皆様の投票で展開が決まる、読者参加型の小説を連載しております。 〈僕は、自分が飼っているのは柴犬だと思ってた。でも叔父さんは言ったんだ。この犬はケルベロスだって――〉 これは予測不可能なボーイミーツドッグなファンタジー。 FF外からの参加、一話だけのお試し投票も大歓迎。 ただいま毎日更新中です! 続きを読む
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東洋 夏 @summer_east

【アンケート小説 #ここ豆】第二十五幕 こんばんは。 #ここ豆 、本日も元気に更新です! 第二十四幕、皆様が選んでくださったのは〈人間を幻獣化する〉でした! お母さん、めちゃくちゃ危険な術式を発明してしまったんですね。 さて、物語は何処へ向かうのでしょうか。 pic.twitter.com/QywNeqbjke

2020-03-04 19:06:34
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東洋 夏 @summer_east

◇ 「君のお母さんが見つけた術式を使えば、人間に〈真の名前〉を与えて幻獣化する事ができる。これがどういう事か、分かるかな?」 叔父さんは、押し殺した声で話した。 今にも怒鳴り出しそうな自分を精一杯の力で抑えているみたいに。 僕は首を横に振った。余計な事は言っちゃダメだと思ったから。

2020-03-04 19:06:34
東洋 夏 @summer_east

「人間を幻獣化すると、心はそのままで体だけが変質することが分かった。例えばそうだな、人の命令に従い、人のルールを理解したドラゴンが大量に生み出されたとしたらどうなる?」 「すごく強いよ」 「その通り。相手を幻獣に変えてしまうことだって可能だ。敵の軍隊をまるごと変質させるってことも」

2020-03-04 19:06:34
東洋 夏 @summer_east

叔父さんは僕の顔をじっと見た。 「お母さんはさらに踏み込んで、幻獣化した人間を戻す実験を考えた」 「まさか自分を」 「そう。幻獣化し、そして戻らなくなった」 「お母さんは何処に? 本当は知ってるんでしょ」 叔父さんは顔をクシャクシャにして泣き始めた。そして、 「そこにいるよ」 と言った。

2020-03-04 19:06:35
東洋 夏 @summer_east

「そこに?」 「ウィンターリリィの中に、君のお母さんがいるんだ」 僕の背後で竜が身じろぎした。氷の鱗が触れ合う鋭い音がする。 僕は振り返った。 「お母さん」 【その肩書きは公正では無い】 氷竜の深紅の瞳が、すっと細まった。 僕が問いを重ねようとした時、豆が急に唸った。 その理由は……

2020-03-04 19:06:35
東洋 夏 @summer_east

【アンケート小説 #ここ豆】第二十六幕 こんばんは。 #ここ豆 、どんどんテンポが上がってまいりました。どんな着地を見せてくれるのか、作者も楽しみです! さてアンケートの結果より〈魔導書が光を取り戻し、浮き上がった〉豆は唸り始めたようです。さて何が起こるのでしょうか!? pic.twitter.com/tkRHzfFIBZ

2020-03-05 19:52:25
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東洋 夏 @summer_east

◇ 僕と豆が叩き落とした叔父さんの魔導書が、光を放ち始めた。ふらりと宙に浮く──そこに背中の毛を逆立てた豆が飛びかかった。 しかし、 「きゃん!」 魔導書を守る力が、豆の突進を跳ね返した。雪の中に落ちてごろごろ転がる豆は、真っ白になって止まった。 叔父さんが魔導書に静止の命令を出す。

2020-03-05 19:52:25
東洋 夏 @summer_east

僕は目を疑った。 魔導書が所有者の命令を振り切り、叔父さんに向かって光の矢を放ったんだ! 雪が爆発して、世界が真っ白に焦げた。 僕は爆風で仰向けに倒れる。 前後左右がいっぺんに訳わかんなくなって、めちゃくちゃに手足を動かしていると、リリィの鼻が僕を押さえた。まあ落ち着けと言うように。

2020-03-05 19:52:26
東洋 夏 @summer_east

僕がリリィの鼻先をかりて立ち上がると、立体の胸像が魔導書の上に浮かんでいた。豆がそのそばに座って、嬉しそうに尻尾を振っている。 「よぅ」 「おおおお母さん!?」 手を上げた胸像の顔は見間違えようがない。ピンクに染めた髪の毛を運動部の男子よりも短く刈り詰めて、右耳に金色の蛇のピアス。

2020-03-05 19:52:26
東洋 夏 @summer_east

「我がハニーは元気に生きてて何より」 「それ恥ずかしいからやめてって言ったよね!?」 胸像は半回転して、口を開きっぱなしの叔父さんに言った。 「相変わらず魔法がヘタ。ハッキング対策しろよ」 「い、生きてたのか」 「生きてたよ。俺、天才だから」 僕はたまにお母さんの性別が分かんなくなる。

2020-03-05 19:52:27
東洋 夏 @summer_east

また胸像が半回転。 「でかぶつ」 【我が名はウィンターリリィ】 「知っとるわい。いつもありがとさん」 混沌という言葉、きっとこういう時のためにあるんだろうね。僕は最初から最後までキッチリ説明して欲しいと思った。 「ところで」 と、お母さん。 「探してる奴がいるんだ。知ってるかな──」

2020-03-05 19:52:28
東洋 夏 @summer_east

【アンケート小説 #ここ豆】第二十七幕 #ここ豆 、今日も元気に更新です🐕 第二十六幕アンケートより、僕のお母さんが探しているのは〈豆の兄弟犬を連れてるやつ〉でした。 僕の頭にも、皆さまの頭にも、きっとハテナが沢山浮かんでいるに違いありませんね。 真実を探しに行きましょう! pic.twitter.com/BtsWrLlF2H

2020-03-06 20:30:04
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東洋 夏 @summer_east

◇ 「俺が探してるのはさあ、豆の兄弟犬を連れてるやつなんだ。そいつが俺の呪文をいじくりやがった」 お母さんの胸像の下で、豆は行儀よく「おすわり」して、尻尾を振っていた。 リリィは目を閉じている。 叔父さんは難しい顔をして、ムスッと黙り込んでた。 僕だけが除け者にされてる──気がする。

2020-03-06 20:30:05
東洋 夏 @summer_east

そこで、僕はともかく発言することにした。会議に参加しないやつは幽霊より薄い、ってお母さんの口癖だしね。 「聞きたいことがあるんだけど」 豆が驚いたような顔で振り向き、僕のことを今まで忘れていたことに驚いたような顔で走りよってきた。 お母さん何かしたのかな。 「犬のことで」

2020-03-06 20:30:05
東洋 夏 @summer_east

僕にみんなの視線が集中する。 豆がビシッと背筋を伸ばしたのが可笑しくて、少しだけ緊張がほぐれた。 僕、豆が火を噴いたのは覚えてるけど、でも本当はやっぱり柴犬なんじゃないかと思うな。 「豆の兄弟犬を探すなら、ヒントがいると思うんだ」 さて、何を質問しよう。 長話は出来ないかも知れない。

2020-03-06 20:30:06
東洋 夏 @summer_east

【アンケート小説 #ここ豆】第二十八幕 こんばんは。 #ここ豆 をお届けいたします。 第二十七幕では、豆の兄弟犬というキーワードから、どんな質問を大人たちにぶつけてみようかというアンケートを実施しました。結果は〈そもそも豆の兄弟犬って?〉というところを確認する方向で決定いたしました。 pic.twitter.com/Pi6aGa2zx1

2020-03-07 18:49:33
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東洋 夏 @summer_east

◇ 「そもそも豆に兄弟がいるってこと、僕は初耳だよ」 魔導書の上でお母さんの胸像が回転した。 「おい愚弟。俺は説明しとけって言ったよな」 「する直前までいったんだよ」 叔父さんはむっとした顔で反論した。 「あっ、もしかして、叔父さんはそれを説明しに来てくれたの!?」 「そう」

2020-03-07 18:49:33
東洋 夏 @summer_east

やっと繋がった! 叔父さんが〈豆は奇形のケルベロスだ〉と言った、その先に兄弟犬の話が繋がる予定だったんだ! 「あの、叔父さんごめんなさい」 「どゆこと?」 お母さんの胸像はこっちを向いた。 「豆がケルベロスだって言われて、僕はムカついたんだ。それで話しするのが嫌になったから外に出て」

2020-03-07 18:49:34
東洋 夏 @summer_east

その先でサーカスのチケットを拾って、今に到ったんだ。僕が叔父さんを避けてたから、叔父さんも話せなかったんだ。 「教えてもらっていい? お母さんは何に巻き込まれているの」 お母さんの胸像はベシッと額を叩いた。 「ハニーは本当に良い子に育ったな!」 「だから恥ずかしいって。やめてってば」

2020-03-07 18:49:34
東洋 夏 @summer_east

【トキコよ】 リリィの声が響いた。あ、トキコってお母さんの名前ね。 【刻だ】 「ああ不便だな。こうしていられるのもあと少し。名前に縛られてるからな。──さて教えよう、ハニー。豆は捨て犬じゃない。ごめんな。豆はケルベロスの三つの首のうちのひとつなんだ」 お母さんの姿が薄れ始めた。

2020-03-07 18:49:34
東洋 夏 @summer_east

「俺が分けたんだ。三つの首から三頭の犬に。それから……」 前触れなく、決然と、魔導書がパチンと閉じた。 「お母さん!」 答えはない。 【契約の定めだ】 「リリィ、あなたはお母さんとどういう関係なの?」 【私はトキコの〈真の名前〉。実験作だ】 リリィは驚くべき言葉を続けた。 それは……

2020-03-07 18:49:35
東洋 夏 @summer_east

当アカウントで連載中のアンケート小説「 #ここ豆 」。 それは皆様の投票で物語が決まる、読者参加企画です。 柴犬のつもりで飼っていた自分の愛犬が地獄の番犬ケルベロスだったら? 予測不可能なボーイミーツドッグ・ファンタジー、毎日更新してます。 タグから検索し、最新話にご参加ください! pic.twitter.com/skV8FHoVzl

2020-03-07 20:08:37
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東洋 夏 @summer_east

【アンケート小説 #ここ豆】第二十八幕 こんばんは。 #ここ豆 更新のお時間です! 第二十七幕のアンケートはリリィから告げられた言葉について。同率ゴールインとなりましたので、両方言われたことにしちゃいましょう! pic.twitter.com/8CA04dVrYt

2020-03-08 21:06:43
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東洋 夏 @summer_east

◇ 【一頭のケルベロスを三頭に分ける実験は成功した。だが、その成功を快く思わぬ者がいた】 リリィさんの瞳は雪の光を反射して、オパールみたいに輝いている。お母さんが書いた術式から、こんな美しい竜が生まれたなんて。凄いな。 【三頭のうち一頭は、誘拐された。その男が飼っていた犬だ】

2020-03-08 21:06:44
東洋 夏 @summer_east

竜は叔父さんをちらりと見た。 「あ!」 僕はアルバムに挟まっていた記事に添えられた写真を思い出した。豆とそっくりの犬を胸に抱いてたけど、片方は本当に豆で、もう片方が誘拐された兄弟犬ということなんだね。 でも。 「ちょっと待ってリリィさん。そうすると、もう一頭いますよね?それは」

2020-03-08 21:06:44
東洋 夏 @summer_east

【まだ分からんのか】 「?」 【お前だ】 「!!??」 【お前はトキコの息子の割に魔力が微塵もない。それを何故かと考えたことは無かったのか?】 僕は今度こそ本当に、本当に、混乱した。 リリィさんは畳みかける。 【さあ、最後の兄弟を探せ。誘拐者は我らに死の呪いをかけている。猶予は三日】

2020-03-08 21:06:45
東洋 夏 @summer_east

「待って、そんな、僕は人間ですよ!?」 しかし僕の言葉をリリィさんはまるで聞いてない。 【ケルベロスは中心の頭がリーダーとなり、他の二頭を統率するという。豆が従うならばお前がリーダーなのだろう。トキコがここを選んだのならば、きっと相手は近くにいる】 いやいや、そんなこと言われても!

2020-03-08 21:06:45
東洋 夏 @summer_east

見かねて叔父さんが助け舟を出してくれた。 「──まあ、それはさておき、豆がケルベロスなのは間違いない。問題の兄弟犬が同一個体から分裂したのだとすれば、似たような行動をするんじゃないかな? 特に君が、豆の個性だなと感じてる特徴をあげてくれないか」 それならいくらでも言える。 例えば……

2020-03-08 21:06:46
東洋 夏 @summer_east

【アンケート小説 #ここ豆】第二十九幕 #ここ豆 も明日で連載一ヶ月。 皆様のおかげです! 第二十八幕のアンケート一番人気は〈雨でも雪でも岬の灯台へ散歩に行きたがる〉でした。序盤から登場したこのスポット、どんな伏線になるのかは今後のアンケート次第。 引き続き投票お待ちしてます!! pic.twitter.com/JwelSNZyUF

2020-03-09 19:42:38
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東洋 夏 @summer_east

◇ 「豆は、雨でも雪でも岬の灯台へ散歩に行きたがるんです。他の場所にはこだわらないのに」 【うむ。あからさまに怪しい】 叔父さんがパンと手を叩いた。 「そうだ! 君がサーカスのチケットを拾ったのもそこじゃなかったかい?」 「それって──」 叔父さんはチケットを失くしたと言っていたはず。

2020-03-09 19:42:38
東洋 夏 @summer_east

「もしかしたら君をリリィに、つまりお母さんに会わせたくない誰かが、叔父さんの所から盗んだかもしれないってこと?」 「ああ」 叔父さんは熱っぽく頷く。 と、僕達の頭の上に影がさした。バサバサと翼の音がして、天馬が雪原に着地する。 「待て~っ!」 レオンさんが息を切らして走ってくる。

2020-03-09 19:42:39
東洋 夏 @summer_east

天馬はしれっとした顔で佇んでいる。 レオンさんは、 「手網を!」 と叫び、一番近かった僕がすかさず天馬の手綱を握った。天馬はお返しとばかりに僕の襟首を噛んで振り回す。必死に鞍にしがみついた頃、レオンさんが追いついた。 でも様子が変。 「話は聞いた。警察が探しに来る。飛んで行け、少年」

2020-03-09 19:42:39
東洋 夏 @summer_east

僕の手に小さなポーチとカードが押し付けられる。当然というように豆も天馬の背に飛び乗った。 「お母さんの協力者なんだよ」 にっと笑ったレオンさんは、天馬の尻をポンと叩いた。ひと声いななくと、天馬はレオンさんを突き飛ばし空へ駆け上がる。 僕は手の中のカードを読み上げた。 「クイーン!」

2020-03-09 19:42:39
東洋 夏 @summer_east

「いいかい僕」 優しい声が聞こえた。 「あたしは着地したらすぐに飛び去る。サーカスから逃げ出したフリする係だからね」 「ありがとう」 あっという間に公園の上空だ。 天馬クイーンは急ブレーキをかけて僕を優しく放り出し、飛び去った。 何だか責任重大になって来ちゃった。 これからどうする?

2020-03-09 19:42:40
東洋 夏 @summer_east

【アンケート小説 #ここ豆】第三十幕 ㊗️ #ここ豆 連載一ヶ月達成🎉 そんな本日の更新は、謎に近づいて行きますよ。 第二十九幕のアンケート結果より、僕が第一に取るべき行動は〈レオンさんのポーチを確認〉となりました。 お母さんの味方だと言う天馬の契約者、彼が渡してくれたものとは? pic.twitter.com/mil9P8J4Mp

2020-03-10 19:31:04
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東洋 夏 @summer_east

◇ 雪が深く積もっている。 朝から降っていないはずだけれど、公園にあるのは僕達の足跡だけだ。 要するに誰もこの公園には来ていない。 「豆」 「ぉん」 心無しか豆までひそひそ声だ。 「豆が僕の兄弟だったら、僕は」 豆の目には一点の曇りもなくて、それを眩しく思う。 「僕は嬉しいよ」 「ぅぉん」

2020-03-10 19:31:04
東洋 夏 @summer_east

僕と豆は一旦、屋根のある休憩スペースに入ることにした。 だって、どんな本にも書いてある。冒険の前には準備が必要だって。 休憩所の引き戸を開けても誰もいない。管理人さんも留守みたいだ。暖房もついてなかった。 僕は寒くて少し震えながら、テーブルの上にレオンさんのポーチの中身を広げた。

2020-03-10 19:31:05
東洋 夏 @summer_east

凄い物が入ってる! こんな時なのに、僕はわくわくした。 『集音妖精契約キット』 組み立て式の簡易魔法陣が透明なパッケージの外から見える。近くにいる集音妖精を検知するソナーもついてる。 でも僕はまず袋を破く前に、添えてあった紙を広げた。 レオンさんの字で、大切なことが箇条書きしてある。

2020-03-10 19:31:05
東洋 夏 @summer_east

〈メモ〉 ・死の呪いは完了するまで、かけた方にも呪いの魔力が付着する。 ・呪いは、相手に関係の深い場所でかけなければならない。 ・集音妖精は一定のルートを巡回するが、強い魔力に惹かれて道を変えることもある。 ・キットの集音妖精は三時間のみ召喚でき、録音データは魔法陣に書き込まれる。

2020-03-10 19:31:06
東洋 夏 @summer_east

僕の武器は三つ。 「集音妖精契約キット」「集音妖精の分布を感知するソナー」「豆が覚えている記憶」。 いきなり時間限定の契約をするのはまずいよね。先にソナーを動かしてみよう。 ソナーは巻物形で、開くと公園のマップが浮かび上がった。その上に集音妖精を示す赤点が輝くはず。 起動させると……

2020-03-10 19:31:07
東洋 夏 @summer_east

【アンケート小説 #ここ豆】第三十一幕 こんばんは。 死の呪いに立ち向かう僕と豆の探索行が始まった #ここ豆 。 最新話の更新です。 第三十幕アンケートでは、集音妖精たちの現在位置を教えていただきました。 pic.twitter.com/pcbwEfaCGo

2020-03-11 18:50:58
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東洋 夏 @summer_east

◇ ソナー・スクロールの上に、集音妖精を示す点が、にじんだインクみたいにじわじわと染み込んできた。 僕はそれが完成するまでの間〈呪術学〉の授業で習ったことを思い出そうと努力する。 何で高校生がそんな物騒な科目を習うのかって? 知らないままに呪いに関われば、皆を不幸にするからだよ。

2020-03-11 18:50:58
東洋 夏 @summer_east

背伸びして大人びた魔導書を読んで、呪いの魔法を知ったとするでしょ。すると絶対に使いたくなる。嫌なやつがリレーの時にコケるように仕向けたり、宿題が先生の前で燃えるように呪いをかけたくなる。 でもそれは危険なんだ。間違えれば自分に三倍返しで戻ってくる。 授業で習ったから知ってるんだ。

2020-03-11 18:50:59
東洋 夏 @summer_east

もうひとつ習ったのは〈呪いをかけるには、相手のことを知らなきゃいけない〉ってこと。相手の思い入れの強いもの、強い場所を触媒にする事が、良い呪いの秘訣だ。 豆はこの公園にこだわっている。僕にはその理由が分からない。完全な推測だけど、それは豆が僕と出会う前の記憶に関係してるからかも。

2020-03-11 18:50:59
東洋 夏 @summer_east

だったら確かに、それはお母さんに関係してるんだろうから、呪いをかける舞台としてはピッタリだろうね。 ソナー・スクロールの上の点はもう増えなくなった。数秒ごとに位置を変えるけど、灯台の足元に集中してる。 僕と豆は休憩所を出て、そこへ向かって歩き出した。 歩道を外れると雪が深かった。

2020-03-11 18:51:00
東洋 夏 @summer_east

なだらかな雪の丘を苦労して歩いていく。 「ぅぉ」 豆は我慢して小さく吠える。はしゃいじゃってた。 丘の頂上に白い灯台が建っている。その先には断崖絶壁が海に落ち込んで、冷たく黒い波が打ち寄せてた。 集音妖精が集中してる所に近づくと、豆が鼻をくんくん鳴らし始めた。 僕が調べると……

2020-03-11 18:51:00
東洋 夏 @summer_east

【アンケート小説 #ここ豆】第三十二幕 こんばんは。 今夜も #ここ豆 は元気に更新いたします。 手がかりを求め、雪の中を歩き出した僕と豆。 アンケートは今回大接戦となりましたので両案を採用し〈呪いの文字〉の〈海の方からの謎の声〉を発見したことにさせていただきます。 pic.twitter.com/wUOCZvUKKH

2020-03-12 20:44:16
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東洋 夏 @summer_east

◇ 豆は灯台の足元に積もった雪を掘り始めた。疲れ知らずのパワーショベルみたいに、ドカドカと雪を撒き散らす。 僕は離れて見ながら、自分が本当にこの素晴らしい幻獣の兄弟──同じ胴体を持った兄弟なんだろうかと、疑わずにはいられなかった。僕の手足の筋肉は弱っちいし、火を操る魔力もない。

2020-03-12 20:44:17
東洋 夏 @summer_east

「ゔー!」 豆が脚を止めて、背中の毛を逆立てた。僕が大急ぎで駆け寄ると、灯台の台座部分に文字が彫り込まれている。 「呪禁文字……!」 文字は、本当に削って書いてあるのではなくて、魔力で書いて、一定期間だけ固定されるような仕掛けになっているみたいだ。 これは時限固定法っていう。

2020-03-12 20:44:17
東洋 夏 @summer_east

呪禁文字は呪い専用の文字だ(普通の文字で呪いが発動しちゃったら、日常生活難しいもんね)。 すべての呪文は、それに見合った負担を術者に強いる。呪いは負荷が大きいのに、なおかつ時限固定なんて……。 お母さんに死の呪いをかけた奴は、滅茶苦茶に強いだろう。 僕と豆だけじゃ絶対に歯が立たない。

2020-03-12 20:44:18
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まとめたひと
東洋 夏 @summer_east

オリジナルねんどろいどどーる、本、お馬さん、カメラ、名古屋おもてなし武将隊、fgoなどなど、フォロワーさんをよく振り落とす趣味のロデオ会場です。現在はローグライクハーフのリプレイの出力を中心に活動中。シルクと広尾で一口馬主してます。🏝一次創作の代表作は海と龍の星アルマナイマシリーズ。