幼少時に女装っことして育てられた百ちゃんと都会から引っ越してきた杉くんのはなし

内田💉💉💉💉💉 @24ki_onICE

中３の尾の志望校とか、杉の家の話とか（杉が誰にも言ってない話でも尾は知っていたし、なんなら「あいつらもみんなお前が金（保険金）あるって知ってるぞ」って言われてぎょっとした。 尾の志望校を聞くとギリギリ通えないところにある高専に行くという。

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村の子は大体同じ高校に行くという流れも何となく決まっていて、よっぽど頭のいい子が寮のある有名校に行くことが数年に一度あるかないか、みたいな感じだったから杉も驚いた。そもそも高専てなに？ってレベルだったし。

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尾の中３の夏、杉の中２の夏はそうやって過ぎて、また秋に学校が始まると挨拶だけの関係に逆戻りした。二人とも携帯とか持ってなかったし。 そして次の春、尾はあっさりと難関の高専に合格し、寮に入ってしまった。

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ゔぅ…また明日…😑😑

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杉の中三は味気ないものになった。半分意地で、半分やりたくてやってた尾への挨拶もなくなったし、受験が重くのしかかってくる。成績は多分悪いほうじゃないけど高校の選択肢が限られてるし、普通校か農業高校か、の二拓で当たり前のように考えている同級生たちにも違和感があった。

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頑張ればもっと上を狙える杉も同級生からは当たり前のように二択で探られて、逆にもっと上を狙えるとか言いづらい同調圧力を感じてめんどくさい。尾もこうだったのかな、とか考えたりしながら６月の最初の進路希望票を出した。（何回か出してく系）

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その杉中三の夏。尾が帰って来るか気になってたら、そこは田舎の情報網、どこからともかく尾んちの孫が寮から帰って来るらしいと杉のところまで流れてきた。 来るかどうかわからないけど、杉は単語帳と計算ドリル、あと去年の夏とおなじ、麦茶と梅干しおにぎり二個と茹で卵、たまにきゅうりの浅漬け。

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来るかどうかわからないとかいいつつ、尾は来ると杉は確信していた。 朝五時くらいに二人の秘密の佐渡山に着いて、さすがに誰もいなかったけど寝転んで英単語覚えたりしてたら朝７時くらいに尾がやってきた。 「…受験生が余裕だな」 「うっせぇよ、そっちこそコーセンの勉強に付いてけてんのかよ！」

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杉が適当に憎まれ口を聞くと、尾はにやりと笑った。 「周りのレベルに合わせないで済むからすげぇ楽だぞ」 口の減らないやろうだ、と思ったけど、それが同町圧力や探り合いの無い会話で心地よかった。

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（同町圧力て） ※このついったーあかうんとの誤字はデフォルトです。 ご覧になる皆様の理解力と配慮に支えられております…。

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んで、杉は「どう受け取られるか」とか「誰に伝わるか」とかそういうことを気にせずに好きなこと言える尾との時間が復活して嬉しかったし、尾も「受験生が暇なもんだあ」とか言いながら藪払いとか山の手入れを杉に普通に手伝わせてて、拒絶はしなかった。

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たまに英単語とか教えてくれるし(というか間違いを正してくれた）杉が高専の寮生活とかについて聞けば応えてくれるし、本音の進路相談が出来てる感じだったけど、「（尾の）学園祭とか行ってみたい」て言ったらその時だけスンと真顔になって「来るな」って言われた。

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何でだよ！って詰めよったけど「何ででもだ」って言われて逆に「（ぜってー行ってやる）」って思って、ちょっとメラメラしながら杉は「勉強頑張ろ」って思いました。尾は高校楽しそうだったし、確かに自分だって田舎の濃厚な情報網から逃れたい気持ちもあった。

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それ以降進路の話は掘り下げることなく、山の手入れとたまに勉強見てもらったりでまるで去年と同じように夏が過ぎて、夜の風が涼しくなる頃、尾は寮に帰って行った。 尾のいない村は杉にとってまたつまらない場所になってしまった。

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その落差が逆に杉を駆り立ててしまい、次の進路希望調査では第一志望を尾の行く高専にした。担任は「可能性がないとは言わんが、相当頑張りが必要だぞ」って言われて杉は本気になりました。 そんでもって本気ついでに尾がどんだけ聞いても教えてくれなかった高専の文化祭の日付と、行き方を調べました

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勉強本気、ってゆーても行きかえりのバスの中で勉強道具開いたりとかすると村の子に自分のいないとこでﾋｿﾋｿされることはわかってたので、勉強は家と学校だけ。それでもターゲットを視野に入れたあとの執着杉には障害となるほどのこともなく、杉のへんさちは順調に上がっていく。

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そしてとある秋の連休の日、杉は尾の高専の学園祭に一人で向かった。尾には来るなと言われていたけれど、担任の先生にも「志望校の雰囲気をしるために文化祭とか一般参加ができるなら行っておいた方がいいぞ」っていわれたからね！担任の言うこと聞かないと内申に響くからね！！

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当然尾には伝えずに行ったから、尾に会えるかどうかもわからなかったけれど、一人で行く未知の場所にドキドキしながら杉はあちこちでチラシを渡され呼び込みに引きずられ、見たい展示もどこかよくわからないまま中をさまよった

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尾に会えるかな、とか思ってたけど全然会えない。小学校から中学校に上がった時も人がいっぱいって思ったけど高校はその比ではなかった。 高専だから工学系の展示ばっかりかと思ったら演劇部とか喫茶店とか全然関係ないのもあった。どこに行っても結局尾を目で探していた。

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会えるだろうという期待もあったのに結局会えないまま呼び込みに手を引っ張られて入った喫茶店に目を見張るようなきれいな女の子がいた。目がでっかくて黒髪がつややかで、色が白くて、目が離せない。なんだこれ、誰だっけ俺知ってるってぐるぐる考えてたらそのウェイトレスはすっと奥に行ってしまった

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呼び込みで自分を連れてきた店員（生徒）が「あのこ可愛いでしょ、うちのクラスだよ」って言ってきて杉は「あの子誰だっけ、俺知ってる」って記憶をぐわんぐわん回しながらこくこくと頷いた。 見覚えがある、めっちゃある。あれは、あの子は

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小さいころ、まだ杉が長い休みの時にだけ村にいた頃にたまに見かけた可愛い初恋の子だ！絶対そうだ！ そう確信して、高専は共学って言ってもほぼ男子校みたいな男女比率だからライバル多いだろうなって思いながら味のよくわかんないお茶を飲み干して、学校のパンフレットをもらって村へ帰りました。

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（ふぅ…（この後のことを何も考えてない））

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一応ですね、学園祭に行く前だって杉は本気の本気で勉強してたんですよ。でもちょっとしか成績が上がってなくてｺﾝﾁｸｼｮｰと思ってたんですけど、学園祭に行って今までの「本気の本気」の更に上を行く本気になりました。もう通学のバスでも人目を気にせず勉強しまくった。

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英教の教科書の文章を暗唱したし（尾に「単語をちまちま覚えるより文章ごと覚えたほうが文法も発音も覚えるから効率がいい」って言われたから）数学も苦手な証明問題を毎日解いた。その結果、１２月の模試ではようやく尾の高校の合格圏に近づいて、入試は補欠合格、そしてなんとか繰り上がり合格した。

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春休みは尾も帰ってきてたけど（冬休みも帰ってきてたけど受験生だったし）山の手入れにも行かず、尾とは会わずに家を出る準備をした。杉の進路について噂が回ってきてるかもしれないけど入学してから驚かせてやろうと思って。それに、会ったらあの女の子のことを聞いてしまいそうで恥ずかしかった。

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そしていざ入学、入寮ときてバタバタしながらの新歓部活勧誘の場になり。 あちこちでチラシを貰いつつ、仮装したり女装したりダンスしたりする集団がいるかと思えばダンスとも判別しがたい謎舞踊の集団がいたり講談よろしく机をバンバン叩いて演説してたりと色々目を奪われながら杉が歩いていたら、

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格別に可愛い娘がいて、杉はすぐに「あの子だ！」って思ってロックオン。 立ち止まってガン見してたら「お若いの。ロボコンに興味があるかね？」って声をかけられた。 いやいやロボコンとか別に興味ねぇし俺が興味あるのは、興味あるのは…（ガン見）「あの子、ロボコン部だよ」「えっ」

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「まぁまぁ、じゃあとりあえずこっちおいでー」と会議机が置いてあるとこに手を引いて連れていかれて、そこにはロボコン部って書いてある幟が立ってて、机の上になんかわからんラジコンみたいなんがうごうご不格好に二足歩行していたけど、その向こうには黒髪の色白の、目のでっかい子がいた。

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「おーい！興味あるって新入生連れてきたぞー！」 あの子が振り返って杉を認めてぎょっとした顔をした。 「すぎもと…！！！！！！」 わーそんなかおもするんだーってぼーっと眺めてるだけの杉、周りの部活の人たちは腹を抱えてゲラゲラ笑っていた。 「スッげぇな尾形！」 「うっせぇよ！」

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視線の方向とか揺れる黒髪とか周りの人との受け答えとか表情の変化とか杉は目が離せなくてひたすらガン見してたら、ぐいっと服を引っ張られたと思ったら目の前にあの子のでっかい目があって我に返った。 「うわわわわああああ」 「よく見ろ杉元。俺が誰だかわかるか💢」

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わ～一人称俺なんだぁ意外ぃ～～～ 「おい杉元わかってんのか」 ぐいっと胸倉を掴まれた。あれ、なんかイメージちが… 「オガタヒャクノスケって知ってるか」 「えっはい知って…… どぇぇええええええええ！？？？？」 「…だから来るなって

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え～一人称俺って言うんだぁ…意外ぃ… 「おい杉元(# ﾟДﾟ)」 え？なんで俺の名前知ってんの？ あぇ？？？ ぐいっと胸倉を掴まれた。 「おがたひゃくのすけって知ってるか」 「えっあっはいっしって し…　どぇぇえええええええ！？」 よーやっと尾とわかった杉、周囲からゲラゲラ笑われる

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「うそっ…うわっかわ……え、かわ……！」 ブツブツ言いながら杉が尾のお洋服に無意識に手を伸ばして来ようとするのでさっきまで胸倉掴んでイキってた尾はさささーと隣にいた眉がぶっとくて頬に傷のある先輩の後ろに隠れてしまった。え、なにその距離感って杉が思った後ろで

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さっき自分を連れてきた牧歌的なお顔の先輩が「今入部すれば女装した尾形と一日デートしていいよー」 「なにいってんスか玉井さん！」 尾がのまの後ろから吠えてるけど杉は玉井さんと呼ばれた牧歌的なお顔の先輩に向き直った。 「マジすか！」 「もういい入部しよう入部しよう♪」

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「やめろ！杉元書くな！書いたら一生口きかねぇぞ！」 のまに押さえられながら尾が吠えてたけど可愛いので全然何言ってるか気にならなかったし、尾以外は杉を歓迎していたから、杉はふらふらと入部届に名前を書きました。 さいちくん高1の春はこうして始まりました。

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さて、男子が多い環境だとありがちな「まぁまぁ線が細くて肌が綺麗な子を女の代わりに愛でる（悪乗りコミ）」と昔取った杵柄(小さいころは女装させられてた）で尾ちゃんは慣例に逆らわずに女装要員としてお役目をはたしていたわけですができればそのことは地元コミュニティに知られたくなかったし

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ましてや自分の女装過去を知らない（はずの）杉に見られるのも嫌で嫌で。村関係ないとこだったら割り切ってできるけどそこに杉はどんどん入り込んでくる。だから学祭にも来るなって言ったし受験も歓迎しない態度マシマシだったのにとうとうこんなとこまできて、

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しかも明らかに自分にポーっとなっている。そりゃもう周り中が「どーすんだよ新入生あんなにしちまって」とかからかってくる位。 自分でも似合っていると思う。 ひゃくちゃん、きれいね、かわいいね。道を歩けばだれもが振り返ってひゃくちゃんをみるよ 母親の声が蘇ることが多くなった。

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今日こうじろうさまが来るかもしれないから、迎えにいこうか。きっとびっくりなさるわよ。おそろいのワンピースにしようか、白地に青い細かい水玉の夏らしい生地で作りましょうね。濃紺のリボンを付けて。 今日来るかもしれないのにいつ仕立てるつもりなのか。いつも母の言葉は明確で不明確だった。

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東京に繋がっている高速を降りて、村の集落につながる道と交差する辻はあまり交通量が無く、農家用のつばのひろい首側に布の垂れた帽子ではない普通の麦わら帽子をかぶって、揃いのワンピースを着て村では珍しい日傘をさして炎天下の街道に立つ母子の姿は異様に目立った。

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うふふ、百ちゃんがこんなにかわいいと、きっとこうじろうさまびっくりなさるわ。 ああ、汗かいちゃったわね、拭きましょうか。こうじろうさまは華やかなのもお嫌いじゃないけど涼し気な方がお好みなのよ。青いリボンが綺麗だこと。 ひゃくちゃん、可愛いね。どこからどう見ても清楚なお嬢さんだわ…

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母がおかしいというのは色々な大人たちの態度でわかっていたが、自分にはただただ優しい母だった。 髪を梳き、服を選び、着付け、少女のように夢を語り、百之助を慈しんだ優しい手。それが全てだった。 母の落胆を見るたびに自分の美しさが足らないのではないかと思い、そう思いながら母を励ました。

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おかあさん、今日はきっともう遅いからこうじろうさまも明日になさるんじゃないかな。大事なお仕事がたくさんあってお忙しい方なんでしょう？ 言葉を尽くして母を説得して家路につく。夏の一番熱い時期は特に何かあるのか母親は執拗にこうじろうさまを待ち続けた。

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明日は違うお洋服を着ましょう、リボンはあの紺色のストライプのきらきら光るやつにしましょう、きっとお好みだと思います 顏もしらない「こうじろうさま」を待ちながら、母親に寄り添った。 「こうじろうさま」を待ちながら、たまに見かける村の男子たちの集団を百之助は見るともなしに見ていた。

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こうじろうさまは今日もいらっしゃらなかった。 ご都合が悪いのだろうか。「綺麗で清楚な女の子がお好き」と聞いているが、やはり男子ではだめなのだろうか。 美しくなる術も知らない自分は母に任せるしかない。 母はこの上なく自分を美しく飾り、慈しんでくれている。まだ足りない？まだだめ？

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そんな季節を何度か過ごして、年々濃縮されてゆく母親の中身が自分に刃を向けたとき、百ちゃんは初めてお母さんんに反抗して（tin切られかけるのはやっぱり怖いという本能が勝った）、それで母親と切り離されて男としての人生を取り戻した百之助くんなんですけど。

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学校で乞われるままに女装するのは大して苦でもなかったが、地縁のあるものの目に触れると思うと幼いころの記憶がよみがえる。 頑張ってもついぞ来てくれなかった「こうじろうさま」 美しさが足りなかった自分。きれいね、可愛いね、そういって自分をつくり、するすると慈しんだ白くて細い優しい手。

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高校生になった今となってはそれが思い出したい記憶なのか思い出したくない記憶なのかわからない。 村の者のいない環境なら割り切ってできたことが、村出身の杉がいるというだけで様々な怪物が蘇ってくるような心地悪さがあった。