サントワ・マ・ミー

ぽんぽこタヌキ玉 @tanukidego

#金カ夢　#ogt 「別れる二人が、“せっすすしないと出られない部屋”に閉じ込められる話」

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不運にもすれ違いや誤解が重なり、離婚することになったogtと夢主は、今まで住んでいたマンションを引き払うために荷造りをしていた。夢主は涙ながらに自分の持ち物をダンボールに詰めている。

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こちらは未練たっぷり。何せ、結婚わずか一年半で、夫が前カノとよりを戻してしまうなんて思わぬ出来事だったから。「この部屋で新婚時代を過ごした二人は、末永く添い遂げると言われてるよ。ここは、元々縁結びの神社跡に建っているからね」なんて大家さんは言ってたのに。嘘つき。

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いきなり降って湧いた離婚話に、最初は訳が分からず激しく抵抗していた夢主だったが、ogtが前カノとよりを戻している上、相手が妊娠していると聞いて諦めたのだった。既に少なからぬ

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慰謝料も提示されている。彼はそれほどに例の女性に心を全て持っていかれてしまったのか。もうどうにもならない…。話し合いの時に初めて会ったが、自信に満ち溢れた、スーパーモデル級の、ものすごい美人だった。きっと、彼との身体の相性もいいのだろうな。夢主は惨めで、そして羨ましかった。

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女として、何より生き物として、とても太刀打ちできるものではなかった。家事も料理も、あまり得意でなかったけど、一生懸命やっていたし、夫婦仲もそれまで良かった方だと思う。この前まで幸せだった。不器用ながら優しかった夫の、

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今、自分に注がれる軽蔑の眼差しに耐えられない。きっと浮気相手と比べられている。夢主は所詮、上司から紹介された、その友人の娘。出世のためとはいえ、平凡な女と結婚したものだと彼は思っているかもしれない。夢主は家が厳しかった箱入り娘で、夫以外に他の男を知らない程に奥手。衣類を詰めた箱に

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ガムテープで封をして、ため息をついた。ああ、「あれ」ももう処分しよう。彼に喜んで欲しくて頑張っていたけど、無駄になってしまった。教本もキットも、補習用のDVDも、ベッドの下に鍵のかかるトランクにいれて隠してあった。一度だけ、そう、一度だけ成果を見たくて試したけど、激しく拒まれた上、

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それ以来、夫は彼女に対し冷たくあたるようになった。下手でごめんね。書斎で自分の荷物を詰めているだろう、まもなく“元夫”となる彼のことを考えると、あれだけ泣いたのにまだ目の中が熱くなってくる。自分だって、容姿は悪くないと思ってた。でも、あの女（ひと）を見てしまったあとでは

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自分はまるで、路傍の石で、雑草。石ころはダイヤに、雑草は薔薇に敵わない。相手の美女は、その胎内にさらに宝を抱え込んでいた。彼女が欲しかったもの、夢見たものを、その人は根こそぎさらっていく。夫と、可愛い子供、幸せな家庭。子供が産まれたら、もう少し広い家に引っ越そうと言っていた、

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三月ほど前にはそんな会話だってしていた。これは、どんな悪夢なんだろう。けれど、夢主の現実は変わらない。気持ちが他へ移った、それはもう仕方ない。辛いのは、何故彼はあんなに冷たい目で自分を見るのか、

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せめて理由を知りたかった。訊いても彼は鼻で笑うだけで、教えてさえくれない。自分があんなに完璧な程に美しければ、多少の欠点は目を瞑ってもらえたのだろうか。美しいダイヤにある僅かな瑕などは、かえって愛されるものだ。…明日は業者が荷物を取りに来るから、この家で夜を過ごすのは

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今日が最後。二人で寄り添って眠ったダブルベッドも、今夜でお役御免だ。ogtは荷造りを終えたら、そのまま家を出ていく。彼女は明日、業者が来るまでの留守番なのだった。がらんとした寝室にぽつんと残されたベッドは広すぎて、一人寝が続いた身にはかなり辛い。最後、最後に一度だけでもいい、

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お願いしたら抱いてもらえないだろうか、なんてことを考えてしまう。だって、本当に、本当に好きだったのだ。お見合いでは怖い印象の人だった。冷たそうで、意地悪そうで。でも、お付き合いを続けるうちに、不器用ながら優しさを感じたし、側にいて安心できる人だと知った。彼の口から、結婚を前提と

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した交際を改めて申し込まれた時には、幸せの絶頂って本当にあるんだと思ったっけ。さらにそれを塗り替えた結婚式、そして、新婚旅行……（今は、絶望のどん底だけどね）夢主はベッドの前で鼻をすする。…せめて子供がいたら、別れずにすんだ？まだ二人きりでいたくて、子供を先延ばししてもらって

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いた自分が呪わしい。でも、子供を手段にしようなんて一瞬でも思うなんて、本当に焼きが回ってる。なのに、今、本当に彼の子供が欲しい。猛烈に、と形容して良いほど。もう会えないなら、せめて好きな人の子供が欲しい。彼の血を継いだ子供が。でもそれは所詮許されない願い、叶えられない願いなのだ。

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喪失感が針で刺すようにじくじくと胸を刻む。いっそ今、誰か自分を殺してくれないかと思う。一人にされたら、首を吊ってしまいそうだった。「こちらは済んだ」寝室の入口から、ogtが顔を覗かせた。「さっさと記入してくれないか。昼までに役所に出しておきたい」もう決まったことなのに、

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離婚届に自分の名を、夢主はまだ書けずにいた。ぐずぐずと理由を付けて引き伸ばして、とうとう今日まで。彼女のお腹が目立つ前に、式を挙げたいんだろうな。夢主は虚しさと悔しさに、気が遠くなりそうだった。キッチンでコーヒーを入れ、作業用の小さなテーブルに二人分を置いた。ogtは手をつけない。

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ogtもう、夢主の作ったものを口にしない。カーペットを除かれたフローリングの床に直に座り、持参したペットボトルのお茶を飲みながら、夢主が小さなテーブルの前で正座して、緑の紙を前にペンを取るのを、時々横目で見ながらスマホをいじっていた。毒でも入れると思ってるんだろうか？コーヒーは

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手をつけられないまま冷めていく。いくら気持ちが無くなったからと言って、こんな態度を取られてしまうものなのだろうか。少しは悪いと思わないの？慰謝料を払うから？そんなものはいらない。目の前のこの人がまた優しくしてくれるのなら、他には何もいらない。いま、この人が手に入るなら悪魔にだっ

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魂をを売り渡せるのに。「何してる？「早くしてくれ」とogt。「お互い、自由になってやり直そうじゃないか。俺は彼女と、お前は新しい男と一緒になれ。それが幸せってものだ」新しい男なんて、不器用な自分には当分できそうにない。何より、こんな目に遭って次を探すなんて絶対に無理。夢主は急に

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胃の腑が焼けるようなむかつきを覚えた。身体の中で毒が生じたかのようなどす黒い感情が湧く。彼女が憎い。その人は穏やかな流れのような夢主の幸せに小石を投げて、何もかも台無しにしてしまった。なぜ、なぜ、考えるうち、夢主は名前の記入欄に置きかけたペン先を止めた。「別れない」「は？」

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「やっぱり、理由を訊きたいんだけど。確かに私は、あの人ほど完璧な女じゃなかった。それは認める。でも、百さんの態度だって、ない。昔の恋人と寄りが戻った、そして、赤ちゃんができた。そんな酷い理由で捨てられるのに、なによ、その態度。少しは、少しは悪いと思わないの？！」夢主は離婚届を

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掴んだかと思うと、ogtが止める間もなく細かい破片になるまで引き裂く。「別れないわ」涙を溜めた目でogtを見据えて、夢主は笑った。「子供が――」「私の子供として育てます。そろそろ欲しいと思ってたの。前に言ってた通り、広い家に越しましょう。明るい陽が差す、大きな窓を付けた子供部屋を作るの。

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子供は、あと一人欲しいな。四人家族で……」夢主は泣き笑いしながら夢を語ったが、ogtは鼻で笑うだけだった。「二人目なんぞ産まれてくるわけないだろう？二度とお前を抱く気はないんだから」残酷な言葉に心臓を貫かれ、夢主は言葉を失った。「慰謝料の増額も考えよう。とにかく、別れることは

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決定事項なんだ。諦めろ。……そこまで、そこまで言うなら、なんでお前は…」…お前は？夢主がその続きを聞こうと待ち構えたその時、地響きが轟いた。「いやっ？！　地震…大きい……！？」「夢主…？！」リビングにも積み上げていた、書籍の詰まった箱の山が激しい揺れに彼女の上に崩れ落ちた。

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数分の揺れだったけども、恐ろしさに時間が引き伸ばされているようだった。ようやく建物を震わせていた横揺れが収まり、気が付くと、夢主はogtに抱え込まれるようして庇われていた。「ひゃ、百さん……」「大きかったな、今の」守ってくれた？そのまま背中を包む温かさが離れるのを夢主は惜しんだ。

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荷物は運良く全部崩れることはなく、落ちたものもごく軽いものが入っている箱ばかりだった。「外を見てくる」ogtが玄関へ向かったので、夢主はニュースで震度がどのくらいあったのか見ようとテレビを点けようとした。「あれ……やだ、故障？」まだアンテナのケーブルは抜いてないのに、テレビは

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白い画面のまま、何も映していなかった。玄関の方からは「まずいぞ。ドアが曲がったらしい。開かない……！！」と言う声が聞こえてきた。こんな時、消防署に連絡するんだっけ？夢主はネットを見ようとデニムパンツのポケットからスマホを取り出したが、こちらも白い画面のまま、何も映らない。操作も

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できないようだ。「嘘…スマホ壊れた…？」「くそっ、俺のもイカれてるみたいだ。なんなんだよ……」部屋に備え付けの電話もダメだった。閉じ込められた……？ベランダから助けを呼べないかと視線を向け……絶句した。

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ベランダに続く掃き出し窓から見える風景が、いつもと違う。二人が暮らしていたこの部屋は15階建ての賃貸マンション、その10階にある。そのベランダからは街並みが一望できた……はずだった。それが、真っ黒に塗りつぶされた闇に覆われている。ベランダさえ見えない。ogtが鍵を開けて引いてみても、

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これもまた、ビクともしないのだった。時間帯はまだ昼前、知らぬ間に夜になったとしても、この闇は異常すぎる。寝室と書斎、リビング、キッチン、全ての部屋の窓を調べ、開けてみようとしたが、まるで溶接したかのように開かない。業を煮やした夫が、マンションの外廊下に面したキッチンの小窓の

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ガラスを割ろうとしたが、あろうことか防弾ガラスかと思うほど固くなっていて、金槌を持った手をしばらく痺れさせる羽目になった。「どうなってる……？」試行錯誤の末、打つ手を失った夢主たちはリビングに戻り、床にへたりこんだ。「狐に化かされてでもいる気分だ。…なんで出られない？窓だって、

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さっきまで普通のガラスだった…」何が怒っているのか、夢主ももちろん想像もつかない。恐ろしくて、側に行こうとすると触るな、と睨まれた。あの時は、庇ってくれたのに。夢主は荷物の置かれた部屋の隅に居場所を決めて、彼から見えない場所で涙を拭った。どこまでついてないの。何が起こっているの？

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怒っているのか→起こっているのかの間違い〜😭

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本当に彼の中から、自分への愛も思いやりもなくなってしまったのだと思うと心臓が押し潰されそうだった。先刻のは、きっと反射的に守られただけなのだ。もしあの場に彼女がいれば、きっと彼は夢主など放って彼女を守るだろう。居場所の無い気持ちに情けないほどの孤独を感じた。不意に、白い画面のまま

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光っていた夢主のスマホから着信音がした。次いで、ogtのスマホからも。手に取ると、画面に墨を含ませた筆をた使ったようなフォントでこう書かれていた。

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「なんだこれ……？」「私のも、同じ……」と、夢主の画面の文字が変わった。

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「ひっ？！」一瞬、ぞわっと鳥肌が立つような寒気がした。思わずスマホを取り落とす。すると、再びスマホの画面は、最初の文面に変わった。｢なんなんだ…？！なんなんだよ？夢主、何かドッキリでも何かの業者に頼んだのか？だとしたら、すぐにやめさせろ。あまりに悪趣味だろうが…！！」

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「私、私知らない……」そんな事をする人間にまで思われているなんて。悔しさが悲しみを乗り越えそう。思わず込み上げる涙を堪えながら夢主は歯を食いしばったら。二人きりで、話し合う時間さえあればと思っていたのに、こんな形で叶うなんて。でも、これでは……。

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しばらく、各々でスマホを弄ってはどこかと連絡が取れないか試してみた。超常現象そのもののこの場所を隅から隅まで調べ、扉や窓も改めて見たけれど、出る方法は内容だった。いつもはガラス窓や壁を通して聞こえる自動車の通る音、生活音もまるで聞こえてこない。黙っていると、世界の終末に二人きり、

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そんな気持ちにさえなってくる。以前の彼だったら、夢主の側にいて不安を和らげてもくれただろうに、無表情にスマホや、書斎から持ってきたノ|ートP|Cを操作しているだけだった。声を掛ければ無視されるか、答えても黙っているように言われるだけ。二人なのに、独りぼっちの心細さに恐怖がいや増した。

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気を紛らわせようと夢主はキッチンに行き、冷蔵庫から食材を出した。不思議だが、電気と水道、それにガスだけは通じていた。何かしらの意志を感じるが、ogtは気付いてるだろうか。それに、あのスマホの文面……。“あいあたう交歓にのみ解かるるべし”……お互いに歓び与え合えば…

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今の言葉に直せば、そういうこと……？　本当に何それ？という感じだが、とにかく何者かの意思が彼女たちをここへ閉じ込め、その行為を要求している……らしい。何のために？考えても始まらない。始まらないけど……。下世話な気もするが、二人きりで交歓、というとどうしてもそちらを連想してしまう。

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ogtが、夢主の作った食事を摂らず、触れなくなって二ヶ月と少し……。欲求はもちろん彼女にもあったけれど――彼はさっき言っていた。もう、二度と彼女を抱くことはないと。（あんな美人としてたら、無理ないわ）夢主はまな板をシンク台に置いて、…時間帯で言うなら昼食の用意を始めた。彼が拒んでも、

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外に出られない以上外食も弁当も買いにいけないのだ。いくらなんでも口にするだろう。そう思って、好きな物ばかりを作った。不思議なことに、肉や魚に混じって、買った覚えのないものも入っていた。味醂を買い忘れていた、と思った途端、目の前に現れたりもした。この牢獄の看守は、

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まだ二人を生かしておくつもりらしい。

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引越しのため、なるたけ少なめに中身を入れていたはずの冷蔵庫は、いつの間にか、しばらく買い物しなくてもよいくらい（出られないけども）食材に満たされていた。料理を乗せた皿をダイニングキッチンのテーブルに移し、夫を呼んだ。二人で食事を摂るのは本当に久しぶりだった。