抜粋) 『ヘイト・スピーチという危害』ジェレミー・ウォルドロン著 谷澤正嗣・川岸令和訳 みすず書房 2015.3.30

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

pic.twitter.com/gg0Xw7Sjiy

拡大

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

✄----------『#ヘイト・スピーチという危害』(ジェレミー・ウォルドロン著 矢澤正嗣・川岸令和訳 みすず書房2015)----------✄ 第４章 憎悪の外見 から。　ポルノグラフィとヘイト・スピーチとの類比を、著者がキャサリン・マッキノンを引用考察している部分の抜粋。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

(その前に、「尊厳」という語について、第３章から)　評判に対する攻撃は、影響を受ける人々の尊厳に対する攻撃に至る。ここでの「尊厳」とは、彼らの基本的な社会的立場、社会的平等者として、そして人権と憲法上の権利の担い手としての彼らの承認の基盤の意味である。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

尊厳が、カント的な Würde の意味での測定不可能な価値という哲学的構想だけを意味するのではないことに、注意してほしい。私が言う尊厳とは、地位、すなわちしっかりとした立場を持つ社会の成員としての人の地位の問題であり、そしてその地位にふさわしい承認と取扱いに対する要求を生み出す。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

哲学的には、尊厳は人間の人格に内在的だと言ってもかまわないだろう。しかし社会的および法律的な地位としては、尊厳は社会と法律によって確立され、支持され、維持され、守られなければならない。これは私たち全員が役割を果たすよう求められている大切なことなのだ。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

最低限私たちは、お互いを公に取り扱うに際して、他者の尊厳を傷つけるよう計算された仕方で行為するのを差し控えることを要求される。これこそ、私たちが集団に対する文書名誉棄損に対抗する法律を制定し執行するときに果たされる責務なのである。 Ibid., 70-71

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

集団に対する名誉棄損こそが、集団を定義づける特徴を辱めることによって、あるいはそれらを根本的に名誉棄損的で頑迷な事実にかかわる主義と結びつけることで、集団の成員であることを不利益にすることを企むのである。集団に対する名誉棄損の禁止とは、従って、そのような企みを阻止する方法である。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

ヘイト・スピーチを規制する立法が擁護するのは、(あらゆる集団のあらゆる成員のための)平等なシティズンシップの尊厳である。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

そしてそれは、(特定の集団の成員についての)集団に対する名誉棄損が市民から成る何らかの集団全体の地位を傷つける危険がある時には、集団に対する名誉棄損を阻止するためにできることをするのである。　Ibid., 72

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

さて、著者は、第４章で、秩序のない社会はどのように見えるか、について取り扱った仕事として、Catharine MacKinnon の “Only Words” (harvard University Press,1993) (『ポルノグラフィ』) を紹介している。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

一定の人々にとっては、どう見えるかはどう感じられるかである。マッキノンによれば、公的環境において、目にするどんな場所でも、男性にとって「ポルノグラフィーはマスタベーションの題材である。」では女性にとってはどうか。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

それは世界を定義する心象の集合体、そのはっきりと目に見える、程度の差はあっても永続的な、明らかに消すことのできない存在が、女性たちがそこで生活を送らざるをえない環境に絶大な違いをもたらすような心象の集合体なのである。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

法律によって確保されるべき財とはひとつの公共財、すなわち正義の最も基本的な諸要素に関する、社会の居住者すべてにとっての一般的で広くいきわたった安心である。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

安心とは、日常生活の中で遭遇したり向き合わされたりする何百、何千という見知らぬ人々によって、彼らがどのように扱われるはずであるかについての安心である。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

彼らはみな等しく人間であり、人間性に備わっている尊厳をもち、彼らはみな正義に対する基本的な権限をもち、彼らはみな、最もひどい形の暴力、排除、尊厳の否定、従属からの保護に値する。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

ヘイト・スピーチまたは集団に対する名誉棄損器は、社会の一定の集団に対する、こうした根本的な事柄のあからさまに表現された否定を含む。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

秩序ある社会の目に見える自己表現の要点とは、すべての市民に対して、正義にかなった仕方で扱われることを当てに出来るという安心を伝えることである。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

しかしながら、社会が反ユダヤ的なサインや、燃やされた十字架や、抽象的な人種差別主義のチラシによって汚されている場合には、そうした安心は蒸発してしまう。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

私たちが規制したいと思っている偏狭な展示物は、脆弱なマイノリティの成員が頼りにしている社会的な安心の感覚をとくに標的としている。それらの要点は、脆弱な集団の成員に社会が提供する暗黙的な安心を否定することにある。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

彼らが他の誰とも同じように、当然のこととして社会に受け入れられているのだという安心を、傷つけることを、それを疑問に付すことを、そしてそれを憎悪、排除、侮辱の目に見える表現によって汚すことを狙いとしている。そこからすべてが始まる。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

かつては暗黙のうちに安心の対象となっていたものが、今や目に見える形で挑戦を受ける。そしてマイノリティ集団の成員にとっては、仕事をしようとするとき、家族と公共の場所を散歩しようとする時に、まったく新しい種類の数多くの計算が必要になるのである。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

ポルノグラフィ、性差別主義的な広告、女性たちをおとしめるような描写があふれている社会は、それを秩序ある社会と呼べるだろうか。すなわち、その市民のひとつの大きな部分をおとしめるようなやり方で。彼女たちのセクシュアリティについて侮辱的なメッセージを伝えるやり方で。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

彼女たちにとって適切なものとして示されたある特定の範囲の機会と活動だけを強調して、その他の数多くの活動と機会を排除してしまうようなやり方で。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

正義と尊厳という条件の下で彼女自身の運命を切り拓いていく一種の自立した人格という考えとは衝突する、対人関係におけるある種の従属を、規範的なものとして描くようなやり方で。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

社会がその目に見える外見において尊敬の根本的な欠如を体現するとはいかなることだろうか。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

私たちの社会の目に見えるポルノグラフティ的側面がもつ教育的機能は、そのスケールと強度において、人種差別主義的なヘイト・スピーチが植え付けようとする態度をはるかに上回っている。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

ポルノグラフィそれ自体が、女性に対して社会が平等な尊重と平等なシティズンシップについて安心を与えるのを妨害することとして姿を現すことはたしかであるが、それだけではない。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

それが消費されることを通じて、ポルノグラフィは、男性のオーガズムを性的不平等に向けて条件づけることで、女性にとっての、人間以下の、いけにえにされた、二級の地位をいっそう制度化する。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

ポルノグラフィは性差別主義をセクシーにすることによって働く。ジェンダーの階層性についての原初的な経験のひとつとして、ポルノグラフィは性差別主義が学習されるのみならず享受され実践される主要な仕方である。ポルノグラフィは男性の優位性が広められ社会的に現実化される仕方のひとつなのだ。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

私には、ポルノグラフィが政府によって法律的に許されていることと、その展示が公共の場に広がっていることが、女性の尊厳と平等に対する私たちのコミットメントと両立するのかを問題にする権限が女性にはあると思われるのである。　Ibid., 109

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

私の考えでは、尊厳と名誉棄損との結びつきは、ポルノグラフィの場合にもヘイト・スピーチの場合と同じくらい重要である。 　(以上、『#ヘイト・スピーチという危害』から。pp.86-109 )

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

✄----------『#ヘイト・スピーチという危害』(ジェレミー・ウォルドロン著 矢澤正嗣・川岸令和訳 みすず書房2015)----------✄ 第5章「尊厳の保護か、不快感からの保護か」から。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

XによるYの尊厳に対する攻撃を、何かXが言ったりしたりすることによって単にYが不快な思いをすることから区別しようとする試み。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

注釈)本書は、Jeremy Waldron,“The Harm in Hate Speech”(Harvard University Press,2012)の訳であることからわかるとおり、今年１月のシャルリー・エブド襲撃事件については触れられていない。そこは訳者解説を引用したい。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

著者が、本章で、宗教的憎悪と宗教的不快感を与えることについて考察しているのは、2005年のデンマークで起きた漫画事件である。これは示唆に富んでいる。(p.148-171)

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

で、その前に、呟いておくべきことは、本書の書かれた目的についてである。本書の議論は、リベラル・デモクラシーにおいてヘイト・スピーチを規制することは可能かという問いに、肯定的な答えを出すものである。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

ヘイト・スピーチが個人の尊厳の毀損を意図し、結果として社会的安心の破壊という明確な危害をもたらすものである以上、それを規制することは、リベラル・デモクラシーの諸原理(言論の自由はその一つ)の観点から見て不可能なことではない、というのがウォルドロンの立場である。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

これが、リベラル・デモクラシーにおいては言論の規制はきわめて限定的でなければならないという合衆国の修正第一条の憲法理論の「正統派」に対する挑戦であることは明らかである。(訳者解説、p.289)

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

ちなみに、ヘイトスピーチ規制は、カナダ、ドイツ、デンマーク、ニュージーランド、イギリスで見られるような規制であり、市民的および政治的権利に関する国際規約(ICCPR)に含まれる要求条項のことである。合衆国では、修正第一条を盾にこの種の規制がなく、日本においては言わずもがなである。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

(Ibid.,160-3)　私(著者)は、イエス・キリストは神の子であり人類の救済者だと信じている。そしてもちろん、そのように信じる私の権利は何があろうと社会において保護されなければならない核心的な利益のひとつである。しかし私が(同じく交渉を寄せつけない精神で)この見解がけっして

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

反論されることも笑いものにされることもない社会環境を要求することには、説得力がありうるだろうか。もちろんありはしない。私のと同じくらい情熱的に信じられている他の多くの信仰上の主張が、イエスについてのこの信仰を否定している。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

しかし私には、こうした見解が私を不快にするからという根拠でそれらが抑制されるのを要求する権利はない。そのような権利を執行することは、宗教的に多元的な社会では不可能であろう。社会の中で承認されるさまざまな権利は、両立可能でなければならない。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

それらは一緒に尊重されることが可能でなければならない。けれども、個人の諸権利の両立可能性を確保しつつ不快感をもたらされずにすむことができるための唯一の方法は、公共の場所ではいかなる宗教的な言明、思考、考察も抑制することによってであろう。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

以上の議論は、宗教上の信仰をアイデンティティと結合させることによっても回避されえない。もし私が私の自己を私の信仰と同一化するなら、そのとき信仰への批判は私に対する攻撃のように見えるだろう。そしてその攻撃は、法律によってそれから保護される資格を私が持つようなものにものに他ならないと

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

私は言うかもしれない。ひとたび「私に対する攻撃」という言葉を私が持つ信仰に対するいかなる批判にでも当てはめるならば、そのとき私たちは人格に対する尊重という基本的な義務を、ありとあらゆる種類の公的表現や有意義な討論にとって邪魔になるような場所においてしまうのである。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

尊厳(dignity)とは、ある人が、しっかりした立場をもった社会の成員として、マイノリティ集団の成員であるからといって普通の社会的交流をする資格を奪われることのない何者かとみなされるための、人格のもつ基本的な権限という意味での尊厳である。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

さて、宗教的憎悪と、宗教的不快感をあたえることについてである。(Ibid.,140- )

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

合衆国は文書冒瀆罪というカテゴリーを１９世紀に廃止した。文書冒瀆罪は、キリスト教の信仰に対する攻撃として理解されていた。冒瀆を禁じる法律によって保護される宗教的信仰の唯一の体系はキリスト教の信仰であった。イスラム教およびユダヤ教の信仰はこのようなやり方では保護されていなかった。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

ある信仰の体系に対する攻撃と、ある集団の人々の基本的な社会的立場と評価に対する攻撃の間の、基本的な区別は明快である。デモクラティックな社会では、私たちは、一人の市民に与えられる尊敬と、彼または彼女の社会的、政治的確信に関して私たちがもちうる意見の相違とを区別している。

花びんに水をدعونا نملأ المزهرية بالماء☘️ @chokusenhikaeme

何百万という個々のキリスト教徒たちが、名誉棄損に対して保護される権利を持つ。その際、キリスト教徒としての名誉を棄損されることからの保護も含まれる。しかしこのことは、何らかの法王や聖人が、あるいは何らかの教義が保護されるべきであることを少しも意味しない。