2018年度に執筆した140字小説まとめ
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千月薫子 @Thousands_Moon4

やらねばならないことはたかが数個なのに、やりたいことは八百万だ。その癖して空いた時間は間抜け面でぼーっとしてるだけ。家で白紙の原稿が机の上に鎮座しているから帰りたくないなぁ。数日してから僕はそんなことも思わないほどに、目まぐるしい日々を送ることになる。僕は筆を置いた。#140字小説

2018-05-30 13:53:23
千月薫子 @Thousands_Moon4

「求ム文字ガカケル人」電柱に貼られたわら半紙に前時代的な文言がマジックで書かれていた。文字ガカケル人?文字が書ける人。日本の識字率なんて、ほぼ100パーだろ。わざわざ求人しなくても。「応募方法、アナタガカイタモノヲオ送リクダサイ」と住所が書かれていた。いややらねぇから。#140字小説

2018-05-30 14:00:13
千月薫子 @Thousands_Moon4

長女なのに、私は身長が1番低かった。食器を取るのに苦労するし、人混みに紛れれば一緒にいた友だちに迷惑をかけた。そんな私に彼氏が出来た。私とは違って身長の高い彼だ。彼はわかりやすい。すぐに表情に出てしまう。私は生まれて初めて私の身長に感謝した。よーく彼の顔が見えるから。#140字小説

2018-05-30 22:17:05
千月薫子 @Thousands_Moon4

「あんたって馬鹿ね」幼馴染の彼女はいつも言った。高校受験に僕が落ちてしまった時も「あんたって馬鹿ね」告白して振られた時も「あんたって馬鹿ね」バイトの面接に落ちた時も「あんたって馬鹿ね」いつも見下した笑顔をしてた。僕が君に告白した時、初めて君はその笑顔を崩した。「あんたって馬鹿ね」

2018-05-31 21:28:46
千月薫子 @Thousands_Moon4

夜に揺られるバスの中、あともう少しで終点だ。行き交う人もまばらで、街頭の光が現れてはすぐに後方へ流れていった。私の前の席には誰もいない。終点は停止ボタンを押すかどうか悩む。すぐ横にあるボタンに手を伸ばすと、押す前に赤く光った。バス中のボタンが赤く光って目のようだった。#140字小説

2018-06-02 20:31:37
千月薫子 @Thousands_Moon4

妥協する貴女が嫌いでした。俺の告白に対してOKくれたのも妥協だったのでしょう?結婚してくれると聞いた時にうんと言ったのも妥協だったのでしょう?そんな貴女が嫌いです。別れの時、涙を流したのも意味がわからない。今まではなんだったのですか。と、君が責めてくれたら楽だろうに。#140字小説

2018-06-02 21:58:35
千月薫子 @Thousands_Moon4

ビルの隙間から地平線を焦がすオレンジ色が見えた。歩道橋の上から見える景色は好きだ。少し高くなっただけなのに、特別な存在になれた気がして。空気が綺麗ならあのスカイツリーまで見えるんだけど、今日は無理か。階段をくだりながら、いつもの私の世界へ戻っていく。#140字小説

2018-06-03 23:47:01
千月薫子 @Thousands_Moon4

誰か、私が死ねばいいと願ってください。人に言われればできるかもしれない。いや、そんなところまで人に頼って。人に頼ることでしか生きていけないし、死んでもいけない。夜の闇っていうのは地球が自転してるからなはずなのに、死の集まりじゃないかって思えてくるよ。死にたくなるから。#140字小説

2018-06-05 23:40:20
千月薫子 @Thousands_Moon4

自分で綴った言葉、他人様が作った言葉。全てが陳腐に見える。何を見ても何も思わない。焦りと不安だけが一層自分の中で膨れ上がる。自分の内面なんて自分が原因なんだ。勝手に追い詰めて追い詰められる。1人2役で鬼ごっこは楽しいかい?いつまで捕まらずにいられるのかな。楽しみだ。#140字小説

2018-06-05 23:47:19
千月薫子 @Thousands_Moon4

布団に眠るのが1番最高なはずなのに、やること全部放り投げて、髪乾かさずに床で眠る瞬間っていうのもまたイイんだよね〜。もう何もしない寝るだけ。まぁ、その後深夜に起きちゃってあ、やんなきゃってなるんだけど。人間の三大欲求に追加で「何もかもすべて放り出す欲」も入れて欲しい。#140字小説

2018-06-07 00:43:47
千月薫子 @Thousands_Moon4

夏の夜は窓が開けられるからいい。妹たちの寝息に混じって遠く車の音がする。風がカーテンをひらりと浮かせて、また車が1台通る音がした。ベッドの灯りを消して、目を瞑れば、ほら。夜風が夢と安らぎを運んできた。明日の朝風は目覚めと希望を運ぶだろう。私はそっと、内側の目も閉じた。#140字小説

2018-06-08 01:00:37
千月薫子 @Thousands_Moon4

月の光を浴びた紅茶を一口、なんて優雅な魔女みたいになりたいけれど、私が手に持つのは甘いカロリーの塊である缶チューハイだ。上半身下着のまま、女性としての配慮の欠けらも無い格好で缶のまま煽る。そして、無駄な時間をだらだらと今日を振り返りながら過ごすんだ。あぁ、変わりてぇ。#140字小説

2018-06-10 00:47:31
千月薫子 @Thousands_Moon4

文字が夜中暴れ回るから原稿の上で眠ってはいけないと、先輩作家は言っていた。そんな心配は無用だ。だって私の原稿はデジタルなのだから。鉛筆と違って、腕が文字だらけになるなんてありえない。携帯で文字を打ちながら寝落ちするまでは。朝起きた時に、私の顔が文字だらけだった。#140字小説

2018-06-10 00:53:08
千月薫子 @Thousands_Moon4

「パスモですか?」会計が一番憂鬱だ。レシートを突き返す客、1円玉まで使う客、硬貨を投げる客。何奴も此奴も何様のつもりか。極めつけは「だってこっちの方が速いでしょ、おつりいらないから」こちとら人間。数えなければおつりは出ない。私はにっこり笑って客の顔面に硬貨を叩きつけた。#140字小説

2018-06-11 00:00:42
千月薫子 @Thousands_Moon4

ささくれをひっぱる。すーっと剥けてきて、あるところで痛みを伴った。でも止めないでそのまま、皮を引っ張ってぶちっとちぎれた。にぶーい痛みと共に血が膨らむ。こぼれる。慌ててその指を口に含んだ。大して美味しくもない味が口に広がった。反対の手には指の皮。私何をしたいんだろう。#140字小説

2018-06-12 01:11:14
千月薫子 @Thousands_Moon4

29度まで上がりきった地上を冷ましていくのは夕立でした。文字通り、たらいをひっくり返したような雨は熱を食らっていきます。傘なんて持ってきてません。そんな私の心情を知ってか知らずか、雨はすぐに去っていきました。外に出ると寒さが肌を撫でます。梅雨は涼を連れてきてくれました。#140字小説

2018-06-13 00:01:22
千月薫子 @Thousands_Moon4

お寺の参道は白い石畳で、桜の木が両脇に植わっている。梅雨の晴れ間の今日はその葉叢を、そよそよと踊らせた。幾分か涼しい気がする。垣間見える空には、やっと離れて独り立ちした雲たちが流れに身を任せてのんびりと個を謳歌していた。夏の到来を告げる小鳥のさえずりが近くで聞こえた。#140字小説

2018-06-19 16:04:13
千月薫子 @Thousands_Moon4

あなたに言われたくない。別に誰から言われた訳でもない言葉が頭の中で反響する。ひたすらに、息をする。自分が思った訳でもない言葉なのになぜ、自分の中にあり続けるのか。もしや、気づいていないだけで言われたことがあるのか。言葉(キミ)は誰?どこから来たの、誰から生まれたの。#140字小説

2018-06-23 02:42:11
千月薫子 @Thousands_Moon4

「新しいことをやりなさい」と言ったあんたの言葉を大切にしていた。言葉数少ないあんたから言われた貴重なものだった。ことある事に思い出しては心がけていた。今までやったことのないことに手を出した。失敗もあったけど、後悔はなかった。でも、それをくれた父さんは刑務所に入った。#140字小説

2018-06-23 21:01:14
千月薫子 @Thousands_Moon4

空がピンク色に染まっていました。夜が来ることを帳が下りるなんて言いますけれども、今宵は可愛らしい色で夜の訪れを告げるようで、空はなんとも粋なことをするのですね。空も壁も道路も全てがうっすら明るく染まります。夏の香りがしてきた風は明日の空を連れてこようとしていましたわ。#140字小説

2018-06-24 23:14:44
千月薫子 @Thousands_Moon4

日常の切れ端をつまんで、よく観察する。自分の言葉でそれを再構築し、そして物語へと作り直した。オチもない、長くもなければ、小説と呼べるかどうかも怪しいくらいだ。しかし、誰がなんと言おうとそれは小説なのだ。作者がいうからにはそれは小説である。やっとそれに気づけた。#140字小説

2018-06-27 02:03:30
千月薫子 @Thousands_Moon4

焼くような暑さは、前までの寒さより断然いい。ようやっとお出ましの夏に私は大手を広げて歓迎したい気分だ。青天が新緑をより一層引き立たせる。女子大のキャンパスは肌色が増えた気がした。冷房がよく効く教室は人がごった返す。あーあ、暑いのはいいけど、人の温もりはいらないんだよ。#140字小説

2018-06-28 01:06:19
千月薫子 @Thousands_Moon4

心地よい微睡みに身を任せた私が馬鹿だった。いつのまにか閉じてしまった瞳を開けると、手にはスマホを握りしめていた。あぁまたやってしまった。一人で勝手に罪悪感に陥る私を、知ってか知らずか、外の風は日中を忘れさせるほど涼やかに吹き荒れていた。明日こそは早く寝よう。おやすみ。#140字小説

2018-06-29 00:19:38
千月薫子 @Thousands_Moon4

まだ夏の到来を信じない大学は冷房の設定温度を下げる気がない。大きいはずの教室に人がすし詰めにされている。先生の話す言葉は相変わらず子守唄だが、暑さのせいで眠りに落ちない。窓の外を激しく行き交う風は、梅雨においてけぼりを食らったのだ。窓を鳴らす音は悲痛な叫び声のようだ。#140字小説

2018-06-30 00:22:33
千月薫子 @Thousands_Moon4

しじみさん、しじみさん。なんですか、おたまじゃくしさん。あなたはこれからお味噌汁になるけど、私は何になるの?そうですね、あなたはきっと水槽の中で飼われるのでしょう。今こそ、たらいの中ですがあなたはいずれ大きくなりますから。何になるの?かえるになるんですよ。立派な、ね。#140字小説

2018-07-01 02:00:55
千月薫子 @Thousands_Moon4

強い日差しと、それに焦がれる空気の匂いが息苦しいほど周りに充満していた。沁み出すような汗と、脂の匂いが鼻につく。今年の夏休みには何をしようか。頭に思い描く。読みたい本が溜まってる、書きたいことがたまってる。やりたいことは沢山ある。ならば目の前の課題をやらねばならぬ。#140字小説

2018-07-01 22:38:41
千月薫子 @Thousands_Moon4

ここは物語の中である。僕は生まれた。僕として。少し歩くと、僕がいた。君は誰?僕は僕。僕も僕。僕が2人いるとややこしいな。奇遇だね、僕もそう思ったんだ。書いた人のミスなのかな。そうかもしれないね。さて、この物語に僕は2人もいらない。僕は銃をこめかみに当てた。僕はいらない。#140字小説

2018-07-04 23:32:02
千月薫子 @Thousands_Moon4

コンタクトを忘れた。視界がぼやける。面をかぶればさらに視界が狭まる。竹刀が短い気がする。相手の顔が見えない。目が駄目なら他の感覚を澄ます。面にあたる感触がいつもより柔らかい。あぁ、深すぎる。束の間の滞空時間を経て、床に響く踏み込みの音は足に鈍い痛みを告げた。これは色々みえないや。

2018-07-06 00:03:07
千月薫子 @Thousands_Moon4

朝7時40分の境内には、屋台がずらりと狭い参道を挟んで建っていた。誰もいない。小鳥の鳴き声が密かに聞こえるだけだった。本殿に一礼し、参道を歩かせてもらった。ふと、私の大きい眼鏡の端っこを何かが通った。振り返っても何もいない。参道にはまだ青々としている葉が1枚、すぐに風で飛んでいった。

2018-07-06 00:10:15
千月薫子 @Thousands_Moon4

男は死んだ。なんのことはない。衰弱死だ。天寿を全うしただけのこと。女は悲しんだ。男が死んだことに。いや、男が地獄におちたことに。愛する人だった。だから死んだら同じところにくるものだと思っていたのだ。だが違った。何を間違えたのか。男ほど女を愛したものはいなかったからだ。#140字小説

2018-07-07 02:25:58
千月薫子 @Thousands_Moon4

やらなければいけないのになぜやらないの?正論を友だちは何の悪気もなく言う。それは察してくれるもんだろ。課題の多さに愚痴をこぼしていたみんなの空気が止まる。でもほら、なかなかやる気出ないじゃない?なんでこんなことわざわざ言わないといけないんだ。私は誰ともなく腹を立てた。#140字小説

2018-07-07 23:41:26
千月薫子 @Thousands_Moon4

言葉を散らせ。あなたの思い描く情景をあなたがいいと思う言葉を散りばめて書くといい。他人なんて気にするな。趣味の物書きなんぞ、誰も眼中になどないのだ。私が書くこれだって小説かどうかも怪しい。そんなの関係ない。行動に移すことが肝要だ。あなたの言葉、綺麗に散らして見せよ。#140字小説

2018-07-09 00:59:37
千月薫子 @Thousands_Moon4

人肌の風が頬を撫でる。自分から風の中に溶ける。月夜の出ない晩には、空は私のものだ。誰にも私は見えない。光がないから。電柱から電柱へ、時折葉の茂った桜の木へ。小学校のプールや図書館が見える。でも、もう空が白んできた。戻らなければならない。今日もまた学校だから。元の体へ。#140字小説

2018-07-10 01:32:24
千月薫子 @Thousands_Moon4

私の書く文字は十色。ただ同じであろうとするけど、少しずつその形は違う。普段の字だと思っても綺麗で、綺麗に書こうとしたら、いつもよりちょっぴり下手な字だったり。字にも気分があると、どこかで聞いたことがある。今日は機嫌がいいと嬉しいな。そう思って、私はシャーペンをとる。 #140字小説

2018-07-11 23:00:16
千月薫子 @Thousands_Moon4

いまならなんでも笑える。絶対に。疲れが頂点に達した時の、くだらない話ほど笑えるものは無い。外の生暖かい風を横目に、クーラーのひんやりした冷気が笑いの熱に心地よい。明日もお互いに試験だというのに、無為な時間を過ごしていく。あくびがひとつ、深夜の静寂に落ちた。#140字小説

2018-07-11 23:14:24
千月薫子 @Thousands_Moon4

「もっと濃い空色はまだなの!?」「入道雲の入荷は……え、延期?やる気が出ないとかなめてるでしょ」夏の衣替えをする妖精達はてんやわんや。もう既に梅雨明けしたというのに、空は薄い青、雲はちぎって散らしたようなものばかりが浮かんでいた。唯一先走って投入したのは暑い空気だけ。 #140字小説

2018-07-13 10:08:11
千月薫子 @Thousands_Moon4

千の月を数え、千の夜に祈った者に訪れる奇跡がある。おばあちゃんから聞いた話だ。お月様には寂しがり屋な魔女さんがいて、千日の間、欠かさずお話をしてあげると、お礼に願いを叶えてくれるんだ。999日目の夜、わたしは話を始めた。まだ見ぬ魔女様と、どうかお友達になれますように、と。#140字小説

2018-07-14 22:50:09
千月薫子 @Thousands_Moon4

まだ帰りたくないな。そんな気持ちが改札の前に渦巻いていく。いつも彼の改札の方が先に見えてくる。私はその度に、その大きな手を引いて、柱に寄りかかってたわいもない話をする。少しでもいい。この時間を伸ばすことができるなら、そう願っていた。2年後、同じ場所で反対の気持ちを抱くことになる。

2018-07-14 23:27:47
千月薫子 @Thousands_Moon4

水晶は塵を受けず。その言葉を体現したかのような彼女の、淡く光り放つその姿は、皆の憧れの的だった。だがその人の笑顔を見たものは誰もいない。笑いかけられたら昇天するなんて噂もあるほどだ。だが、俺は見てしまった。窓ガラスに向かって笑顔の練習をする、健気な彼女の面白い顔を。#140字小説

2018-07-15 22:33:45
千月薫子 @Thousands_Moon4

私には誰にも言えない秘密があった。人が怖いこと。対面すると途端に表情筋が全く動かなくなっちゃう。それが綺麗だとかいわれて、変な噂まで流れてしまった。これはどうすればいいんだろう。笑顔になれれば解決なんだけど。誰もいない放課後の教室で、雨が降っている窓に笑顔をつくった。#140字小説

2018-07-17 12:16:07
千月薫子 @Thousands_Moon4

月を放て。夜の帳が落ちきった頃、月を縛っていた戒めがほどかれる。深い紺の空に上がっていく。毎度のことながら、その様はちょっとした宝石のようだ。太陽の、民の休息を守るのは月の役目。そして月を手入れするのは私達の役目だ。下りる月を磨き、また上空へ放つ。なかなか、悪くない。#140字小説

2018-07-19 22:05:57
千月薫子 @Thousands_Moon4

薫りが記憶を呼び起こす。涼しいクーラーの冷気のかおり、じりじりと日にこげた土のかおり、いつもより熱い薫風の、頬をかすめる気配。全てがいつかの夏の記憶を呼んだ。しかし、詳しく思い出そうとすると消える。儚く短命な桜のように掴もうとすると、するりと指の間をすり抜けていった。#140字小説

2018-07-19 22:13:48
千月薫子 @Thousands_Moon4

緑の煌めきから陽光が散り落ちる夏。蝉の喘ぎが四方八方から聞こえた。日傘もなく、日焼け止めも忘れてしまった肌には暑すぎる。汗はかかない性分だからなおさらだ。ふとした瞬間、その暑さが少し、遮られた。横を見ると彼女だった。「暑苦しくて仕方がないからお姉さんがいれてあげよう」#140字小説

2018-07-21 02:12:52
千月薫子 @Thousands_Moon4

仕事を終え、まとめた髪をほどくとふんわり。シャンプーの匂いが香った。別に誰に向けたわけでもない。後頭部をかくと、匂いが鼻についた。鬱陶しい。立ち仕事で痛みを感じる足を引きずるようにして夜道を歩く。「若いおねえさんねぇ」職場のババアの声が耳に響くと、私は死を口にした。#140字小説

2018-07-22 23:08:04
千月薫子 @Thousands_Moon4

しゃがんでいる私の背後には子供がヨーヨーをついてる音がした。ぼしゃぼしゃん。私は今、狭い水槽に泳ぐ金魚を凝視していた。ポイはまだ水を知らない。一瞬の隙に水へときりこむ。何を誤ったか金魚は水面から飛び跳ねた。一緒にあがった水鞠の大きいこと。もちろんすくえずじまいだ。#140字小説

2018-07-24 00:43:20
千月薫子 @Thousands_Moon4

屋内なのにじわり絞め殺すような暑さがまとわりつく。白ぶどうジュースのペットボトルは、小さな水たまりを作ってすっかりぬるくなっていた。長テーブルに1人うつ伏せになっている。長い黒髪をなげうって、小さくその体は上下していた。周りには誰もいない。その背にとても触れたくなった。#140字小説

2018-07-24 21:45:29
千月薫子 @Thousands_Moon4

固い、けど脆い殻の中に私は閉じこもっていた。誰も私を見ていないから。体育座りで縮こまって毎日ひとりよがりを呟いた。そんな私の殻を破ったのは外側からじゃない。いつの間にかそばにいた、別の「私」が手を伸ばしたのだ。内側からの攻撃なんて予想だにしない私の防壁はヒビが入った。#140字小説

2018-07-26 00:19:31
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千月薫子 @Thousands_Moon4

千月薫子(センヅキ カオルコ) ⚡️🧪🍫と申します。ることお呼びくださいませ。主に一次創作の字書き20↑140字掌編作家。相棒(@ame_susk_ringo)とサークル名:つれづれえんにちで活動中。nyanyannyaさん尊敬/アイコンは至極お姉さま@N_satiwo