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ルーフェ @rufe_mitras

「…ちげぇよ」 「違うなら、何が欲しい?」 「…俺は。俺は…」 「言ってみろ、出せるかもしれんな?」 「…力が欲しい、道具じゃねぇ…全てをねじ伏せる力をこの体に」 「そうだな、力を得る方法は色々あるが。何故に?」 「...俺がもう何も奪われないように」

2022-01-27 20:45:47
ルーフェ @rufe_mitras

「親も、金も、場所も、服も、食い物も…全部殺されたり、奪われてきた」 「奪われないための力が欲しい」 「そうか。復讐ではなく拒絶の力が欲しい、か」 「ねじ伏せる力、もちろん与えるのは可能だが。しかしお前の今の力では渡せんな」 「…」 「まぁそう不貞腐れた顔をするな…」

2022-01-27 20:45:47
ルーフェ @rufe_mitras

「お前が成し遂げられる男なら、力を与える」 「条件は、悪しき者を如何なる手段を用いてでも捕まえ、然るべき機関へ引き渡す事だ。ただし殺してはならん」 「お前が名を挙げる事こそが、力の証明となる。やるか?」 「…やる」 「待っているぞ、少年。いつかお前が目の前に現れることを願ってな」

2022-01-27 20:45:48
ルーフェ @rufe_mitras

それから少年は、早速ルナリアが捕らえた暴漢を詰所にぶち込んだところ、功績が認められて兵士となった。 兵士になって数年間ひたすら巡回しては、悪人を見つけ出し、縛り上げ、収監してを繰り返した。 そして、隊長を任せられ、部下は増えて、異名がついたりしても変わらず悪人は容赦なく捕まえた。

2022-01-27 20:45:48
ルーフェ @rufe_mitras

「…東地区…5件…」 「隊長!お疲れ様です!」 「…あぁ」 「隊長ってやっぱり無愛想ですよね」 「…悪いな、無愛想で…」 「…そうだ、隊長!一緒に巡回しましょう!」 「…あぁ」 「もう、ノリ悪いですね!」 「巡回にノリは必要ない」 「…そうですけど!」 「…行くぞ」 「あ!待ってください!」

2022-01-27 20:45:48
ルーフェ @rufe_mitras

かつて少年だった男は、自身の部下の女性をうざったいと感じていたが、それと同時に薄っすら口角が上がるのも自覚していた。 この感覚は今までにない感覚だった。 この感覚を知りたいと思うようになった。

2022-01-27 20:45:49
ルーフェ @rufe_mitras

彼女が、殺人鬼に捕らえられた時のことだ。 殺人鬼の腕の中に彼女がいた。 その時、無我夢中で殺人鬼を追いかけた。 彼女が殺されそうになったところを助けた時に、この感覚の正体を自覚した。 そして、初めて彼は自分からこの感覚を守りたいと思った。

2022-01-27 20:45:49
ルーフェ @rufe_mitras

当たり前の日常が実を結ぶ。 その年の神議節に、男が数多の悪人逮捕の功績を称えられ、七大神に謁見する機会が与えられた。 男は、正直七大神に粉微塵も興味がなく辞退しようとしたが、周り…特に部下の女性の熱心な勧めで辞退を撤回し、謁見に臨むことになった。

2022-01-27 20:45:49
ルーフェ @rufe_mitras

男が神々が列席する部屋に入る。 「お待ちしておりました」 真正面から声がかけられる。 「私は女神ライリア、貴方が件の男性のようですね?」 「…恐らくは」 「女神ルナリアよ、彼は貴方が話していた通りの男ですね?」 「そうだ。久しぶりだな少年」 「…!…どういう」

2022-01-27 20:45:50
ルーフェ @rufe_mitras

男は目を見開いた、まさしく数年前に男の傷を癒した女性の声だからだ。 「まさか忘れた、などと抜かすなよ。お前が力が欲しいと聞いたから、試練を与えたまでだ」 「…あれは試練、だったんですか…」 「直接言わなかったのは、詫びなければな。しかしお前は認められ、私の目の前まで来たわけだ」

2022-01-27 20:45:50
ルーフェ @rufe_mitras

「無事に試練を突破した者には、褒美を与えるのが神々の決まりだ。というわけでだ」 「汝、何を望む?」 「…お…私は、全てをねじ伏せる力…ではなく、守ろうと思ったものを守る力が欲しいです」 「ほう。願いを変えてきたか、だがここで聞けて良かった」 「喜べ、汝の願いは叶う」

2022-01-27 20:45:50
ルーフェ @rufe_mitras

神々の部屋から出てきた男は、剣と盾を持っていた。 部屋から出てきたのを見た野次馬が、男に下賜された武器のことや、神々のことや、男自身のことを聞いたが、男は何も語らず自宅へと帰っていったという。 その後も変わらず、部下を引き連れて犯罪者を捕らえ続けた。

2022-01-27 20:45:51
ルーフェ @rufe_mitras

男は、大衆から見て何も変わらなかった。 いや、いくつか変わったことがある。 一つは、彼がルナリア信者になったこと。 一つは、彼の薬指に指輪が嵌っている事。 一つは、彼がどんなに重い怪我を負っても、次の日には傷1つなく立っている事だ。

2022-01-27 20:45:51
ルーフェ @rufe_mitras

(【抜け殻の抜け殻による抜け殻のための革命】 熾火と革新、魔術の女神イグリア、革新の職責より反乱の兆しを察する。 イグリア、眷属に命を下し反逆者の素性を全て調べ上げる。 イグリア、王国の状況と反逆者の決起事由から、革命に与するに値しないと判断する。 イグリア、反逆者を全て処分する。)

2022-02-08 20:42:58
ルーフェ @rufe_mitras

イグリアが、微かに香る反逆の香りに確信を抱いたのは去年の神議節中のことだった。 イグリアが神議でこう言い放つ。 「ミレニアムの玉座が狙われていると聞いた、もし本当なら…面白いことになるやもしれんな…?」 他の神々は知らないと言い放つ中、ライリアとアスリアは考えるそぶりをした。

2022-02-08 21:34:21
ルーフェ @rufe_mitras

「…2~3日前に賭博場で、怪しい女性を見た神官が居たと思う」 イグリアは口角を薄っすら上げてこう言う。 「なら…その賭博場で交流があるかもな…アスリア、そこで情報収集を頼めないだろうか」 「うんうん、わかったよ~」 「私とアスリアが協力して、反逆者の情報を洗いざらい調べ上げる」

2022-02-08 21:34:21
ルーフェ @rufe_mitras

「イグリア、反逆者の処断…与するか殺すかは私たちに報告をお願いします」 「心得ている、報告するときに意見を聞く予定だった。調査を暗黒節までに終わらせるから待っていてくれ」 「分かりました。情報、待っていますね」 「…頑張って…ね…うん…」

2022-02-08 21:34:21
ルーフェ @rufe_mitras

「報告するときに、与するなり殺すなり決めようじゃないか…イデアルに聞かせてやるのが楽しみだ…」 神議節はこの後も続いたが、その合間にイグリアとアスリアが手を回せば、王国に紛れる汚らしい闇はいとも簡単に浮かび上がる。 今回の、ニンゲンの策にできた綻びは大きいようだ。

2022-02-08 21:34:22
ルーフェ @rufe_mitras

1人の女が椅子にきつく縛り付けられていた。 部屋には、研究器具や報告書など雑多なもの物が瓦礫のように積み上がっている。 女は目を覚ますと見知らぬ風景にひどく驚き、夢中で目を回し、もがいた。 だが瓦礫でろくに場所も分からず、縛り上げられている所為で全く動けないようだ。

2022-02-09 12:35:36
ルーフェ @rufe_mitras

「だれか!いるのか!?」 夢中で叫んでもだれも応えないかと思えば、紙を踏み潰し歩いてくるような音が聞こえる。 敵地のようなものだ、直前の記憶が曖昧な以上ここが何処かも分からない... 「反逆者がお目覚めのようだな…」 何処かで聞いたような声の主人を見て驚くのは無理もない。

2022-02-09 12:35:36
ルーフェ @rufe_mitras

ミレニアムに影響力を持つ3柱が1、イグリアが目の前にいる。 改革の女神が故に、反逆者の信仰対象が目の前に現れれば動揺もする。 ここは聖域である事も理解した。 「イ、イグリア様、わ、私は」 「良い…不要だ...そちらの事は全て知っている」 「失礼を承知でお聞きします、何故私は拘束されて…」

2022-02-09 12:35:37
ルーフェ @rufe_mitras

「殺す為だ」 「!??!???!!」 愕然とした、てっきりいつか助けてくれると思っていた筈の相手に、裏切られたような、見捨てられたような、気持ちになったからだ。 「ミレニアムに浄化は、革命による浄化は不要なり...という事だ」

2022-02-09 12:35:37
ルーフェ @rufe_mitras

「革新の女神の名において、汝...不要な混乱をもたらすニンゲンと判断する」 「何故ですか!私はただ...」 「戦争を無くしたいのだろう?」 「!分かっているならなぜ...」 「では、なぜそれが国家転覆に繋がるのかね…?」 「戦争がない世界...思想は素晴らしいな」

2022-02-09 13:28:57
ルーフェ @rufe_mitras

「だが方法が不味いな。上層部を全て粛清し、半ば軍のクーデター同然で政権を握る...これはもはや虐殺だな...」 「じゃあどうすればよかったのよ!?」 「色々方法はあっただろうに...名誉貴族から参政権を得る事だって不可能ではなかった」

2022-02-09 13:28:58
ルーフェ @rufe_mitras

「そんな事じゃ遅いのよ!?」 「はは…お前の本当の目的は宗教弾圧だな」 「…」 「ふ、ダンマリか。クーデターは途中に過ぎない、本当は私たちの力を削ぐのが目的だったわけだ」 「…だから言ったんだ、全て知っていると。敵対するニンゲン共の組織の尻尾が見えたのは感謝したいね」

2022-02-09 13:28:58
ルーフェ @rufe_mitras

「これ以上は何も言わない」 「言わなくても結構、全て君自身が洗いざらい喋ってくれた…」 「...それってどういう...」 その時大きな瓶を両手に抱えた人が入ってきた。 「イデアル、来たか」 「...あぁ、苦労したぞ...」 瓶の中に、脳髄と眼球が2つと多数の赤い糸が垂れた物体があった。

2022-02-09 13:28:58
ルーフェ @rufe_mitras

女は背筋がゾッとする感覚と共に口の中に酸っぱい物を覚えた。 「うっ...」 「こういうのは初めてか…?ふふ、これはな…“お前”だよ」 女の脳内は理解を拒否した。 女は確かに生まれてからここにくるまで頭をくり抜かれた経験などない。 そんな事されたら死んでしまうのは分かっている。

2022-02-09 13:28:58
ルーフェ @rufe_mitras

では何故この神はこの脳と目を私であると言ったのか。 「そうだ、今のお前の脳と目は複製品だ」 「…人間の複製も出来るなら、ニンゲンの複製など容易だとも...」 「お前は2人いるんだ。お前は今から反逆者として処刑に怯える日々を送る…」 「そして瓶詰めのお前は、自分が作った組織の終わりを見る」

2022-02-09 13:28:59
ルーフェ @rufe_mitras

「あああああああああああああああああ!!!!!!?????!あっがあああっがああっはあああがああはじゃははっっは!!!!」 「壊れてしまったな...イデアル」 「...元に戻し...見物と行こうか...」 「元より人間としての運用をしていないからな、ニンゲンは...」 「…心苦しいではあるがね...」

2022-02-09 13:28:59
ルーフェ @rufe_mitras

数日後、ミレニアムで40人程度の公開処刑が行われる。 大多数は反逆罪で逮捕、即日処刑と相なった。 主犯格の女が首を斬られる瞬間を、瓶の中の脳が目撃する。 そのあと、瓶の中の脳は溶け始め、眼は白く濁り始めたが、素材として未だに保管されている。

2022-02-09 13:28:59
ルーフェ @rufe_mitras

(【大海と大地の旧き盟約】 サドネスバッシュ領よりも程遠い海の底にある、この都市は全ての人魚族のルーツたる都市。 大昔、アーリアがニンゲンに課した人魚族への盟約により、人魚族及びこの都市への不可侵が約束されています。 この旧き盟約を破ってしまった時…その者はどうなるのでしょうか?)

2022-02-11 01:11:32
ルーフェ @rufe_mitras

ミレニアムよりも大昔の歴史書にはこう書かれているとされています。 「大神との旧き盟約、大地と大海との契り忘れる事勿れ」 人魚族が次々と命を落とす状況に、女神アーリアが怒り狂い大津波を発生させかけた所に、女神アスリアが何とか説得してニンゲンに約束をさせたそうです

2022-02-11 13:25:51
ルーフェ @rufe_mitras

1つ、ニンゲンは人魚族に対して、人魚族はニンゲンに対して過度な干渉を禁じる 2つ、ニンゲンは人魚族の都市、人魚族はニンゲンの都市への侵攻と占領を禁じる 3つ、人魚はニンゲンを、ニンゲンは人魚を殺害、拷問、拘束するのを禁じる。5つめの盟約はこの盟約の対象外である。

2022-02-11 13:25:52
ルーフェ @rufe_mitras

4つ、求められれば人魚族はニンゲンへ海の情報を与え、その際嘘をついてはならない。 5つ、求められればニンゲンは人魚族の盟約に反した行動を取った者を、人魚族の都市へ送らなければならない。 6つ、重い違反は女神アーリアの名において審判され、場合によっては世界が大海に沈むか、大海が干上がる

2022-02-11 13:25:52
ルーフェ @rufe_mitras

この盟約をもって、大津波の脅威を退けたアスリアは人々から感謝され、アーリアは潮を鎮めながら人魚族を引き連れ元の場所へ帰っていきました。 これ以降この盟約は守られたり、ニンゲンに反故にされたりする度にアーリアが出向いて裁きを与えたりしていたそうです。

2022-02-11 21:52:45
ルーフェ @rufe_mitras

これもまた大昔のことですが、アーリアが勢いで魔王を… 「…神託で…何してるの…?」 えっと… 「…え、ライリア、それは…!」 ちょ!ちょっと待って!あ!!!取られた! 「…恥ずかしいやつだから…聞かせたらだめです…」 これを恥ずかしいやつって言えるのも…どうかと思うよ…

2022-02-11 21:52:46
ルーフェ @rufe_mitras

この神託を聞いていた神官は、なんかアーリア様が入ってきたな…とか、アーリア様の武勇伝をライリア様が読み聞かせてくれるウッヒョイ!と思っていたそうな。 ともかく、アーリアの逆鱗に触れて、大昔にサドネスバッシュの前身の国が滅んだのは事実である。 うっかりアーリアが魔王を叩き潰したのもだ

2022-02-11 21:52:46
ルーフェ @rufe_mitras

事の初めは、サドネスバッシュの前身の国のうち1つ…モータルコーストが人魚族を片っ端から捕え始めたことだろう。 モータルコーストは海の近くの国であったがために、水に比較的長けている種族で構成されていた。 ただ、海にもっとも長けている人魚族という種族が羨ましくてしょうがない国だった。

2022-02-11 22:12:42
ルーフェ @rufe_mitras

モータルコーストは、人魚族だけ神の庇護を受けているというコンプレックスから何度も人魚族にちょっかいをかけては、アーリアに海の藻屑にされるのを何回も繰り返していた。 そんな中、モータルコーストは遂に魔族議会の議席大多数を取り、モータルコーストの指導者は魔王となった。

2022-02-11 22:12:42
ルーフェ @rufe_mitras

モータルコーストは相も変わらず人魚族に手を出しては、返り討ちにされていたがそれ以外の手腕は問題なかったので、いつものことだろうと議会からはさして文句は言われず、着々と軍備を整えニンゲンを滅ぼさんと動いていた。 モータルコーストは万全を期すために、海の支配権を取りたがった。

2022-02-11 22:12:43
ルーフェ @rufe_mitras

モータルコーストの魔王は、議会にこう言い放った。 「我は、陸より我ら魔族の力で、ニンゲンの国を破壊する。 我は、空より遍く照らす眼で、ニンゲンを探し出す。 我は、海より大いなる戦艦で、ニンゲンを打ち滅ぼす」 「我に必要なのは戦艦、そして人魚族である。 今より人魚族を魔王の奴隷とする」

2022-02-11 22:33:16
ルーフェ @rufe_mitras

流石に議会はモータルコーストの企みに気づいて、アーリアとの盟約を理由に魔王を止めようとしたが、既に議会は機能不全に貶められていた。 そして、遂に議会支配下地域の人魚族を一人残さず捕えて奴隷徴兵し、海の軍隊を作り上げた。 人魚族は一人一人奴隷紋をつけられ、強制的に戦艦まで作らされた。

2022-02-11 22:33:16
ルーフェ @rufe_mitras

今まで狼藉を働いてきたモータルコーストの命を奪うでもなく、傷1つなく(失神はしていたが)海岸に帰すほどの優しい女神アーリア。 そのアーリアであってさえも、この仕打ちに対しては、静謐で温かな聖域が瞬く間に沸騰し、全ての巫女たちが回復に1年を要するほどの火傷を負うほどの怒りだったという。

2022-02-11 22:33:17
ルーフェ @rufe_mitras

沸騰した海水が神域から溢れ出していることに気づいた、神殿を守る人魚族や参拝客の人魚族は、茹蛸のようにそして憤怒と憎悪と殺意に満ちたアーリアを見た瞬間、震えあがった挙句とんでもなく怒り狂った姿に卒倒し、何とか意識を保った人魚族は一体これから何が起こるのか戦々恐々としたそうだ。

2022-02-11 22:59:49
ルーフェ @rufe_mitras

ここまでなら、何とかモータルコーストという国が消えることで怒りが収まりそうだったが、ここで致命的な事をしでかす。 更なる戦力を求め、人魚族の集落に侵攻を始めたのだ。 男は奴隷紋をつけられ、海軍の兵士となった。子供は戦艦の建造に送られた。女に関する記述は残っていないが凄惨であった。

2022-02-11 22:59:50
ルーフェ @rufe_mitras

それを目にしたアーリアは更に怒り狂った。 もう他の七大神が全員で止めようとしても、仮に破壊神が止めても止まらないであろう程、怒り狂っていた。 遂に怒りが大海にまで波及し、海全体が温泉の如く熱を持ってしまいフォアデム全ての海産物が死滅した。 人魚族は暑さに耐えきれず寝込む者もいた。

2022-02-11 22:59:50
ルーフェ @rufe_mitras

モータルコーストは、暑さにやられて動けなくなった奴隷人魚族を見殺しにしてしまった。 流石のモータルコースト内部でもこの仕打ちはやり過ぎだ、と言い放つ者もいたが、その者が熱い海水に沈められると誰も逆らう者はいなくなった。 そしてモータルコースト最後の日は訪れた。

2022-02-11 22:59:50
ルーフェ @rufe_mitras

モータルコーストの沿岸にある灯台が異常を検知した。 海がせりあがった…と。 モータルコーストの魔王は一笑に付した。 「女神アーリアの盟約など怖くもない、ただ海がぬるくなっただけよな」 魔王はいつの間にか傲慢になっていた。 凄まじい戦力を従えた海軍の力に溺れていたのだ。

2022-02-11 23:19:16
ルーフェ @rufe_mitras

深き水底の海淵より現れるもの。 街一つ分の大きさの瞳が、せりあがった海の殻を割ったのを見た時には、魔王も目を見開いたが、図体がでかいだけの的だと思った彼は軍艦で打ち抜けと命を下した。 その指示通りに巨大な瞳に向かって攻撃を放ったが、一切効いていないのか音沙汰もない。

2022-02-11 23:19:17
ルーフェ @rufe_mitras

魔王も額から一筋の汗が流れた。 それならと、魔王は全艦に攻撃指示を出し砲撃させたが、海から伸びる触手の一撃で300隻の艦隊が沈んだ。 大きな瞳が瞬くように輝いた瞬間、400隻の艦隊と周りの海が凍り付いた。 大きな瞳が海から浮かび上がる、どんどんと高くなるほど周りの気温が下がり始める。

2022-02-11 23:19:17