陰陽寮が残っている現代で、記憶あり力ありの状態で転生し、当主として仕事してる晴(7歳)が、インチキ占い師としてアングラ系で働いていた記憶なしだった道(25歳)を拾って側におく話。 道による晴健やか子育て話。完結しました。
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泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

しぶしぶベッドに上がり、横になる。こんなに早く眠れるだろうか。仕方ない。道が出ていったら執務室に戻ろう。はあ、とため息をつけば道が枕元に椅子を持ってきて腰かけた。 「……道?」 「寝るまで側にいまする。出て行ったあとで仕事しかねませんゆえ」 「そ、んなことないです……」 ぎくり。

2021-06-06 19:36:39
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

目が泳ぐ晴を、道はじっとりと見つめて、はあとため息をついた。大きな手でぽんぽんと、優しくリズミカルに布団の上から胸を叩かれる。とろんと瞼がおりてきた。 「明日の朝、起こしに参りますからね」 「うん……」 「おやすみなさい」 「う、ん……おやすみ……」 瞼が完全におりた。

2021-06-06 19:44:30
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「おはようございます晴殿!!朝でございますれば!!」 「…………おまえ、まだ6時半……」 ベッドサイドの時計を見て、晴はばったりと倒れふした。確かに昨日はいつもより早く寝たけれど、いつもより早く起こされては意味がないのでは?再度寝直そうとすれば、べりっと布団をはぎ取られた。

2021-06-06 23:31:49
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「朝ですぞ!さあさあ、起きなされ!早起きは三文の得にございまする!!」 「……おまえ、ほんとうに朝からげんきですね……」 道の大きな声のせいで、二度寝する欲も飛んでしまった。もそもそとベッドから下りれば、ぱぱっとパジャマをはぎ取られそうになって、慌てて裾を掴む手を止めた。

2021-06-06 23:35:50
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「早よう着替えませんと」 「自分でできます。おまえ、私には前世の記憶があると、ちゃんとわかってます?大の大人が、着替えを手伝うとかないんですよ」 「ンンン?生前は式神に着替えを手伝わせてたではないですか」 「前世ではね」 「それに今世は、まだあなた様は子供にございまする」

2021-06-06 23:39:05
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「体は確かに子供ですが、精神的には大人ですし、何より今年で7つなら十分ひとりで着替えられます!」 だから手を離しなさい!と必死に裾をまくろうとする手を止める。道もその言葉に少しだけ考え込んで、それもそうかと頷いた。 「確かにこの世の7歳ならば、ひとりで着替えられますな」

2021-06-06 23:41:40
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

ようやく離された手に晴は深くため息をついた。着替えると道は手を差し出してきたので、晴はこてりと首を傾げた。 「さあ、早よう。大広間にて準備は整っておりますれば」 「え、準備?何の?」 朝に予定はないはずである。晴が困惑していると、道はにこりと笑った。 「ラジオ体操でございます!」

2021-06-06 23:46:51
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「おはようございます、晴様」 「……うん、おはよう。これは、どういうことです?」 困惑する晴をよそに、道に引っ張られる形で大広間にやってくれば、じいやだけでなく、護衛の数人と料理人、ハウスキーパーが均等に並んでいた。一体何の集まりか。困惑が深まる晴の首に、道が何かをかける。

2021-06-06 23:53:14
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「…………道、これは?」 「ラジオ体操カードですぞ。体操が終わったら、じいや殿がこの日付のところにスタンプを押してくれまする」 「すたんぷ……」 よくよく見れば、自分だけではない。料理人もハウスキーパーも護衛も、同じものを首からさげていた。 「……道、ラジオ体操とは何だい?」

2021-06-06 23:55:26
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「説明は後で。さあ、始まりますゆえ、晴殿はじいや殿を見ながらやるといいでしょう!」 「え、何、どういう……」 ラジオから男性の声がして、それから歌が流れ始める。混乱している晴をよそになれた様子で皆歌いだし、そして『腕を前から上にあげて』と体操が始まった。

2021-06-06 23:58:41
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「終わった……」 ぐったりと座り込む晴とは反対に、道は清々しそうですらある。恨みがましく見つめていると、何を思ったかそのまま抱き上げられた。 「晴殿はこれから筋肉を育てていかねばならぬのに、大人とほぼ一緒の生活をしているため、体力が足りぬのです。よい運動になったでしょう?」

2021-06-07 00:13:34
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

抱き上げられたまま、他の使用人たちにスタンプを押しているじいやの元に向かう。 「晴殿、拙僧の分も押してもらってくだされ」 「あ、はい」 道の首からラジオ体操カードをとる。自分の分も含めてじいやに差し出せば、じいやはにこにこと笑いながらスタンプを押してくれた。

2021-06-07 00:15:28
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「護衛の方たちは、交代で不寝番がありまするゆえ、不定期参加でございますが、月の半分以上参加したら参加賞がいただけますぞ」 「参加賞って?」 「う○い棒やらフーセンガムやら駄菓子がたくさん入った詰め合わせです」 「……大人がそれを貰って、嬉しいんですか?」 思わず口に出てしまった。

2021-06-07 00:18:11
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

さすがに水をさしたかと思い、口を噤んだ。だが、道は嬉しそうに目を細めて、美しく微笑んだ。 「ええ、とても。子供の頃に戻ったようでとても嬉しいです」 だから。 「だから、晴殿にも子供の時に経験してほしいことがたくさんあるのですよ」 きっとそれは大人になった時、優しい思い出になるから。

2021-06-07 00:21:10
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

それから、道は21時には就寝を促し、6時半には起こすようになった。最初こそラジオ体操だけで体力が底をつき、道に抱き上げられた状態でスタンプを貰っていたが、数日で自分の足でスタンプ待ちの列に並べるようになった。 自分が当主業務を行うことについて、道は口を出さない。

2021-06-07 00:30:39
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

時折、陰陽道の勉強も兼ねて道に問題として出すこともあったが、それ以外は特に口出しはしてこない。だが、1時間たてば休憩を促し、昼御飯だけでなく、10時と15時はおやつ休憩と言って、どんなに立て込んでいても甘い物をとるよう促された。 ただ仕事を持ってくる人間は、道に対して嫌な顔をしていた。

2021-06-07 00:39:43
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

祖父と父が、私に珍しく面会を求めてきたのは、おそらく道のことが耳に入ったからであろう。 じいやから聞かされた面会希望の欄にある祖父と父の名前に、晴はあからさまにため息をついた。 「……1ヶ月後の午後4時。早く着ても遅く着ても、その時間帯以外は面会しないと言って下さい」

2021-06-07 00:44:14
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「晴様、先代とお父様がお見えになられましたので、和室の方にご案内しています」 「……16時にならないと会わないと言っていたはずですが」 道が切り分けたバナナケーキから目を離さずに言えば、じいやも呆れたようにため息をついた。今の時刻は15時。道が設けたおやつタイムである。

2021-06-07 22:46:50
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

バナナケーキはこの安倍家の料理人のお手製である。料理人が子供の体である晴を慮って作った、栄養のあるケーキだ。道はじいやの言葉が聞こえている二も関わらず、にこにことケーキを食べている。今までなら時間前でも仕事だからと会いに行っただろう。だが。 「待たせておきましょう」

2021-06-07 22:51:30
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

そう言ってケーキを口に運べば、じいやもにっこりと笑った。 「……珈琲が飲みたくなりますね」 「牛乳をたっぷり入れてよろしければ、ご用意いたしまするぞ?」 「…………ぶらっく」 「カフェインのとりすぎになりまするゆえ、コーヒー牛乳で我慢なされ」 ほぼ牛乳の味の珈琲を飲んだ、

2021-06-07 22:54:45
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

おやつタイムを終えて、服を白い狩衣へと着替える。烏帽子を被れば、いよいよ平安の世に戻ったみたいだ。 「さて、参りましょうか」 道に抱きかかえられる。自分で歩けますと言いたいが、何分裾が長く、転ばないように歩けるかどうか自信がない。大人しく腕の中にいれば、道はにこりと笑った。

2021-06-07 23:01:46
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

肝心の道は平安の頃よりは大人しいが、それでも十分派手な袈裟を纏っていた。 「……おまえ、僧侶の服なんて持ってたんですか」 「ンンンン、ええ、まあ。占い師をやっていた頃に誂えまして。僧侶の服を着ていると、結構評判がようございましたので」 んふふと笑う道に肩をすくめた。

2021-06-07 23:08:15
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

道が割とあくどいことをしていたのは、視たあとに調べさせたから知っているが、まさか僧侶のふりをしていたとは。 待たせた和室に向かう途中で、道はにやりと笑った。 「……お師様、この道。不肖の弟子でございますが、陰陽師として成長した姿をご覧いれましょうぞ」 そう言って九字をきった。

2021-06-07 23:13:24
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

和室のある区間は普段寝起きしている洋館とは離れており、完全に来訪者と応対する区間になっている。執務室のその区間にあり、晴は仕事に向かう際は必ずその区間に向かっていた。 そう、以前ならば祖父と父は寝起きしている洋館の方の応接室に通していた。身内ということもあるが、

2021-06-07 23:22:13
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

今までは当主としての決裁をあおぐとき、祖父も父も晴が寝ていようと何だろうとやってきていたのだ。そして晴もそれを赦していた。晴にとって祖父も父も陰陽頭として十分な働きをしていたとしても、守るべき弱き人間だったから。

2021-06-07 23:29:59
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

道と自分が祖父と父が待つ和室に入っても、2人は足を崩して忌々しそうに眉をひそめ口汚く道について罵りあっていた。どこの誰かもわからぬ人間をだの、占い師風情がどうやってだの。聞くに耐えない罵詈雑言だ。道に聞かせてしまったことを謝りたくて顔を上げれば、道はしーっと人差し指を唇にあてた。

2021-06-07 23:42:24
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

道は自分を2人の前、一段上になった上座に下ろし、道自身は祖父と父の隣に並んだ。明らかに2人の反応を楽しむつもりである。ひくりと頬をひきつらせると、道はにやにやと笑う口元も袖で隠した。 ぐちぐちと雑言を続ける祖父と父に対してため息をついて、そして時計が16時をさした。 「飽きないね」

2021-06-07 23:48:06
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

いきなり目の前に現れた私に祖父と父は驚いて後退りする。呆れたように眺めていれば、2人とも慌てて姿勢を正し頭を下げた。 「晴様、お忙しい中お時間を割いていただき誠にありがとうございます」 「早く着ても16時にしか会わないと言ってませんでしたか?」 じとりと睨みつければ、祖父の声が上擦った

2021-06-07 23:56:14
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

祖父の隣で、道がにやにやと笑っている。まだ自分にかけた術は解いていないらしい。しかし、道がかけた術はそこまで難しくはない簡単なものであるはずなのだが、祖父と父はそれすらも見破れないでいるようだ。はあ、とため息をつけば父が声を荒げた。 「晴様、お聞きしたいことがございます」

2021-06-08 00:02:16
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「はあ、最近弟子をとったことですか?」 興味なさげに晴が言えば、父は驚いたように顔をあげて、そしてわなわなと唇を震わせて慌てて謝罪して頭を下げなおした。別に、平安の世の高貴な姫君でもあるまいに。頭をあげた程度で怒りはしないのに、なぜか祖父も父も頑なにそういう態度をとる。

2021-06-08 02:21:25
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「……晴様、今まで頑なに弟子をとられなかったのに、いきなり弟子をおとりなった理由をお聞かせ願えませんでしょうか?」 安倍家当主の座についてから、父から何度か陰陽寮の若手を指導してほしいと請われたものの、私がわざわざ指導するほどの才の持ち主がいなかっただけだ。

2021-06-08 02:25:32
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

基礎ができていないものに、いきなり応用を教えても意味がないだろう。それとも私に基礎を教えろとでも言うのだろうか。今でこそ道がしっかり管理しているおかげで、余力を持って仕事に臨めているが、以前は朝から夜中までずっと仕事ばかりで、指導などできるはずもない。

2021-06-08 02:27:45
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「……基礎もろくにできていないものに、いきなり私が教えても無意味でしょう」 「っ、その基礎ができていない占い師風情には教えるのにですか?!」 どろりと、道の瞳が濁った。

2021-06-08 02:30:06
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

5歳で当主となって、毎日毎日夜中まで仕事をしていたのは、子孫であり身内である安倍家の皆が可愛いからだ。自分の時間を削って働いたのも、全てはこの国のためだからだ。力ある強き者である私は、か弱い皆を守るのが当然であると。強者であるものの、務めであるとそう信じて。

2021-06-08 02:33:45
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

どぷりと、何かが呼吸するのがわかった。

2021-06-08 02:34:35
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「やれやれ、全く。聞くにたえない遠吠えにございまするなァ」 からからとこぼされる嗤い声に、祖父と父ががばりと顔をあげた。すぐ隣でにたぁと嗤う怪僧の姿に、2人は喉奥で悲鳴を上げる。 「あなたご自慢の部下が、晴殿の目に止まらなかったからといって、そうお泣きなさるな」

2021-06-08 02:39:43
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

祖父も父も顔から血の気がひいて、畳についた腕ががたがたと震えているのに、指先すらも動けずにいるらしい。道の長い指が、わざとらしく1本1本ゆったりと父の肩を掴んだ。 「ンンン?震えていらっしゃる?ンフフフ、そうおびえなさるな。拙僧とて人の子。あなたと同じ陰陽師の端くれなれば」

2021-06-08 02:45:57
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「あなたご自慢の部下、陰陽寮で丁寧に基礎を教え込んだようですが、晴殿から見ればそれは基礎ではなく児戯。その程度の陰陽師のために、わずか5歳でこの日の本をお守りされてる晴殿が、お時間を割けるわけではない……そうでございましょう?」 父の耳の後ろでニタァと嗤う道に、晴はため息をついた。

2021-06-08 02:48:42
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

ずりずりと道の袈裟が畳をする音がした。今度は祖父の肩に手をかける。畳目を見ながら脂汗をかく祖父に、道は顔を覗き込んで嗤った。 「……そういえば、身元のわからぬ占い師風情を側に控えさせるなど、安倍家の面目を汚すと仰っておりましたが……」 ニタァと、大きな口が開いた。

2021-06-08 02:52:53
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「今の今まであなた方の隣に座っていた占い師風情に気付かなんだとは……晴を祖とした古き陰陽師の先代があなたとは……安倍家も堕ちたものですなァ」 けらけらけら。どこぞの鵺のような嗤い声に、晴は眉間を揉んだ。おまえ、一体どこでそんな悪役ムーヴを覚えたんですか。

2021-06-08 02:55:42
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

さすがにあの神秘の色濃い平安の世で、術を極め、この私の向こうを張った道相手に、いくら私の子孫とはいえ余りにも荷が勝ちすぎよう。ぱちんと、音を立てて扇子を閉じれば、今までどろどろの漂っていた川底の汚泥のような空気が、一気に上流のせせらぎのように清められた。 「そこまで」

2021-06-08 02:58:25
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

一気に軽くなった空気に、祖父と父がはっと顔をあげた。道はつんとすました顔で私の隣に正座している。怪異のような雰囲気はなく、まるで先ほどの様子は夢であったかのように、清貧な僧侶のごとく凛としていた。 「私がこれを弟子にとったのは、そもそも元々弟子だったからです」 「……は?」

2021-06-08 03:01:41
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「……弟子だったのは、ほんの僅かな期間でございましたが?」 「うーん、まあ、そうですが、僅かな期間でもおまえは弟子でしたし。なれば今世も弟子として迎えてもおかしくないでしょう?」 昔ほど力が制御できてませんし。そう言えば、口元を袖で隠した道の眉根が寄った。

2021-06-08 03:03:44
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「もともと、弟子……?」 力なく言葉を紡ぐ父に、道はにこりと美しく嗤った。 「ええ、左様でございまする。お師様の今世のお父上殿。もっとも、お父上、と呼んでよいものか……拙僧の名は道。播磨の法師陰陽師にて、かつて平安の世で晴殿に討たれたしがない凡人でございますれば」

2021-06-08 03:06:58
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「おまえが凡人だったら、世の中から陰陽師が消えてしまいますねぇ」 「ンンンン、しかしながら今世の陰陽師は何とレベルの低いことか。あなたのご子孫でこれですぞ?あなたが仕事で忙しすぎるのは、これのせいでは?」 祖父と父をこれ扱いする道に、晴は苦笑した。

2021-06-08 03:12:46
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

確かに拾った当初は一般的な陰陽師に毛が生えた程度の力しか持ち合わせていなかった道だが、私と出会ったことにより前世の記憶が引きずり出され、それによって平安の世で駆使していた陰陽道も思い出している。今はまだ力の制御ができていないが、すでに実力は陰陽頭である父以上だ。

2021-06-08 03:14:52
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「お前、まさかあしや……!?」 「そう申し上げましたが?」 道は祖父の言葉に呆れたようにため息をつく。私が転生して産まれてきたのだから、道が転生してもおかしくないはずなのだが、どうも道が転生していることが俄かに信じがたいようである。

2021-06-08 13:18:53
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

祖父はきっと道を睨み付けた。 「蘆と言えば、平安の世で京を転覆せしめんとした大悪人!そのような者を晴様のお側になどおけませぬ!!」 「はあ……あのね、私が対策なしに道を側に置くとでも?そもそも平安の世と今世とは、記憶があっても別人でしょう」

2021-06-08 13:27:23
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

ぱちぱちと扇子を閉じたり開いたりを繰り返す。隣に座っている道の瞳がどろりと濁っていた。 「……それに、道がこの国を転覆せしめんとするなら、今世も止めますよ私が」 当たり前でしょうと言えば、道は口元を袖で隠したまま、目を丸くしてこちらを見ていた。何ですかおまえまで。

2021-06-08 13:32:57
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「何です?」 「……ンンン、自覚なしとは。まあ、晴殿はまだ7つのややこでございまするゆえ、その辺の機微はまだ育ってないのでしょう。ええ、ええ。全く平安の世からお変わりなく」 「平安の世からガキだと言いたいんですか?」 何となく、平安の世の頃も子供扱いされた気がしてむかっとした。

2021-06-08 13:38:10
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まとめたひと
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

腐垢。成人済。 その時々にはまったCP吐き出し用。現在fごの晴道と神陛にはまっています。晴道や神陛吐き出し中。 道受も道攻も好きですが、晴道固定派。 吐き出したネタは定期的にプライベッターやminへ移しています。 マシュマロ→marshmallow-qa.com/v4v7mv9ckziiws…