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楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  特に、肘と、左肩。ゆうべからだ。歩きながら、空をちょっとだけ見上げる。それから、歩調をもどして、また舞に追いつく。 「なんか、顔色悪いよ。だいじょうぶ?」  舞は、立ち止まって、ひなたの頬に顔を近づけてきた。ちょっときつめの眉を、ぎゅっと寄せ pic.twitter.com/L9932ovl0D

2022-11-18 08:00:10
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て。 「うん。……マイちゃんこそ。」 「なにが?」  いいながら、舞は、もうもとのように歩きだしている。いつものように、ひなたの一歩前を、すたすたと、早足で。 「ううん。……なんでもない、」  ひなたは、頷いて、また歩きだした。ふたりが渡りおえたところで、ちょうど、信号が赤になった。

2022-11-18 08:00:11
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち * 「塚本さんもさあ」  昼休み──、  渡り廊下を、つかつかと大きな音をたてて歩いているのは、図書委員の吉岡愛梨。すらりと、モデルのようにまっすぐな姿勢で、大股に。うしろで縛った長髪は、歩くのにちょっと遅れて、うなじで前後に揺れている。  ひな pic.twitter.com/3RWxK3EhtN

2022-11-19 08:00:10
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たは、その横を、歩調をあわせて、しずかに歩いている。ふたりの手には、両手で抱えるくらいの段ボール箱が、ひとつずつ。愛梨のほうは本でいっぱい、ひなたの箱はその半分くらい。それでも、けっこう重い。 「……ああいうの、やめてほしいんだよね。自業自得っていうか。」

2022-11-19 08:00:10
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  愛梨は、おもわず漏れでてくるように、……それにしては大声で。まわりに誰もいないのを、いいことに。──いや、そうでなくても、この子はきっと、同じように言うだろう。たとえ、本人がとなりにいても。 「そうだね、」  と、ひなたはにこにこと笑って、相 pic.twitter.com/9qTHS7T59w

2022-11-20 08:00:10
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槌をうつ。愛梨がなんのことを言っているのかは、よくわからない。それでも、……とにかく、笑ってみせる。いつものことだ。 「加藤さんなんか、ほっとけばいいのに。……なんにも知らないくせに、ああいうことに首を突っ込むから!」 「ほんとに、そう。」

2022-11-20 08:00:10
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち 「ねえ──、あ、ごめんね。持たせちゃって」 「ううん、こういうの好きだから」 「まえも、こうやって手伝ってもらったけど──、あれ、誰だっけ。岡野さんじゃなくて……、」 「なにが?」 「ううん」  喋っているあいだに、渡り廊下をぬけ、何人かの先生とす pic.twitter.com/t84pTM5W2k

2022-11-21 08:00:11
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れ違いながら、図書準備室にはいる。  きれいに整頓された作業机のうえに、もう、印刷されたバーコードラベルが用意されている。ブックフィルムと、定規と、カッターマット。 「さて、やりますか。」  愛梨は、たのしげに笑って、すとんと箱をおろした。 *  放課後──、

2022-11-21 08:00:12
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  日はとっくに暮れかけて、ぼんやり暗くなった教室で。ひなたは椅子をうしろにむけて、かるく顎に手をあてた姿勢で、話を聞いている。  むかいあって、ショートカットの頭にかすかにねぐせのついた、小柄な少女。ぎゅっと目をきつく細めて、にらむような顔つき pic.twitter.com/p2FbCxQXt7

2022-11-21 08:00:22
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の、頬にもなんだか力が入って、ぐっと拳を握りしめるようにして座っている。  中嶋百花。 「あほでしょ!」  と、吐き捨てる。 「あいつ、ばかじゃないの」 「うん、そうだね」  間髪いれずに頷いて、ひなたはにっこりと笑う。

2022-11-21 08:00:23
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち 「なんだか知らないけど、委員長づらして。……わたしが、何をしようが、かってじゃない。べつにさ……、」 「そうだよねえ」 「なあんにも、わかってない!」  はぁっと、叫ぶように大きく息をはいて。  百花は、かたかたとタイピングをするように机を指先で pic.twitter.com/KnLbcrVS0O

2022-11-22 08:00:10
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たたいて、 「いっつも、えらそうにして。あたしが──、」  そこまでいって、ぎゅっと唇をむすぶ。  ひなたは、にこにこと笑って、 「どうしたの?」  と、ききかえした。  百花は首をふって、ちょっと上目づかいに黙ってから、机のなかに手をいれて、 「……これ、」

2022-11-22 08:00:11
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  低い声で、ぼそぼそと言いながら、青い大学ノートを取り出してみせる。 「読む? つづき、書いたんだけど」 「ありがとう」  ひなたは、すっと受け取って、すぐに机の上に開いてみる。金釘流のくせ字で、びっしりと埋まっている。ひなたは、何度かまばたきを pic.twitter.com/bPpHFbg19X

2022-11-23 08:00:10
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してから、すっと視線をあげた。いつものことだが、目がちかちかして、とても読めない。 「こないだの、面白かったよ。」  そういって、ひなたはにっこりと笑う。 「でしょお?」

2022-11-23 08:00:11
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  百花はぐっと手に力をこめて、大声をあげた。それから、……どんどん早口になって、日が完全にくれてしまうまで、ほとんど一人で喋り続けていた。 *  ひなたは、ぼうっとしながら、天井から音がするのをきいていた。 *  すっかり日が暮れて──、  珍 pic.twitter.com/2MD0VKJGor

2022-11-24 08:00:11
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しく、ひとりで帰る。闇のなか、街灯のかげが、ぽつんぽつんと、さみしげに伸びている。大通りから2回曲がると、車はほとんど入ってこない。古い舗装の、人通りのない脇道。  ぼうっと、なにを考えるでもなく。

2022-11-24 08:00:12
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  街灯のしたに、誰かが立っていた。ちらりと視界にいれて、通りすぎる。……やっぱり、関節がおかしい。膝も、肘も、指の曲がるところも。 「こんにちは、」  だしぬけに、声。  ふりむくと、さっき通りすぎたところにいた男が、……すぐそばに、立っていた。 pic.twitter.com/imYbpLVZ4u

2022-11-25 08:01:27
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ひなたの父と同じくらい、いや、それよりは少し若いかもしれない。灰色の、ひどくよれたジャンパーに、白いズボン。どちらも、薄汚れている。 「はい、」  ひなたはすぐに足をとめて、耳をかたむけた。 「あの、……ちょっと、お話を」  がらがらした、高い声で。かすかに指をふるわせながら。

2022-11-25 08:01:28
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち 「なんですか?」  ひなたは、へいぜんと聞き返した。 「お話を、させてください。……あの、」  気がつくと、男の手がひなたの右手首をつかんでいた。ぐい、と力がこもる。ひなたはすっと手首から力をぬいて、 「はい、……」  と、相槌をうつ。  男の唇が pic.twitter.com/focDyzmwS5

2022-11-26 08:01:10
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、ひなたの耳にぐいと近づいて、口臭が鼻に、──  左側の手首が、ぐい、と強く引かれた。 「ちょっと!」  かん高い声。ひどく焦ったような。  いつのまにか、すぐそばに舞がいた。きつい目をして、こちらをにらみつけている。  ──わぁっ!

2022-11-26 08:01:10
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  と、大きな声をあげて、舞は、ひなたの腕をおもいきり引っ張った。奥歯を噛み締めて男をにらみつけながら、走る。  男は、追いかけてくるでもなく、ただ、街灯の下に、ぼうっと立っている。  3分ほど走って、……ようやく、人どおりの多い国道に出た。舞は

2022-11-27 08:00:02
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、信号柱に手をかけて、懸命に息を整える。心臓が割れそうだ。  舞は、ひなたの顔をみる。きょとんとして真顔でいる。あれだけ走ったのに。人形みたいに白い顔で、汗ひとつかかずに。 「あんた、……ばかじゃないの?」  おもわず、吐き捨てるようにそう言っても、 「そうね、」

2022-11-27 08:00:02
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  ひなたは、しずかにそういって、にっこりと笑っただけだった。 *  白い糸が。  かたかたかたん、と音をたてて、ふるえていた。 *  翌日──、  女子トイレ。ひなたは、ぼうっと何も考えずに手を洗って、ハンカチで拭く。となりで手を洗っていた少女 pic.twitter.com/Pc5h3bZ9H0

2022-11-28 08:00:10
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が、あ、と小さく声をあげる。濡れた手を前に一瞬、動きをとめて。ハンカチを忘れたらしい。  貸そうか、と口に出すまえに、スカートで拭いてしまった。見られていることに気づいたのか、少女はばつが悪そうに笑って、それから、 「ねえ、……大丈夫?」

2022-11-28 08:00:10
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  とつぜん、眉をひそめてそう言われて、  ひなたはきょとんとして、あいてをじっとみた。  赤い髪留めをした、小柄な少女。  同じクラスにいたはずだ。どうしてか、名前は思い出せない。  この子は、誰だったか──、 「うん、大丈夫。」  いつのまにか pic.twitter.com/7SQWOV0YMh

2022-11-29 08:00:10
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、口が勝手にうごいて、そう答えている。 「そう、ならいいけど。」  なにをいっているんだろう。

2022-11-29 08:00:11
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  ふと、右袖をひかれたような気がして、腕を見た。糸だ。制服の手首から、太めの白い糸が、上に向かってとびだしている。袖がほつれたか、と思って、反射的に左手ではらう。糸は動かない。ぴん、と張っているようだ。見た目より、ずっと硬い。  かたかた、か pic.twitter.com/nLWOoj5400

2022-11-30 08:00:10
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たん。  へんな音がした。たぶん、天井から。  糸をはじいてみる。音がして、ぐっと引かれる。袖ではなく、手首が。じかにつながっているようだ。関節に。

2022-11-30 08:00:11
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  別の糸が、左肘から、天井にのびていた。あれ、と思うまもなく、首がへんな方向に曲がって固まってしまう。右足が。左の膝が。  あッ、と声がした。  あらぬ方向に関節がうごいて、からまってしまう。右腕が首のまわりでぐるりとねじれて、両足は背中に。 pic.twitter.com/uK8daOZK4n

2022-12-01 08:00:10
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どうしてか、ひなたの体は床につかずに、空中にとどまったまま。 「……ねえ、そーゆーときはさ」  少女が、ぼそりと言う。どんな表情をしているのかは、ひなたには見えない。 「一回、部品をはずして、組み直したほうがいいんじゃない? 知らんけど」 「そうね、」  と、だれかが返事をした。

2022-12-01 08:00:11
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち 流星(3月9日 竹内あおい)  夜。 「あーあ、……学校、行きたくねぇな」  わざわざ口に出して言う。だれも聞いていないのに。  別に、なにがあるわけでもない。  ただ、……飽きた、だけ。 *  いつもの制服。  いつもの靴。かばん。  それでも pic.twitter.com/82tjMvpHOC

2022-12-03 08:01:11
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、今日は。 *  いつもの道を、反対側に歩く。  ずんずん、ずんずん。  住宅街をぬけ、いつもと反対側に交差点をまがり、県道をまっすぐ北へ。駅を横目に、歩道橋の下をくぐり、線路ぞいを、  歩く。  鞄が邪魔になったので、電柱の下に放り出した。

2022-12-03 08:01:12
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  電柱に、知らない地名の表示が、あって。  だんだん、足が重くなってくる。  そのくせ、体は軽い。 (……いま、何時かなあ)  時計を探す。あちこち見回して、理容室の看板を見る。3時。まさか!  ちゃんと動いている時計は、ないだろうか。 「スイマセ pic.twitter.com/flN0qOivqk

2022-12-04 08:00:11
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ン、」  ボンヤリした足取りでこっちに向かってくるサラリーマンに、すれちがいざま、すいと顔を近づけて、 「いま、何時ですかあ?」  ぎょっとした顔をして、こちらを見る。  相手が口を開くまえに、腕時計を盗み見る。十時半。さっと身をひるがえして、 「ありがとうございましたァ!」

2022-12-04 08:00:12
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  さけんで、走り去る。  ポケットから財布をだして、小銭をかぞえる。100円玉が8枚、50円玉が2枚、10円玉が1枚。それだけ。  また、歩く。 *  知らない駅。  名前だけは、聞いたことがある気がする。使ったことのない路線の、見たこともない電 pic.twitter.com/qevZHkzuQE

2022-12-05 08:00:10
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車。オレンジ色の。  改札のむこうでドアが閉じるのを、ぼうっと見る。しばらく迷って、券売機にむかう。画面の料金表をにらんで、910円の切符を買う。時刻表はみないで、そのままホームに出る。  ホームには、ミニスカートで肩を出した女がひとり。

2022-12-05 08:00:11
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  寒そうだな、と思う。それから、……いいな、と思う。  電車がきた。  行き先の表示を見るが、よくわからない。知らない地名だ。  乗る。ドアがとじる。一瞬、うしろをふりむきかけるが、やめて、座席にすわる。ため息。おしりがむずむずするような感じが pic.twitter.com/WWXrIXuQ1M

2022-12-06 08:00:10
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する。落ち着かない。  窓の外の景色が、目に入る。知らない街だ。  電車がゆれる。 *    どうにでもなってしまえ、とおもう。  何があったわけでもない。べつに、  少し疲れた、だけ。 *  気がつくと、となりに、知った顔の少女がすわっていた。  夢か、とおもう。ぼんやりした頭で。

2022-12-06 08:00:11
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  それから、現実だと気づく。  赤い髪留めをした、小柄な少女。同じ制服。顔はよく知っているのに、名前はどうしても思い出せない。 「はよっす、」  と、少女がわらいかけてくる。あおいはちょっと安心して、  時間のことを考える。もう、お昼ごろだろうか pic.twitter.com/sBMagoUoKL

2022-12-07 08:00:10
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。それとも、もっと──、 「どこまでいくの?」 「え……、」  答えかけて、口をつぐむ。なにも考えてはいない。  かわりに、問い返す。 「あなたは?」 「さあ? 覚えてない」 「……なに、それ」 「しらない!」

2022-12-07 08:00:11
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  ぷぷ、と小さく吹き出す。ふたりで顔を見合わせて、また笑う。少しがさつな、高い笑い声が耳にひびく。 「……ねえ、」 「ん?」  かたんかたん、と電車がうごく。 「……終点まで、いくらで行けるのかなあ」 「え?」 「これさあ」  スカートのポケットから pic.twitter.com/QUOSSzY6XM

2022-12-08 08:00:12
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、折れてしまった切符を取り出す。910円。少女はきょとんとして、額面をみてから、ちいさく笑った。 「乗り越しのお金は?」 「ない!」 「貸すよ」 「え?」 「一緒に行こう。終点」 「いいの?」 「いいよお」  ふたりで、また噛み殺したように笑う。

2022-12-08 08:00:12
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  車掌がやってきた。ふたりは、反射的に首をすくめた。平日の昼間。いいわけを考える。思いつかない。どきどきしているうちに、いってしまう。  また、ふたりでわらう。 「終点ってどこなの?」 「しらない! 山じゃない?」 「なんだそれ」 「たぶん、そう」 pic.twitter.com/znZsEoNSWx

2022-12-09 08:00:13
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「たぶん?」 「たぶん!」  電車がゆれる。  平日の昼間。乗客は、それほど多くない。ふたりは、ゆったりと背を座席にあずけて、喋りつづけた。 *  少しずつ、日がかたむいてきた。窓の外を見る。ビル街。家のまわりでは、見たこともないような。 「……スーツばっかし」

2022-12-09 08:00:13
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  少女が、となりで小さくつぶやく。 「え?」 「世の中、サラリーマンしかいないみたい。面白いねえ」 「そーねぇ」  しばらく考えて、自分の制服の胸のところを、つまむ。 「……、似たようなもんか」 「あたしたちも?」 「そお。この人たちも学校に来たら、 pic.twitter.com/yNDXKicKZM

2022-12-10 08:00:10
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同じこと思ってんじゃない」 「世の中、中学生しかいないのか! って? 宇宙人かよ」 「ばーか」  また、けたけたと、声をあわせて笑う。 *  電車がゆれる。  いつのまにか、少女はかすかに寝息をたてている。  あおいは、ふと不安になって、少女の手を握った。

2022-12-10 08:00:11
楠羽毛 @kusunoki_umou

#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち  握り返す、その力を感じて、  安心した。 *    夕方──、 「お腹へった!」 「ちょっとまって、トイレいってくる」  誰もない終点のホーム。壁ぎわの時計をみる。  5時半ごろか。  もう、日は暮れかけている。  改札の向こうに、大きな資材置場。そ pic.twitter.com/bqdup6jaO9

2022-12-11 08:00:11
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のむこうには、何もない。遠くに川、そのむこうは山。  山のあいだに、大きな夕陽。 「あ、」  トイレから戻ってきた少女が、手をふきながら声をあげる。 「一番星!」 「本当だ、」  ふたりで、見上げる。それから、 「あれ、流れ星じゃない?」 「え、まじで」 「ほら、あそこ!」

2022-12-11 08:00:11
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#朝の連続ツイート小説 #へんな子たち 「願い事、いわないと!」 「えーっと」  すっと深呼吸。している間に消えて、  また、ひとつ。 「……学校がなくなりますように、学校がなくなりますように、学校がなくなりますように!」 「せっかくの願い事、それ?」 「それしか、ないもん」 「ふーん」 pic.twitter.com/BokFbjmmQe

2022-12-12 08:00:11
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ふたりは、からからと笑った。 *  翌日──、 「……それで、大丈夫だったの?」 「大丈夫なわけないじゃん!」  あおいは首をふって、ぎゅっと眉根をよせた。

2022-12-12 08:00:12
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