自己愛家族においては、親側の要求が優先される。子どもの要求に焦点を合わせる親システムの能力、正確に言うと、能力のなさが、自己愛家族を定義する決定的な要因である。親がどのような組み合わせであろうと変わりはない。自己愛家族のカテゴリーには、「目に見える」「隠れた」の2種類がある。
2015-11-07 00:34:19目に見える自己愛家族は、古典的な「機能不全」家族であるから、セラピストが認知するのは比較的容易である。アルコールまたはドラッグ、身体的または性的虐待、犯罪者、明白な精神的疾患、そして(あるいは)深刻なネグレクトなどである。
2015-11-07 01:07:13これらの家族においては、親システムはあまりにも混乱をきわめているので、低いレベルの要求(食物、衣服、庇護、そして安全)にすら応じられないこともある。
2015-11-07 01:07:53目に見える自己愛家族に生まれた子どもは、まだ非常に早い時期、すなわち、しばしば幼少時、あるいは深刻な親システムの機能不全の始まった時から、反応的、あるいは反映的になる。
2015-11-07 01:08:47これらの家族の顕著な特徴の一つは、家族の秘密があることである。両親が口に出して言ったり、口には出さない暗黙の要求に応じるために、子どもたちは、虐待とかネグレクトを、外部の者から、そしてしばしば、お互いの間でも秘密にする。
2015-11-07 01:15:39お互いに助け合うために結束するよりも、これらの家族の人々は、しばしばお互いに孤立しているのである。その「秘密」はあまりにも恐ろしいことなので、彼ら自身の間でさえ話し合われない。
2015-11-07 01:19:13「目に見える自己愛家族」という用語は、セラピストが認知したことを記述するために用いられるのであって、患者が認知したことを記述するための用語ではない。自分たちの子ども時代の育てられ方の現実を、最初から気づくことのできる患者は例外であって、普通そんなことはない。
2015-11-07 01:42:12自己愛家族に育った典型的な大人は、認めてもらえないという怒りに満たされ、空虚な人間のように感じ、不適格で欠陥があるような気がし、周期的に襲ってくる不安とうつに悩んでいながら、それにどう対処したらよいか、手がかりもつかめないでいる。
2015-11-07 01:46:26緊張は、目に見える自己愛家族の特徴である。子どもたちは、皆、多少なりとも状況をコントロールして、事態を良くするために注意を引こうとしたり、承認を得ようとしたり、そして(あるいは)「波風を立て」て、事態がもっと悪い方に向かわないようにと必死に努力している。
2015-11-07 01:51:18見捨てられ不安から子どもたちは、自分の家族状況を極端なまでに(他人に対しても、またしばしば自分自身に対しても)否認してしまう結果になる。この見捨てられ不安が、大人になっても持ち越され、セラピィで、原家族のことを打ち明けるのを難しくし、それを苦痛に満ちたものにする。
2015-11-07 01:56:06隠れた自己愛家族 隠れた自己愛家族は、親システムの機能不全的な行動が、目に見える自己愛家族より微かなので、識別するのがさらに難しい。
2015-11-07 14:10:11この種の家族は、外側からはまったく立派に見えるし、また内側からも大変うまく行っているように見える。実際、このような家族の中で育ったサバイバーは、自分の問題の原因が、育った家庭にあるかもしれないと言われると、それを完全にごまかしてしまう。
2015-11-07 14:25:41もし子供たちが、両親の要求に応えるよう期待されているならば、子どもたちは、明らかに彼ら自身の要求には応えてもらえないであろうし、また、自分の要求や感情を適切に表現する方法を学べなくなるであろう。
2015-11-07 14:28:42まったく逆に、子どもたちが学ぶのは、いかに自分の感情を隠すかであり、感じていないことをいかに感じているふりをするかであり、いかに本当の感情を経験しないようにするかである。先に述べたベッキイは、この例である。
2015-11-07 14:32:02ブラッドの物語 ブラッドは、女性とうまくつきあっていくことができないため、セラピィを始めた。彼は非常に成功したビジネスマンであって、見るからに自信と熱意をにじませていた。というのも彼の自尊心の低さは、ビジネスの世界ではうまく隠されていたのである。
2015-11-07 14:38:11彼は起きている時間の大部分を仕事に費やしていた。会社での早い昇進には確かに寄与したが、彼の人間関係には、マイナスであった。彼の仕事中毒は、当初は悪い関係に対する防御となったが、今や、いかなる関係でも問題を大きくさせることになった。
2015-11-07 14:41:23ブラッドは、典型的な隠れた自己愛家族の出身である。彼の両親は、2人とも教師であり、地域活動に熱心であった。ブラッドとその姉は、優秀な学生で、クラスの人気者であった。彼らは外見も中味もごく普通の家族であった。
2015-11-07 14:45:49彼の両親が、かつてブラッドに、彼の感情について語りかけたことがあったかどうか聞いた時、彼は、「ありません。思い出せません。誰も感情について話すものはいませんでした。行動しなければならないことだけがわかっていました。それをしなければ、まずいことが起こりました。
2015-11-07 14:49:23たぶん、両親は、ベッツィー(姉)とは感情について話したと思います。姉は本当にいい人でした」と答えた。ブラッドの姉は、彼より2歳半年上の、プロの音楽家だった。セラピィの過程で、ブラッドは、自分たちの育てられ方について彼女の印象を知るために、疎遠な彼女と連絡を取るよう励まされた。
2015-11-07 14:55:52彼は、彼女が自分とよく似た子ども時代の感情を持っていることに驚いた。さらに彼女の感じ方はもっと激しかった。姉が弟に書いた手紙の引用。「両親の間の感情的な緊張があまりにも強いので、彼らは、私たちが人形のように、手のかからない子どもになるようでなければ我慢ならなかったのです。
2015-11-07 15:02:05家の中には、いつも緊張がありました。」ブラッドは、姉からこの手紙を受け取った時、自分の家族を新しい目を通して見ることができた。家の中では、子どもが両親に対して感情的な要求をせずにいれば、物事がうまくいっていたことを彼は納得した。
2015-11-07 15:05:57そうすることは、非常な緊張を引き起こし、「いつも幸せそうに振る舞う」ことを学んだ、と彼は言った。ブラッドと姉は、両親の要求には応えるが、両親からの感情的な支えは求めないことを学んだ。要するに、彼らは隠れた自己愛家族の出身者なのである。Id. at 34
2015-11-07 15:10:43程度の問題 ある程度機能不全が見られる家族で、1人は非常に健全であるが、他の兄弟はめちゃくちゃということがある。どうして一人の子どもは比較的傷を受けないように見えるのか。その理由を著者たちは、この子どもの要求がかなえられた程度が、他の兄弟よりも大きかったと仮定している。
2015-11-07 15:20:39まったく同じ環境でありながら、兄弟が一人としてまったく同じ環境で育つことはない。両親は、両親と子どもの人格の差に応じて、それぞれの子どもに異なった対応をする。
2015-11-07 15:27:37両親の、それぞれの子どもへの関わり方が異なるのは、子どもたち自身がそれぞれ異なっているからであり、両親の感情(まず第一に自分自身についての)もまた、異なった相互作用によって変化するからである。
2015-11-07 15:31:55そこで、1人の子どもの情緒面の要求がきわめて一貫して受け入れられるのに対して、他の子どもについてはそうでないことがありうるのである。
2015-11-07 15:32:33同じ自己愛家族で育った兄弟でも、それぞれの要求がかなえられる度合いは非常に異なっているものなのである。
2015-11-07 15:35:35信頼の問題 ほとんどの自己愛家族には、家族を見る見方、人間関係のダイナミクスの中で、重要な手がかりを提供してくれる特徴がある。 信頼…そして不信の進展…がもっとも重要なものである。
2015-11-07 15:41:51著者たちは、自己愛家族のサバイバーが信頼の点で障害があると認めているが、それは必ずしも幼児の頃、彼らの基本的な要求が満たされなかったためではない。
2015-11-07 15:59:03反対に隠れた自己愛家族の多くのサバイバーは、幼児時代によく育てられ、生後12か月~24か月の間(あるいはもっと長く)身体的にも心理的にも要求が健全に受け入れられたように見える。少なくとも、基本的な信頼水準が、その時期に形成されていたはずだ。
2015-11-07 16:02:56自己愛家族の問題は、しばしば子どもたちが自己主張し、彼らの親システムに情緒的な要求をしようと試みるにつれて始まる。 子どもは、信頼することをまったく学んだことがないというより、信頼しないことを学んだり、信頼することを捨てているのである。Id.at 36
2015-11-07 16:06:10トリシャの物語 トリシャの両親にとって、きれいな赤ちゃんをもった美しく若いカップルと見られることはよいことであった。しかし、赤ん坊が大きくなり、背が高くなり、手に負えなくなるにつれて、要求が多くなり彼女自身の予定に従うようになってくると、もはや両親の持ち物と見られなくなった。
2015-11-07 16:15:21トリシャの物的要求はメイドによって処理されたけれども、情緒的要求は誰も満たしてくれなかった。彼女の母親は、だんだん冷酷に、そして言葉で虐待するようになり、軍人の父親は、時には冷たくよそよそしく接したり、時には温かくちやほや接した。
2015-11-07 16:19:12この間歇的で気まぐれな感情の強化は自己愛家族に共通している。このことは、このような行動がどんどん繰り返してもらえるという希望を抱かせて、子どもたちを両親につなぎとめる。
2015-11-07 16:22:04その一方で、それは子どもたちに(自分たちには、もっとよい相互の関係を作り出す能力が欠けているのだと思う)自己不信と、(彼らは私を騙して地に落とす、だから私は騙されたくないという)他者不信を一層強めるのである。Id.at 39
2015-11-07 16:26:58逆転した親業モデル 子どもが成長するに従い、親自身のアイデンティティーはますます子どもの発達に脅かされていく。子どもの要求がより複雑になりはっきりしたものになっていくと同時に、彼または彼女は一層明白に親システムを侵害してくる。
2015-11-07 16:31:02子どもの心理的な要求が家族生活の中でより大きな要素となるに従い、自己愛家族は本当にはっきりしてくる。自己愛家族は子どもの要求に適応できなくなるし、子どもは、生き残るために、適応する者にならざるを得ない。
2015-11-07 16:34:23逆転の過程がスタートする。 すなわち要求に応える責任はしだいに親から子へと移動する。
2015-11-07 16:36:49幼児の頃には両親が子どもの要求に応えていたのに、今や子どもの方が、どんどん親の要求に応えようとしているのである。なぜなら、この方法によってのみ子どもは関心と受容と承認を得られるからである。Id.at 40
2015-11-07 16:39:57正常な子どもが、成長して自分自身や友達を喜ばせようとする要求が増えるにしたがって、両親を喜ばせようとする要求は減ってくる。健全な家族では、しかしながら人生のこの事実について悩みつつも、親の責任についての基本的な観念を変えることはない。
2015-11-07 21:25:02両親の仕事は、子どもの要求に応えることであって、その逆ではない。
2015-11-07 21:25:54しかし自己愛家族においては、正常な発達段階に応じて、子どもの分離独立への要求と情緒的満足への要求とがエスカレートするにしたがって、子どもがわざと親の邪魔をするとか、だんだんわがままになっていくなどという親の信念も増大することになる。
2015-11-07 21:30:04両親は脅威を感じてこれに抵抗し、ますます子どもが親の要求に応えるよう期待する。乳児期から青年期の間のどこかの時点で両親は子ども中心をやめ(かつてはそうしていたとしても)、感情を持ち、正当でかなえられるべき要求を持った別個の人間として子どもを見ることをやめるのである。
2015-11-07 21:34:31子どもは、そのかわり両親の外延となる。 (The child becomes, instead, an extension of the parents.) ~"The Narcissistic Family" キンドル本位置No.2028中344
2015-11-07 22:06:20正常な情緒的発達を、わがままか欠陥のように受け取るということこそ、両親が子どもにどうすればよいかを教える鏡なのである。子どもが承認を得るためには、親の言葉、あるいは無言の要求に応えなければならない。親システムの要求に子どもが偶然対応できたときに承認されるのである。Id.at 41
2015-11-07 22:27:00リンの物語 リンは優秀な高校2年生で、クラスの総代候補であり、多くの大学から奨学金がもらえると思われていた。彼女は優秀で誠実な学生ではあったが、教師たちは、彼女のたびたびの欠席、遅刻、態度と感情の変化を心配するようになっていた。
2015-11-07 23:02:34カウンセリングを始めた時、リンがセラピストに対して、自分は健全な大人で、「責任をとれる」ふりをしようと決めていたのは明らかだった。母親に対する忠誠心と責任感のため、セラピストを含め誰にでも、秘密を打ち明けるには非常な苦痛が伴った。
2015-11-07 23:18:33リンの両親は彼女が8歳で妹が5歳の時に離婚した。父親との個人的な経験は、母親が彼女に話す父親の否定的な姿とはひどく差があって、リンは狼狽し不安になった。父親に愛情を感じる時、「何か悪いことしてるみたいに感じるんです。ママを裏切ったような気がして」
2015-11-07 23:24:56