![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
夢主は、女をじっと凝視してから、「離婚に応じます」と答えた……。今にも死にそうな顔をしていた。なら、なぜお前は……。信じるべきだった。それに、…今思えばあまりにも女の出現がタイミング良すぎるだろ。あの怪文書の出処も調べよう。夢主に全てを話し、許されるなら、自分もやり直したい。
2020-05-28 14:02:54![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
あのできごとだって、自分に対する天罰ではないかと思えてくる。フライ返しで叩かれたのは痛かったな。あんなに怒ったところ、結婚前も後も見たことなかった。彼女でも怒るんだな、と叩かれている間中、そんなことを考えていた。“信じていたのに”“信じてくれなかった” 「……」
2020-05-28 14:02:54![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
今日は真っ直ぐ家に戻ろう。そして、もう一度話し合おう。今までの自分の態度を謝って、やり直したい気持ちを伝えるのだ。もし、彼女が許してくれるのなら、という前提だが……。
2020-05-28 14:55:32![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
帰りに、月並みだとは思ったが、花屋で夢主の好きな花で作ってもらった花束と、ケーキを買った。正直、プロポーズした時より胸の動悸が激しい。自分のやった事のえげつなさに改めて罪悪感が沸いた。どうか、どうか許してもらえますように。マンションのエレベーターまで着いた時、「待って待って」と
2020-05-28 15:03:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
大家がogtの乗り込んだエレベーターに慌てた様子で駆け込んだ。「ogtさん?いいとこに。大丈夫だった?!」確か、名は…kdkrと言ったか。「俺、しばらく尿道結石で入院しててさ。10日ばかし、ここ留守にしてたから、あいつが悪さしてないかと思って。退院してみたら、屋上で妙な感じがする気がしてさ…
2020-05-28 15:03:08![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
」その、両手に持っている紙袋に入っている衣装。映画で見た事のある烏帽子が入っているような……コスプレ?「あ、これ本業の仕事着。マンション経営は兼業なんよ。うちの血筋、元々神主。うわ、やっぱお宅だったか」いきなり、背中をはたかれる。「ほら」大家が見せた掌に、金色の粉が浮いていた。
2020-05-28 15:41:58![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「鱗粉だ。やられた。ここ数日妙なことがなかった?」理解に苦しむうちに自宅のある階に着いた。「あのこと知って……!?」「屋上の鍵を開けておくから、後で来な!!」何故か知らないが、総毛立つような嫌な予感に襲われ、ogtは自宅へ走ると、鍵を開けた。「夢主……!!」ドアを開けた途端、無数の
2020-05-28 15:41:58![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
蝶がドアの中から一斉に飛び出してきた。黄色い羽に、黒い筋模様……。キアゲハの群れ。群れなどと生易しいものでは無い。大群だった。両腕で顔を庇いながら、夢主を呼ぶけれど、中から返事はなかった。 ただ、蝶の群れが途切れる寸前、何者かの勝ち誇ったような声で
2020-05-28 15:41:59![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「夢主!!」リビングの、カーペットを除かれたフローリングの上、夢主が仰向けに倒れていた。抱き起こした血の気のない肌が冷たい。嘘だ。嘘だ。昨日まで、いいや、今朝まであんなに元気だったじゃないか。揺さぶり声をかけても、夢主の瞼は固く閉じたまま。ソファに横たえ、スーツの上着をかける。
2020-05-28 19:05:53![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
救急車、とスマホを尻ポケットから出そうとしたところで、「何やってんの。呼んだって無駄だよ。早くkdkrの旦那のとこに行きな」耳元で子供の声がした。「手遅れになるよ」振り向くと、平安時代の狩衣姿をした五歳程の童子が宙に浮いていた。「な…」「驚いてる間なんてない。屋上で待ってる」
2020-05-28 19:05:53![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
アヒル口の口元に、互いに向けて走るピクトさんのようなふざけた模様を描いた坊主の男の子は、そのまま天井をすり抜けて消えていった。「嫁さん、マジやばいよぉ〜」ogtは夢主を見て、それから、何か武器になるものを探し、落ちていたものを掴んだ。
2020-05-28 19:05:54![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
エレベーターが何故か動いてなかった。妨害されている、と思いながら階段から必死で上がる。いつもは施錠されている屋上へのドアが開いていた。「おお、来た来た。よくやったでかした!」kdkrが近くを飛んでいる童子を捕まえ、頭を撫でた。「やめてよ。子供もじゃあるまいし」「お前は万年子供だろ」
2020-05-28 19:39:05![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「夢主が……」「おう。魂はあっちだ」いつの間にか神社でお馴染みの神主姿で、和紙のひらひらした御幣を差した棒で、ある方向へogtの視線を促した。そこには、ちんまりとした小さな社。大人が一抱えできそうな大きさだ。なのに、不思議な威圧感を湛えてそこにあった。「これな。元々この地にうちの
2020-05-28 19:39:05![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
神社があった場所で祀られてた社のひとつなの。うんと昔、この辺りで悪さをしていた奴を、ご先祖さまがここに封じたらしいわ。こいつ、色濃い性なんよ。若くて元気のいい、それでいて気立てのいい若い女が大好物なの。祀ってた神様のほとんどは、他所の神社に移ってもらったんだけど、こいつはこの地に
2020-05-28 19:39:06![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
地縛して封印してるから、離すわけにもいかなくてさ。ご時世でこの地からうちの神社は他所へ立ち退いたけど、こいつは目が離せないから、俺が大家としているって訳。でもさ」「でも?」息を切らしながら走ってきたogtに彼は真剣な顔で言った。「正直、大家と管理人兼業ってしんどい」
2020-05-28 19:39:06![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「そんなこと言ってる場合?!」ogtの言いたいことを、童子が代弁した。「どうすんの?!あんたの代で犠牲者なんて出したら、それこそ末代までの恥じゃないの〜?」「はいはいはい、やりますよやります。えっとね、俺があいつに喧嘩ふっかけて怒らせると、格子の扉が開くから、背中を叩いた
2020-05-28 19:39:06![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
タイミングで飛び込んでくれる?」「入れるかっ!!」ogtが思わずツッコミを入れるのも無理はなかった。ミニサイズの社の扉は広く見積っても縦40横幅30センチほどの小さなもの。頭を入れるのがやっとだったのだ。
2020-05-28 19:39:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「そこは考えなくていい。今は俺の後ろに隠れてな」kdkrはニヤけた顔を一転して引き締めた。“畏(かしこ)み申す”別人かと思うほど張りのある、よく通る声が、夕焼けに染まる屋上の大気を震わせた。
2020-05-28 19:43:13![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
よく分からない古語の類のような文言を唱えた後、「〜〜急急如律令!!」そこだけは何とか聞き取れた。がたがたと社が横揺れし、ばたんと格子扉が開く“渡さぬ”“返さぬ”“かたえは我の”“奉じられた我のもの”中から、老若男女の別も分からぬ割れた声が響き渡る。「何言ってんだ。どーせ、無理やり
2020-05-28 20:46:32![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
もぎ取った言質だろうが。お前はホント、人様の窮状に取り入るのが上手いねぇ」kdkrはogtの後ろに周り、背中を叩いた「行け!!」だからどうやって、と言い返す間もなかった。視界が歪んだと思うと、身体ごと彼は、格子扉の中に吸い込まれていった。
2020-05-28 20:46:33![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
嘘だ、嘘だろ。指示されるまで 、振り向かず真っ直ぐに走れと耳打ちされたのを覚えているが、いつの間にかogtは人の姿を黒猫に変えられていた。あのおっさん、人間か?けれど、他に方法はない。彼は暗闇の中を四つ足で黒の中を切り裂くように走る。やがて、先に一点の光が見えたかと思うと、それは
2020-05-28 21:06:56![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
見る間に大きくなり、彼に覆い被さるように広がっていく。気が付けば、そこは陽の当たる、彼らの家のベランダだった。面積の広いそこに、人工芝を敷いて、ベンチを置こうと言ったのは結婚したばかりの夢主。春先の優しい光の中で、二人仲良く並んで座り、コーヒーを飲んでいる。休日だった。夢主と
2020-05-28 21:06:57![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
ogtがくすくす笑い声を立てたり、楽しげに会話している……。二人には猫のogtは知覚できないのか、これ自体が幻なのか、どんなに近くに寄っても反応はなかった。「夢主……?」「無駄だ」不意に、夢主の隣にいたもう一人のogtが、こちらを向いて口元を釣り上げた。「これはもう、我のもの」目の前が、
2020-05-28 21:06:57![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
闇に飲み込まれた。「振り向かず走れ!」さっきの子供の声がした。黒猫ogtは再び闇の中を走った。「大丈夫。僕もついてる。とにかく走るんだ!早く魂を取り戻さないと、身体が先に死んでしまう!!」一心不乱に走った。我が身よ風となれと念じた。普段は決して泣かない男のつもりだったが、気が付くと
2020-05-28 21:06:57![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
涙が流れていた。愛する者を誰かに成す術もなく奪われる、これがこれほどに辛く悲しい事とは思わなかった。自分はこれを恐れていたのか。だから先に夢主を捨てようとしたのか。そして、そして……。
2020-05-28 21:06:58![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
“私のせいなの。私が悪かったのよ。あんな事が起きたのは、私のせい”「夢主!?何処だ?!」暗闇に、夢主の声が木霊した。“彼を取り戻せるなら、何でもすると願ってしまった。悪魔でも、神様でもいい”“私に、彼とやり直すチャンスが欲しいと願った”“ごめんなさい。百さん”“私の事はもういいの”
2020-05-28 21:11:38![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「何処だ!夢主!!」「あれだよ、百さんとやら」すい、と童子が前に出て指をさした。遠くを、光を纏ったキアゲハが鱗粉のように光の粉を飛ばしながら飛んでいく。“私のせいで始まったのなら。私が終わらせなきゃ”“でないと、貴方が奪られてしまう”“貴方のかたえは私”“私こそが、かたえでいたい”
2020-05-28 21:34:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「…どんだけ苛めたの?完全に諦めてるじゃん」「夢主、待ってくれ!行かないでくれ…!」大切なことを言わないといけないのに、まるで喉に引っかかったように出てこない。呪いでもかけられたかのように……まさか。「喉。なんかされてるねぇ。畜生にしてはやるじゃん」黒猫の喉元に触れようとした
2020-05-28 21:34:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
童子がパチン、と静電気にでも触ったように弾かれる。「あたた、こりゃ旦那じゃなきゃ無理だ〜。先に気がつけよkdkrのオッサンときたら」
2020-05-28 21:34:52![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
再び光が現れたかと思うと、また別の場所にogtは立っていた。夕日の染まるリビングに、夢主の用意した料理の匂いが漂っている。元恋人とogtが座るソファと向き合った夢主を、猫のogtはその背後から見上げていた。震えている小さな背中。時々鼻を啜る音がする。話し合いが終わり、二人が出ていこうと
2020-05-29 02:04:49![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
すると、夢主がogtを引き止めた。夕食を用意してある、という。男は苦笑いしていた。自分は、あんな意地悪い顔をするのかと猫のogtは愕然とした。醜い。怒りを含みながら作ったその表情が。いらない。何が入っているかわかったものじゃない。何より、腹の子に悪い。女の肩を抱いて、ドアを出ていく
2020-05-29 02:04:50![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
夫を黙って見送ったあと、夢主は寝室へ逃げ込むように飛び込んで、ベッドで号泣していた。悔しい。悔しいよぅ……!!私も、私も、私だって……!!「夢主!!夢主!!」それでも、済まなかった、悪かったという言葉が呪いに阻まれて出てこない。幻は再び掻き消える。これは何だ?「これ走馬灯だね」
2020-05-29 02:04:51![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
童子が言った。「…ここまで、弱ってたなんて。多分もう、助けられないと思うよ。仇は多分、kdkrの旦那が討ってくれる。死にかけた魂を追うのは、人間のあんたには危険だ。もう戻った方がいい」「…夢主は?」「言ったろ。多分追いついても助けられない。寝床に付けば奴に食われるけど、
2020-05-29 02:04:51![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
その前に追いついたとしても、連れて帰るまでに身体との絆が切れて死ぬだろう。そして、あんたもただではすまない。この先は異界。神魔の領域だもの」
2020-05-29 02:04:51![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「夢主が逝ってしまうなら、俺も」「馬鹿なことを言ってんじゃない。人間風情が」浮かんでいた少年は、黒猫を抱きかかえた。「やめろ!放せ!あいつを見失ってしまう!!」「ダメならあんたを連れて引き返せって言われてる。そのために僕が着いてきたんじゃないか……って?!」少年の手を引っ掻いて、
2020-05-29 02:14:07![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
黒猫はその隙に童子の腕から抜け出すと、再び小さい光にしか見えなくなった蝶を再び追った。一緒に生きられないならせめて……。走って走って、息が切れても走り続けた。でも、どうしても追いつけない。「夢主…!待って……!!」もう離れたくない。お前は大切なかたえ。そばにいる存在……。
2020-05-29 02:14:08![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
意識が朦朧としてくる。もう限界だった。「助けて……」誰もいないことを知っていたが、思わずそう、声が漏れた。夢主が、彼の蝶が、遠く、姿を消していく……。「夢主……」
2020-05-29 02:14:08![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「あら?猫ちゃん?どうしたの?」暖かい腕が伸びて、誰かの膝の上に上げられた。見上げると、六十過ぎの夫人がogtの猫に変じた身体を優しく撫でた。また、幻……。声を出そうとしても、にゃあ、としか出ない。「いい子ね。大丈夫?」不思議なことにその手はとても温かく、覚えがあるような気がした。
2020-05-29 02:26:24![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
彼を撫でながら、ベージュのカーディガンを羽織った老婦人は、縁側に座っているのだった。そして、子守唄でも歌うように、その歌を歌った。 “サン|トワ|マ|ミー 夢の|よ|うな あの|空を 思い出せば……”ogtの頭を人撫でして、彼女はふっくらした口元を緩ませて笑った。どこか夢主に似ていた。
2020-05-29 02:26:24![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
幻が、再び消えた時、力が湧いたような気がして、再び黒猫は走り出した。蝶の姿が再び見えた時、彼は叫んだ。「夢主!夢主行くな!!」
2020-05-29 02:26:25![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
その言葉は妖魔には理解できず、よって呪いは発動しなかった。祈るべくは、夢主がそれを知っていて、答えてくれること。どちらがかけても叶わぬ、最後の賭けだった。繰り返し、繰り返し彼は叫び続けた。全身全霊を傾けて、遠い国の言葉にすべてを賭けた。「夢主……夢主…サン…トワ……マ…ミー……」
2020-05-29 02:53:56![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
喉が痛みだし、張り裂けそうだ。口の中は血の味がしていた。「さ|んと|わま、みー」少し歌うような、夢主の声がした。蝶が、いつの間にかogtの傍にいて、頭に止まった。「サント|ワマ|ミー」猫は、泣きながら、繰り返した。
2020-05-29 02:58:39![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
「すごい!!見つけたんだ?」後ろから追いついた童子が、ogtの頭に止まり、羽を開いたり閉じたりしている蝶を捕まえた。「おい!」次の瞬間、手の中で蝶は、キアゲハの絵が描かれた丸い缶バッジに変わっていた。狩衣の襟に同時はピンを通す。「これでよし」おおおん。おおおん。向こうで、
2020-05-29 06:57:47![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
獣の声にも似た唸りが響き渡る。すると、彼らから離れたところに白い霧が沸き立ち、竜巻さながらに渦を巻いたと思うと、それは女の姿を結んだ。「ねぇ、夢主さん」女が、しっとりとした色香を含む甘い声を発した。「お腹に子供がいるのよ?子供には、父親が必要だと思うの。貴方なら分かるでしょう?」
2020-05-29 06:57:47![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
ogtの元恋人――浮気相手の、美しい女が、うっとりとした表情でそっと白いワンピースの腹を押さえた。「小さい頃にお父さんを亡くされて、寂しかったでしょう?お母様が、今のお義父さんと結婚される中学の頃まで、それはもう、苦労なさったはず。この子を、そんな目に遭わせて平気なの?」「それは…」
2020-05-29 06:57:48![](https://s.togetter.com/static/web/img/placeholder.gif)
ogtの喉が詰まり、また言葉は阻まれてしまった。「お願い。ogtを、私から取らないで。子供の父親を――」幻の女の目から、涙が零れ落ちた。「やばい」カタカタと襟元で震え出す缶バッジを、童子が押えた。慌てて取り外し、猫の口元に押し付けた。「先に戻ってな。あいつの相手は僕がする。右手を一振り
2020-05-29 07:12:43