陰陽寮が残っている現代で、記憶あり力ありの状態で転生し、当主として仕事してる晴(7歳)が、インチキ占い師としてアングラ系で働いていた記憶なしだった道(25歳)を拾って側におく話。 道による晴健やか子育て話。完結しました。
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泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「あ、はい……えっと、つまり?」 「人を使いなされ。拙僧と弟君、なぜあなたの側にいると思っておるのですか」 道の言葉に弟も満面の笑みで頷いている。当主となって、道を拾うまで安部家が持ち込む仕事をただひたすらこなすだけだった。道を拾ってからは、道が選別した仕事をこなしていただけ。

2021-07-05 15:02:25
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

年齢があがるにつれて、道は仕事の選別を少しずつ自分に任せるようになったが、本当に成人するまでは、道が選別した仕事を何も考えずに自分だけでこなしてきたのだ。それを頼れと。任せろと言う。困惑したように視線を彷徨わせれば、道も弟もにこりと笑った。 「家関係の繋がりは僕にお任せください」

2021-07-05 15:05:28
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「相手方の経歴については拙僧にお任せを。きな臭さを感じたなら、あなたが繋いでいるあの家に調べされると良いでしょう」 使えるものは使えという道に、晴はほうと安堵の息をはいた。 「うん、では任せてもいいですか?」 「はい!もちろんです!」 「ええ、ええ。拙僧にお任せを」

2021-07-05 15:08:34
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

そこから早かった。 「この家とこの家は論外ですね。安部家に旨味がありません」 弟がまず家の繋がりから見て、ありかなしかを判断する。この時点で3分の1が脱落した。 「兄上と繋がりを持ちたいのは、陰陽師の家系だけではありません。財政界など、兄上を婚姻で表舞台に引きずり出したい輩はいます」

2021-07-05 15:22:28
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

弟が選別した釣書を、今度は道が選別する。 「これとこれは論外ですな。そもそも力がない者では、晴殿の力に当てられてしまいまする」 ここで更に半分に減った。よく見れば陰陽師の家系ではない家系も入っている。どういうことだろうと首を傾げれば、弟はにこりと笑った。

2021-07-05 15:25:30
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「この家は一般家庭、陰陽師の家系ではございませんが、国土交通省に伝手をもつ家です。政治家も何人も出しており、怪異の調査などで融通がつきやすくなります。江戸中期まで遡りますが、安部家の人間がとついだことがあります」 「な、なるほど……」 次は道がにこりと笑った。

2021-07-05 15:30:23
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「次に釣書の娘ですが、両親祖父母ともに力を持ちませぬ。しかし、娘には力があり、一般家庭ゆえに正しく力が扱えず難儀しているようです。どちらかというと、この婚姻で安部家と繋がりというよりは、今後力がある者が生まれてきた時の対処として助力を求めてきたというところでしょう」 「なるほど」

2021-07-05 15:32:44
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「……そこまでは良い物件とも考えられなくはないですが、」 「何か問題が?」 釣書を手に持ち、道は麗しく口角をつりあげた。 「家も娘も釣書通りなら申し分ございませぬ。ですが、そうですねぇ、どことなくきな臭いんですよねぇ」 裏社会にいた経歴からだろうか。道はとても鼻が利く。

2021-07-05 15:36:23
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「わかった。では、この娘についてあの家に探らせよう。とりあえず保留で」 そこから調査待ちの釣書と、会わないと判断した釣書とに分けていく。そして山のような釣書が、あっという間に数枚程度になった。 「……すごいですね」 調査待ちの釣書を見ながら、道は小首を傾げた。

2021-07-05 15:41:05
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「あなたって、おっぱい星人でしたっけ?平安の世とは美人の価値観が違うのは百も承知ですし、相手方も美人ところを揃えてきてるとは思いますが、こうもまあ年齢や可愛い系綺麗系関係なく胸の大きさで選んでいますよね」 どれどれと道の手の中にある釣書を弟も覗き込む。はあ、とため息をついた。

2021-07-05 15:48:41
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「あ、確かに兄上の選んだ方は胸が大きい方ばかりですね。顔はそもそも向こうが綺麗どころ揃えてますし」 「あなたの隠し持ってるエロ本、そういえば巨乳もの多かったですな」 「なんで、それを知ってるんですか!!」 「ンフフフははははは!拙僧に隠し事など100年早いわ!……と、まあ冗談で」

2021-07-05 15:51:18
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

道が真面目な顔になる。 「最初から性的嗜好がわかれば、我々も弾きやすいのです」 「そうですね。僕が選ぶ時点で胸が小さい方を弾ければ、更に選別がやりやすくなります」 「盛った乳の見極め方については、拙僧が行いましょう。昔、ファッションヘルスの会社で写真修正の仕事をしたことがあります」

2021-07-05 15:55:08
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「おまえの職歴が一番気になりますよ……」 ぐったりと疲れた様子の晴に、道はからからと笑った。 「顔については綺麗系が好みといったところでしょうか。選別した中でも特に美人を選んでますな」 「……あ、あー……あー、僕、わかりました。あー……なるほど……」 「ええ、そうですよ……」

2021-07-05 15:58:06
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

うんうんと頷く2人に、道はこてりと小首を傾げた。 「2人して何んですか。何がわかったのです?」 「……えー、これは、僕が言うべきことではないと思います……」 言いにくそうにしている弟に道は眉をひそめ、こちらへと視線を向けた。 「晴殿」 「言いたくないです」 誰が言うか。

2021-07-05 16:04:53
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「そう言えば、道様の体は生活続命の法を用いてお造りになられた物だとお伺いしておりますが、その、子を成すことなど可能なのでしょうか?」 道様ほどの術士の力を後世に繋げないのは損失だという弟に、道は苦笑した。 「可能でしょうな」 だが、と道は続けた。

2021-07-05 16:14:06
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「あいにくこの体は急拵えゆえ、精子を作る機能は実装させておりませぬ。ですが、そういう機能を持たせた臓器を作って埋め込めば、問題なく機能するでしょう」 西洋の人造人間の技術も取り入れたので、時間がかかるだろうが後付け可能という道に弟はぱちくりと目を瞬かせた。

2021-07-05 16:16:47
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「道様のお体は、臓器が後付け可能なのですか?」 「元より劣化しやすいので交換できるよう西洋の魔術も取り入れておるのですよ」 弟が真剣な眼差しで道を見ていた。晴は弟が何を言いたいのか、察した。察してしまった。 「つまり、子宮も後付けできると」 「できまする……ンンンン?子宮?」

2021-07-05 16:19:41
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

こいつとんでもないこと言わなかったかと言いたげな道の視線から、晴は目をそらした。弟は、自分への敬愛と信仰ゆえに盲目的なところがある。 「つまり、道様が兄上のお子を産めば、道様と兄上の血を継ぐすごい子が産まれてくるということですね!?」 「なしてそうなる?!」

2021-07-05 16:23:26
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「大丈夫です!例え力がなくとも、道様と兄上の血を継いでいるということが重要なのです!いつかその力の発露があるかもしれません!」 「晴殿!お助けくだされ!!」 道の手をぎゅっと握り、熱く語る弟に対し、道は顔を青ざめさせながらこちらへ助けを求めた。

2021-07-05 16:29:54
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

はあ、と溜め息をついた。 「落ち着きなさい」 ぴしゃりと言えば、弟ははっとしたように目を丸くし恥いるように顔をふせた。 「申し訳ございません……道様の血と、兄上の血を両方継ぐ可能性に我を失ってしまいました……」 「ああ、まあ、気持ちはわからぬでもないですが……」

2021-07-05 16:35:13
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

道も陰陽師である。自分の血を引きつつ、晴の血を引く子供が産まれてくると考えると、その子を起点に力の強い子が産まれてくる可能性が高くなるのだ。晴以上の陰陽師が産まれてくる可能性もゼロではない。 平安の世では在野の陰陽師ゆえに血統など気にしたことはなかったが、安部家は違う。

2021-07-05 16:40:25
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

最高最優の陰陽師の血統を、脈々と受け継いできたのだ。それだけ、強い血をいれることを重要視するのもわかる。しかし。 「……あのですね、拙僧の体格をわかっておられます?2m110kgですぞ?ほぼツキノワグマですぞ?」 「道、ツキノワグマは大きくて180cmですよ」 「晴殿お口チャック」

2021-07-05 16:45:41
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

子供の頃からの条件反射で、晴は言われた通り口を噤んだ。まあ、だが。 「子をなす、なさないはともかく。子宮を後付けしたとして、股間はどうなります?」 「……まあ、術で切り裂いて作った臓器と接続させるという形になるでしょうか……」 「神経などは?」 「もちろん、接続いたしまする」

2021-07-05 16:54:34
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

そもそも臓器の後付け自体難易度が高い。 「全く新しい臓器をつけることになりますゆえ、交換とはまた違った難しさでしょうな」 失敗する確率は、交換よりも高い。その言葉に弟はしゅんと肩を落とした。 「……なるほど。確かに元からある臓器ではないため、難易度も高いでしょうね」

2021-07-05 16:58:14
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

新しい臓器に対して、体が拒絶反応を起こさないとも限らない。だいたいが全く新しい術なのだ。道本人にもどうなるかわからないのだろう。ふむ、と顎に手をあてて考え込む。 「では、私が手伝えば成功率はあがりますね?」 「ンンンンンン?!」 道の首が大きく傾げられた。

2021-07-05 17:00:40
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「そもそも、生活続命の法は陰陽道よりも道術に近く、私もよく知らないんですよね。その上、道が西洋の魔術を学んでアレンジしたもの。つまり、全く私が知らない術式な訳ですよね!解析したいです!!」 「勉強熱心ですなぁ!!」 ンンンと地団駄を踏む道の手をぎゅっと握った。

2021-07-05 17:03:24
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

「道……私、おまえの編み出した術式を解析したいです……あわよくば実験したい……」 「拙僧はモルモットではございませぬぞ!!」 「臓器交換もやりたいです!その上で全く新しい臓器を作って後付けするというのもやりたい!!ねえ、ねえ!道!やりたい!やーりーたーいー!!」 「子供ですか!」

2021-07-05 17:08:34
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

弟はぎゃあぎゃあと騒ぐ2人を見て、にっこりと笑った。 ほんの数週間前。道は結界の張り直しの為に命を落とし、晴は道の首を落としたことで泣き続けていた。悲しい事を乗り越えた後のじゃれあいが、心から嬉しくて目頭が熱くなる。 2人の邪魔をしないよう、そっと書類を束ねて執務室を後にした。

2021-07-05 17:16:27
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

これは道様が兄上の押しに負けて子宮を作る流れだな、としみじみ噛み締めながら選別した釣書を処分した。

2021-07-05 17:17:34
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まとめたひと
泥あんこ @V4v7mV9cKzIIWs9

腐垢。成人済。 その時々にはまったCP吐き出し用。現在fごの晴道と神陛にはまっています。晴道や神陛吐き出し中。 道受も道攻も好きですが、晴道固定派。 吐き出したネタは定期的にプライベッターやminへ移しています。 マシュマロ→marshmallow-qa.com/v4v7mv9ckziiws…