抜粋)④『オープンダイアローグ』ヤーコ・セイックラ、トム・エーリク・アーンキル著 高木俊介・岡田愛訳 日本評論社 2016.3.25

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オープンダイアローグと未来語りのダイアローグの共通の要素について。pp.98-101

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オープンダイアローグと未来語りのダイアローグは、異言語混淆(the heteroglot principle)と社会言語という考えに基づいている。２つのやり方では、共同の言語は違った出来上がり方をする。しかし、どちらのやり方でも、状況ごとに独自の社会的言語を作り出すことが重要だ。

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２つのアプローチとも、参加者たちの立ち位置は互いの境界が交錯する位置にある。ミーティングの目的は、ケースへのかかわりを共同で実行していくための有益な方法を見つけることにある。

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こうした境界横断(boundary-crossing)は、新たなタイプの知(a new type of expertise)を生み出す。この「新たな知」とは、📌共同で一緒に創り出された理解である。そうするために、素人と専門家が一緒に集まるのである。

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それを実行可能にするためには、その知識が特別な知識をもつ専門家だけでなく、クライエントとそのパーソナル・ネットワークが積極的にかかわれるものでなければならない。 📌両者ともに、ポリフォニックな見方をもたねばならない。

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めざしているのは、問題解決のために皆が一緒の理解をすることではない。📌むしろ各人が問題に対して独自の見方をもつことが出発点なのである。

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お互いのものの見方を理解しようとすることが重要なのである。そこでは参加者たちそれぞれの境界に新たな理解が生まれるのであり、誰かの理解が唯一正しいものとなることはない。

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これらのやり方は、制度的なコミュニティや関係の中だけで援助するのではなく、可能な限り日常生活での状況や人間関係に根ざして援助を行っていこうという志向においても共有されている。会話では日常的な言葉が用いられ、専門用語は避けられる。

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…こうしたステップは、性急に求められるべきではない。各々のプロセスは特有のリズムを持つからである。治療やリハビリの計画は、治療システムにある見通しを与えるかもしれないが、生活そのものの見通しは、ミーティングの参加者たちがつくる境界システムの中で、自然な過程を経て得られるものなのだ

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このことは、言葉がもつ異言語混淆の原理や対話的な性質を示している。📌強固で、遠大なモノローグ的な計画をつくりたいのではない。それは確からしく見えたとしても、実行できないシロモノだったりする。私たちが目指すものは、各人にとって次のステップへの見晴らしがきく計画である。

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治療の計画が話し合われる場合でも、参加者たちがうまく〈対話〉していけるなら、お互いに新しく共有される理解が生まれるのだ。それ以前のセッションにおいて扱われてきた同じ事柄も、別の会話において新たな意味を得るのである。

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いずれのやり方でも、行動の外的変化だけを見るならば、かなり些細なことにすぎない。決して劇的なものではないのだ。しかし、どちらの実践でも、活動の全体が新たな意味を持つようになる。

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ひとつひとつの行動はそんなに変わり映えがしなくても、それらが構成する活動全体は、種々の立場の人たちが共同の体験を積んだことで新たな意味を帯びてくるのだ。それに参加した人たちは〈対話〉を行ったことで、より広い文脈から物事を見るようになる。

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相手がこの文脈の中でどのような位置にあるのかを理解することによって、自分自身の立ち位置の自覚が生まれる。単なる認知プロセスの変化ではなく、身についた情動的体験となる。それは、ただ「わかる」「理解する」ことではなく、人間として「触発される」ということである。

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新たな理解は情動体験を共有することで生まれる。それは各人が新たに生き生きと結びつくということである。応答するということは、互いの心の内に目を向けることであり、それによって思考は共同のプロセスになる。

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パースペクティブというものは、本来は主観的なものであった。しかし、相手のものの見方を尊重することで、自分の考えも多様な行為者によるポリフォニックな理解へと進むのである。

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個人のパースペクティブは、共有される経験を排除するものではない。話し合いに参加している人は皆、そのこころの内では他の参加者の〈声〉を抱こうとしているのである。