"Dialogical Meetings in Social Networks" Jaakko Seikkula / Tom Erik Arnkil 2006 境界システム、ネットワーク・ミーティングを阻むものについて
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✄--------- 前掲書 第1部第1章の後半から ---------✄ 「境界システム」について。 これがどうなると、ネットワーク・ミーティングを阻むものになるか、については第2章で。

2017-01-02 18:00:07
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実際に各々のケースにおいて、家族はそこに居合わせており、その環境は治療システム全体に影響を与えるからだ。いくつかの袋小路に陥った治療状況の中で、チームは自分たちの変化が家族の変化を可能にするということに気づいた。

2017-01-02 18:10:23
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変化はまず治療者の側に生じる。当事者と家族に開かれたこの新しいシステムの中で、まずチームが自身の活動を再評価する。そうしてはじめて、家族が自分たち自身も変化しようとしてチームの再評価を役立てるような状況が生まれる。

2017-01-02 18:15:40
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当事者と家族に開かれたシステムにおいては、治療チームが家族の生活スタイルに合わせて動かなければならない。この洞察をもとに、病院と家族との間の境界に関するよりきめこまかな分析を行わねばならない。

2017-01-02 18:25:03
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家族と病院の間(そして、その治療プロセスにおける他の専門家たちの間)の境界で、ある相互作用的なシステムができあがっていた。それは、病棟のチームだけでコントロールしようとしてもしきれないシステムとなっていた。

2017-01-02 18:28:32
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こうしたことが病院の治療チームと家族のあいだの境界を越えたところに生じるという事実に照らして、このシステムは「境界システム」(Seikkula & Sutela, 1990)と名づけられた。最も重要な出来事が起こるのは病棟ではない。それは境界において生じるのだ。Id. at 27

2017-01-02 18:34:02
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患者をまじえた治療プロセスの中では、治療者の位置が根本的に変わる。オープン・アプローチに関するチームの経験は、治療プロセスはコントロールできないということ、治療者は患者と相互性をもちながら共に進むプロセスに合わせて行動しなければならない、ということを明らかにした。

2017-01-02 18:39:28
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これがオープン・アプローチを行ったチームの結論である。チームが自分たちの動き方を変えれば、変化が期待できるのである。これは、システム論的家族療法の原理に対する挑戦である。

2017-01-02 18:44:00
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ここでひとつの教訓が得られた。治療者はそれぞれの治療プロセスの中での自分の位置を熟考しなければならないということである。以前ならば、患者と家族の相互作用ばかりに注意を向けていたが、スタッフメンバーは今や自分たち自身の振る舞いを繰り返し熟考するようになっている。

2017-01-02 18:47:47
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患者の生活の中にあるいくつもの〈声〉がミーティングの中にあらわれたら、ひとりの参加者で相互作用全体をコントロールすることはできない。コントロールするのではなくて、共同で理解を深めていかねばならないのだ。

2017-01-02 18:51:34
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システムは境界を越えた相互作用から生まれる。ヤーコは自分のチームと家族との相互作用を分析し、このような共に作り出されるシステムを、境界システムと呼んだ。境界システムは両者が共に創り出すものである。

2017-01-02 18:56:50
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📌 彼の分析によれば、精神科治療チームがそこに参加しただけでは、家族との相互作用が治療的になることはなかった。チームが境界システムに構造や柔軟性、多面的な問題の分析をもちこんで初めて、相互作用が治療的になるのである。単に出会いさえすれば治療的になるということではないのだ。

2017-01-02 19:01:31
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家族どうしの互いの関係の有様が、治療チームの中の関係に映し出される。家族どうしが密着した状態でからまりあっていると、治療チームもまた、たいていは同じように絡まり合ってしまい、いつまでも際限なく議論をし続けることになる。

2017-01-02 19:05:44
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家族どうしが頑なに言い合っていると、チームもまた一人ひとりが考えを曲げず、頑なに自分勝手なやり方を繰り返す。こうした場合、チーム自身が柔軟性を増し、それぞれ振る舞いが変化することで、初めて全体の変化が生まれはじめる。

2017-01-02 19:10:16
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「境界システム」は、その相互作用に参加している人たちが共同で進展させていく活動システムとして定義することができる。こうした相互の展開は、共に進展していくこと…共進化(co-evolution)と呼べるだろう。

2017-01-02 19:13:37
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実際に参加している人たちだけがその活動の意味を決めることができる、ということが考え方の基本である。出来事のもつ意味は、外部からはコントロールできないのだ。Id. at 32

2017-01-02 19:16:04
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家族は、自分たちが抱える問題や自分たちの行動様式を境界システムの中にもちこむ。治療チームは治療の課題や自分たちの組織の有り様、その柔軟性、臨機応変さをもちこむ。チームがもっている一般的な専門知識はもはや重要ではない。肝心なのは、それぞれの状況に対応するチームの能力なのである。

2017-01-02 19:21:06
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📌 家族が普段から行っていて慣習化した相互作用の有様が境界システムを征服してしまえば、回復は生じないだろう。家族の行動様式に対してチームが柔軟性をもって対応し、組織化と臨機応変さがもたらされるのであれば、共に進展していくこと(共進化)を相互に学びながら回復していくだろう。

2017-01-02 19:25:18
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新たに生じた境界システムは、クライエントの危機的状況を打開する新たな視点を開く。こうしたことはひとつの観点からのみ…つまり細分化されてしまったそれぞれの観点からは見ることはできない。境界における相互作用によって、思ってもみなかった打開策が得られるのである。

2017-01-02 19:29:37
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📌境界システムの出現は、病院と家族の接触面にだけではなく、たとえば社会福祉事務所・学校・デイケアセンター・家族カウンセリングクリニック・物質依存のためのクリニック・メンタルヘルスクリニック等と家族との接触面にも見出せるだろう。(Arnkil, 1991a; 1992)

2017-01-02 19:34:05
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専門家とそこにかかわるチームが、実際に組織化され、柔軟で臨機応変であり、そのような自分たちの特性を境界システムにもちこむことができるかどうかということをトムは問題とした。

2017-01-02 19:37:21
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境界システムが家族のプライベート・ネットワークとそれを取り巻く異なる機関のあいだにあらわれたとしても、皆が集まり専門家が「そこにいさえ」すれば、組織化や柔軟さや臨機応変さが境界システムの中に生まれるというわけではない。

2017-01-02 19:40:00
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逆に硬直した官僚制度、担当者の交代、膨大な案件、迅速性、スタッフに1人で問題に対処することを強いるような組織文化の有り様では、組織化や柔軟性が生まれず、多面的な問題を臨機応変に話し合うことができない。そんなところでは、これらの良き特性は絶滅危惧種になる。

2017-01-02 19:43:26
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それゆえに問題をはらんだ相互作用のパターンのなりゆきは、家族が境界システムに入っていくだけではなく、専門家システムも境界システムに入るという意味で、二方向性あるいは多方向性である。Id. at 33

2017-01-02 19:46:18
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✄--------- 第2章 ネットワーク・ミーテイングを阻むもの ---------✄ ネットワーク・ミーティングでは違った立場の人々が相手にどう考え行動すべきかを押しつけようとして、対話的議論となるよりもモノローグ的議論になる傾向がある。その原因は以下のところにあるだろう。

2017-01-03 13:03:18
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✅メタ-コミュニケーション構造 ✅何が問題かを決めるやり方 ✅かかわり方の調整 ✅「同型パターン」が生じる過程

2017-01-03 13:08:17
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これこれの事態はこうだ、と決めつける立場にいる人たちは、自分たちはそれができる人物だと自分のことを見なしているものだ。自分たちの職務上の専門領域から問題となっている事態にかかわっている専門家たちが集まった時には、彼らは「事態そのもの」を巡って話し合うより先に、

2017-01-03 13:16:36
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誰が事態をはっきりさせるべきなのかということを巡って議論する。医師は医療システムの中に、多かれ少なかれ決められた位置を得ているだろう。だが、それらのシステムの狭間にできた空白地帯で彼らが出会ったとき、そこでの彼らの相互関係はどのようなものになるだろうか。

2017-01-03 13:21:31
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その時の関係は、その場で互いに交渉して決められることになる。アンセルム・ストラウス(Anselm Strauss,1978)は、社会的位階を争う過程を分析し、特に集団の間では積極的に互いを位置づけしあうことを明らかにした。

2017-01-03 13:29:49
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クライエントを巡る問題はいつも「相互の関係」の内部にあるだろうし、クライエントの問題を議論しているように見えて、実はクライエントではなく専門家相互の関係が議論されているのである。

2017-01-03 13:34:15
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問題となっている状況をはっきりさせようとして発言すれば、その人はいやおうなく、この参加者の中で「自分はどのような立場から状況を見ているのか」ということを相手に知らせようとすることになる。

2017-01-03 13:39:04
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それは明瞭に言葉にしてこうだと発言するのではなく、声に抑揚をつけたり、ジェスチャーや表情など暗黙の方法によって表現される。異なる立場の人々が、問題とお互いの立場について同意していると、議論はスムーズに進んでいく。

2017-01-03 13:43:47
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異なる立場の人たちが問題の見方について同意していなくとも、この状況をどう見るかという互いの立場を尊重しているならば、混乱はそれほど大きなものとはならないのだ。

2017-01-03 13:47:22
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逆に皆が互いに相手の問題の見方やその問題について、専門性の粗探しをしていたら困難な状況が生じる。声高に相手の言い分を評価してみたり、相手の能力をけなしてみたりするまでもない。議論にその人の見方を取り入れたり、排除したりすることによって、自然に互いの位置づけができあがるのである。

2017-01-03 13:52:02
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専門家は異なった構造のリソースを持っている。人間を介して、制度もまた相互作用する。直接関係している人たちの頭ごしに機関どうしが直接的に決定するものではない。クライエント・ミーティングでクライエントの問題が検討されているときには、参加している人々の社会的な関係もまた協議されている。

2017-01-03 13:57:37
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ジェンダーとそれに対する態度は、そこで交渉されている社会的関係の中でも重要なものである。社会的な関係を協議する時には、ジェンダー関係は常に切り離せなくなっている。ジェンダー関係は、心理社会的ネットワーク・ミーティングの議題にはめったにのぼらないが、それはいつも確実に考慮されている

2017-01-03 19:13:35
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専門家が出会った時の仕事は、考慮すべき問題をどう見たらいいのかを決めることであることが多い。一緒に働くための共通基盤を見つけるために、問題の一般的定義が探求される。しかし、定義されるべき共通の問題はないのである。

2017-01-03 19:21:05
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さまざまな立場の人々にとっての問題は、たとえ別々に生じていたとしても、それは結びつけられ絡み合っているのだが、究極的には参加者がそれぞれ自身の問題をもつことになる。時には偽りの明瞭さというものがでっちあげられる。

2017-01-03 19:23:57
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問題が専門家にとってのジレンマでは決してなく、一方的にクライエントの問題としてあらわれるような仕方で決められるような場合である。

2017-01-03 19:27:06
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医師や看護師、教師・ソーシャルワーカーがお互いに、あるいは家族…息子と母と父の状況に共通の問題が何であるのかを検討するために集まる時、それぞれの参加者が自分自身の問題をもっており、それは交換不可能であるということが忘れられてしまっているかもしれない。

2017-01-03 19:31:00
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家族との関係についての医師からの問題の見方は、教師から見た問題と同じではないし、専門家の誰もが、家族のメンバーと問題を同じくしていないのである。家族のメンバーにとっても、問題となっていることは厳密には同じではない。正確に言えば、「家族の問題」というものはありえないのである。

2017-01-03 19:35:11
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異なった基本的課題、アプローチのための異なった視点、異なった手のさしのべ方があり、それはそれぞれの家族のメンバーごとに異なり、それゆえに役立つ方法も異なっているのである。息子の問題は、母の問題とも父の問題とも同じではない。

2017-01-03 19:38:29
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相互作用しているそれぞれの人々の問題は互いに関係し、ある意味で互いがその原因となっていることさえあるが、それらは同じものではない。 📌 皆が共通の問題をもっているという見方への試みは、それぞれの立場によって見え方が違うという大事なことを見失わせてしまう。

2017-01-03 19:44:07
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もっと言えば、それぞれの人には自分だけの視界が開けているのだ。社会関係においては、誰も厳密には同じ立場を共有していないからである。

2017-01-03 19:46:32
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はっきりと診断できる疾病のケースがあったとしても、そこで起こる問題はさまざまな立場の人々にとって異なっている。共通の問題を定義しようとすると、そこから全ての人たちにとって状況が同じように見えてくるような唯一の点を必要とすることになる。

2017-01-03 19:50:09
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しかし、対話に参加している者と同じ数だけ多くの観点と見方があるわけで、あるひとりの人の見方が皆と同じで皆が受け入れることができる見方があると断言できる者は誰ひとりいないのではないだろうか? Id. at 42

2017-01-03 19:54:23
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観点は、物事を見るある一点を必要とする。ピエール・ブルデュー(Bourdieu,1998)は、人びとは社会の中でそれぞれひとつの点を占めていると書いている。その点とは、まなざしがそこからはじまる点である。

2017-01-03 19:58:32
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つまり、その人にとって開かれた観点であり、その観点の形式と内容は、その人が占めている客観的位置によって規定される。社会空間における点や、そこから開かれる観点は、自発的なものではない。各主体はその主観的観点をもっており、それは恣意的に選択されうるものではない。観点は交換不可能である

2017-01-03 20:02:49
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しかし、各々の人は、他者の位置からはどのような観点が開かれるのかを学ぶことによって、自分の見方を多様化させるのである。他者の異なった観点は、自分のものの見方そのものについて、より多く学ぶ可能性を与えるような対比や、観察されうる差異をもたらすのである。

2017-01-03 20:06:52