不死者達の街で行われるヴォストニア最大の秋の祭り「黄泉返りの夜祭り」。 仲間たちと仮装して街に繰り出したリチャードとアンジェロは年に一度だけ祖国に帰ってくるという謎めいた紳士・メルヴィンと出会い、彼と共にミステリーを推理で解決するオリエンテーリングに挑む。 生と死が交わる聖なる夜に双子の王子と仲間たちの名推理が謎の闇に光を当てる! そして謎の紳士メルヴィンの正体とは?!
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セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「い、いきなりでかい声出すなよ、びっくりするだろ?!」 「あ、ごめん、つい…」 フロログに突っ込まれつつも、コホン、と咳払いをしてリチャードは皆に向き直った。 「助手は言ってたよな、机の上の食べ物が腐敗してるって。 お世話係がいたのに食べ物を腐敗させたまま放置するとは考えづらい」

2021-10-26 14:39:12
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「だからその料理が作られたのは恐らく世話係が来なくなった5日のうちに作られ、被害者が亡くなってしまったから腐敗してしまったんだよ。 で、ここでもう一つおかしなところがある」 「おかしなところ?」 リュウが真剣な表情のリチャードに問う。 「考えてみてくれ。 食べ物は腐敗していたよな?」

2021-10-26 14:39:49
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「目で見て一発で腐ってるってわかるってこたぁそれなりに時間経ってんだよな?」 アンジェロが言うのへリチャードが頷く。 「高温多湿の中、食べ物は腐敗してしまったけど…被害者の遺体はどうだった?」 リチャードの言葉を聞いた刹那、子供たち3人はあっ!と声を上げた。

2021-10-26 14:40:22
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「画家の男は眠っているようにきれいな姿だった…即ち高温多湿な室内に於いて腐敗を免れている。妙な話だな」 メルヴィンがズバリと言い当てる。 「そうなんです、恐らくこれは死因に関係があるものと見ています」 「いい着眼点だ」 リチャードの回答に頷くメルヴィン。

2021-10-26 14:40:54
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「んー、でも遺体が腐らないなんてありえるのか?生き物は死ねばみんな土に還るのに…」 フロログが言うと、 「確かに普通なら腐敗と分解が始まるな。だがそれを抑えられる特殊な成分があるとしたら?」 メルヴィンはフロログの方を振り返った。 「薬学の知識のある者なら知っているのではないかな?」

2021-10-26 14:41:26
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「おいフロログ!お前ん家薬屋だろ?なんかそーゆーのないのかよ!」 「そんないきなり言われてもあるわけ……あっ!」 リュウに揺すられながらフロログは何かを思い出したように声を上げた。 「そーいえば前に発売中止になった化粧品があったな…」 「化粧品?」 子供達がフロログの顔を覗き込む。

2021-10-26 23:25:09
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「きれいな色のパウダーなんだけどさ、毒性のある金属を顔料に使ってるからってうちの父ちゃん店に置くの断っちゃったんだよ」 思い出すような仕草で呟くフロログ。 「たしか顔料の他に保存料としても使われる金属とか言ってた。 それこそ剥製やミイラを作ったり、殺鼠剤に使うとかなんとか…」

2021-10-26 23:27:38
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「毒性のある顔料…」 リチャードは再び考え込むような素振りを見せた。 「被害者は絵描き…その類の顔料を使った絵の具がこの部屋にあると考えるのが自然だ。 でも…わざわざ絵の具を経口摂取する必要があったのか?」 「鋭いなリック。大きな足がかりを掴んだぞ」 メルヴィンが大きく頷く。

2021-10-26 23:28:33
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「あ、てことは、この絵描きさん、お腹空きすぎて絵の具を食べて死んじゃったってこと?」 リュウが首を傾げながら言うのへ、 「や、フツーに飯が食える環境でなんで絵の具を食わなきゃだめなんだよ…」 突っ込むアンジェロ。 「ということは何らかの形でその毒物を無意識に体に取り込んだと…」

2021-10-26 23:29:04
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「ここでもう一度部屋の様子を見てみよう。部屋は高温多湿で壁紙にはカビが生えていた…」 メルヴィンは部屋の挿絵を子供達に見せた。 その時… 「わかったぞ!」 興奮気味にリチャードが声を上げた。 「や、だからびっくりするっつってんだろ、でけぇ声出すなよ!」 …言ったアンジェロの声も大きい。

2021-10-26 23:29:45
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「フロログの言っていた保存料がもし顔料としてこのアトリエで使われていたとしたら…恐らくここだ!」 リチャードは部屋の緑の壁紙を指さした。 「伯父上に聞いたことがあるんだ、かつて美しい緑の発色を持つ顔料が存在したけど、強い毒性が発覚して回収騒ぎになったって!」

2021-10-26 23:32:00
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「ブラボー!ご名答だ、リック。 そしてここからは俺が補足をしよう」 まるで最初から全てを理解していたかのようにメルヴィンがリチャードに続く。 「この壁に使われている緑の塗料は『ヒ素』だ。ヒ素は塗料だけでなく防腐剤としてミイラを作ることにも使われた。しかし強力な毒性がある」

2021-10-26 23:32:56
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「そして更に厄介な性質としてヒ素はカビと結びつくとその毒性を部屋に拡散する。 つまり高温多湿な部屋の中で一日中過ごすこの画家は空気中にカビの胞子と共に放出されたヒ素を日夜体に取り込んでいたことになる…これこそがエトワールの言う不幸な事故の正体だ」 メルヴィンは高らかに言い放った。

2021-10-26 23:33:38
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「なるほど…家は古いからもう使われていないはずの毒性の壁紙が存在した。 それに最近作られた食べ物なら空気中の少量のヒ素では腐敗してしまうけど、それを長期に渡って吸い続け、体の中に蓄積していったとしたら…」 リチャードがメルヴィンを見上げて言うと、 「その通り、腐らない遺体の完成だ」

2021-10-26 23:35:06
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「被害者の死因はカビによる壁紙のヒ素の拡散、それに伴うヒ素中毒による中毒死…答えはこれですね?」 リチャードとメルヴィンは息を合わせて係員に問うた。

2021-10-26 23:36:15
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

ジャーン!とバンドマンのシンバルが裁断に鳴り響くと、 「大正解!おめでとうございます!」 弁士がどこから取り出したのか紙吹雪を放ち、見物人の喝采が5人に注がれた。 「やった!」 メルヴィンと拳を突き合わせ喜ぶリチャード。 まずは第一関門突破だ。

2021-10-26 23:39:15
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「それでは正解の証のスタンプとキーワードをお渡ししますね」 係員が5人の地図の記載欄に正解の証明スタンプを押していき、その上にサインをしていく。 そして5人にはそれぞれ文字が書かれたカードが手渡された。 「『T』だって」 カードに書かれた謎の一文字を見てリュウが呟く。

2021-10-27 00:11:47
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「キーワードは全部で6つ。全て集めて暗号を解読してくださいね! 次のミステリーもお楽しみに!」 ファンファーレと共に送り出す祭壇の係員達に見送られ、5人は次なるミステリーを目指しメインストリートへと入っていった。

2021-10-27 00:17:33
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

【Ⅴ】 続いて一行がやってきたのは広場を抜けたメインストリートの商店街だ。 どの建物もお洒落に飾られかぼちゃのランタンやドクロの人形、満開に咲いたマリーゴールドの鉢で飾られている。 豪奢なゴシック調のドレスを纏った不死者の女性達の姿も相まって実に華やかだ。 その一角に祭壇はあった。

2021-10-27 14:46:34
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「ようこそ、第二のミステリーへ!お、皆さんは第一問の正解者なのですね。第2問も楽しんでいってください!」 係員の不死者が言うと先と同様にバンドマンの曲に合わせて控えていた弁士が物語を語り始めた。 「さて、舞台は変わって王宮の兵舎のとある一室。 検死官エトワールは友人の元を訪れます…」

2021-10-27 14:47:26
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

**** その日エトワールは友人である陸軍小隊長モンターニュの元を訪れていた。 モンターニュは見知らぬ三人の男と話をしている。 いずれも山男風の風貌の男たちだ。 「失礼、モンターニュ。まだ会議中だったかな?」 「おお、エトワールか。気にしないでくれ。直に話し合いは終わる」

2021-10-27 14:48:27
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「君への来客としては珍しい風貌の客人だな?」 男達を見回し、エトワールは言った。 男達は皆一様に野趣溢れる服装をしている。 「実はこの度我が部隊では山岳救助の演習をすることになってな。 山に詳しい案内人たちに来てもらっているのだ」 モンターニュは山男達を指して答えた。

2021-10-27 14:50:49
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「わあ、山のプロが指導してくださるなら心配はありませんね。 演習が成功することをお祈りしております、閣下」 エトワールの助手・モワは笑顔でモンターニュを激励した。 しかし… 「山のプロか…それなら是非皆さんのお知恵を拝借したい」 エトワールは沢の水のように冷たい声で山男達に言った。

2021-10-27 14:51:25
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「貴君方はもしも私が山に入るとするならば、どのような助言をして下さるのかな?」 エトワールは三人の山男を見回して問うた。 「そういうことならお安い御用だ!」 と、汚れた粗末な服を着た木こり風の男が名乗り出た。

2021-10-27 14:52:56
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

木こり風の男は言った。 「今は秋だ、冬眠前の熊たちが冬眠に備えて脂肪を蓄えるために食べ物を探して凶暴化しているので気をつけたほうがいい。 春先になっちまえば、クマ公はやせ衰えて気も緩んでいるから危険はないんだが」

2021-10-27 14:53:44
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「あんたは初心者かな?」 今度は中年の赤ら顔の山男が言った。 「なら山で迷ったときはまず水を求めて沢に降りるといいよ。 沢は水が飲めるし辿っていけば山を降りられる。覚えておくといい」 言って赤ら顔の男はカラカラと笑った。

2021-10-27 14:54:32
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

最後に体が大きく無口で毛深い山男が少し間を置いて口を開いた。 「…山は恐ろしい場所だ、不用意に近づくもんじゃない。 特に山に入るときは雨具に気をつけろ、決していたずらに体を濡らすな。 低体温症を起こして夏だろうが低い山だろうが凍死の恐れがある」 言って男はエトワールをじろりと睨んだ。

2021-10-27 14:55:22
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「どうだろうエトワール、彼らがついていればきっと実りある演習になると思うのだが…」 興奮気味に言うモンターニュとは裏腹に、エトワールはぷかりとタバコをくゆらせ、気だるげに言った。 「悪いことは言わない、もっとまともなガイドを雇うべきだ。 正確なことを言っているのが一人しかいない」

2021-10-27 14:56:02
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

**** 「それでは問題です!エトワールは山男たちのどの証言について間違いだと気づいたのでしょうか。また、この中で唯一人正確なことを答えを出しだ山男は誰だったのか?正解をお答えください!」 派手なジングルの演奏と共に係員が次なる質問を一行に突きつけた。

2021-10-27 14:58:18
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「うーん、山の話か。正直これは範疇外だったなあ…」 リチャードが眉をハの字にして腕組みをした。当然である。 彼らは生まれてこの方王族として安全な王宮で生活しているため山道に投げ出されるような危険な事態を経験しているはずがない。 「後学のために答えだけでも知りてぇな…」 とアンジェロ。

2021-10-27 23:58:01
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「待て待て、まずは水だ、沢に降りよう!」 鼻息荒く言うフロログへ、 「や、それお前がカエルだからだろ」 アンジェロが頭を振って突っ込む。 「これは人でも魔族でもある程度共通の危険性の話だ。 山に詳しい人間なら簡単に解けるだろうな」 先と同様にメルヴィンは既に答えを知っているようだった。

2021-10-28 00:01:11
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「山に詳しい人…」 リチャードが言いさすと全員の視線がリュウに向けられる。 既にリュウはムスッとした顔で腕組みをしていた。 「いやいやいや、わかってねーな!マジこんなのガイドに連れてったら隊全滅するぞ」 フンスと鼻息も荒くリュウが言った。 「それじゃあ仔山羊の先生のお話を聞こうか」

2021-10-28 00:04:12
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

メルヴィンが言うとリュウはずいと一歩前に出た。 「まず二番目のやつ。こいつはもう問題外だ。このえとなんとかって人を殺そうとしてんのかって話だぞ。山道に迷ったら引き返す、沢には絶対に降りないは鉄則の中の鉄則だぞ!」 リュウの言葉にアンジェロが目を丸くした。

2021-10-28 00:09:16
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「え、水の確保が大事なんじゃないのかよ?沢を辿れば降りられるだろうし…」 アンジェロが言うのへリュウが頭を振る。 「まず前提が間違ってる。沢を辿っても山から降りられない。沢はだいたい滝か崖に行き着くんだ」 リュウの言葉を聞いて子供達は目を丸くした。

2021-10-28 00:12:35
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「で、崖とか滝は当然行き止まりだし、回り道して余計体力使ったり道に迷うし無理に降りようとすると滑落してアウトだ。あたしたちみたいに崖を降りられる体ならワンチャンあるけど。 それに3番の人の話に通じることだけど沢の周りは道が悪いから転んで体が濡れたらこれも終わり。 体温持ってかれる」

2021-10-28 00:16:26
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「そうなのか…知らなかった…」 リチャードが呆然と呟く。 「ケースバイケースだが、山で迷ったらまずは元来た道を落ち着いて引き返す。 もしヤブなどに入り込んでしまったら落ち着いて尾根上の方に登って見晴らしのいい場所で現状を把握することだな」 メルヴィンが付け加えた。

2021-10-28 00:18:45
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「じゃあ残りは1番と3番か…」 リチャードが言うと、 「一番の人は半分合ってて半分間違ってる」 子供達の視線が再びリュウの方に向いた。 「確かに冬眠から明けたクマは秋のクマより痩せてはいるんだよ、飲まず食わずで冬眠するから。 でもメスのクマは子供を連れてるから春のメスグマは怖いんだ」

2021-10-28 00:23:14
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「え?こども?」 フロログが満月のような金の瞳をさらに丸くして問う。 「メスのクマは冬眠中に出産するのだよ」 メルヴィンが言うと、 「えー?!」 リュウ以外の三人が驚きの声を上げた。 「おっちゃん詳しいね。山に住んでたの?」 リュウは瞳を輝かせてメルヴィンを見上げた。

2021-10-28 00:35:15
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「リスやカエルとは違い、クマは冬眠中でもある程度高い体温を保ち、深く眠るというより代謝を落として夢うつつの状態になる。その中でメスは1〜2頭の子供を生み、眠ったまま授乳し子育てをするのだよ」 それを聞いた少年たちはもはや言葉も出ない。 「で、春にはお母さんと穴から出てくるんだよ」

2021-10-28 00:47:07
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「そんなんで春に初めて顔を見た赤ちゃんが他の生き物に狙われたりしないようにお母さんクマはものすごい気が立ってるんだよ」 リュウの言葉に少年たちは感心して前のめりになっていた。 「ということは正解は3番の…」 リチャードが言うのへ、 「や、ちょっと待てよ!3番も怪しくないか?」

2021-10-28 00:49:55
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

アンジェロがその言葉に割って入る。 「だって…雪山登山ならともかく夏に凍死なんてあり得るのかよ?何なら全員間違ってるとか…」 「でもエトワールは『正確なことを言っているのは一人』と言ってたよね?」 リチャードが更に切り返す。 と、メルヴィンは眉を顰めた。 「その油断が死を招くのだよ」

2021-10-28 00:55:06
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「アンジー、君はさっきリュウが言っていた言葉を忘れたのか?」 「さっきって…沢の話か?」 話の脈絡を遡りつつアンジェロが答えるのへ、メルヴィンは頷いた。 「山は生き物なのだよ。それもとびきり気まぐれなね」

2021-10-28 01:01:31
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「山は天気が変わりやすいからいつ雨が降るかわからないんだ。 で、おっちゃんが言ってたみたいに沢で転んだり雨に濡れて濡れた服のまま長いこといたら夏山でも体温持ってかれて冷えて死んじゃうんだよ。 だから3番の人は雨具に気をつけて、体は濡らすなって言ってくれたんだぞ」 リュウが補足する。

2021-10-28 01:06:53
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「君も軍を預かる身ならば武術ばかりではなくそうした知識も学び給え。 そうしないと下につく者たちを守ることはできない」 少し厳しい口調でメルヴィンはアンジェロを諭した。 「…わかったよ。…え、てか…」 ふとアンジェロは違和感を覚え顔を上げた。 が。

2021-10-28 01:10:32
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「ってゆーことで正しい知識を持ってたのは3番のおっちゃん! 沢に降りちゃいけないし、春のクマも危険!これでどーだ!」 ビシッと人差し指を突き出してリュウは係員に高らかに言い放った。

2021-10-28 01:17:30
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

ジャーン!とバンドマンのシンバルが祭壇に鳴り響く。 「大正解!おめでとうございます!」 弁士が高らかに紙吹雪を撒き上げ、またもや喝采が5人に注がれる。 「よっしゃあっ!」 リュウはおおよそ乙女とは思えぬいかつい声を上げるとガッツポーズをした。 第ニ関門突破である。

2021-10-28 22:41:24
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「それでは正解の証のスタンプとキーワードをお渡ししますね」 再び係員が5人の地図の記載欄に正解の証明スタンプを押していき、その上にサインをしていく。 そして5人には新たな文字が書かれたカードが5人に手渡された。 「『R』か…」 カードに書かれた次の一文字を呟くリチャード。

2021-10-28 22:46:21
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「3つ目の祭壇は…お!この先のレストラン街だって!」 フロログが嬉しげに声を上げた。 「言われてみりゃ飯がまだだったな」 「なんか急にお腹空いてきたな…」 「ぷむー」 口々に言う子供たち。 「では次のミステリーを解決したら夕飯にしよう」 メルヴィンが言うと一行はレストラン街へと向かった。

2021-10-28 22:51:24
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

【Ⅵ】 商店街の奥にあるレストラン街はこれまたきらびやかだ。 豪奢なレストランはもちろんのこと、今宵はカフェテラスもまだ開いており、季節の飾り付けが施されたおしゃれなカフェで奇抜なデザートに若者たちが舌鼓をうっでいた。 「てか衛生的に大丈夫なのかあれ」 ボソッとアンジェロが呟く。

2021-10-28 22:54:01
セーリュー(Seiryu) @SeiryuD

「近年は皮膚を他の素材に置き換え衛生的になった不死者もたくさんいてね。それこそヒ素などの危険な保存料は使われなくなったり、肉体を捨てたゴーストが店を切り盛りして衛生に気を配る動きが出てきているのだよ」 言ってメルヴィンはカフェテラスを指さした。

2021-10-28 22:57:33
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