独自設定もりもり、普段のつぶやきを読んでる前提の鳥太刀がただ会話するだけのイベント。突然色々なカップリングが発生するので地雷のある人は注意してください。
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せーは @seiha_rnb

溜息が落ちてくる。 「…珍しく早いな?」 「国永の霊力が変な拡散をしただろう。嫌な予感がして来てみれば、これだ」 低く抑えられた声は、普段の淡々としたものとは違い、明らかに不機嫌が滲み出ている。 まず真っ先に怒られるのは俺のようだぞ、と鶯丸は早々に立ち去った昔なじみを思い浮かべた。

2018-10-15 15:13:29
せーは @seiha_rnb

青年…大倶利伽羅はもう一度嘆息して、鶯丸から少しだけ離れた所に腰掛けた。鶯丸からすれば、いつも通りの距離だ。…恐らく。視覚がかなり混乱していて、傍らの彼の表情も声も、遠く近く奇妙な残響を残す。 「…俺は別に、こうして欲しくて国永の話をあんたにした訳じゃない」 「あぁ、そうだろうさ」

2018-10-16 01:10:34
せーは @seiha_rnb

正直まともに聞き取れている自信も、自分がまともに発声できている自信もなかったが、概ね言いたいことは察していた鶯丸はゆるく笑った。 大倶利伽羅が一度だけ、鶴丸の負担のことを漏らした時に言っていたのはどうにかして鶴丸が築いたこの防衛機構を損害無く破綻させられるのか、という事だけだ。

2018-10-16 01:16:12
せーは @seiha_rnb

「…うん、まぁ。言われてたのはそれだけだな」 「それで俺に国永が頼る前に先手をうってあいつの負荷を割り振った、と」 そう、鶴丸が維持していた術式と相性が良いのは何も長い付き合いの古刀だけではない。 強い神仏の加護があり、龍の属性を持つ青年。そして鶴丸の術を、恐らく良く知っていた男。

2018-10-16 01:22:04
せーは @seiha_rnb

鶴丸自身が彼には甘く、出来れば負荷を掛けたくはないと考えているのは目に見えていたが、さりとて自分の手に余る事を分けて託すという事になれば恐らく鶴丸が一番最初に頼るだろう相手が大倶利伽羅だった。 そして鶯丸は、あくまで個人的な事情で以てその選択肢を遮り、自分を割り込ませた。

2018-10-16 01:27:52
せーは @seiha_rnb

理由は、そんなに大袈裟なことではなく。 「うん、まぁ。こういう妙な術を入れると多少なりとも濁るからなぁ。なんとなく嫌だった」 そう言ってのんびりと鶯丸は笑った。 鶴丸の構築したものとはいえ、科学的な技術が混ざった本丸の防御系術式は異質だ。神の一種である刀剣男士にとっては異物である。

2018-10-17 03:34:23
せーは @seiha_rnb

組み込んだ所で大きく変質したり恒久的な変調を来すものではない。だが、本刃の持つ霊力にはある種の僅かな濁りが生じる。 些細な事だ。誉傷の様なもので、本質的に損なわれる訳ではないのだから、どうという事はない。 ただ。 ―鶯丸は大倶利伽羅の真っ直ぐで透き通った気配を気に入っていたもので。

2018-10-17 03:39:42
せーは @seiha_rnb

…だから、それだけだ。 そう笑いながら言う鶯丸を苛立たしさを浮かべたままの目で睨めつけた後、大倶利伽羅は実に苦々しく吐き出した。 「あんた等年寄りは勝手すぎる」 声には棘、というより痛みの様な物があった。 「勝手に何もかもやって、俺達が気付いた時には事が済んでいる。本当に腹立たしい」

2018-10-17 03:40:20
せーは @seiha_rnb

(まぁ、怒らせた上で傷付けるだろうとは思っていたんだが) 胸中でだけそう呟き、鶯丸は珍しく淡々と言葉を続ける男を見やった。 「どうせ。…俺や、清光の憤りや葛藤は、あんた等には解らないのだろうさ」 ぽつりと混じった名に少しばかり驚くが、そう言えば二振りは鶴丸絡みからか大分親しかった。

2018-10-17 03:54:20
せーは @seiha_rnb

まるで代弁する様な言い方は意外ではあったが。 …もしかしたら、彼らはこういう話題を繰り返し話すことがあったのかも知れない。 勝手に守って勝手に置き去りにされる、こちらの気持ちなど解りはしない、と。 実に耳が痛い。何しろ、鶯丸の今回の行動は本当に、あくまで個人的な私情だったのだから。

2018-10-17 03:55:27
せーは @seiha_rnb

勿論、様々な理由はあった。友人への心配、仲間への気遣い、兄弟への思いやりのようなもの。それらは、どれも嘘ではない。 ただ、一番の理由が自分が愛着を感じているものが歪むのが「なんとなく嫌だった」だなんて。 確かに、勝手と非難されても致し方ない。 鶯丸は眩む視界を閉ざすよう目を伏せた。

2018-10-18 03:33:58
せーは @seiha_rnb

「あぁ、本当に。勝手な年寄りで悪いな」 本当に、悪いとは思っているのだが。どうしようもなくただ苦笑した。 目を伏せても様々な映像が脳裏に結んでは消えて目眩を呼ぶ。様々な音が混ざって狂ったような聴覚に、それでもその溜息はやたらと明瞭に聞こえた。ほつり、と落ちて空気に混じって溶ける。

2018-10-21 12:56:09
せーは @seiha_rnb

「……いい。別に今更だ。あんたを選んだ時点で負けている」 「はは。それはそれは、」 「―ただ、負け続けるつもりはない」 覚悟しておけ、と放られた言葉に鶯丸は言葉を失った。思わず見開いた視界が揺れる。突然の浮遊感と、景色の変化と、触れる温度。 「ちょ、こら、待て」 この状況は、まさか。

2018-10-21 13:23:18
せーは @seiha_rnb

背と膝の裏に腕、体の片側に感じる体温。地についていない足。鶯丸は察してしまった現実から目を逸したくて片手で顔を覆う。 明らかに、恥ずかしい状況になっている現実から。 「いや、待ってくれ……」 「暴れたら落とす」 あんたの方が背が高いから抱え辛い、としれっと答えた男はそのまま歩き出す。

2018-10-21 13:39:01
せーは @seiha_rnb

「どうせ、歩けもしないんだろう」 「…」 ぴりりとした苛立ちを帯びた大倶利伽羅の声に鶯丸は沈黙で応える。正直平衡感覚も狂い、立ち上がるのも難しい。歩くどころかほぼ行動不能だ。 「……せめて肩を貸すとか」 「こちらの方が早い」 弱い懇願を叩き落とされ息をついた。取り付く島もない。

2018-10-21 13:47:36
せーは @seiha_rnb

「あんたの弟に言って、そっちに運ばれるのとどっちがいい?」 「それは…煩そうだ」 何も相談せずこういう自体に陥った事を知ったら真っ直ぐな弟分の事だ、怒るに決まっている。いつもなら面白いが今はあの声は響く。 それに大包平は恐らく似た症状に陥る可能性がある、恋人の方に回してやりたい。

2018-10-21 13:51:37
せーは @seiha_rnb

こうなるともう、大人しくしているしか無いだろう、と鶯丸は己を無理やり納得させる。確かに部屋に戻るのは億劫だったので丁度いいとも言えた。 そう理由を並べ立てないと、流石の鶯丸でもこの状況は逃げ出したくなる程度には恥ずかしい。 せめて人目が少ないうちに部屋まで戻して貰えるよう祈った。

2018-10-22 00:16:49
せーは @seiha_rnb

―― 「また此度は随分と、揉めたようだな」 少年じみた小柄な姿を見下ろし、男は柔らかく微笑んだ。 「全く。まぁ髭切を序列に上げるとは、あやつも心境の変化があったのかも知れぬが」 「アレは警戒心が強い。まぁ巣を守る親鳥とはその様なものよ」 父は全く構わぬ、とこの本丸の中でも古い刀は頷く。

2018-10-22 07:09:19
せーは @seiha_rnb

「髭切が序列に加わり、結界や監視式は鶴丸から権限が幾分か譲渡された。これで加州らも少しは心が休まると良いが」 甘い香の香りの中、美しい青年は呟く様に言葉を紡ぐ。 「さて。戦いは続く故に、安心は出来ぬかもしれぬな。刀である我等は出て敵を倒すが本分だが、巣が壊されてはそれもままならん」

2018-10-22 07:16:26
せーは @seiha_rnb

日本刀の父を自認し、そう名乗る少年の様な刀は、歌うように言って傍らの青年を見上げてきた。 「それで、お前はどうするのだ」 「どうするも何も。俺はこれまで通りに過ごすだけさ、父上」 「……そうか、そうか。それも良し。この父が許そう。…なぁ三日月」 小烏丸は、目を糸のように細めて笑う。

2018-10-23 19:00:01
せーは @seiha_rnb

「主はなんと?」 「今回の顛末に関しては、笑っていたがな。俺は『これまで通りにしているように』、と言われているな」 「……ふむ。ならばそれで良い。…何かあった時は父に申せ。手くらいは貸してやろうぞ」 「それはそれは、お気遣い痛み入る」 緩やかに会釈し、では、と三日月は踵を返す。

2018-10-23 19:06:49
せーは @seiha_rnb

去る三日月を小烏丸が追うような気配はない。ゆったりと歩いて、三日月は己の部屋に向かった。 「やれ、鳥達は目が良くて叶わんな。だが、皆梟では無いのだが」 故に、月程に夜は見透せぬものだ。 美しい顔に柔らかい笑みを浮かべて、天下五剣はひとり、そう呟いた。 部屋に戻り、懐に手を差し入れる。

2018-10-23 19:18:29
せーは @seiha_rnb

小さな青い絹の巾着から取り出したのは、手で隠せる位の四角い缶だ。三日月はからから、と鳴くそれの蓋を外し中身を一つ手のひらに転がす。 ――それは青い、透き通った小さな飴玉の様に見えた。 それを指で摘んで口の中に放り込むと、三日月はゆるりと目を伏せた。 かろ、と口内で歯に当たる音がする。

2018-10-23 19:29:27
せーは @seiha_rnb

静かな室内にはその音と三日月の呼吸の音、衣擦れの音くらいしかない。 程なく、三日月は目を明けた。うちのけの宿る青い目は、不思議な輝きを帯びている。 「…ふむ。あれだけ表側を弄っても俺の方の権限は問題なし、か。確かに『これまでどおり』だ。…気付かれないように潜るのは面倒そうだが」

2018-10-23 19:34:33
せーは @seiha_rnb

髭切辺りは異様に勘が鋭いからなぁ、と三日月は苦笑し、ゆるりと主の言葉を思い出す。 『強固なシステムが出来れば出来るほど、それに依存しきって壊れた時の損害は大きいものだからな』 面に隠れていない唇を釣り上げ、審神者は笑う。 『まぁ、つまり予備…バックアップってのは大事なんだ、何事も』

2018-10-23 19:38:36
せーは @seiha_rnb

その言葉を知っているものは、本丸の中でも限られている。 何しろ、主が口にしたのは『メインシステム』損壊が前提の機構だ。損壊の内容は単純な破壊から汚染までが想定されていて、必然的にその『メインシステム』には存在を伏せられている。 「まぁ、鶴丸とて何らかの対策は想定しているだろうがな」

2018-10-23 19:44:41
せーは @seiha_rnb

三日月が二度、三度瞬きをする間にその目に宿った薄い光は消えていた。 「保険など、使われぬまま終わったほうが良いものだが。何がどう転ぶかは、解らぬからな」 今回のように身内だけでも想定外の事態は起こる。 未来は未だ定まらず、歴史が揺らぎ続ける以上、何が起きても不思議ではないのだから。

2018-10-23 19:52:36
せーは @seiha_rnb

「まぁ、『何かが起こるまで』は、俺は『これまでどおり』のんびり過ごさせてもらうだけだ。表の護りが壊れるような事があれば、どうせ誰も、のんびりなど出来ぬ訳だからな」 ひとりごちて、長く息を吐く。秘匿回路を使った裏口からの接続を切ると、三日月はそっといつもどおりの日常に戻っていった。

2018-10-23 20:05:15
せーは @seiha_rnb

―いつもの本丸鳥太刀会話イベント、終わり。

2018-10-23 20:05:59
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まとめたひと
せーは @seiha_rnb

羽衣馬晴波@成人済 文と短歌*BL色恋二次創作 猫と日常 ⛔カプ雑食・混沌・諸々注意⚠ 刀*沖田組他・独自設定本丸 FGO*授と新茶 メギド*祖51,63 tist*🌹 2.5*観/呟 生涯推*触手 F*19歳以上推奨 RT多。 短歌企画 @seiha_tanka_ アイコン 友人カエル氏