0
前へ 1 ・・ 7 8 ・・ 11 次へ
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  中心にいるのは、痩せた、前髪の長い男子。チェック柄のマフラーに目を落とすように伏せて、じっと立っている。  栗山蓮、という少年である。 「……どういうことだよ、」  と、3人のうちのひとりが、小さく、 ひそめた声でいう。 「アイツ、まだ戻ってこ pic.twitter.com/RDRax5jY4k

2022-09-29 08:00:18
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

ねえ」  じゃっかん上ずった声で。くちびるを、かすかにふるわせながら。  栗山は、超然とつったっている。  つったっているというより、見下ろしているように見える。

2022-09-29 08:00:19
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  いちばん背が高いというわけではない。4人のなかで、下から2番目くらいだ。それでも、蓮は、3人を見下ろしていた。ずっと上から。そういう、目つきをしているのだ。 「おまえ、あいつに何したんだよ」  3人のうちで、いちばん体格のいい男子が、そう、く pic.twitter.com/5RUJvJqQ9x

2022-09-30 08:01:08
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

りかえした。  栗山は、答えない。  30秒ほどの間があいて、ぎっと、空気が険悪なものにかわる。 「おい、」  4人のうちでいちばん背の低い、坊主頭の男子が、蓮の肩のあたりを、軽くこづいた。 「ちゃんと答えろよ」  そう、言われて、ようやく蓮は口を開いた。 「……別に」

2022-09-30 08:01:09
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  小さく、唇が動いただけで、肩も、目線も、微動だにしない。  あいかわらず、傲然と見下ろすように、目を伏せている。 「はぁ?」  肩をこづいた少年が、思わず呟く。それから、ほかの二人が、一拍遅れて、おなじような声を。 「別に、って」  そっけなく、 pic.twitter.com/ibRGQAHN3Y

2022-10-01 08:00:13
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

重ねてもう一度。 「っけんなよ、お前」  いままで黙っていた、いちばん背の高い少年が、小さく詰め寄る。  ……とん、と音がした。  詰め寄った男子が、尻もちをついたのだ。  ただ、転んだように見える。

2022-10-01 08:00:14
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  蓮が、なにかしたのか。触れたようには見えない。けれども、少年たちは一斉に色めき立った。 「おい、」  ひとりが、なにか言おうとした瞬間、  立っていたふたりが、同時に、尻もちをついた。  蓮は、触れていない。手は、ポケットに入っている。  しば pic.twitter.com/es3ELLQwtV

2022-10-02 08:00:12
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

らく、沈黙が続いた。 * 「……っていうことが、あってね」  こそこそと、ないしょ話のていで……そのくせ、声はひそめずに。  ヘアピンでおでこを軽く出して、うしろを編み込んだ髪型の、背の高い少女。となりの席の及川綾音が、そう、ささやいてくる。 「それ、本当なの?」

2022-10-02 08:00:13
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  保美は、かるく眉をしかめて、聞き返した。  栗山蓮は、たしかに無口で、えたいの知れないところがあるが、先輩3人に詰め寄られて、反抗するようなタイプには見えない。  だいたい、喧嘩なんかしたことあるんだろうか。……あの、根暗が。 「わたし、見たん pic.twitter.com/aAHBw35znF

2022-10-03 08:00:58
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

だから!」 「……で、どうしたの。そのあと」 「知らない。そこで、怖くなって逃げちゃったの。私」 「ふーん、」  蓮は、まだ来ていない。いない席を見て、保美はちょっと首をかしげる。 「そんなガラかねえ、あいつ」 「仲、良かったっけ?」 「いや、別に」

2022-10-03 08:00:59
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  ごまかしたわけではない。本当に。ここ数ヶ月、口をきいてもいない。 「あんまり栗山くんと仲良くすると、マイちゃんが怒るよお」  え、と保美はちいさく呟いた。  塚本舞。鼻が高く、同じくらい鼻っ柱が強い、少し頬のこけた女の子。すぐ近くの席だが、今日 pic.twitter.com/nvTM2imGBd

2022-10-04 08:00:15
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

はまだ来ていない。  いちおう、友達。いや、このクラスの女子のなかでは、いちばんの親友かも。でも、ぜんぜん知らなかった。 「……マイちゃん、栗山と付き合ってんの?」 「いやあ、そうじゃないけど、」 「じゃ、いいじゃん」 「そうだけどさあ……」

2022-10-04 08:00:15
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  からりと、戸があいた。なにごともないような顔をして、蓮が入ってくる。  あいかわらず、どこを見ているかわからない目つきで、ふらふらと。  栗山のうしろから、ほんの少し青みがかった瞳をした、茶髪の女子が、入って来る。それから、ひどく痩せた、人形 pic.twitter.com/OLvijnUX4u

2022-10-05 08:01:28
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

のように肌の白い少女が。 「ヤス、おはよう」  茶髪の女子、──塚本舞が、保美に、にいっと笑いかけて席につく。 「おはよ、マイちゃん」 「おはよう」  と小さな声で。もうひとりの少女、岡野ひなたも席につく。  保美は、こっそりと、座って、窓のほうをむいている栗山のほうを見た。

2022-10-05 08:01:29
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  別に、かわったところはない。なんだかスカしているな、と思う。  それだけ。 *  がしゃんと、音がした。  それから、耳にさしこんでくる悲鳴。 *  みんながいっせいに立ちあがる。ぱらぱらと、何かが降ってくる。もう一度、悲鳴の波。少し遅れて、 pic.twitter.com/arYVbaqVcX

2022-10-06 08:01:27
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

立ち上がったものたちがざわざわと動く。それからようやく、保美は、何が起こったのか気づいた。  ガラスが、割れたのだ。校庭側も、廊下側も、いちどに全部。

2022-10-06 08:01:27
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  窓際の女子の額に、破片が突き刺さって、血を流している。その前の男子は、首すじに。となりの子は、たちあがって、震えながらガラスのかけらを手ではらいのけている。席を立って、教室の中ほどまで後ずさっている子もいる。  空中を、小さな粉のようなものが pic.twitter.com/C7kAp3XGEK

2022-10-07 08:01:14
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

飛んでいるのが一瞬だけ、見える。こまかな破片だろう。それも、すぐ落ちる。  保美たちの席は、窓から遠いので、ひとまずは無事のようだ。   舞の顔が目に入る。蒼白である。凍りついたように固まっている。

2022-10-07 08:01:14
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  それから、舞の目線の先。蓮は、……いちばん窓際の席にいるのに、微動だにせず、頬杖をついて、窓の外を見つめている。  怪我はない。……それどころか、かれの席のまわり、ぐるりと50センチほど、きれいに避けて、ガラスの破片が落ちている。  保美は、 pic.twitter.com/TRJv6hvngg

2022-10-08 08:01:12
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

ぞっとして目を伏せた。 *  次の日の、朝。  なんだか、様子がおかしい。保美がそう思ったのは、蓮が教室に入ってきた瞬間だった。  ざわりと、音が漏れた。  蓮のほうから、ではない。  教室にいる、他のものたちの口から。  あっ、とか、ひゃ、とか。高い声が、いくつも重なって。

2022-10-08 08:01:13
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  保美は、なんだか寒気を感じて、あたりを見回した。  視線が、いくつもからみあって、怖い。  蓮は、全くそしらぬ顔をして、席についている。今日は、舞もひなたも、一緒に登校してきてはいないようだ。  べつに、かわった様子はない──、  昨日、あん pic.twitter.com/EHMcFINwzI

2022-10-09 08:00:41
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

なことがあって、ケガをしている者も大勢いる。それに、まだ来ていない子も。……たぶん、欠席だろう。  蓮の席のまわりは、まるではかったように、空席。となりも、前も、後ろも。  窓のすぐそばにいて、ケガもしていない蓮が、ヘンな目で見られるのは無理もない。そうは、思う。

2022-10-09 08:00:43
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  が、違う。雰囲気が。そういうことではなさそうだ。 「……ねえねえ、」  絢音が、声をかけてくる。  なんだか、うわずった声音で。 「栗山くん、……なんだか、かっこよくない?」 「えぇ?」  突然、……なにを。 「朝イチで、なに言ってんの」 「いやァ pic.twitter.com/HAUmsohIRZ

2022-10-10 08:00:47
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

……その」  声をひそめて、綾音はちょっと目を伏せた。 「……ごめん」 「謝らなくていいけど」  ため息。  もう一度、栗山のほうを見る。  べつに、かわった様子はない。  窓の外を見ている。いつもと同じポーズで、石像みたいにじっとして。  からりと、ドアがあいた。

2022-10-10 08:00:48
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  舞と、ひなた。舞が少し先に、ずんずんと大股で入って来る。そのあとを、ひなたが、ちょっと目を伏せぎみに。 「おはよ、」  ちいさく、通りすぎざまにそう呟いて、舞は席についた。目は、あわない。なんだか、様子がおかしい。 「おはよう。」  そう、声を pic.twitter.com/IpfVka87Pj

2022-10-11 08:00:12
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

かけて、それから何か言おうとして──、保美は黙ってしまう。  二拍おいて、気をとり直す。やっぱり、話題にしないのは不自然だ。 「……ねえ、きのうの……、」 「なに?」  ちょっと、とげのある目で、舞はこちらを見る。 「きのうのアレさ、……なんだったのかな。」

2022-10-11 08:00:13
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち 「さァ……、どうでもいいんじゃない」  舞は、そっけなく言って、ぱちぱちと目をしばたかせた。  やっぱり、なにか、おかしい。 「ねえ、マイちゃん」  先に席についていたひなたが、いつになく高い声で。 「……栗山くん、今日、かっこよくない?」 「…… pic.twitter.com/3LzGOjitQq

2022-10-12 08:01:40
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

はぁ?」  おもわず、すっとんきょうな返事をしてしまう。自分に言われたわけでもないのに。 「朝から、……いや、その」  舞は、そっぽをむいて黙っている。 「え?」 「……なんでもない」  なんだろう。  なんだか、クラスが浮ついている。  もう一度、蓮のほうを見る。  目が合った。

2022-10-12 08:01:41
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  どきり、とする。  なんだか、やけにじいっと、こちらを見ていた。へんに思われたかな、と一瞬いろんなことが頭をかけめぐる。目をそらそうとする。できない。  どきどきする。  しばらく、そのまま──、  蓮が、席を立った。 (え、)  どうしてか、 pic.twitter.com/rxf5Lq48ac

2022-10-13 08:01:48
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

かあっと、顔が赤くなるのを感じる。緊張で手が震える。  こちらに、歩いてきている。ざわりと、ざわつく視線を集めながら。 「えっと、」 「……及川さん、」  呼ばれたのは、綾音だった。 「はい、」  綾音は、ひどく上ずった返事をして、立ち上がった。

2022-10-13 08:01:48
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  綾音は、とても背が高い。だから、ふたりが向かい合って立つと、蓮の目線は、綾音の唇のあたりになる。  それでも、蓮は、見下ろすように綾音の目をみていた。  蓮が、綾音の左手首をつかんで、引いた。  ふたりは、無言で教室を出た。  保美は目を伏せて pic.twitter.com/tgH5WS9F1G

2022-10-14 08:00:12
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

いた。目の間を通りぬけざま、……蓮の左手が、綾音の大きな胸のふくらみに、すっと触れるのが見えた。  ふたりが通り過ぎてから、保美は、そっと顔をあげた。  舞のいるほうを、見ないように気をつけて。 *  蓮と綾音は、昼休みまで戻って来なかった。 *  ずん、と音がした。  まただ。

2022-10-14 08:00:13
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  しばらくして、低い悲鳴が。  そっと、窓の外に目をやる。それよりも早く、何人もの女子が窓のところに群がっている。  きゃあっと、叫び声。真っ黄色の、からまった風のように浮ついた。  しばらくして、蓮が入って来る。  いつもの、くらい顔のまま。い pic.twitter.com/JoEtRpjto1

2022-10-15 08:01:13
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

や、若干、目線が高いような気がする。 「栗山くん、大丈夫だった!?」  だれかがそう叫んで、駆け寄っていく。女子の人だかりができる。  男子たちは、びくりと怯えた顔をして、顔をそむけたり、うつむいている。  保美は、席についたまま、はあっとため息。  いったい、なんだというのか。

2022-10-15 08:01:14
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  こつん、こつんと足音が、こちらに寄ってきて、目をあげると、  すぐそばに、蓮が立っていた。 「なんで、」 「え?」  しずかな、少しふるえた声で。 「……なんで、おまえには効かないんだ?」 「なにが?」  ぎょっとして、保美はくるりと教室を見回し pic.twitter.com/kYwVVYAORe

2022-10-16 08:01:08
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

た。  みんながこちらを見ている。  一瞬、かあっと熱くなって、それから寒気が。鳥肌が全身にたつのがわかる。アキレス腱が緊張して、喉が痛くなる。吐きそうだ。  それから、気がつく。  目線だ。  蓮を中心にからみあっていた目線が、いつのまにか保美に集中している。

2022-10-16 08:01:09
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  まん丸く見開いて、……ピントのあわない目で、こちらに、顔を。 「効かない、って……なにが、」  蓮は、ちょっと目を伏せぎみに、ねめつけるようにこちらをみて。  かすかに震えながら。 「おれの、……能力が、……」 「えぇ?」  かたん。  かたん。 pic.twitter.com/x9OpnuNIqH

2022-10-17 08:00:38
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

かたかたん。  なにかが、ゆれる音がした。  地震!?  とっさに、立ち上がる。まわりを見る。誰も、揺れに反応していない。  ただ、こちらを見ている。  机、教卓、ロッカーの上の花びん、筆箱──、  なにもかもがたがたと揺れているのに、蓮の体は、ぴくりとも動いていない。

2022-10-17 08:00:38
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち 「なんで……、」  凝視する。  それから、ようやく気づく。  浮いている。  蓮のうわぐつの底と、床のあいだに、2センチほどの隙間が。    ぼそりと、蓮の唇が動いた。  いつも伏せている目を、ぎゅっと睨むようにかたく細めて、 「おまえは、おれの念 pic.twitter.com/iGqG2NesYu

2022-10-18 08:00:11
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

波をはね返して、」 「なに、言ってるの?」  ねんぱ。現実離れした単語に、頭が痛くなる。  いや、本当に頭痛がする。かすかな、偏頭痛が。  ずきん、ずきんと、だんだん大きくなって、  少しずつ、何も考えられなくなって……、  ──しばらくして、すうっと頭が晴れた。

2022-10-18 08:00:11
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち 「……どうして、おまえ、だけが──」  ぐちゅり、といやな音。  脳がねじれる音だった。蓮の。  耳から、血が吹き出した。それから、みしりと音をたてて顔に亀裂が入った。ぼきぼきと骨が動く音とともに、かたちが崩れて、  蓮の体は、少しずつ、肉塊にか pic.twitter.com/p7aepEdLGH

2022-10-19 08:00:22
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

わっていった。  保美は、ボンヤリとそれを見ながら、途方にくれていた。  ああ、好きだったのに。 (エスパー 了)

2022-10-19 08:00:22
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち 学校の怪談(1月12日 篠田崇) 「……ここだ、」  真新しい懐中電灯を、階段の下に向けて。  ふたりは、夜の階段を、歩調をあわせて歩いている。詰め襟のホックをきっちり留めた学生服の男の子と、紺のブレザーをきた女の子。少年が少し先を歩き、そのあ pic.twitter.com/y2pBCfO4LI

2022-10-20 08:00:13
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

とを少女がついていく。  ふたりの体格は、よく似ている。細くて、小柄で。髪質はぜんぜん違う。少年はきれいな黒髪で、男にしてはすこし長い。くせのないストレートヘア。少女は、ふんわりと跳ねたくせっ毛に、赤い髪留めをのせている。  足音は、ちょうど同じリズム。  コツ、コツ、コツ、と。

2022-10-20 08:00:14
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  きょうだいのように、似た空気。 「ねえ、」  少女は、ねーぇ、と、ちょっと面倒くさそうに声を放り投げる。 「ほんとに、この階段でいいの?」 「間違いないよ、」  少年の声も、浮き立つようではなく、  ただ、すこしばかり早口で。 「……北校舎に階段 pic.twitter.com/GZGvzm5q3k

2022-10-21 08:00:13
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

は2つあるけど、……昇降口から30歩、って。それに、夕日。窓が東側にあるのは、この階段だけで、」 「どうでもいいけど、」  本当にどうでもよさそうに、少女がさえぎる。  大きく手を振って。 「この、先にさ。……本当に、──」 「七不思議の。……きっと、さいごの一つが。」

2022-10-21 08:00:14
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  こんどは少年が、少女の言葉をさえぎる。はきはきと早口で。 「それ、……なんだっけ?」 「言ったじゃん。……覚えてないの?」 「あたし、物忘れが激しくてさあ、」  あっけらかんと、目をそらして。  こつ、こつ、こつ。  ふたりは、まだ階段をおりてい pic.twitter.com/jkXtjrKqvj

2022-10-22 08:01:11
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

く。  まだ、下にはつかない。踊り場にも。 「……7つじゃ済まないんだって話、しただろ」 「したっけ?」 「学年ごとに、沢山あるんだ、」 「不思議が?」 「そう。……たとえば、」  ひとつごとに、指を立てながら、かぞえあげる。 「……真夜中にさまよう影狼の話。」 「それから?」

2022-10-22 08:01:12
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち 「プールの巨大魚の話。」 「それから?」 「鏡のむこうから手がのびてくる話。」 「それから?」 「図書室の蜃気楼の話。」 「それから?」 「真っ赤な糸をはる蜘蛛の話。」 「それから?」 「どこにでも現れる、座敷童子みたいな──、」 「ほら!」  少女は pic.twitter.com/mvILLJqNFS

2022-10-23 08:00:10
拡大
楠羽毛 @kusunoki_umou

、ぐっと指をふって、 「もう、7つより多い!」 「だから、そう言ったじゃんか。……ちゃんと記録して集めると、学年ごとに、それぞれ10や20じゃきかないくらいの怪談があるんだ。それに、実際に見たって人も、──」 「ほんとうに?」 「本当に。だから、……この話も、きっと。」

2022-10-23 08:00:10
前へ 1 ・・ 7 8 ・・ 11 次へ