抜粋)『冷淡な傍観者～思いやりの社会心理学』Bibb Latané , John M.Darley 著 武村研一、杉崎和子 訳 ブレーン出版

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まず、問題提起の端緒に、利他主義から取り上げられています。 利他主義についてのさまざまな議論をみると、二つの基本的な問題を混同しているように思われる。第一は、「人間が持っている利他主義を支える力とは何だろうか？」「援助は何によって動機づけられるのか？」という哲学的なもの。

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第二は、他人を助ける場合と助けない場合とがあるが、それぞれの状況を決定するのは何かということで、データ分析向けのもの。両者間の関連性について考える必要はあるのだろうか。他人を助けるという一般的な傾向を生み出す規範があるとしても、特殊な状況において、ある個人が他人を助けるかどうかは

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全く別の諸事情による、といったこともありうるのだ。(前掲書　pp.11-2) 　利他的行動の問題は緊急の場合に限られているわけではないから、考察はまず、非緊急事態における助け合いから始められている。非緊急事態における援助についての実験結果の報告で、実験室外で行われたものを選ぶ。

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被験者は実験室の中では特異な圧力を受けるからである。さらに、実験室内の研究では「～のつもり」という感じがどうしてもつきまとう。被験者が、自分たちが実験に参加していることがわかっている場合、実験の意図はこうであろうかと考えて反応する。「代価の有効性」と「被験者が要請者の動機をどう

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解釈し、要請者の以後の行動に何を期待するか」という説明は、ある事態に対する解釈が、その事態への反応の仕方を決めるという前提に基づいている。好ましからざる解釈が成り立つとき、また、どう解釈をしたらよいのかはっきりしないときには、援助行動は起こりにくくなる。(pp.13-27)

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人が見知らぬ人にお金を与えたりするのは何故だろうか。また時と場合によって与えたり与えなかったりするのは何故だろうか。この二つの疑問を、規範というひとことで説明しようとする学者もいるだろう。(先にみた文科省のように)われわれが他人を助けるのは、規範がそうしろと命じているからであり、

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時と場合によって助けたり助けなかったりするのは、あてはまる規範が時と場合とで違うからだという説明である。各規範の目立ちやすさ(salience)が時と場合とで変わるからだという説明もされる。 このような規範による説明には、問題点が多い。第一に、いろいろな規範は相互に矛盾している。

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他人を助けよという至上命令には、助けを受ける側にはまわらないこと、自分のことをまず心配すること、他人のことに口出ししないこと、などという制限条項がついてまわる。こんな具合では、ある具体的な場面に居合わせて決心のつかない傍観者にとって、規範が役に立つなどとは考えられない。

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規範というものの第二の問題点は、それが相互に矛盾していながら、同時に内容が極めてあいまいで一般論的だという点である。これらの問題のために、人助けという行動を説明するための科学的概念としての規範の価値は著しく減ずる。規範の数は多く、その表現はあいまいだから、どんな行動をもってきても

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それは何かしらの規範で説明することが出来るのだ。規範はあまりにも多くを説明するがゆえに、実際は何も説明していないのだ。行動の決定要因としては、規範はあまり重要ではない。規範は、君臨はするが統治しないという点では英国王なみである。つまり、規範は存在するけれども、複雑な現実の問題では

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他の多くの事情が絡んできて、人助けのさまざまな様式を説明することの役にはたたない。また、規範は、行動の名目的な説明概念として存在するともいえる。規範は何をすべきかを決断する際には決して考慮されないが、なされた行動についての事後の説明としてはわかりやすく、また社会的にも通りがよい。

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特に、行動の真の決定要因が意識されていない場合、規範は便利である。その場面にふさわしいもっともらしい規範的説明は、自分の行動についてよくなされる。したがって、いろいろな意味で、規範が存在しても、それは必ずしも行動の原因とはならないし、規範に基づく人助け行動の説明は科学的に役立つも

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のでもない。同じような批判は、人助け行動の説明としての共感や同情という感情にも向けられよう。規範と同様に、このような感情は人助けへの一般的傾向の基礎になったり、特定の人助け行動への事後説明としては役立つかもしれない。しかし、規範の場合と同様に、だからといって共感や同情が、人助け

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行動を引き出す必要条件や十分条件だということにはならない。人助けの場面での行動は、社会的規範に従うとか、他人に対して気前よく、あるいは同情的に行動しようとかいう一般的意志によってではなく、当人が場面について下す解釈や評価や、予期される報酬や代価によって大きく決定されると思われる。

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また、現代人が緊急場面に際して介入しない傾向は、道徳的規範に従おうとする傾向が減ったためとか、他人への同情心が減ったためではなく、緊急場面の解釈の仕方が現代的になり、報酬や代価のあり方が現代的になったことを示すものだと思われる。社会的規範からの疎外や、　　　　　#道徳偏差値

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他人の身の上についての無関心とかいう考え方は単純すぎており、人助けしようとしない傍観者の行動の説明としては正しくないといえる。説明の鍵は、傍観者が場面に介入する以前に下さなくてはならない、一連の判断の中にあるといえよう。(pp.31-46) 　　　　　　　　　#道徳偏差値

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緊急事態の特質について。①それに巻き込まれると危害を受けるかもしれないという怖れがある。ないしは、実際に危害を受けるというのが、何にも増して緊急事態の大きな特色である。生命・幸福・財産などが危機にさらされる。緊急事態における介入行為がうまくいっても、それに対して積極的な報酬は

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ほとんど期待できない。高価な代価と不当に低い報酬とが圧力となって、人々は潜在的緊急事態を無視したり、事実を歪めて理解したり、そうした事態に対処すべき各自の責任の度合いを無視したりすることになる。　②それが異常な、しかもまれな出来事であるということ。事態の収拾に役立つような個人的

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経験は皆無ということになる。　③それぞれの緊急事態は、その原因も、収拾に必要な介入の種類もケースごとに大きく違っている。共通して要求されるもの、それは行動である。しかし行動の種類もひとつひとつ違ってくる。われわれの文化の中では、こうした事態にどう対処すべきかという知恵は、人づてに

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さえもほとんど得られない有様である。　④こうした緊急事態は突発する。予測不可能の出来事であるために、事前計画も人と相談する機会もない。傍観者にしても、いったん緊急事態が発生すれば、他人と相談したり、熟考したりするひまはない。　⑤早急に直接行動を起こすことが必要とされる。

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どんな方法が可能かを、ゆっくり考える余裕など与えられない。あれこれと他の方法を考えるよりも、まず決定を下すことが必要なのだ。こうして彼はストレス状態に置かれることになる。自身の持つ過去の経験も、他人の経験も役立てることができないし、あらかじめ考えたり、計画することも不可能なうえ、

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自分のとるべき行動について熟考する余裕も拒否されたまま、一切、彼に利益をもたらすことのない状況に直面している傍観者は、ひとかたならぬ窮地におかれている。したがって、そうした場合に、誰にしろ介入行動を起こすなどということは、むしろ驚くべきことなのである。(pp.48-50)

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緊急事態に介入するとなると、その個人はひとつだけではなく、連続した一連の決定を下さなければならない。a) それを見た者は何かが起こったということに気づかなければならない。その外的事件が彼の思考の中に侵入して、意識に強引に割り込む必要がある。いつたん、事件を認識したうえで、今度は、

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b) それが緊急の事態であると解釈することが必要となる。目撃者が、本当に何か異変が起こったのだという結論に達したとすると、次に彼は、 c) 行動を起こすのが自分の個人的な責任なのだという決定を下さなければならない。もう救援活動は始まっているのかもしれないし、彼以外の人間の方が

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この場合には適役かもしれない。もし、彼が自分こそ、この男を助けるべきだと決断したとする。次には、d) どのような形の援助が彼に可能かを決めなければならない。自分が直接、飛び込んで行って、病人に手を貸すべきなのか、医者や警官を呼ぶなどという、もっと間接的な方法をとるべきなのか。

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最後には、もちろん、e) どのようにして彼の行為を遂行するかを決定しなければならない。電話はどこか。病院はどこか。ここまできて、やっと彼は状況に応じて行動を開始するとみてよい。社会的責任のある行為とは、一連の決定の後にやってくる一つの帰結であるといえよう。(pp.51-2)

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介入の社会的決定要因Ⅰ　周囲からの影響過程。　他人の存在は、人助けしようとする衝動を抑制する働きがある。多くの人がいたとしても、みんなが、あらぬ方を見つめたり、目を伏せたりというように、最善の公共的行動をとっているのであれば、緊急事態の最初の微妙なサインは見逃されかねない。

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介入しないからといっても彼は何もしないわけではない。習慣的な日常の仕事をそのまま続けるのだ。【←注 : エンデの作品を思い出していただきたい。】が、もし介入を覚悟すれば、彼は複雑で非日常的な行動を、しかも公衆の面前でとらなければならないことになる。面倒で見栄えのしない行為をうまく

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演ずることができずに、他人に嘲られることになりはしまいかが心配である。緊急事態の傍観者はステージに上がるチャンスを提供されるわけだが、それはまさに悪夢である。稽古もしていないのに幕は上がってしまっているのだ。たくさんの人がいれば、それだけ面目を失う可能性も多い。

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他人の存在は、各々の行動を抑制するばかりでなく、関心を示すことさえ妨げることもありうる。最初に自制を失いたくないのは誰も同じである。実は狼などいないのに、「狼だ！」と叫ぶ役割はごめんだと考える。他人の災難にあんまり気をもんでいるように見えること自体がきまりの悪いことであり、

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そう見えることが引き金となって、自分がよく考えてみるひまもなかった早急な行動にひきずりこまれるかもしれないのだ。何をすればよいのかという腹が決まるまで、群衆の一人一人は、たとえ被害者の災難にどれほど心を痛めていたとしても、冷静で動じない態度を保ち続けようとする。

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何を信じたり行ったりすればよいかわからない、あいまいな状況に直面した場合、人はよく自己の行動の手本を他人に求めようとする。テーブルマナーのように、普通不慣れな場面ではわれわれは周囲の人々の行動から、ずいぶん貴重な情報を得るものである。他人の解釈も参考にして自分の決定を下すのが、

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通常の理性というものである。しかし、反応が必ずしも人々の感情を正確に伝えているとは限らない。特に潜在的緊急事態においてはこの傾向が強い。群衆の中の各々が冷静を装い、危険の可能性に対して極端な反応を示さないように努めているとすれば、その反応を判断の基準にしようとする人々が誤った結論

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に到達することもありうる。他の人たちは別段、心配もしていないのだと誤って認識するかもしれない。冷静な様子や無反応を観察した結果、各々が、本当は何事も起らなかったのだと思い込む場合もある。他人が居合わせたばかりに、一人だけの時よりも、状況の深刻さを軽視することもあろう。こうして、

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誰かが行動を開始するまで、それぞれの傍観者は、他人の反応のなさにけおされて静観し続ける。誰も心配していないのだから何事もないのだと決めてしまう時、「衆愚」(pluralistic ignorance)が発生する。そうこうするうちに危険はますます増大して、ついに、他人のみせかけの

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平静さに惑わされなかった誰かが、行動を起こすことになる。異常な、非日常的な状況の下では、個人は、周囲の人々の反応から通常以上の大きな影響を受ける。状況の緊急性が不確かである場合には、その不確かさがストレスと恐怖を増幅し、個人の思考能力を弱め、周囲からの影響にいっそう敏感にする。

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劇場で、数千人の観客の一人が衝動的に行動した(「火事だ！」と叫ぶ)とする。すると、それが実際に目の前で行われるために、全員の表面的な無関心、すなわち、衆愚の状態を打ち破り、群衆のうちに隠されていた恐怖と不安感を表面化させることになるのである。火災からではなくとも、他の観客から

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逃げるために、出口目指して突進する人もいるに違いない。そうすることによって、パニックの結果を避けようとするあまり、彼はパニックを誘発することに一役買っているのである。(pp.61-87)

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緊急事態に付随する代価は大きい。介入するしないにかかわらず、傍観者は代価を支払わねばならない。介入しない場合には、いつまでも続く被害者の不幸に同情して、自分なりの苦痛を味わうだろうし、有形無形の非難にさらされて恥ずかしい思いをし、自分で掲げる行動基準にさえ達しない、自分の

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不甲斐なさのために罪悪感にさいなまれることになる。一方、介入を行えば、さらに広範な、さまざまな形の代価を支払わなければならなくなるだろう。明らかに、介入には時間と労力とが必要である。そのうえ、社会制度は、介入者をその場の一種の責任者とする傾向がある。

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不介入の代価は心理的なものであることが多い。しかし、そういった心理的負担は、緊急事態の存在を確実に否定することができれば取り除かれるものである。したがって、歪んだ解釈や楽観的解釈が起こりやすい。傍観者の手をわずらわすことなしに緊急事態そのものが消滅してしまえば、罪悪感は残らない。

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最も安易な逃げ道は、緊急事態などというものが実は存在しないのだと自分自身に信じ込ませることである。(pp.123-6)

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個人は認識の過程において、介入の是非についての葛藤の原因となるような緊急事態の知覚を歪め、緊急事態の存在を否定することによって、それに対する自らの反応を抑制する可能性がある。かくして罪悪感に悩むこともなく、超然としていられるのである。(p.134)

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介入の社会的決定要因Ⅱ　責任の分散。　他人がいることがわかっていながら彼らの行動がくわしくわからない場合には、他の誰かが、すでに緊急事態を終わらす手を打っていると思うこともあろう。そうであれば、自分が介入してもそれは役に立たないし、多分よけいな迷惑や混乱を巻き起こすかもしれない。

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このように、行動のよくわからない他人がいると、傍観者は自分に「他の誰かがもう何かやったに違いない」と言い聞かすことによって、自分の不介入を理由づけることができるのだ。 選択肢の間にはさまれて、動こうとしない傍観者は行きつ戻りつ迷っていたのであって、動かないことに決めたのではない。

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助けを求める人にとっては、いずれにせよ助けてはもらえなかったのだから、こんな区別はどうでもいいことであろう。しかしこれは、傍観者の不介入の原因を理解する上では重要な区別である。

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男性が女性より素早く行動するということはなかったし、女性の行動はもう一人が男性の時、さらには医学部進学コースの学生のときでさえ、別に遅くはならなかった。このような性別による効果が全くみられない理由を考えてみると、前記の期待が規範に基づいたものであることがわかる。緊急事態において

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男性が女性より素早く行動するはずだとされる理由は、それが男性に期待されていることだからである。すなわち、規範なのだ。規範と実際の行動との間の関係は強くはないということはすでに考察ずみであり、性別のような変数に何かしらの効果を期待したのは、われながら矛盾した考え方であった。

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規範は行動を予測できないことを改めて確認しているといえる。(pp.135-157)