対人関係など多岐にわたる。症状には感情調整の障害、自己破壊的および衝動的行動、

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解離症状、身体愁訴、無力感、恥、絶望、希望のなさ、永久に傷を受けたという感じ、これまで持ち続けていた信念の喪失、敵意、社会的引きこもり、常に脅迫され続けている感じ、他者との関係の障害、その人の以前の人格特徴からの変化などが含まれ、精神的なものだけに留まらず免疫系にも影響を与え、

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免疫系疾患、慢性疼痛、がんなどの重篤な慢性疾患にまで広がる。 　複雑性PTSDに追加的に起きる後遺症の7つのカテゴリーは、図表(p.35)のとおり。 　心理的逆転を主題とする時に重要なのは、ここに自己破壊的傾向や、自己否定、信頼できるはずの人間や回復に対する不信感があげられている点である。 pic.twitter.com/k2LI9oWxHK

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複雑性PTSDのクライエントは、自己コントロールのしにくさに加え、③や⑦のように強い否定感や自責、恥辱感や絶望感をもっており、自分が助けられてもらえるとは思っていないし、助けられるに値するとも思っていない。それだけでなく自己を放棄し、惨めな人生が相応しいとさえ思っている可能性が高い。

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幼年期に虐待を受け、養育を放棄されてきた人は、どのようにして治療を無効化するような自己放棄の心理的傾向を発達させるのだろうか。 　複雑性PTSDの起源は、小児期の長時間にわたる身体的および / または性的虐待と関連づけられることがもっとも多いが、継続される言葉による感情的虐待、そして

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情緒的ネグレクトによっても引き起こされる。機能不全となった多くの親は、乳児や幼児との結びつきと愛着、助けを求める泣き声に対して怒りや批判、軽蔑的態度、あるいは無視や放棄で反応する。とくに無視や放棄といった情緒的ネグレクトは、一般的に多くの外傷や虐待の根底に常在していると言える。

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怒りや批判、軽蔑的態度などの侮辱は、大人にとっても痛みを感じさせるものだが、より幼い子どもにとってはトラウマを与える力がきわめて強いものとなる。軽蔑は、言葉や態度による精神的な虐待であり、侮辱、怒り、嫌悪などさまざまな感情が混在している。怒りは恐怖を、嫌悪は恥辱感を子どもの中に

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生み出し、その結果、泣くことや注意や助けを求めることを速やかに控えるように教育する。やがて、子どもはいかなる種類の助けや人とのつながりもまったく求めなく(あるいは求めることができなく)なる。さらに、子どもの注目・つながり・助けを求める呼びかけを日常的に無視したり、それに背を向けたり

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する親は、子どもでは手に余るような恐怖や悲嘆の中に彼らを置き去りにする。子どもたちは、最終的に諦め、無力感や絶望感による憂うつの中で死んだような気分に圧倒される。これらのタイプの拒絶は、同時に子どもの恐怖や悲嘆を拡大し、最終的にはそれにも恥辱感を加える。

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時間の経過とともに、この恐れと悲しみと恥は、親による放棄のすべての責任が、その子ども自身、そして大人へと成長した本人自身にあるのだとする有毒な内的批判家を生み出し、いずれはその内的批判家がクライエント自身の最悪の敵となって、複雑性PTSDの奥深くに沈潜することになる。

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この有毒な恥辱感と内的批判家は成長したクライエントの中に常に存在し、それによってクライエントは自分自身に「私は助けられない」「私を助ける者などいない」という絶望感を教育し続けるかもしれないし、親から受けたあらゆる罵倒の言葉を自分に言い続けるかもしれない。

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また、親の放棄や恥辱感から、「私は打ち捨てられるのが相応しい」「私は惨めでどうしようもない奴だ」「こんな私には惨めな人生が相応しい」「私は幸せになんかなれない」「私には不幸がお似合い」と教育し続け、誤解し、その間違った論理を深く納得してしまうのかもしれない。

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さらに、日常のちょっとした刺激が引き起こす「感情的フラッシュバック」によって再び過去の惨めな状況に退行させられるようなことがあると、その誤解はさらに上書きされたり、維持されたり、強化されていくようになる。つまりこれが「心理的逆転」である。

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そのような子ども時代を経て、逆転した心理を抱えた大人は、容易には治療やその他の援助につながることはできないだろう。さまざまな問題行動を引き起こし、そこからやっと医療や治療につながる者もあれば、自分だけではどうにもならなくなったり、周りが見かねて医療や治療につながる者もいる。

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しかしいったん医療や治療につながったとしても、クライエントの中に深く内在する有毒な内的批判家は変わらず存在し、回復をしようとする本人や援助者の努力を無効化させる可能性は以前として高いままなのだ。p.36

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このような強烈で複雑な作用を引き起こす心理的逆転をどのように解消したらよいのだろうか。クライエントの回復を妨げ、「惨めな人生」を選択させるような深い部分に沈積された認知を書き換えていくのにはどのような方法が有効なのか。

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認知を再構成するには2つの方法がある。1つは、理性に働きかけて認知を書き換えるトップダウンの手法、2つ目は深い部分から問題を軽減・解消するボトムアップの手法だ。嶺はクライエントのこころの深い部分にコード化された問題を解決するために、ボトムアップの手法を使うようにしている。

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こころの深い部分に対して、顕在意識の抵抗を受けずに問題を解消することがしやすいからである。嶺が考案した「ホログラフィートーク」は、軽催眠を利用した技法である。クライエントを変性意識に入れ、退行させながら、症状や病因がどこから始まっているのかを探り、問題を解消して切り離し、

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健全化を図り、回復に役立つリソースを獲得していく技法である。手法的には催眠やイメージ誘導に入るだろうし、クライエントの内面にある意識を外在化もするので、自我状態療法の一種ともいえる。トラウマを解消する時には、その想起にまつわる問題がいろいろ出てくるが、軽催眠状態で誘導していくこと

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によって、こころの奥にしまわれた問題場面が現れやすく、またその場面が現れてきても落ち着き、安定した心理状態で見ることができ、認知を書き換えることもしやすい。そして心理的逆転を扱う場合には、逆転の有無、そしてその理由を筋反射で確認していく。顕在意識では明らかにならない部分を、

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無意識の反応で確認するのだ。理由が判明したら、その理由を基点に過去に退行し、その起源を探り、問題を明確化して切り離し、健全化を構築して安定化させ、リソースを獲得して終了し、そのリソースを行動課題として与えることを行っていく。

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ホログラフィートークは、クライエントのこころの奥深くにしまわれた間違った認識の根源を自然に出現させ、それを健全な形に書き換え、その状態が維持されていくようにクライエントに自然な形で組み込んでいくことができる技法である。初回のセッションで心理的逆転を解消した後は、それまで長年

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かかってもうまくいかなかったセラピーの歯車がしっかりとかみ合うような感覚が出てくる。セラピーの効果がしっかり現れ始めるので、クライエントの内的混乱が治まっていき、よりよい選択がしやすくなる。周りの援助を求めやすくなったり、得やすくなったり、人間関係の複雑さや変調が解消され、

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自分を大切にしてくれる人が誰かわかるようになる。そのような人に近づき、関係性を構築することができるので、人間関係に関するトラブルも減る。褒められていることは率直に「自分を肯定してもらっている」と認識できるし、それによって自分ができている所や、自分の特性が見えてくるようになるので、

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自分に対する信頼感が現れ、自分自身でもできている部分を承認することができ、ゴール達成までのプロセスを安定して維持しやすくなる。クライエント自身の中に自分を尊重し、周りを健全に尊重する意識が自然に芽生えてくるのだ。

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ジョン・ブラッドショウは「恥はすべての依存症の核であり、その感情を煽り立てるものだ」と言っている。その毒性のある恥辱感は、クライエントを長く、あるいは永久にそのどうしようもない惨めな人生に留めおく核と原動力になる。

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その毒性のある恥辱感は見えにくく、クライエントを深い部分から操るが、その認知あるいは認識自体が根本的に間違っているのだ。

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特に困難な事例、様々な治療の場を転々としている事例、長期間にわたって回復が停滞している事例には、そうした自己否定の呪いが潜み、クライエントが翻弄されている可能性がある。よりよい治療を行うためには、まずその呪いを解き、クライエントが健全な状態に向かえるようにすることが重要になる。

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気持ちを言葉にすることが苦手な人は、自分のつらい気持ちを、「死にたい」の一言で片づける傾向がある。 『「助けて」が言えない~SOSを出さない人に支援者は何ができるか~』松本俊彦編、日本評論社、2019.7.15.　 (p.52) 　 4章、「助けて」ではなく「死にたい」～自殺・自傷の心理、勝又陽太郎 twitter.com/orokazarashi/s…

🦭 @orokazarashi

病院から帰るときいつも思うやつ pic.twitter.com/v6CuLeA4Cq

2021-06-09 17:05:36

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「死にたい」という言葉が、他者との安定した関係の構築や継続を阻害し、「助けて」と言いにくい環境を作り出してしまっている場合がある。 　「死にたい」という言葉の背景にある気持ちを丁寧に読み解き、「死にたい気持ち」を表現するための、新たな言葉をたくさん作っていくことを意識する。

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「死にたい」というのは最終的な感情ではあるのだろうが、その過程に至るまでの複雑な感情体験が、そのたった一言に埋もれてしまうのは大変もったいない。 　「死にタヒ」ではなく「悲しス」「つらみ」「一人でいるのが寂しス」といった言葉で表現するほうが、周りの人もずっと相談にのりやすくなる。

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しかも、そうなった時の「死にてえ」という言葉は、きちんと事の重大さを伝えられる言葉として機能するはずである。 　モノクロの「死にたい」という言葉にきちんと色をつけていく練習を積むことは、他者との新しいつながり方の構築に寄与するものと思われる。(p.53)

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(p.42- ) 2016年に改正された自殺対策基本法において、翌年に見直しが行われた自殺総合対策大綱では、具体的施策として「SOSの出し方教育」なる言葉が登場した。「困った時に誰かに助けを求めること」を子どもたちに教育し、その力(援助希求能力)を育てることで、将来の自殺を防ごうという試みらしい。

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「SOSを出す」のも「援助を求める」のも、その行為の主体は悩みを抱えた本人である。「SOSの出し方」や「援助希求」を教育することは、「あなたが助けを求められるようになりなさい」と子どもたちの側にばかり変化を要求することにはならないだろうか。

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このような教育は、「なぜ助けを求めなかったのか」と自殺を試みた者を責め立て、自殺を自己責任として断じる声を強化しはしないだろうかと心配になる。 　自殺予防のためには、悩みを抱えた人とそれを援助する人との間で援助関係が成り立つ必要がある。

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内閣府の意識調査では、これまでに自殺を考えたことがあると回答した人のうち、自殺を考えた時に相談した経験がある人は約３割に過ぎず、相談先として多くの人が選んだ「友人」や「家族」でも２割に満たない数でしかなかった。

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「死にたい」という言葉には、本人が勇気をふり絞って発した「助けを求める悲痛な叫び(Cry for Help)」という側面が含まれているのかもしれないと想像してみることは大事である。 　「死にてえ」は心理的視野狭窄に陥る手前の一定の期間、目に見える形で本人が示してくれる貴重なSOSのサインでもある。

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周囲の「助け」が本人の目に入りやすいうちに援助者がきちんとつながっておくことができれば、自殺を予防できる可能性も高まるだろう。 　心理的視野狭窄に陥ってしまえば周囲の助けも目に入らない。否定的認知状態に置かれたら、他者に対して「助けて」という言葉を発することなど不可能に近い。

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一度形成された悪循環的な考え方は、正攻法ではそう簡単に改善しない。そうこうしている間に、あまりに変化しない本人の否定的認知に嫌気がさし、周囲の人が本人と距離を置いてしまうになると、本人はますます孤独を深め、「やっぱり自分など必要ない存在なのだ」という気持ちを一層強めてしまう。