抜粋)⑦『アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)第２版～マインドフルネスな変化のためのプロセスと実践～』星和書店 2014.9.9

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✄---------- ----------✄ 「受け容れる( giving in )」は、もはや「あきらめる( giving up )」を意味しなくなる。 (『ACT第２版』p.470 )

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ACTでは、一人一人のクライエントは、すでに、豊かで有意義な人生を送るために必要なものをすべて持っていると仮定している。しかし、ほとんどのクライエントでは、価値に沿う方向を見定めて進んでいく能力がフュージョンと体験の回避によって損なわれている。

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過去、感情、身体状態などについての思考は人生を高める行動を促進しない。そのような思考を字義どおりの意味(literality)、コントロール、理由づけの文脈から眺めるときには特にそうである。

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思考や感情によって、私たちは正反対の方向へに導かれ、不適切なプロセス・ゴール(例 : 特定の感情を排除する、特定の思考しか持たない)に注意を向けてしまう。

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一方、選択した価値によって、私たちははるかにしっかりと人生のコンパスを読むことができる。価値は、すさまじい個人的逆境に直面したときでも、行動を動機づける力を持っている。

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クライエントは苦しんでいる。しかし、価値を失ってはいないのだ。ひとたび価値が目覚めると、それは活き活きとした人生の力強い要素になりうる。

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このシンプルな考え方は、Victor Franklの「夜と霧」に例を見ることができる。Frnklは、第二次世界大戦の終戦が近い時期に捕らえられていたナチスの強制収容所から脱走する方法を発見したときのことを描写している。

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彼が当座しのぎの病院で最後の回診をしたときのことである。彼はなんとしても助けたいと思っていたが死期の近い一人の患者のところへやってくる。患者は彼を見上げてこう言った。「先生も逃げるのですか。」Fraklは、心がひどくかき乱されるのを感じたと描写する。

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彼は、脱走を一緒に計画した仲間のところへ行き、自分は残って患者たちをケアすると伝えた。そして、仕事に戻ってみると、これまでに体験したことのない穏やかさを感じた。 Frakl,V.(1992).Man's search for meaning(4th ed.).Boston.p68

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人類がこれまでに作り出した中で最も恐ろしい環境のひとつに在って、それでもFranklが意義と平穏の感覚を体験できたのなら、私たちも、どのような個人的歴史を抱えていようと豊かで有意義な人生を生きる力を持っている。

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「豊かで有意義」とは苦痛がないという意味ではない。物質主義文化の基準で、豊かで有意義と言っているのではない。クライエント自身の基準で、豊かで有意義という意味である。

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我々は、苦悩は人間の条件に普遍的なものだと考えている。誰もがやがて年老いて死ぬという苦しみを受ける現実の前で、いったい何が人生に尊厳を与えてくれるだろうか？

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「 X (抑うつ、飲酒など)をコントロールすることにこんなに労力を費やさずにすむとしたら、あなたは人生で何をしているでしょうか？」とクライエントに質問すると、「わかりません」という答えが返ってくることは臨床場面でめずらしくない。

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ACTの重要なゴールのひとつは、日々の苦悩を終わらせようと格闘するうちに見失ってしまった人生の方向性という感覚を、クライエントが構築するのを支援することである。

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どんなに小さな一歩でも、自分の価値を守り抜く方向への一歩であれば、うんざりするほど変化がなかった人生に新しい活力がもたらされることをクライエントは発見する。 (前掲書、-p.473)

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クライエントが人生の道を歩んでいると、感情的な障害物が否応なく現れ、人生が「あなたは私を引き受けますか？」と問いかけてくる。答えが「いいえ」なら、旅はそこで止まる。(前掲書、p.475)

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✄---------- 『ACT第２版』第12章「コミットされた行為」から、「スキーのメタファー」と「登山道のメタファー」を連ツイします----------✄ 前フリとして、福山庸司『死神交換イタシマス』(東京三世社)から、 pic.twitter.com/OYCUF67zjp

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『オレと魔法使い』の p.141,144,145,148,149,150,151,152,153,154,162,163,164 を引用しながら、呟いていきます。 pic.twitter.com/GfcJR7ekxc

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クライエントが行き詰まる理由の一つは、「幸せと人生の満足感を得る秘訣はゴールを達成することだ」と信じているからである。彼らは、幸せになるために欲しいものを手に入れようとする。しかし、この生き方は、機能的に欠乏の状態に結びついているため pic.twitter.com/5rjmZnyTrL

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ある意味、過酷である。ゴールを達成することで幸せになろうとすることは、重要なことが、常に失われていて、いつかたどり着くだろうという願望の中にしか存在しない世界を生きることである。 pic.twitter.com/t93DtA3DYf

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最も必要とするもの(すなわち、望むものを手に入れること)は、常に、決して存在しない。この欠乏感は動機や方向づけられた行為を生むかもしれないが、その一方であらゆる活力を押しつぶす。なるほど、ゴールと価値が混同されるのも無理はない。 pic.twitter.com/5jm5YjZwQJ

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プロセスのレベルでは、非柔軟性と「行き詰まり」は、フュージョン、回避、「今、この瞬間」のプロセスの機能不全、の結果として起きている。 pic.twitter.com/t1hF8QvztJ

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もしも「結果X=良い」なら、「結果Xがない=悪い」である。このような状態では、定義上、「今」は「Xがない」であるため、「今、この瞬間」それ自体が回避されることになる。 pic.twitter.com/7U6qQKE2D7

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しかし、皮肉にも、「今、この瞬間」との密接な接触こそが、現在進行形で進化する行動パターンというさらに深い意味でのXを生み出すのに必要なことなのかも知れない。 pic.twitter.com/o2TKuszckU

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このジレンマへの最善の回答は、ゴールを、変化のプロセスに従事するための手段として、そして、その人の努力を一貫した方向へ向けるための手段としてだけ用いることである。 pic.twitter.com/wtiOLphAKL

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このアプローチは、クライエントにとって好ましい結果を望まないという意味ではない。単に、結果、あるいは結果の不在が、クライエントの行動にそれほど硬直的なコントロールをおよぼさない、ということである。 pic.twitter.com/k03qUT68ys

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生きるプロセスそれ自体が最も関心のある結果となるとき、私たちはもはや、永遠の欠乏という言語的世界を生きてはいない。 pic.twitter.com/qUJXyLS2zn

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人生の目的が本当に「生きること」になるとき、私たちは人生の目的を、常に、【まさに今、まさにここに】持っている。　(前掲書、pp.520-1) pic.twitter.com/3qnSjdZaU3

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次に紹介する『#スキーのメタファー』は、プロセスに適切に注目するという活力が生まれる見方を、また別の形で表現している。 pic.twitter.com/d1gcrc8vi7

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スキーに行くとしましょう。あなたはリフトに乗って山頂まで行き、今からまさに斜面を滑り降りようとしています。その時、一人の男性が寄ってきて、どこへ行くのかと尋ねます。「ふもとのロッジまで行きます」とあなたは答えます。

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すると、男性は、「それなら手伝いますよ」と言うなり、突然あなたを捕まえて、ヘリコプターに放り込み、ロッジまで運び下ろして、姿を消します。あなたは呆然として辺りを見回し、もう一度リフトに乗って山頂まで行きます。

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そして、今度もまさに斜面を滑り降りようとしている時に、同じ男性があなたを捕まえて、ヘリコプターに放り込み、またもやロッジまで運び下ろします。かなり不愉快ですよね。おそらく、あなたはこう言うでしょう。「ちょっと！　私はスキーをしたいんだよ！」

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スキーは、ただ単にロッジに着くことではありません。ロッジに着くだけなら、それを達成する活動は無数にあります。それに対して、スキーはそこに至るまでのある特定のプロセスです。スキーではロッジに着くことが大事ですが、それは、そのおかげで私たちがプロセスをたどれるようになるからです。

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斜面を滑り降りるスキーでは、上方よりも下方に価値を置く必要があります。滑降用のスキーをつけて、下ではなく上に向かって滑ろうとしても、どうにもうまくいきません。このことを表現するパラドクスがあります。

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プロセスそのものがゴールとなる時、ゴールはプロセスである。 結果というゴールは必要ですが、本当に重要なのは、私たちがその旅に全面的に参加することなのです。

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現代社会では、多くの社会教育が「成功」という物質主義的基準をほとんど機械的にそのまま採用することで成り立っているので、ほとんどのクライエントはとても結果指向になり過ぎている。

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クライエントは、自分がどれほどうまくこなしているか、他者と比べてどれほど成功しているか、ということを常に監視している。彼らは、期待した結果がきっかり「予定通り」に達成されないと、活力を秘めた人生の第一歩から早々に引き揚げてしまうことが多い。

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行動とは、ある方向に向かう道のようなものであるが、それは、道に沿って一歩一歩、一瞬一瞬の進み具合を観察しなければならないという意味ではない。

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実際に、結果を観察する時にこの先入観があると、必ず活力は減ってしまう。自分が人生でどれくらい幸せかということを見続けていたら、私たちはとても不幸せになる。

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#登山の道メタファー を用いると、危険なのは、プロセスとしての価値づけとつながることではなく、具体的なゴールへの当面の進捗状況ばかりチェックし続けることなのだ、と理解できるようになる。

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それだけでなく、【人生の苦痛に満ちた局面やトラウマとなる局面でさえ、私たちがそこから何かを学ぶなら、ポジティブな全体の道筋に統合することができる】ということを、このメタファーは示している。

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山をハイキングしているとしましょう。登山の道が、特に斜面が急な場合、どのように作られているかはご存知ですよね。あちこちに蛇行します。たいていは、ジグザグの「切り返し」があって、登山者は文字通り、進んだり戻ったりします。 pic.twitter.com/mX6Mc35dwD

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時には、すでに達した高さよりも低い所へ戻りさえします。登山道のある地点で、「山頂に到達するというゴールをどれくらい達成できているかを評価してください」とあなたにお願いしたとしたら、私は毎回違った話を聞くことになるでしょう。

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切り返しモードにいるなら、おそらくあなたは、「うまく進んでいない」「山頂には決してたどり着けない」と言うでしょう。開けた地形が広がり、山頂とそこに至る登山道が見える位置にいれば、「とてもうまく進んでいる」と言うでしょう。

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さて、想像してください。私たちが谷をはさんで反対側から、この登山道を歩いている人を双眼鏡で眺めているとします。彼らの調子はどうかと尋ねられたら、私たちは、毎回ポジティブな経過報告をするでしょう。

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私たちは、ある瞬間に地上からどう見えるかではなく、登山道の全体的な方向が、前進するには重要なのだとわかるでしよう。この狂気じみた曲がりくねった登山道をたどることが、まさしく山頂にたどり着く方法だとわかるのです。　(前掲書、pp.522-4)

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✄---------- ケリー・G・ウィルソンが抗酒薬を服用することに関して、価値とコミットメントのアプローチを採用した事例について----------✄ (『ACT第２版』pp.537-9)

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C) 妻には、抗酒薬を毎日飲むことと、彼女がそれを見張っていてかまわないことを、伝えました。 T) そうすれば結婚生活のチャンスをもう一度与えてもいい、と彼女が言ったのですか？ C) はい。 T) それについてどう思いますか？ C) まあ、それしか彼女が留まる方法はないですから。

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T) なんだか、これを「しなければならない」ように感じますか？ C) そうしないと、彼女は去ります。 T) うーん、この状況は少し心配ですね。つまり、状況が進んでいく方向がいくつかあるということです。たとえば、毎朝あなたが朝食のテーブルにつくと、そこに彼女がいて、