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罰につながる行動を回避することができないとされる。サイコパスについての初期の系統的研究は、実際、みな恐怖機能不全仮説に基づいている。そして、恐怖機能不全仮説は、サイコパスが示す以下についての障害をうまく説明できる。嫌悪条件づけ、脅威予期に対する自律神経反応、視覚脅威プライミングに
2017-01-29 17:58:26
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対する驚愕反射の増強、受動回避学習、応答逆転などである。しかし、恐怖機能不全仮説に由来する様々な考えは、いくつかの問題に直面している。 第一に、大体においてこれら様々な考えは、認知レベルでも神経レベルでも実際の証拠が示されていない。
2017-01-29 18:02:35
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論文の著者たちは、恐怖システムを実証的にほとんど説明していないのである。例えば、想定されている恐怖システムには、どれだけの入力があり、入力に対して恐怖システムはどのように反応し作動するのか、示すことができていない。
2017-01-29 18:05:45
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恐怖システムの中で、サイコパスを説明するものとして比較的詳細に記述されているのは、行動抑制システムモデルだけである。図5-2にこのモデルを示す。ここでは次のようなことが提唱されている。 pic.twitter.com/ZtxO6TBxe6
2017-01-29 18:09:20
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単一の恐怖システム、すなわち行動抑制システムが存在し、このシステムは罰をもたらす刺激に対して自律神経反応を生じ(古典的条件づけ)、そして罰を受けうる刺激に反応するのを抑制する(道具的条件づけ)。
2017-01-29 18:12:09
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行動抑制システムモデルは、恐怖システムへの入力と出力がどのようなものなのかある程度示している。しかしそこでは、恐怖機能不全仮説由来の様々な仮説が暗に前提としている主張、すなわち単一な恐怖システムが存在しているということが想定されている。
2017-01-29 18:16:20
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けれども、このことから恐怖機能不全仮説の第二の問題が生じてくる。その他の実験研究によると、恐怖システムは単一なものとして存在するのではなく、恐怖という用語で一括して述べられているものの、その中には少なくとも部分的には分割可能で、ある特定の処理形態をなしている一連の神経システムが
2017-01-29 18:20:00
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存在することが、強く示唆されている。例えば、嫌悪条件づけと道具的学習は、恐怖システムが関与していると考えられている処理形態である。そして、嫌悪条件づけと道具的学習を司る神経回路は互いに分離可能であることが明らかになっている。
2017-01-29 18:23:30
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すなわち、偏桃体中心核が損傷されると嫌悪条件づけは障害されるが、道具的学習は行われる。一方、偏桃体外側基底核が損傷されると道具的学習は障害されるが、嫌悪条件づけは行われる。さらに、幼少期に偏桃体が損傷されると新奇恐怖(ネオフォビア)が大きく減少する。
2017-01-29 18:27:48
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例えば、そうしたサルの乳児は、新しい物をまったく怖がらなくなる。しかし、同じく偏桃体に損傷のあるサルの乳児であっても、強度な社会恐怖を示すものもいる。すなわち、他のサルの乳児に対する恐怖反応が逆に上昇している。
2017-01-29 18:32:14
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こうした知見から、嫌悪条件づけ、道具的学習、社会恐怖は「恐怖」システムのなかでも部分的に分離可能であることが強く示唆される。 恐怖機能不全仮説の第三の問題は、恐怖理論がサイコパスの示す非常に高度な反社会的行動を適切に説明できないことである。
2017-01-29 18:35:33
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サイコパスとは、激しくかつ頻繁な攻撃を含む道具的反社会的行動を示す障害である。そして、サイコパスは、目的を達成するために反社会的行動を用いることをいとわない。このことは、通常、サイコパスは、社会化できなかったために反社会的行動をとると解釈される。
2017-01-29 18:39:13
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例えば、厳格で権威主義的な、あるいは力でもって有無を言わせず、罰則でもって知らしめるという養育方法に比べ、教育的に行う(悪事を働いた場合、それが他人にどのような影響を与えるのかということに子供の注意が向くようにしむけ、そこから共感をうまく引き出す)やり方のほうが、より適切に
2017-01-29 18:48:01
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道徳的社会性を身につけさせることができる。📌 事実、共感は道徳的社会化を促進するが、恐怖は妨害するとの指摘がなされている。 罰則に基づく教育方法は、年齢に関係なく道徳的社会化に逆効果であることが示されている。
2017-01-29 18:51:53
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さらに言うならば、罰則に基づくやり方に有用性があるとしても、せいぜい子どもが非行をしている時に無視しているよりはまだましであるという程度でしかないとされている。
2017-01-29 18:54:16
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📌加えるに、条件づけの理論及びデータによると、無条件刺激(US)と関係づけられることになる条件刺激(CS)は、USとの間に条件づけが生じやすいものである必要がある。嫌悪条件づけを用いて社会化を果たすためには、ここでのCS(親が子供に嫌悪してほしいと考えている非行など)は、
2017-01-29 18:59:03
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US(子供を叩く親)との間に条件づけが行われることが必須である。しかし、これは非常に難しい。📌家庭において罰則に基づく教育法を用いても、罰はほとんど非行の減少に寄与しない。このことは、嫌悪条件づけをしたいCSは、親の罰則というUSとあまり条件づけられないことを意味している。
2017-01-29 19:03:48
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📌その代わりに、USと条件づけられるCSは、USを行う人というようになってしまいがちである。つまり、こうした家庭では、嫌悪条件づけは生じるが、USとCSの関係づけは、肉体的苦痛と反社会的行動というよりも、肉体的苦痛とそれを与えた親になってしまう。
2017-01-29 19:08:16
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📌実際に、罰則に基づく教育法をとる家庭では、罰を受けた子供は非行(条件づけされにくいCS)をすることには恐怖を感じないが、罰則を受けそうな相手(条件づけされやすいCS)に対してしばしば恐怖を覚える。
2017-01-29 19:13:02
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恐怖仮説の第四の問題は、この仮説自体の本質的な事柄に関連する。つまり、社会化は罰則によって達成されるに違いないという考え方自体である。もし健常成人が罰を恐れて反社会的行動を避けているのだとすると、健常な子供も同様に罰を恐れてあらゆる規則や非行を判断しているに違いないと考えられる。
2017-01-29 19:18:10
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もしわれわれが授業中に話をすることと他人を叩くことの両方とも、罰を受けないようにするために避けるのだとするならば、このふたつの罪を区別する理由はない。しかし、４章で述べたように、健常な発達をする子供は、道徳(他者への影響から定義される)と慣習(社会秩序への影響から定義される)の
2017-01-29 19:22:58
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違反を、３６か月になれば区別することができる。つまり、子供はすべての違反を同じようには判断していない。むしろ、他人に害を与える違反と単に社会秩序を乱すだけの違反を区別しているのである。
2017-01-29 19:26:25
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(まとめ) 恐怖仮説は、これまでに相当の知見を生み出してきたが、現在はサイコパスの発症モデルとしては多くの問題に直面している。これは、恐怖機能不全仮説が誤っているというのではなく、むしろまだ十分に明確になっていないと考えるべきである。Id. at 106
2017-01-29 19:30:00
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暴力抑制機構モデル 道徳的社会化にとって共感性が重要な役割を果たすということが、サイコパスについての暴力抑制機構(VIM)モデルの元来の土台になった。このモデルは基本的には、ヒトを含めた多くの社会的動物は同種の動物が苦痛を受けていることを不快に感じるという現象に依拠している。
2017-01-30 19:33:44
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実際、ネズミやサルなどでも、同種の動物が受けている不快な出来事を終わらせるような道具的反応(レバーを押したり鎖を引くなど)を示す。ほとんどの人は、他人が示す苦痛をみることを避ける傾向があることが示されている。つまり、人は他人の悲しみや怒りのシグナルによって打ちのめされる。
2017-01-30 19:41:51
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こうして、他人に苦痛を与える行動をとる可能性を低下させるか、他人の苦痛を取り除く行動をとる可能性を高める。大抵の人間は他人の苦痛を嫌悪する。さらに、他人の悲しみや恐怖を示す手がかりが提示されると、それにより物理的攻撃、財産争い、攻撃的性行動の可能性が減少する。
2017-01-30 19:46:24
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VIMは、苦痛の手がかりや他人の悲しみ・恐怖の表情によって活性化され、自律神経活動、注意、脳幹の脅威反応システムの活動(通常は体がすくんでしまう)を亢進させるシステムだと考えられている。(図5-3参照) pic.twitter.com/7FMZRGaXHs
2017-01-30 19:51:14
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このモデルでは、道徳的社会化は、苦痛をもたらす行動(他人を叩くなどの道徳的違反行為)とそれによる機構の活性化が対になることで生じる。道徳違反との間に関係づけが生じることが、その機構の引き金になる。健常に成長する子どもは、まず他人の苦痛に対して嫌悪を抱き、そして社会化を通じ、
2017-01-30 19:56:09
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他人に苦痛をもたらす行動を頭に思い浮かべることに対しても嫌悪するようになる。サイコパスではこのシステムに障害があり、他人に苦痛をもたらす行動がVIMの引き金にならないと考えられている。 もともとは、VIMモデルは道徳的発達の必要条件となる認知モデルを詳述するものであった。
2017-01-30 20:00:49
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苦痛の手がかりをみることで、嫌悪の情動反応を生じさせるようなシステムが幼少期からすでに備わっていることが示唆されていた。そして、このモデルは既存のデータの多くをうまく説明できるものであった。例えば、そのモデルによって、なぜ人は道徳と慣習の違反の区別ができるのかが説明可能であった。
2017-01-30 20:05:02
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サイコパスは道徳と慣習の違反の区別ができないだろうと予測されていたが、事実それは確認されている。この障害については、悲しみや恐怖の表情に対する反応性が悪いことと関連しているだろうと推定されていた。研究によって、サイコパスは他人の苦痛に対する自律神経反応が減弱していることが判明した
2017-01-30 20:09:01
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健常者に「犠牲者」のシーンを見せると恐怖システムが刺激され、それにより驚愕反射の増強を示すが、サイコパスではこのような影響がみられないことが明らかになった。また、サイコパスは子供でも大人でも、悲しみそして特に恐怖の、顔や声の感情の状態についてのラベリングにおいてさえ障害を示した。
2017-01-30 20:13:24
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しかしながら、VIMモデルはサイコパスの道具的反社会的行動をうまく説明し、モデルから導かれた様々な仮説を実験的に証明したが、それでも難問に直面している。というのは、反応群調節仮説と恐怖仮説によってもたらされた多くのデータを説明できないのである。
2017-01-30 20:16:43
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さらに、道徳観念や善悪の判断力の発達を成し遂げるうえで、生来の気質が社会化に与える影響についてのデータを説明できない。Kochanskaは、恐怖感情が気質として重要な役割を果たすことを強調した。さまざまな方法で、恐怖心の強い子供は道徳や良心をより高次に発達させることを明らかにした
2017-01-30 20:22:19
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また、Kochanskaは、子供の気質が異なる場合、異なった社会化の達成のやり方で道徳的発達を促す必要性を強調している。こうした流れで、恐怖心の強い子供に対しては、母親が優しく接することでより道徳や良心の発達がもたらされることがわかった。
2017-01-30 20:30:35
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一方で、「恐怖心の乏しい」子どもに対しては、母子間の肯定的な側面(確かな愛着と母性的反応←？)をより引き出す、という社会化の仕方を用いることで、良心の発達が促された。 (まとめ) VIMモデルはサイコパスが示す道具的反社会的行動をうまく説明できるが、一方で、サイコパスの多様な
2017-01-30 20:35:19
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障害を説明できない。特に、VIMは反応群調節仮説と恐怖仮説に由来するデータの多くを説明できない。このようなことから、認知および神経レベルのモデルによる説明が発展した。それが、統合的情動システムモデルである。この発展モデルについては第７章で説明されている。
2017-01-30 20:38:29
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第５章の総括 サイコパスのどの認知モデルもまだ十分に説明できていない。サイコパスの理論は、システムの機能不全からどのように障害が生じるのかを説明するとともに、健常者の認知の理論としても同時に成立する必要がある。
2017-01-30 20:43:39
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反応群調節仮説の注意に関する説明は、現在の健常者における注意の理論および実験データと合致しない。 恐怖機能不全仮説も、様々な問題に直面している。行動抑制システムモデル以外については、理論に不明確な点が多すぎることが主な原因である。
2017-01-30 20:46:17
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単一の恐怖システムが存在するのではなく、多かれ少なかれ相互に関連し合った集合体システムが存在することを示唆する最近のデータから考えると、これは大きな問題である。
2017-01-30 20:49:35
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また、今のところ、恐怖反応に関与する神経構造を分離可能なものとして扱ったり、サイコパスの発症をうまく説明できる恐怖機能不全仮説から導き出される考え方はまだない。VIMモデルは、サイコパスにおいて道具的攻撃が現れることを十分に説明できる点で優れている。
2017-01-30 20:52:34
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しかし、サイコパスの示す障害を十分に説明しきれておらず、サイコパスの機能障害に関するあまりにも多くの実験結果に対して、何の洞察も与えることができていない。 まとめると、３つの認知的モデルはいずれも、サイコパスを完全には説明できていない。 第６章では、神経学的仮説について考察する
2017-01-30 20:55:56