年齢と反社会的行動の変化に関連があるという知見を分析した結果、著者たちは、行為障害には2つのパターンがあると考えるようになった。つまり、小児期発症型と青年期限局型である。こうした下位分類はDSM-Ⅳには組み込まれていて、予測的因子として重要である。
2017-01-20 12:59:22反社会的行動が顕著な青年が、成人してからも持続してそのような行動をとるのかどうかということを予測する最も重要な因子は、青年期以前から重篤な問題行動があったかどうかということである。加えて、小児期発症型の行為障害は、青年期限局型より、攻撃性が著しく高いことがわかっている。
2017-01-20 13:03:27社会経済的地位(SES)が低いと反社会的行動の危険性が高まることを示す研究はかなりある。しかし、サイコパスとSESとの関連ということになると、あまり報告がない。さらに、そこで指摘されている関連は、サイコパスの情動障害成分(因子1)ではなく、反社会的行動成分(因子2)である。
2017-01-20 13:11:59それによると、父親の職業上の階級や家族背景を社会的指標として調べると、因子2とは相関があったが、因子1とはなかった。さらに、同じサンプルを対象にして、失業者から専門職に就いている者までを7つの階級に分類して調べてみると、因子1、因子2、総得点いずれにおいても有意な相関はみられない
2017-01-20 13:17:04サイコパスにまつわる都市伝説のひとつに、サイコパスは平均以上の知能を有しているというものがある。しかし、実証的証拠はこのようなステレオタイプを支持していない。
2017-01-20 13:20:34Hareらは、ウェクスラー成人知能検査を用いて、IQとPCL-Rの総スコアおよび情動障害(因子1)のスコアとの間には相関がないことを明らかにした。むしろ、IQは反社会的行動(因子2)の得点と負の相関を示した。つまり、IQが低いほど反社会的行動が顕著であった。
2017-01-20 13:25:11Hareはまた、20以上の心理検査バッテリーを用いて、種々の認知機能とPCL-Rの因子1および総スコアとの間には相関はないが、因子2と「結晶性知能」との間に有意な負の相関(r=-0.46)があることを明らかにした。結晶性知能とは、知識を過去にどのくらい蓄積しているかを表す。
2017-01-20 13:31:34それは、高度に個人における学習経験(学業や文化的活動にどれくらい触れたか)に影響を受ける。Hareは、さらに包括的にレビューし、教育状況と因子2との間にはわずかではあるが負の相関があり、一方、因子1との間には相関がないことを示した。
2017-01-20 13:36:05結局、サイコパスが他と比較してIQが高いという証拠はまったくない。むしろ、反社会的行動は、知能や教育状況の悪さと関連している。
2017-01-20 13:38:49統合失調症は暴力のリスク要因であると指摘されている一方で、特にサイコパスあるいはADHDでさえ、その合併についてはほとんど実証されていない。しかし、これは驚くほどのことではない。
2017-01-20 13:42:47📌 統合失調症は前頭前皮質のなかでも背外側前頭前皮質の全般的な障害に関連している。一方で、サイコパスは背外側前頭前皮質の障害には関係がないという報告が一貫してなされている。
2017-01-20 13:46:33不安および気分障害の多く「全般性不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、大うつ病性障害など」は、どれも攻撃性のリスクの増大と関連している。例えば、反社会性人格障害には不安障害がよくみられる(61%)と、最近の研究で指摘されている。
2017-01-20 13:53:41反社会性人格障害を有する者3.3%のうち、半数以上(54.33%)が生涯を通じて不安障害を合併していたとされる。同様に、行為障害の既往はあるが反社会性人格障害の診断基準は満たさない者(9.4%)のうち、42.31%が生涯を通じて不安障害を合併していた。
2017-01-20 13:58:05社会恐怖とPTSDは、人口統計的差異およびその他の精神科疾患合併症を補正したのちも、有意に反社会性人格障害の診断率を増加させた。しかし、不安障害の合併を補正した後では、大うつ病性障害と反社会性人格障害との間に有意な相関はなかった。
2017-01-20 14:02:16サイコパスで因子1と因子2のレベルを独立させて解析した研究では、不安の程度は因子1と逆相関し、因子2とは正の相関を示した。 まとめると、不安の増加は、反社会的行動の増加およびサイコパスの情動障害因子の減少と関連している。うつ病とサイコパス因子は逆相関する。Id. at 34
2017-01-20 14:08:06SmithとNewmanの調査では、アルコール依存、その他の薬物依存、多剤薬物依存は、サイコパスに有意に合併しやすいことが明らかになった。物質乱用障害は因子2のスコアと相関しているが、因子1とは相関していなかった。
2017-01-20 14:14:07Hemphillらは、DSM-Ⅳでの薬物乱用、過去に使用した薬物の種類の数、薬物関連犯罪、初めて飲酒をした年齢といった要素の間に相関があることを明らかにした。薬物乱用は、サイコパスの情動障害(因子1)よりも、反社会的な生活様式に密に関連しているとの結論を彼らは出した。
2017-01-20 14:19:27注意欠陥多動障害(ADHD)は「相当の発達水準では通常みられない頻繁かつ重篤な不注意ないし多動・衝動性」と定義されている。行為障害とADHDが合併するとの報告は数多くなされている。サイコパス傾向とADHDの合併にも近年注目が集まっているが、詳細の検討は第9章でする。
2017-01-20 14:26:202章では、年齢、SES、IQはすべて反社会的行動と逆相関していることを示した。年齢を重ねるほど(20歳以降で)、SESが高くなるほど、IQが上がるほど、反社会的行動は減少する。
2017-01-20 14:33:33さらに、以上の変数はすべて、サイコパスの反社会的行動(因子2)と逆相関することも指摘した。一方で、これらが、情動障害(因子1)とは相関しないという結果は興味深い。
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