『人生脚本のすべて』⑥ エリック・バーン著 江花昭一監訳 丸茂ひろみ・三浦理恵訳 星和書店 2018.9.25

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なければならない。 ⑦心理ゲームをするよりも誠実に話すことを好む人もいる。彼らは、トレーディング・スタンプを得るために挑発的に行動することはなく、人の誤った挑発的な行動に反応することも拒む。このようにして蓄えられたエネルギーがあるので、彼らはいつでも適切な人に、適切な時に、

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より道理にかなった感情表現をすることができる。(時として人は、痛みなしに心理的なトレーディング・スタンプを集め、ほかの人が対価を払う。しかし原則としては、トレーディング・スタンプを集める人は普通、遅かれ早かれ対価を払わなければならない)。

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⑧ある人たち、特に妄想を持つ人は、「偽造」のトレーディング・スタンプを集める。もし誰も彼らを挑発しなくても、彼らは挑発を心に描く。妄想を持つ人は、あちらこちらでとてもわずかなトレーディング・スタンプを拾い集め、一つひとつを非常に大きな単位にすることにより、すぐに重大な結末を得る。

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⑨患者にとって、生涯にわたって苦労して集めた心理的なトレーディング・スタンプのコレクションを諦めることは、主婦が買い物のスタンプを燃やすのと同じくらい難しいことだ。これが回復を妨げるひとつの要因だが、それは、患者が治るためには衝動的に心理ゲームをすることをやめなければならない

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だけでなく、以前に貯めたスタンプを使う楽しみも諦めなければならないからだ。以前の間違いを「許すこと」だけでは十分ではない。もし自分の脚本を本当に諦めるなら、自分の将来の人生コースとスタンプが全く無関係にならなければならない。

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著者の経験では、「許すこと」はトレーディング・スタンプを永久に処分するというより、むしろ引き出しにしまうことだ。トレーディング・スタンプは、物事が平穏な限り引き出しにしまわれているが、もし新しく気分を害することがあると、取り出されて景品を計算する新しい結末に追加される。

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これまでのところ、正義感、勝利感、喜びといった「良い」感情については言及してこなかったが、正義のスタンプは黄鉄鉱(愚か者の金)からできていて、幻影のパラダイス以外では通貨として使えない。勝利のスタンプはキラキラと輝くが、単にキラキラするだけなので、趣味が良い人は集めない。

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しかし、それらは代償なしの祝いと交換することができるので、立派に大勢の人に楽しみをもたらすことに役立つ。喜びは、絶望のように誠実な感情であり、心理ゲームの結末ではない。そのため我々は、不吉な絶望と同じように、素晴らしい喜びについて語ることができる。

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「良い」感情について臨床上重要なのは、「悪い」感情や「悔やまれる」という「茶色い」スタンプを集める人は往々にして称賛や「ストローク」という形で与えられた「金色」のスタンプの受け取りを渋ることだ。彼らは、おなじみの古くて悪い感情が心地よいので、良い感情をどこに置けばよいかわからず、

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聞こえないふりをしてそれらに背を向けたり無視したりする。実際の所、「茶色い」スタンプの熱心な収集家は、これ以上ない誠実な褒め言葉をベールに隠された侮辱に変えることができるので、拒絶したり聞かないで無駄にしたりする代わり、それらを偽りの茶色に変えてしまう。

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例えば「なんて素敵な洋服なの！」は、「ということは、私が昨日来ていた服は嫌いだったのね！」を引き出す。ちょっとした練習で誰でも、褒め言葉を侮辱に変えること、そして感じの良い金のスタンプに少し排泄物を吹きかけて不快な茶色のものに変えることを学ぶことができる。

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D. 代償 子ども時代の幻想は、主に良い子でいることへの報酬と、悪い子でいることへの罰に関係する。良いとは主に怒らないこと「そんなに怒らないの！」やセクシーでないこと(「わー、いやらしい！」)を意味し、恐れたり恥じたりすることは問題とされない。それでジェダーは、大変満足できる表現である

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「自己保存の本能」や、幼い時でさえ非常に楽しい表現である「種の保存の本能」のどちらも表現してはならないが、不満足で不快な感情は感じたいだけ感じることを許されている。報酬と罰について公のルールを作るシステムはたくさんある。法的システム以外に、宗教や観念的なシステムもある。

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しかし脚本分析家にとって最も大切な規約は、それぞれの家族に特有の、私的で隠されたものだ。小さな子どもには普通、子どもたちの行動を見守り通知表を付けるサンタクロースのような存在がいる。しかし、そのような存在は「小さい子ども」用であり、「大きな子ども」は少なくとも１年のある日に仮装の

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衣装でやって来る人としてのサンタクロースは信じない。実際、そのようなサンタクロースを信じないことは小さい子どもと大きな子どもを区別するものであり、同じく赤ちゃんはどこから来るかという知識もそうだ。しかし大きな子どもや大人も、それぞれ自分なりのサンタを持っている。

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ほとんどの人は一生サンタクロースや彼の家族の誰かを待っている。サンタは赤いスーツを着た陽気な人で、北極から贈り物を持ってくるが、彼と対等の地位にいるのは黒いマントを着た残忍な人で、大鎌を持って南極からやって来る。彼の名前は死神だ。

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そのため人類は、小児期後半には、サンタクロースを待つことに人生を費やす生のグループと死神を待つことに人生を費やす死のグループに分かれる。これはすべての脚本の元となっている基本的な幻想だ。その幻想では、サンタクロースがいずれ勝者の所に贈り物を持ってやって来るか、死神がいずれ敗者の

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すべての問題を解決するためにやって来る。それで、幻想に関して最初に聞くべき質問は、「あなたはサンタクロースを待っていますか、死神を待っていますか？」だ。しかし最終的な贈り物(不死)ないし最終的な解決策(死)の前に、当面はほかのものがある。

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すべての脚本は、このように何かしらの幻想に基づいている。そして脚本分析家にとって幻想の土台を崩すことは、痛みをともなうが必要な課題だ。幻想を崩す、という不愛想なタイトルは、最も素早く、最短の痛みでこれを終わらせるためのものだ。

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幻想は、ほとんどの人が自分の存在の基礎とする「～さえすれば」と「いつか～」に則っている。実際にサンタクロースは存在する。毎回の抽選で誰かの番号が当たり、その人の夢が叶うのだから。しかしおかしなことに、ほとんどの場合これは幸せをもたらさない。多くの人は勝ちをつかみそこね、以前の

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状態に戻ってしまう。これは、幻想の全体のシステムが魔法によるものだからだ。報酬が魔法のようにやって来るだけでなく、報酬自体も魔法なのだ。幻想は現実よりもっと魅惑的なものなので、最も魅力的な現実ですら放棄して薄っぺらなありそうもない幻想を好むのだ。

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これらの人の中には、満足できる現実を楽しむ、という恵まれたポジションにいるにもかかわらず、むしろ家で「座って」、誰が何のために助けに来るかわからないまま待っている人がいる。このような婦人の一人は精神分析の寝椅子に横になっている時でさえ、「私はここに座って、考えている」と言う。

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彼女は人と交流することは難しいと感じるが、それはどこへ行くにも精神的なトイレを持ち歩き、自分の「成人」が何をしていようと「子ども」のお気に入りの椅子に座っているからだ。実際、「子ども」はめったに自分の幻想を諦めない。幻想のいくつかは、生まれて数か月、あるいは子宮の中で生じる。

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フロイトは３つの最早期の幻想を明示しているが、それは「私は不死で、全能で、非常に魅力的だ」というものだ。もちろんこれらの原始的な幻想は、乳児が現実に直面すると、長くは続かない。現実とは、母親、父親、時間、重力、未知の恐ろしい光景、および音、空腹、恐怖、痛みという内的感覚だ。

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しかしそれらは、脚本の形成に強い影響を与える、条件つきの幻想に置き換えられる。そこでは、それは、～さえすれば、として登場する。「僕が正しくふるまってさえいれば、サンタクロースは来る」 親たちはどこでも、幻想に関しては同じだ。もし子どもが親は魔法使いだと信じるなら、

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それはある部分、親自身がそう信じているからだ。自分の子に何とかして次のようなことを伝えようとしなかったり考えたりしない親はいない。「私が言う通りにすれば、すべてはうまくいく」 ✅これは、子どもには「親が言うことを僕がすれば、魔法で守られ、僕の最上の夢はすべて叶うんだ」を意味する。

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その子があまりに固く信じるので、その信念を揺るがすのはほとんど不可能だ。📌もしうまくいかなかったら、それは魔法が消えたのではなく、その子がルールを破ったからだ。もしその子が親の指示に反抗したり指示を放棄したりしたとしても、自分の幻想への信念を失ったことを意味しない。

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それは、ただその要求にもう我慢ができない、または決して要求を永久に満たせないと思う、ということだけを意味する。そのためある人は、ルールに従う人に対して羨望や冷笑を向ける。内的な「子ども」はまだサンタクロースを信じているが、反抗者は「それは彼から卸で手に入れられる(薬物や革命で)」と

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言い、一方無益論者は「誰がそんな酸っぱいブドウが必要なのか？ 死のブドウはもっと甘い」と叫ぶ。しかし、次第に成長していくにつれて何人かの人は自分自身の幻想を諦めることができるようになり、それは幻想を諦めなかった人たちからの羨望や冷笑なしになされるようだ。

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「親」の教えは、最善ではこうだ。「正しいことをやりなさい。そうすれば災いは降りかからない！」だ。これは、プタハヘテプから始まり、記録がある限りの歴史を通してすべての国の道徳システムの元となっているモットーだ。最悪の場合は、「もしあなたがある人々を殺せば、世界はより良い場所になり、

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そうすればあなたは不死を手に入れ、全能になり、非常に魅力的な力を獲得する」と書かれている。 不思議なことに、「子ども」の視点からは、これらは両方とも愛のスローガンであり、両方とも同じように「親」の約束に基づいている。その約束は「私が言うようにすれば、私はお前を愛し、守る。

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私なしには、お前は無価値だ」だ。これは、約束が書面で与えられる時にはっきりと示される。第一の場合は聖書に書かれているあなたを愛し守る神であり,そして第二の場合は『我が闘争』や他の作品に書かれているヒトラーだ。ヒトラーは千年帝国を約束したが、それは実際には不死のことだった。

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これらの原始的な幻想が打ち砕かれるためには膨大な力が必要で、これは戦時下で最もよく起こることだ。同じことが、「もし私の『親』が言うようにすればすべてはうまくいく」という条件つきの幻想にも適用される。このほぼ普遍的な信念を力で粉砕する最も恐ろしい例は、有名な絵で示される。

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それは、ポーランドのある街で歩道には群衆が並んでいるにもかかわらず道の真ん中に９歳ほどの小さな男の子がひとりぼっちで立っていて、銃を持った「どくろの兵士」がその子の前にたちはだかっている、というものだ。少年は、顔の表情で非常にはっきり語っている。

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「でも、お母さんは僕に言ったんだ。もし僕が良い子なら、すべてはうまくいくって」と。どんな人間でも受け取り得るこの最も残酷な心理的一撃は、この子の良き母親がこの子を欺いていたことの証拠であり、追いつめた小さな男の子にドイツの兵士が与えている衝撃的な拷問だ。

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治療者は、同じような職務を遂行しなければならないかもしれない。それは拷問ではなく、手術だ。患者を治していくためには、彼の全人生の元となっている幻想を弱体化させなければならない。それは、患者の「～さえすれば」と「いつか～」ではなく、むしろ今、ここの世界に住めるようにすることだ。

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これは、脚本分析家が行わなければならない最も痛みを伴う職務だ。患者に、サンタクロースがいないことを最終的に伝えるのだ。 小児期後半の一番の幻想のひとつは、ジェダーが赤ちゃんはどこから来るのかわかった時に揺さぶられる。両親の清廉さを保つための作り話を維持するために例外を設ける必要が

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ある。「わかった。でも僕の両親はしていない」 これはジェダーに、母親が裏切った、と言うのと同じであり、まさにそうするようにその人に頼まなければ誰も人に言うべきではないことだ。 時には、母親ないし外的環境が傷つけ、堕落させた場面をきちんとした形に修復する、という反対の課題もある。

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何百万という子どもにとって、この幻想は達成できない贅沢であり、彼らは物質的な生活同様、心理的な生活においてもぎりぎりの状態で生きなければならない。 サンタクロース、死神、母親の処女性の信念は、正常と見なされる。なぜなら、その信念を手に入れる時は、熱く心をつかまれ、観念的で弱い魂に

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精神的な養分が与えられるからだ。一方、混乱した人たちは、彼ら独自の幻想を持つことによって混乱している。この幻想は「毎日浣腸をすれば健康に幸せでいられる」というものから、「あなたが病気になれば、お父さんが死なずにすむ。もしお父さんが死んだら、それはあなたがたいした病気にならなかった

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からだ」というものに及ぶ。また神との個人的な契約もあるが、それは、神は一度も相談されていないし署名もしていないし、実際署名を拒絶するだろう、という契約だ。「もし私が自分の子どもを犠牲にすればお母さんは健康でいられる」や「私がオーガズムを感じなければ、神は私に奇跡を起こしてくれる」

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が一般的な例だ。後者はパリの売春婦たちの間で、「たとえ何人の男たちとセックスしても、承知の上で病気に感染しても、それを仕事として行い、そして楽しまなければ、私は天国に行ける」というように制度化されていた。

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小児期後半では、魔法の幻想を最もロマンチックな形で受け入れることができる。幻想は、小児期後期に現実と対比してテストされ、不本意ながらある部分は手放され、秘密の核の部分のみ人生の存在の基礎を形作るために残される。非常に強い人たちだけが、幻想なしに生きるという馬鹿げた賭けに立ち向かう

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ことができる。後の人生においても、諦めることが最も難しいもののひとつが自律性や自己決定の幻想だ。 これを説明したものが図10だ。本物の自律の領域は、本当に合理的な「成人」の機能を意味するが、「親」の偏見や「子ども」の希望的観測から自由なものであり、A₁と記される。 pic.twitter.com/1HpIbxRopd

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