たなばた本丸まとめ

晴 @BTK_H41E1U54N

本丸に着任した頃を思い出してみる。 #たなばた本丸の日常

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審神者に就任したのは、まだ雪深い冬の日。担当を名乗る役人から渡された初期刀を片手に足を踏み入れた自分の本丸は、冬の筈なのに桜が咲き乱れる、静かで不気味で、美しい場所だった。

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初期刀と初鍛刀の印象は…卑屈で頼りない打刀と大雑把で面倒くさがりな短刀。そこまで仲良くはなかったと思う。お互いに一線は引いていた。当時の自分は彼らの前の主の話だとか回想まで興味がなかったこともあり、彼らはあくまで敵を倒して報酬を貰うための戦力。それだけの関係だった。

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代わり映えのしない、作業のような毎日に、気が緩んでいたのだと思う。その日の自分は現代での仕事の書類と本丸の運営を並行して行っていた。桜付けをしながら遠征を出し、電話対応をして、また桜付けに戻り…仕事が一段落したころ。私はようやく異変に気付いた。初めて鍛刀した短刀の姿がない。

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どこを探しても、どこにも姿がなくて、そこで初めて自分がとんでもないことをしたのではないかと思い至った。桜付け、周回、最低限の装備でたったひとふり、敵前に送り出していたとしたら？目の前が真っ暗になった。最後の言葉すら聞き届けることもなく。私は初めて刀を折った。

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数ヶ月の間、立ち直れずに本丸から離れて生活をした。仕事の辛さを忘れるために始めた審神者としてのことを、皮肉にも仕事が忘れさせてくれた。そうして自分が折った刀のことすら忘れてしまった頃、ふと思い立って本丸に帰ると何も変わらない不気味なほど美しい桜の下で、初期刀が立っていた。

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1番謝るべき相手はもういない、だから誰も許すことは出来ない。それでも俺たちは今後もあんたを支えよう。苦々しい顔をした初期刀はそう言った。 不甲斐ない主でごめん。自分のした事を思い出し、謝ることしかできない私の頭を撫でてくれた大きな手を、優しい神様を、私は忘れない。

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それからの本丸運営は概ね良好だったと思う。あの日、全ての刀剣男士に自分が審神者として不誠実であったことを謝罪してからはコミュニケーションを取ることが増えた。出陣も進軍も慎重に、確認しながら。そんな当然のことが出来るようになって、皆の練度も上がって、催事に参加する余裕も出来た。

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折れてしまった刀が元に戻ることは無いし別の個体だということも分かっているけれど、他の粟田口の子らと話す初鍛刀の姿があって、支えてくれる練度の高い連中がいて、怪我しながらも頑張ってくれる新入りたちがいて、誰より頼れる初期刀がいる。今でもあの本丸が心地よいものだったと断言出来る。

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まあ、どれだけ懐古しても、あの本丸にはもう二度と戻れないんだけどな。 就任記念日を間近に控えたあの日。私がバイクで事故に遭った日。出掛ける直前に初期刀を見かけたのが最後になるなんて、誰が想像しただろう。 あんなことになるなら｢いってきます｣くらい、ちゃんと言えばよかった。

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主が居なくなったあの本丸はどうなっただろう。優しい彼らは本霊に還ることが出来たのだろうか？それとも次の審神者に引き継がれたのだろうか？ どちらにせよ彼らに会うことは叶わない。 あの日から、私はずっと迷子だ。

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復帰した頃を思い出してみる。 #たなばた本丸の日常

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愛着が湧いていたからこそ喪失感が大きすぎて、バイク事故の後はもう二度と本丸を持つものか…！と思っていたんだけど、半年後くらいに審神者をしてる友人から琉球宝刀が実装されたことを聞いたんだよな。

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催事が既に終了したと知って、私はすぐ次年度への準備を始めた。 再び本丸を持つのならば、七夕の日にしたい。会いたい人と会える日だから。私が叶えられなかった分まで、この本丸の刀剣男士にはたくさんの仲間、会いたい人に出会って欲しかった。

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城の名前は天の川にかかる橋を形作る鳥の名を、審神者名は彼らが雲に隠される事がないように。 願いを込めたこの本丸で、私たちは今を生きている。増えていく日常が思い出を押し流していくのは寂しいけれど、迷子は迷子なりに居場所を見つけられたのかもしれない。

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ただ、この願いのせいなのか偶然か、旧本丸で折れたはずの初鍛刀と同じ挙動をする同位体が来るとは思ってなかったな。 その話はまた今度。

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時の政府所属の刀剣男士(疲労困憊)にシール台紙をぶん投げた話。 #たなばた本丸の日常

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そろそろ真面目にシール交換すっかーと思って政府に顔を出した帰り道、廊下ですれ違った政府所属の刀剣男士の顔があまりにも疲れきっていたから、その場で持て余してたシール台紙を押しつけて｢うちのこになりなさい｣ってしたい。した。

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自分はシール交換用の個体じゃないとか、他の分霊が既に顕現しているとか言い始めたから、きみが来ないならうちの本丸のシール交換21点が無かったことになるだけかな！って啖呵きって帰る……が、一晩経ってから気付いた。政府刀様に喧嘩売るのは流石にヤバいのでは…？？？

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いや普通に考えて余りの9点分は損してることにはなるんだけど切羽詰まった感じがしたんだよお！恐喝の疑いとかで怖い人からお手紙来ないよね？大丈夫だよね？って近侍の肩掴んで揺さぶってるけど目が合わないんですよこれは詰んだかもしれない。 あばよ皆。

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受取箱に出処不明な修行道具が1セット入ってた。これは…シールの差額分…ってことか…？？？刀は入ってないので、多分だけど後から山姥切長義のシール用個体が送られてくるんだと思う。本人？本刃？も、自分は政府所属だから本丸配属は不可！って言ってたしな…残念。

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担当さんから電話！！！

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私がシール台紙を押しつけた山姥切さん、弊本丸への配属が決まりました！！！ 政府の総務部にいたみたいなんだけど、今は退職して本丸配属に向けて研修うけたり業務の引き継ぎをしてるって…！手続きに時間かかるから配属は2週間くらいかかるらしい！ 歓迎会の準備だ！！！

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彼誰時、ひとり本丸を歩くのが好きだ。 白み始めた空の端がゆっくり夜と星を喰っていくのを見ながら、ところどころで動き出した気配を辿る。朝餉の支度を手伝うもの、鍛錬をする者、それを眺めるもの。 静かな朝。 それは本丸がいちばん賑やかな時間だ。 #たなばた本丸の日常

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遅めの朝餉。そういえば主さんって明け方に何してるの？隣に座った乱が言う。 広い食堂にひとりと、ひと振り。どうやら彼は寝坊して皆と一緒に食べ損ねたらしい。粟田口の兄が溜息をつく姿が目に浮かぶ。 何って、朝の挨拶。湯気のたつ味噌汁のお椀を手に取りそう答えると、くすくす笑う声がした。

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変なの、ほとんど皆寝てるでしょ。そんなことないよ。そうだね、今朝起きてたのは国広と厨番くらいかな。国広さんまた鍛錬してたんだ？そう、見てて面白いよ。らしいね、ほんとよくやる…あ、お味噌汁おいし。そりゃあ皆で手伝ったからね。本当だ、美味しいねえ、ボクおかわりしてくる！

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汁椀を手にした乱がぱたぱたと厨の方へ向かうと、声は聞こえなくなった。

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茶碗たちと話した件で三日月から呼び出し入りました…おわた…。

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……さて、主よ。厨の食器共や庭の花らとは、ずいぶん懇意にしておるようだがなあ。あれもまた神の端くれ、俺たちと同じ付喪神だ。あればかりに心を砕いておると…真昼の月のようにいつか隠されてしまうやもなあ？はは、冗談だ。

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神というものは人からの信仰がなければ存在できない曖昧な存在だ。主もよく聞くだろう、己を己たらしめるのは他者からの認識であると。それと一緒だ、何が言いたいかというと、神もまた己であるために人を慈しみ、信仰するものに対し執着する、裏切れば相応の報いを受けるか、切り捨てられる。

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笑っているはずの三日月の顔に靄がかかったように見えたのが最後の記憶。そのあと何を話していたかは、あまり覚えていない。気がつくとそこは見慣れた景色、審神者部屋の仮眠用ソファだった。私は学んだぞ…神様の地雷踏むのは危険…気をつけよう…。

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審神者｢ｧｱｱ"ー…｣ 鶯丸｢おや？どうした主｣ 審神者｢二日酔い…あと普通に霊力不足…霊力ください…ギブミー霊力…｣ 三日月｢それが出来れば苦労はしないが…本来、俺たち分霊というものは急須と湯呑みのようなものだから難しいと思うぞ｣ 審神者｢？｣ 三日月｢どれ、休憩がてら教えてやろう｣

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三日月｢この急須が本霊、中に入っている茶が霊力ないし神力だとしよう｣ 審神者｢ふむふむ｣ 三日月｢そして湯呑みが分霊だ。本霊は分霊に、霊力を注ぐ｣ 審神者｢ほんほん｣ 三日月｢霊力の籠った分霊が主の元に届くことで刀剣男士として成立する…熱いうちに飲むといい｣ 審神者｢いただきまーす｣

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三日月｢では主。ここに新しく茶を注いだ湯呑みがある。この茶を急須に戻してくれんか｣ 審神者｢分かった｣ 三日月｢ああ、言い忘れていたが急須には触れてくれるなよ？｣ 審神者｢……は？無理だわ！！！｣ 三日月｢はっはっは、そうだろう｣

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三日月｢湯呑みから急須へ、茶を戻すには蓋を開ける、という行為が必要になる。そも、湯呑みは茶を注ぐためのもので、急須は茶を注ぐためのものだからな｣ 審神者｢あー、本霊と分霊も同じで、そもそもの用途や役割が違うってこと？｣ 三日月｢うむ｣

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審神者｢分霊から本霊に霊力を送ることは想定されていない…まあそうか、それで本霊が変質したらことだもんな……じゃあ連結とか習合は？｣ 三日月｢湯呑み同士で茶を移すようなものだな、出来なくは無いが、細かい量の調節がきかないが故に茶が零れたり、湯呑みが倒れたりする可能性がある｣

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三日月｢今は茶だから良いが…これが一柱の神の持つ力だとしたら、さて、どんなことが予想される？｣ 審神者｢…零れた霊力で災害が起きたり、遡行軍のいいエサになるな。注ぐ側の霊力が枯渇したり、注がれる側が溢れて暴走する危険性もありそうだ｣

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三日月｢本来の手順を踏まない連結や習合が禁止とまではいかずとも忌避されているのは、そのあたりが関係してくる｣ 審神者｢あー、たまに聞く刀を喰わせて…みたいなアレ…？｣ 三日月｢うむ｣ 審神者｢…それで言うと、審神者は急須側ってことになるのか？｣ 三日月｢それは、どちらともとれるな｣

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三日月｢霊力は本霊の持つものだけとは限らない、本丸のような空間に満ちる霊力もある｣ 審神者｢それを自分が湯呑みとして受け取り、急須として新しい湯呑みに注ぐってことか｣ 三日月｢それが出来るのは恐らく人の子のみよ。俺たち刀剣男士がそれを出来るのならば手入れ部屋は必要ないからなあ｣

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審神者｢なるほどねー…何となくわかった｣ 三日月｢どれ、ひとつ賢くなって顔色も良くなってきた事だ。湯呑みのじじいが主に霊力を分けてやろう｣ 審神者｢怖いんで遠慮しておきます……｣ 三日月｢はっはっは｣

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三日月｢捉え方にもよるが必要以上の霊力は人の子には毒だ。湯呑みが集まって本気を出せば簡単に主の器は溢れる。簡単に霊力を寄越せなどと口に出すのはよす事だな｣

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桜付けで1-1に向かった加州清光との連絡が途絶えた。

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審神者｢政府への連絡は？！｣ こんのすけ｢完了しております！｣ 白山｢こちらも、交信中…｣ 審神者｢1-1でバグ発生なんて下手したら大侵冦以上の被害が出るぞ｣ 長義｢御守を持たずに出陣している場合、かなり危険な状況に陥るだろうね｣ 国広｢御守……、御守で位置の特定は出来ないのか｣